第4話 クティノス
「クティノス…?何を言っているのかわからんがその顔…獣族だな貴様!獣族は誰一人として生かしておかん!」
言い終わるより速く、クダは斬りかかった。
「東水流!柳!」
ナガに避けられてしまった一撃は地面に振り下ろされ剣は周りを切り裂き床にマンホール程度の穴を開けた。
「ほらーその程度の攻撃しか出来んのやったら絶対やめといたほーがええよー」
本部からの手紙を持って来た男を人質に取り穏やかな声を崩さないナガにクダは更なる怒りを感じた。ギチギチと剣を鳴らし力むクダを見て攻撃をやめないと判断したナガは今度は仕方なそうに喋り始めた…。
「もー。ま、別にいいかー壊してこいって言われてんやしー」
そう言いながら人質をクダに向けて放り投げるとキャッチしたクダの顔面を殴り飛ばした。
「リミッター解除…獣人化ー」
隊長室を破壊しながら、巨大化していくナガを見てクダはあることに気づく。
「…?なんだ…?あの数字は…。」
巨大化したナガの胸には赤く”9“という数字が刻まれていた、しかしその刻み込まれ方はまるで何者かが魔力を使い無理矢理刻み込まれたようだった。
「これー獣術使うために毎回獣人化しなきゃいけへんのーなんとかならへんのかなー」
クダの目の前には宙に浮かぶ…いや宙を泳ぐ大きな魚影があった。
「あれは……鯨か…?」
「ほな殺すなー」
〜タカト視点〜
「おかしいなぁ?」
「はい…おかしいですよね、これ」
あれから2時間程、魔法を使いまくった。おかげで感覚も掴めてきたしコントロールもずいぶん良くなったんだが…
「タカトぉ…おまえ全く魔力がなくならないなぁ…」
2時間使いまくてるのに、魔力がなくならないのだ。正確に言うと魔法を使った時は消費した感覚があるのだがその後すぐに回復してるような気がする…。
まさか…MP無限設定があったりするのか!ってそんなわけないよな…
もしも俺を転移させた奴が特殊能力をくれてたとしてもそこまでのチートを俺に与える意味がわからんし…何か理由があるはずなんだが…
「まぁ今考えてみても仕方ないぃとりあえず昼飯にするぞぉ、明日にはこの村を出てウィルダネスウルフを狩りに行くからなぁ」
「あ、はい分かりました。」
ー村の飯屋ー
「魔力の話はともかくぅ明日からウィルダネスウルフの群れのいる砂漠地帯まで行くぅそこに向かいながら魔法の練習もするぞぉ」
「はい。」
ウィルダネスウルフは魔領域の荒野と砂漠の交差地点を好むから交互に拠点を移しているらしい。
この村はギリギリ荒野という場所にあるらしいのでここを拠点にしようと村にやって来たところよく分からん格好をした男(スーツを着た俺)がいたので話を聞きに近寄ったということらしい。…ん?そういえばウキドイに入れてもらったあとすぐに気絶したから聞きそびれてたな…
「そういえば皆さんが村にやってきた時、光と共に落下して現れてましたけどあれってなんなんですか?」
「ん?言ってなかったかぁ?俺は獣族のハーフだとぉ…」
「それは聞きました。…えっとそれがなにか関係あるんですか?」
「あぁ獣族は獣族で特殊な術を使うんだぁ自分の元の動物に変化して力を上げる獣人化とぉ、その獣人化状態で使えるようになる魔術とは少し違った獣術という技があるぅ。俺の獣術は俺に触れてる物を一定の距離移動させる術だぁ」
何それ。初耳だし、いいなぁ。
「じゃあ明日もその能力でウィルダネスウルフの所まで行くんですね。」
「いやぁ見てたなら聞こえてたと思うがぁあれは音がデカすぎるからなぁすぐに見つかって逃げられてしまうぅ」
「確かにそうですね…」
じゃあ歩いて向かうのか…まぁ外回りもやったことはあるが…砂漠を歩くとなると少し心配だな…。俺は少し明日に不安をいだきながらジョッキに残った水を飲み干した。
ーザルデ視点 村の居酒屋ー
「よし、タカトとパボラももうそろそろ来るだろうから明日のウィルダネスウルフ討伐の作戦会議を始めるよ!」
「?…、あんたらもウィルダネスウルフを狩りに行くのか?」
そうやって喋りかけてきた赤い髪色をした長髪の男はニヤリと微笑みザルデ達に話しかけた。
「そうだけど…あんたは?」
「俺は"イロセ"俺もウィルダネスウルフを狩りに来たソロ冒険者だ。なぁ!俺もあんたらのパーティに入れてくれよ!」
「「…は?」」