禁句と正座
本が欲しい。ゲームが欲しい。
でも、金がない。
お金は大切です。一番ではないですが。
いくら魔法使いと言っても、体力がなくても良いとは限らない。
戦闘は長期戦になる可能性があるし、魔力を使えば疲労感も感じる。なので、体力も何かと重要視されているのだ。
そのため、この学園では体育の授業は毎日のようにある。
体に傷の多い私はクラスメイトの前では着替えられないので、体育館のトイレの個室で学校指定の紺色ジャージに腕を通す。
「……っと、やっぱり狭いな」
苦労してジャージに着替え、廊下に出て時計を見る。授業開始まで5分を切っていた。急いで更衣室まで制服を運び、整列を始めている生徒たちに合流する。
今日はカリキュラムの説明なのか、体育館には男女共に集合していた。
「よう、奏。遅かったな」
適当に並んでいると、いつの間に後ろにいたのか、桜が肩を軽く叩いてきた。
「お前どこに行ってたんだ?更衣室で居なかったろ」
「ん、トイレで着替えてたから」
まさか、体中に傷がたくさんあるとか言える訳がない。
すると何を勘違いしたのか、桜は「にひひっ」と笑い始めた。
「……なにを考えているのか解らないけど、馬鹿にされていることだけは解る」
「いやいや、だって胸が小さいのを気にしているからだろ?くくっ!」
「なっ!?」
こ、こいつは今何と言った?
私の中でワースト3に入る、禁句中の禁句を言わなかったか?
「てめぇ、そこに座れ!ちょっと胸がでかいからって調子のんなよ!!」
「おぉ!怖い怖い」
桜はおどけたように肩をすくませると、列を離れてスタコラと私から逃げ出した。
「ちょっ、待てぇ!」
「あははっ。捕まえてごら~ん」
「上等だゴラァ!すぐに打ん殴ってやっからな!!」
「おいおい、まるで不良だぞ」
結局、私たちは始業時間になっても体育館を走り回り、体育教師にこっ酷くお説教を貰った。
「うぅっ!」
「……」
お説教をありがたく頂戴した私と桜は、正座のままで体育教師の説明を聞くことになった。
「では、どこかの生徒のせいで時間が押しているから、さくさく説明していくぞ」
体育教師はそう言うと、正座している私たちを横目で睨む。もちろん私たちはさっと目をそらした。クスクスとクラスメイトの失笑が聞こえる。
「はぁ。まぁいい、さっそく説明していくぞ。これは模擬戦闘のカリキュラムと少し重なっているから、ちゃんと聞いておくように」
この学園は模擬戦闘の授業もしている。と言うか、模擬・魔法練習場がある時点で予想できることだが。
「体育は基本的に、男女分かれて授業をする。当たり前だな。でも、2年からはそれとは別に班を構成してもらう。これは皆知っていると思うが、学期の始めと終わりにある“皇祭”の時に出場するメンバーになるから、班のバランスを考えて組むこと。模擬戦闘の授業もこの班でやるからな。一応、5人で一つの班とする。じゃぁ、班を組んでくれ」
教師が説明を終えると、生徒たちは急いでメンバーを集めだした。事前に打ち合わせしていた生徒もいたのか、いくつかすでに5人集まっている班もある。って。
「ねぇ、皇祭ってなに?」
私は横で綺麗に正座している桜に、先程聞いた単語を尋ねてみた。
「はぁ?お前そんなことも知らねぇのかよ。結構有名なんだぜ」
「え?」
有名?でも私は聞いたことがないし、事前に調べた資料の中には書いていなかった。外国暮らしだったので、聞いたことがないのは仕方のないことかもしれないけれど、資料の学校行事欄に記載はなかったはず。
そんな私の態度に、桜は呆れたようにため息を吐いた。
「マジかよ。じゃあ、説明してやる。皇祭ってのはな、簡単に言うと“学生同士の模擬戦闘”だ」
「……は?」
戦闘?
「一応中学校のからあるんだけどな。生徒同士の意欲向上を目的で実施されるらしい。基本、一班5人で構成される。各クラスから代表の一班を選出して、1年から3年までの各クラスの代表がトーナメント方式で勝ちあがっていく。まっ、この学校のスポーツみたいなものだな。勝ったクラスは、何でも学園長にお願いできるらしいぞ。限度はあるらしいが」
えぇ~……。そしたら、私もその行事に参加しないといけないわけ?それって色々まずい気が。それに模擬戦闘のトーナメントって、どこのファンタジー小説だ。あ、ここか。
「大丈夫だって。そんなに心配しなくてもオレが班を組んでやるよ」
桜が見当はずれなことを言っているが、今はそんなことは無視だ。これは陰謀が潜んでいる気がする。黒幕は解っているけど。
肩を落としている私に体育教師が近付いてきた。
「お前たちは、班を組まなくていいのか?もうほとんど決まっているぞ」
その言葉に周りをみると、確かに大多数が班に別れていた。その中で、3人しか集まっていない女の子たちがいる。
「良かったな。何もしなくても、もう決まっているようだ」
桜が淡々と事実を述べた。
個人的には胸は控えめが好きです。
えっ、どうでもいい?
ですよね~。
感想・誤字の指摘など待ってます。ってか全然こないっす。
そう甘くはないってことですね。
もっともっと精進します。
しかーし、テストと就職試験が少し重なってしまっているので、次の更新は1、2週間後ぐらいになりそうです。
暇があったら更新します。
こんな駄文を読んでくれまして、ありがとうございます。