第7話 異世界の初めて
「ほな殺すなー」
男は突進するザルデに手のひらを向け詠唱を唱える
「全てを焼き尽くす炎よー撃ち抜け、炎弾」
直後飛び出る炎はバスケットボール程のサイズをしており一直線にザルデに向かっていく
「ガァァアアアア!!!!」
奴らがかまくらに落下してきた時の耳鳴りがまだ残っていた耳に響くその声はザルデから発された声だ。ザルデは気合いを入れ剣を抜く。
「北炎流!!夕月!」
剣をまっすぐ振り下ろし飛んできた炎弾を真っ二つにする。しかし気がつけば男は振り下ろした剣を左脚で踏み台にし、空いている右脚でザルデの頬を蹴る。だがザルデは微動だにしない。
「嵐よ、敵を切り裂き我の力になれ 嵐裂面!」
次の瞬間、パボラが男にB級風魔法 嵐裂面を放つ。嵐裂面や炎弾などは風圧などとは違い火、風などはD.E級。炎、嵐はB.C級とランクによって名のランクも上がっていく。
嵐裂面は例えるならクリリンの気円斬のようなもので円を高速回転させ投げつける魔法だ。
しかし、投げようとしたパボラに背後からなにかが追突する。
「嵐裂面使えるなんてすごいですね〜!!ちょっとかっこいいって思っちゃいました!敵さんなのに、てへっ!」
目の前の巨大なカラスが出しているとは思えないような女性の声を発しながら追突してきたのはさっきのカラスだ。
パボラはしっかり受身を取るが嵐裂面は魔力が分散し投げる前に消えてしまう。
「シワスーそいつら押さえとけーザルデ殺してさっさと帰ろかー」
「はーい!ということで副リーダーさ〜ん!お相手してください!」
にこっとかわいく微笑むがパボラは真逆の反応を返す。眉間のしわを深めシワスという名のカラスに問いを持ちかける。
「シワス…と言ったなぁなぜ俺たちに攻撃を仕掛けてきたぁ」
「理由を言わなきゃダメですか?」
こてんっと首を傾げ頭に?を浮かべて聞いてくる。可愛い仕草ではあるがやっているのがカラスなのですっごく怖い。でかいし
「教えろぉ」
「こわいですよ〜…リーダーさんがリーブ家の血を引いちゃってるからです。」
ってことはこいつらはザルデを狙っ…
「嵐よ、辺りを一掃し我が身を守れ 嵐圧!」
パボラは俺の思考回路よりも速くカラスの顎下に回り込みアッパーの如く嵐圧を打ち込む。
空高く吹き飛ぶカラスにパボラは追撃する。
「轟雷よ、我に力を貸し天の怒りにて裁きを与えん 雷鳴線!」
パボラはA級雷魔法の雷鳴線を放つ。日が沈んで来ていたはずの世界が一瞬にして昼のように明るくなりまた一瞬にしてその光は消える。
パリッ
その音が耳に届く時にはすでにパボラの手から飛び出た光が巨大なカラスを撃ち落とした。
ドンッ!!
鈍い音を響かせ砂に墜落するカラスにパボラはトドメを与える。
「辺りをを燃やし続ける火よ!放て!火弾!」
黒い羽に火弾が当たりカラスを焼き始める。殺したのか……?フラグになりそうなので口には出さずにしていたとき、背後にさっきまで聞いていた声が聞こえてきた。
「いてて……敵だからって容赦なさすぎじゃないですか〜?」
?!……は?なんで生きてるんだ…直撃はしていたはず……?
混乱している俺をパボラは全力で引き寄せる。
次の瞬間には俺の立っていた場所にカラスの蹴りが……?カラスじゃない!?
後ろにいたのは鳥ではあるが色は真っ白だ。
分身…?獣族の術…?何が起きてる……?
「そこにいる方、驚いちゃってますか?ごめんなさい〜!でもこーゆー獣術なんですよ〜!でも驚いたか顔もかわいかったです!」
なにいってんだこいつ。
「北炎流!不知火!」
とてつもない破裂音のようなものと一緒に飛んできたのはザルデでもパボラでもなく、イロセだった。
電車のような強風を吹いて俺とパボラの間を通ったイロセはそのまま白いカラスに激突した━━━この破裂音、イロセのスタートダッシュの音かよ……
「この鳥は俺に任せて!パボラらはザルデさんに加勢を!」
そうだ。ザルデはどうなってる?俺はザルデの方を振り向く。
「北炎流!噴火!」
ザルデは小さくしゃがみこみ四足歩行のような体制になる。
そして小さくなった力を使いバネのように反発して男の喉に剣を突き刺そうとする。
しかし男は剣に合わせて後ろに飛び"噴火"を回避する。
「嵐よ、辺りを一掃し我が身を守れ 嵐圧!」
男は嵐圧をザルデに放つ訳ではなく地面に投げ自分を空高くに飛ばした?
「さっさと帰りたいしーしゃーないからやったるわー……リミッター解除ー獣人化ー」
そういうと男は体を大きくしていく。
パボラがザルデの隣に駆け寄る姿を見て思った。おそらく戦いが始まって3分もかかってない。カップラーメンだってまだ食べれないしウルトラマンだって戦える程度に時間。それでも俺は何も出来ていない。
―今回、お前に戦わせる気はないぃ
俺はパボラの言葉を思い出す。ウィルダネスウルフがここまで強いとは思わない。だからそれ以上に強いあの2人との戦いで俺が乱入できる訳ない…そんなことは分かってる、3分も経っていないが充分に分かった。
それでもこのまま何もせずに頼りたくない。守られたくないんだ。
俺は俺の意思で人生を歩きたい
戦いが始まって3分経過した時、俺の異世界初めての戦闘が始まった。




