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護衛任務と殺し

今回はちょっとグロいかもしれません。

 ぶわっと暖かな風が通り過ぎて行った。


 僅かに咲いていた桜の花びらが、その風にさらわれていく。


 屋上のフェンスに寄りかかっていた私は、体育館を見下ろしながらイヤホンを耳に付けた。ポケットに手を入れ、イヤホンと接続している機器を操作する。


 ザッ、ザザッ――――――。


 ノイズがイヤホンから出てくるが、構わず操作を続ける。


『――――――っとなりますので、新入生の皆さんは精進を怠らないよう……』


 途端にノイズが止み、透き通った女性の声が聞こえてきた。微かに幼さが残っている声なので、在校生の祝辞か何かだろう。


 皇総合魔法学園の入学式は始業式と同じ日にあり、午前は始業式、午後は入学式の日程になっている。少しハードなスケジュールかもしれないが、早く授業を行うためには仕方のないことだと紅色さんが言っていた。さすが世界一の学園。


 本来ならば私も体育館にいなければならないのだが、護衛の仕事があるため、紅色さんが特別に欠席するのを許可してくれた。塩長には何と言ったのだろう?


 体育館から視線を移し、此処から見える範囲を視界に入れる。


 なぜ私が体育館ではなく屋上から護衛しているのかと言うと、一言で言えば体育館の中は安心だからだ。世界トップレベルの教師陣が10人以上はいるし、その中でも紅色さんは格が違う。何かしようとしている輩を見過ごすことはないだろう。なので、相手が狙ってくるとしたら外からしかない。体育館が危ない可能性も少ないがあったので、一応小型マイクを五つほど仕掛けてある。ポケットの中にある機器は、その小型マイクが出している周波数に合わせて音を拾うことが出来るのだ。


(外から狙うとしたら超遠距離魔法か、私と同じ銃器ってところかな。体育館内部だと、ナイフか事故に見せかけたトラップぐらいしか方法はないはず)


 右目を一箇所に留まらせず、すばやく全体を見渡す。


「ん?」


 ある一角を見たとき違和感を感じた。


 運動場の隅に植えてある大木の枝が、僅かにだが動いた気がしたのだ。ちなみに、屋上からその大木まで目測で300メートルはある。


「我、瞳は鷲より遠く、永久に見渡す」 


 自分の中にある魔力を込め、私が使える数少ない魔法の一つを発動させる。身体能力向上系の魔法で、魔法使いならば誰もが小学生の授業で習うものだ。


 視力を強化した私は、その大木をじっと見詰める。青い葉の間から、黒く鈍る銃身が見えた。


「こんな早くからターゲットを狙うなんて、仕事熱心だねー。まっ、私も人のこと言ってられないか」


 一旦視力を元に戻し、さらに体を強化するために目を閉じる。


 イメージするのは常に最強の自分って、某キャラクターも言ってたし。


「我、体は何より強く、何より早く、何より見える」


 詠唱をすると、体に力が漲ってくるのが分かった。頭のスイッチを日常から非日常に切り替える。


 瞼をゆっくり上げると、世界が全て変わったかのように感じた。


 軽く体を動かして調子を見る。


「さてと。狩を始めるか」


 きっと、その時の私の顔は、学園関係者には見せれないほど歪んでいたはずだ。











 ――――――side ???


 その男は、幼少期から社会の闇に生きていた。


 物心ついた頃には銃を持っていて、すでに何人もの命を奪っていた。男は殺し屋集団に拾われた子供だったのだ。親は死んだのか、それとも捨てたのかは分からない。


 10歳の頃には単独任務を任され、老若男女を多く殺してきた。15歳を過ぎた時には、100人以上の息を止めている。


 男はそれでも、人を殺すことを悪いことだとは思っていなかった。誰も、それを教えてくれる人がいない。周りの仲間たちも同じ事をやっているのだから、仕方のないことだった。


 死についても何とも思わない。それどころか、自分自身はいつ死んでも良いとすら思っている。なぜなら、自分の代わりなど組織の中では何人もいるからだ。生き続ける理由はない。ただ自分は与えられた仕事をこなすだけ。サラリーマンと一緒だ。


 男は枝の上にうつ伏せに乗ると、狙撃銃をカチッと構える。一発装填型のボトルアクション式ライフルで、カチャっと弾を込めた。スコープを覗きこみながら、その倍率を変化させていく。


 スコープから見えたのは、姫島澪。


 倍率がピッタリとあい、そのクールな顔が鮮明に映る。


 両手でしっかりと銃を構え、それでも体をリラックスさせながら標準を合わせた。トリガーに指を持っていき、全神経を集中させる。


 ――――――3。


 息を吸い込み、それを肺で止めた。


 ――――――2。


 トリガーの指に力が入る。


 ――――――


「なにやってるの?」


 っと、覗き込んでいたスコープが急に暗くなる。


「――――――っ!?」


 慌てて顔を上げようとしたが、


 シュン。


「がぁ!!」


 左腕の付け根に激痛が走った。


 早急に銃を放棄し、相手の顔も確認しないまま枝から飛び降りる。その途中で左肩を見ると、肩から先は綺麗になくなって血を噴出していた。。


 芝生の上に着地すると、あらかじめ確保していた逃走経路に向かって走り出す。


「さすがプロだね。緊急事態が発生した途端、逃走を決断するのは良い判断してる」


 その声はすぐ後ろからしたので、男は懐に入れておいたコンバットナイフを残っている右手で取り出した。そして、振り向き様にナイフを振り抜く。


「遅い」


「ぐあっ!!」 


 だが、今度は右手が体から飛びだった。


 それでも男はまた走る。しかし、その両腕では体のバランスが取れず、グラウンドの中央に激しく点灯した。男の大量の血液が地面を濡らし、傷口に砂が付着する。


「はぁはぁはぁ!!」


 神経が狂いそうな激痛に、男は体を丸くさせた。


「何、もう終わり?」


 冷たく、何の感情も篭っていない声帯の振動が、男の鼓膜を揺らした。男が必死に目玉を動かし、その方向を向く。


「その様子だと、魔法を使えないの?まったく、歯応えのない」


 失望を滲ませた言葉を吐いたのは、デザートイーグルと黒い刀を両手に持ち、黒い右目を細めた奏だった。


 男は奏の眼帯を視界に収めると、大きく目を見開く。体が勝手に震えだし、歯がガチガチと噛み合わなくなる。


「く、“黒い氷”」


「……へぇ」


 グキャッ!! 


 その単語を奏が理解した瞬間、男の喉は彼女の踵に踏み潰された。


「―――――!!」


 男が音もない悲鳴を上げる。対する奏は、静かな怒りを含ませた表情で男に顔を近づける。


「私、母さん以外にその名前で呼ばれるのは嫌いなの」


 奏はぺロリと男の頬を舐めると、ニンマリと歪んだ笑みを浮かべた。


「だから、今からたっぷりと苦しめて殺してあげる」


 バシュ。


 奏の拳銃の弾が男の右肩を貫く。続いて耳、足の指、足の甲、足の付け根、ふくらはぎ、太ももなど絶妙な加減で次々と弾丸を放つ。


 男の体は、その度に痛みで魚のように跳ねた。


 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない――――――!!!!


 男の感情に、初めて生への渇望が生まれる。


 ――――――しかし、何もかも遅すぎた。


 耐え難い激痛と出血多量で朦朧とした意識の中、男は自分の体が奏の刀に切り刻まれていくのを感じた。

キーワードで主人公は弱いとありますが、あれは魔法使いに対してです!!

後付けじゃないですよ~(汗)


ところで、やっと奏は本領発揮です!ヤンデレっぽい……。


感想・誤字の指摘など待っています。


こんな未熟な文章を読んでくださって、本当にありがとうございます。

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