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追われる少年、蘇る記憶

「はぁ……はぁ……逃げれたかな……?」

「いたぞっ!こっちだ!」

「だよね……」


 とある街の路地裏、十七歳の高校生が厳つい男たちから逃げていた。その光景を見たら誰だって通報しそうだったが、今いるところは誰もおらず、通報してくれる人はいない。おそらく、通報されないように誰もいないところに追い込んでいったのだろう。


 そんなこともあって、ここから助かる方法なんて無かった。何処に逃げようとしても先回りされていて、家に無事で帰ることは不可能に思えた。というか、そもそも住所を知られているため、家に帰ったとしても安全ではないので救いようがない。


 こんなことになったのも自業自得だった。バイトだけでは十分にお金を稼ぐことができなくて、いけないところにお金を借りた僕が悪い。しかも、返済の期限は先月までだったのだ。一か月も待ってくれたことに関しては感謝するべきなのかもしれない。


 だけど、このまま捕まってしまうと、どんなことをされるのかわからなので逃げるしかなかった。頭では逃げ切れるわけないと思っているのに。


「はぁ……はぁ……ここを右に曲がれば……わっ!」


 右に曲がったところには借金取りが先回りしており、道をふさいでしまっていた。後ろからも借金取りが来ており、どこにも逃げることができない。もうどうすることもできず、絶体絶命だった。


「チッ、逃げやがって、やっと捕まえることができたぞ」

「兄貴、そいつを捕まえてくれてありがとうございます!」

「ケッ、こんなガキに俺が出張る必要なんてなかっただろ」

「すみません、俺が未熟で」

「知っとるわ、そんなこと」


 少年を取り囲んで、借金取りたちがそんな会話をしていた。しかし、その会話をしている間も少年のことをずっと警戒していて、隙を突いて逃げるということが出来ない。


(これから僕はどうなるんだ?内臓を売られたりしないよね……?)


 少年がそう思うのも仕方が無かった。何故なら、少年が金を借りたのは昔から街にいる暴力団だったからだ。その暴力団はかなり強力で警察も中々手を出せないから、捕まってしまった場合に助け出してくれるなんて到底想像できなかった。


 これから、どうなってしまうのだろうか?

 そう思った時だった。


「がはっ」


 目の前にいる借金取りの足が腹にめり込んだ。あまりの痛さに頭が真っ白になって、何が起きたのか理解できない。唯一分かっていることは、今の衝撃で肋骨にひびが入ったのかもしれないということだけだ。


「チッ、オマエのせいで俺が苦労する羽目になったんだぞ」

「兄貴!暴力は禁止って三賢さんに言われたじゃないですか!」

「ああ、そういえばそうだったか。でも、問題ないだろ。ガキは見つからなかったと報告すれば、何をしたっていいんだから」


(何を言っているんだろう?そんなことが通用するわけないじゃないか。まさか、本気で見つからないと思っているの?)


 少年は借金取りの会話の中で出てきた三賢という人物と面識があり、その恐ろしさを十分知っている。三賢はかなり頭が回り、どんなことをしようとしても見破ってくるのだ。実際に少年が追われている理由は、借金を返すことが出来ないと思って逃げ出そうとしていたのを見破っていた三賢が、逃走経路を塞ぐように団員に指示していたからに違いない。


 しかも、逃走経路だけならまだしも、逃げ出す日にちまで正確に予測されていたのだ。そんな人物が虚偽の報告に騙されることなんて無いに決まっている。


 だけど、目の前にいる借金取りたちはそのことを理解していないようで、少年に対して再び暴力を振るってきた。


「ぐっ……!」

「それにしても、後からコイツが捕まってしまうと嘘を吐いたことがばれてしまいますよ」

「そんなもん、殺せば話すことが出来なくなるから問題ないだろ。それに最悪の場合は金剛さんに頼めば何とかなる」


 ああ、ここで終わりなのかな。毎日を生きることに精一杯で、まだ何もできていないのに、こんなところで死んでしまうんだ。生まれてきてよかったのかな?わからないや。


 そして、少年は借金取りに頭を掴まれて、上に持ち上げられる。少年は痛みのせいで身体を動かすことが出来ず、借金取りにされるがままだった。


「ふん、俺を恨むんじゃねぇぞ。金を返せなかった自分自身を恨むんだな」

頭を掴んでいる借金取りが、全力で殴り掛かってくる。そこに少年の命に対しての気遣いなど無く、本気で死んでもいいと思っているようだった。


(これで終わりかな……)


 そう思って諦めかけた時、頭の中で歯車がかみ合って知らない記憶があふれ出してきた。

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