ドラゴン飼育違反
休日の朝、郵便受けを開けると見慣れない封筒が一通入っていた。
差出人の欄には、くっきりとこう書かれている。
「ドラゴン管理局」
中身を読んでみると、淡々とした文体で告げられていた。
「飼育登録されていないドラゴンが、あなたの庭に生息しています。速やかに手続きを行ってください」
馬鹿げていると思った。
だがその日の夕方、ふとリビングから庭の方へと視線を向けると、そこにはなにか子犬ほどの大きさの見慣れない生物がいた。最初大きなトカゲのようにも見えたソイツは体相応の大きさの翼をバサバサと動かすとキュイキュイと声をあげる。
どうやらソイツはひどくお腹が空いていたらしく、ものは試しと私が投げたパンを、焼き魚、さらには生肉までも嬉しそうに丸呑みする。
そうしてしこたま飯を食って満足したらしいソイツは空に向かい甲高い声をあげた。
その瞬間、空から雷鳴のような羽音が響く。
見上げると、巨大な影が町を覆っていた。どうやらあいつは親を呼んだらしい。
子犬ほどのソイツは嬉しそうにキュイキュイと鳴くと、小さな翼をいっぱいに羽ばたかせてその大きな影へと消えていった。
それを見上げていた私は思わず呟く。
「金では買えない貴重な経験をしたような気がするな」
翌日になり郵便受けを確認した私は、そこに新しい封筒が差し込まれているのを見つけた。そこにはこう書かれている。
「飼育登録不備により延滞料が発生しました」
その金額を見た私は思わず苦笑する。どうやら金で買えない経験は、とても高く付くようだ。