精霊魔法とその定義
まったく話が進んでいません!!
すみません。
翌日。学園では授業が始まる。
「魔法の中には精霊魔法というのがあります。これは中学生の時に習ったと思いますが、今日はそれをより深く勉強していきましょう」
少し白髪が混じってきた男性教師が、出席確認をすると授業を始めた。
ここで魔法の基本について補足しよう。
魔法は大別すると属性魔法、精霊魔法、強化魔法、弱化魔法がある。それぞれから派生したりして、結構複雑なのだが、今は精霊魔法について説明しようかな。
精霊魔法。
文字通り精霊を媒体にしての魔法だ。扱い方は属性魔法や強化魔法と同じなのだが、その効果と威力が桁違いに上がる。基本的に属性魔法と精霊魔法が同等の攻撃をすると、精霊魔法が圧倒的に強いのだ。
もちろん欠点もある。
精霊と契約するので、精霊とのイメージの共有や信頼関係が必要となる。しかし、精霊は中々気難しい性格をしており、契約をしてくれるのも稀だ。しかも魔力も多く消費してしまうので、長期戦には不利になってしまう。こんなことは、とっくの昔に母さんから教えてもらった。
「では、どんな精霊がいるのか、誰かに答えてもらいましょう」
教師のその言葉に、Fクラスの面々はさっと目を逸らした。さすがFクラス。
視線を逸らしていないのは、私と隣の桜、ボブカットの女の子と眼鏡をかけた男子だけだった。
「そうですね……黒沼さんに答えてもらいましょうか」
「はい」
ガタっと椅子を引き立ち上がる。
「主な精霊は、火の火蜥蜴、水の乙女、風の妖精、土の小人がいます。サラマンダーは気性が激しく、契約するのは難しいとされています。ウンディーネの場合、男性に対しての契約は容易ですが、女性の場合は友情関係を結ばないと契約してくれません。シルフは対価を出さなければ契約してくれませんし、ノームは誠実さを見せなければ契約出来ません」
「はい、良くできました。さすがですね」
編入してきたから、このくらいは出来ると思っているのだろうか。教師は満足げに頷くと、私に席に着席するように促してきた。
「やっぱり編入試験を合格してきただけはあるね」「でも何でこのクラスにいるの?」「さぁ?もしかしたら裏口入学かもしれないぞ」「それはないでしょ。お金だけで入学できるのなら、誰も苦労はしていないって」「ああ、それに魔法とかですぐにバレるだろ」「もしかしたら、ものすごい力をもっているとか?」「そしたらSクラスにも編入しているだろうさ」
興味津津にクラスメイトがこちらを見ながら小声で話している。普通なら聞こえないのだが、訓練された私には良く聞こえていた。
「お前すごいな」
桜が感心したように私をそのルビーのような赤い瞳で見つめながら、うんうんと首を縦に振っていた。
「桜もわかってたんじゃないの?」
「はぁ?オレがわかるはずないだろ。目を開けながら寝てただけさ」
「……そう」
「奏もやってみたらどうだ?ほとんどバレることはないぜ」
「遠慮しとく」
まさか本当に目を開けながら寝てる人間が現実にいるとは、まだまだ私は世界の広さを実感していないようだ。
「おい、何かオレのこと馬鹿にしていないか?」
「気のせいなんじゃない?」
睨んでくる桜を受け流しつつ、今日の授業は滞りなく進んでいく。
キーンコーン……。
「はい、じゃぁ次の授業のときは、25ページからです」
午前中の授業が終わり、昼休みになった。
「おっしゃ!今日も売店という名の戦場にいくぜ!!」
桜はそう叫ぶと「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」と吠えながら教室を後にして行った。その光景に誰も突っ込まない。
私は食堂で食べるとしよう。
校舎の食堂は一階にあり、第一、第二、第三食堂まである。多すぎる気もしないではないが、皇総合魔法学園は全寮制なので、ほとんどの学生が弁当を持ってきていない。なので、売店や食堂が混雑するのだ。
料理ができる私は弁当を作ってくればいいのだが、生憎まだ弁当箱を買っていない。弁当箱を買うまでは食堂にお世話になるとしよう。
私が教室を出ると、出会い頭に軽い何かにぶつかった。
「きゃっ」
その声が人だと判断すると、慌ててその人の腕を掴んで自分の体に引き寄せた。相手がバランスを崩していたので、優しく抱きしめて支えてあげる。ふんわりと柔らかそうな茶髪が、きらきらと空を舞う。
「あ、ああああああの!?」
「月上?丁度良かった」
私の腕の中には顔を真っ赤にしている月上がいた。熱でもあるの?
「く、黒沼さん……近いです!!」
「ああ、ごめんね」
私が月上を解放すると、彼女は右手を胸に当てて深呼吸を繰り返した。
「大丈夫大丈夫、私は普通なんだから……そう、さっきのは同性同士なんだから」
何かブツブツと言っているが、あんまり内容が良く分からない。
とりあえずもう少しかかりそうだったので、再び教室に戻ってタッパを取ってくる。廊下に出ると、まだ月上はブツブツと壁に向かって呟いていた。
「月上?」
「ひゃい!?」
私が肩に手を置くと、幽霊でも見たかのように彼女が驚いた。
「す、すいません。何ですか?」
「これ、昨日はありがとうね。ちゃんと洗っておいたから」
「あ、はい」
私が冷静にタッパを渡すのが良かったのか、月上は落ち着きを取り戻してタッパを受け取る。
「と、早く食堂に行かないと。じゃあね」
「え?ち、ちょっと待ってください!」
食堂に向けて走り出そうとした私を、月上は少し慌てた様子で引き留めた。
「えっと……お昼一緒にどうですか?」
おずおずと上目使いに聞いてくる。その態度は、まるで私が断ると思っているかのようだ。
そんな彼女を安心させるために、私はその頭を優しく撫でる。
「いいよ。食堂でいい?」
「は、はい!!」
表情がみるみると、まるで花が咲くかのように微笑んで、力強く頷いた。
うぅ~、やっぱり可愛い。
本編で書く機会がないので、少し補足です。
この小説では、日本人なのに様々な色をした髪や瞳がありますが、これは精霊魔法に特化している人のみにおこる現象で、その色によってどの精霊と契約しているのかが解ります。
簡単に言うと、弱点がバレバレと言うことです。
感想・誤字の指摘など待っています。というか、お願いします。
こんな穴だらけの文章を読んでくださり、本当にありがとうございます。