第21話 とりあえずサシア
第三章 獣人戦争編 開幕
何がしたいのかが分からない。
自分は何がしたかったのだろう。
分からない。
コロコロと気分で物事を変えて
一貫性のない自分が嫌いだった。
大嫌いだった。
いや
大嫌いなのは意味も変わらない。
だから、自分を傷つけた。
そうすれば、贖罪の気持ちと反省を示した気分になれたから。
だから、他人を傷つけた。
そうした方が、自分をもっと嫌いになれたから。
こうやって、自分は不幸なんだ。と、そう思わせるような行動をするやつが嫌いだ。
嫌いだ。嫌い嫌い、大っ嫌いだ。
でも、あの方のおかげだ。
自分には、一貫性が無くてもいいと知れた。思えた。
気分ひとつで、人を殺しても、犯しても君は悪くない。
過去の君がしたことに、今の君は関係ないんだ。
今の君がしたことは、未来の君に放り投げればいい。
だから、俺は気分で、したいことを決める。
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俺はただ、強くなりたかった。
強くなり、弱いやつを貶して、強い奴だけの世界を作りたかった。
延々と、闘いたかった。
喰うことが好きだ。
腹も満たせて、敵に勝ったんだと、俺は今生きていると、殺した相手を食らっている時と敵と闘い、緊張している時だけが、俺の生を感じれる瞬間。
オレの人生の意味だった。
いつからか、俺にかかってくるものはいなくなった。
井の中の蛙、大海を知らず
そうなのかとも思って、旅に出たこともあった。
だが、結局は俺に叶うものはいなかった。
俺は強くなりたかっただけなのに、強くなりすぎちまったんだ。
あの方が現れるまで、俺はそう思っていた。
しかし、あの方は違う。
緊張ではない。恐怖だ。
生まれて初めて感じた恐怖は、最悪の気分になった。
だから、俺は探し続ける。
俺と対等に戦い続けられる強者を
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王になりたかった。
美味い飯、女、寝床、娯楽。それら全てに興味はない。
王になり、全ての者の上に立つ存在に、権力を手に入れたかった。
だから、王にもなった。しかし、やりたいことはそこで終わった。
食事も、SEXも、臥床も、殺しだってそうだ。
王になることが目的だった俺は、王になり、生き甲斐を無くした。
だが、あの方だ。あの方が俺の座を奪った。
俺の目的を、また生み出してくれたのだ。
俺はあの方を殺して、再び王に返り咲く。
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「そんじゃ出発するよ!」
「おー!」
「朝から元気だな…」
ザルデたちも起きて、俺たちはカリメラ王国に向けて出発した。
んだが俺の頭にはさっきの光景がこべりついてしゃーない。
━━━ おっと…今のこと、3人には内緒にしてくだせぇね?
なんであんなに強いんだ?あの歳で冒険者をやっているんだ。強いだろうとは思っていた。
でも、詠唱を唱えていなかった。
いきなり襲われ、混乱していて聞き逃していたのかもしれないが、多分それはない。
日本語を上手く扱えない上司の意味わからん要望を聞き逃さないように、耳はずいぶん肥えさせた。
だから、耳はいい方だ。
話がそれてしまったが、ようはワシオカは無詠唱で魔術を使ったんだ。
パボラからはそんな話は聞いていない。ってことは、少なくとも無詠唱を使うやつなんてなかなかいない訳だ。
まぁ強いのは置いといて、なんで隠す必要があるんだ?
数ヶ月旅をする仲だ。多少の情報交換、もっと言うと自分の強さとかは、冒険者をやるならある程度教えておくべきだ。
タイミング的に考えれば…クティノスのメンバー…?
やはり、一応の警戒はしておくか。
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1日目 特になし
2日目…3日、4〜7日、1週間はほとんど何も起こらなかった。
何も起こらなかったと言っても、それは冒険者基準からしたら何も起こらなかったというだけだ。
魔物は出てきたが、そんなに強いやつじゃないし、俺の出る幕はなかった。
こう言うと、俺がボスみたいだが、もちろん違う。
こんな感じだ。
「!…魔物が現れ…」
「北炎流!不知火!」
走り出したのは、イロセだ。
というか、俺が走り出したことに気がついた瞬間には、既に魔物の首は地面に落ちていた。
まぁこんな感じで、俺からしたら強いのだろう敵を、バッタバッタと薙ぎ倒し、旅は順調に進んでいた。
「カリメラ王国には、どれくらいで着くんですか?」
魔領域の中心から人領域の縁まででかかった期間は、三ヶ月。しかしこれはかなり平地が続き歩きやすく、尚且つパボラの移動を定期的に使ったからだろう。
人領域は、山あり谷ありだ。いや、魔領域もそうなんだが、人領域には木々も多い。
「そうだなぁ…”移動“を使わなかったらぁ大体4、5ヶ月くらいだろぉ。領域一つを真っ直ぐぅ、端から端まで歩くとしたなら一年程度だからなぁ。」
そうなんだ。
とゆうことは、移動を使えば魔領域の中心から人領域の縁まで、半分が三ヶ月になったって事だから、大体二ヶ月くらいだろうか。
「まぁでも、カリメラ王国の敷地も近い。敷地に入れば馬を手に入れよう」
「俺、乗馬できませんよ?」
恥ずかしながら、俺はチャリにも乗ったことがない。
「私らの後ろに乗ればいいさ。ワシオカさん、乗馬は?」
「勿論、できやすよ。」
「ならワシオカさんに乗せてもらいな」
えぇ…。正直、ちょっとだけ怖いんだよな…。いやでも、ちょうどいいか。
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〜カリメラ王国 ヴァロータ国〜
さらに2週間ほど進み、カリメラ王国の敷地に入った。
今はヴァロータ国という国にいる。この国は、カリメラ王国の端っこらへんにあり、だからあまり戦争の被害が出ていないらしい。
だが、あまり発展している国とは言えない。畑なども多くのどかな国だ。
「まぁあまり大きくもないぃ、国全体で自給自足しているような国だぁ」
らしい。
「それじゃー馬宿を…」
「その前に飯にしましょ!」
ザルデの発言を遮ってイロセが、腹を摩りながら言った。
いつもなら、ツッコミを入れるのが俺の担当だが、今は俺もこの意見に同意である。
「まぁ、先にそうするか…」
最近は異世界メシにもなれてきた。というか、魔領域のご飯がなかなかのクオリティだっただけで、人領域にくれば見たことがあるようなご飯も出てきた。
例えるなら、魔領域のご飯が外国で、人領域のご飯が他県のような感じだ。
どこぞの国の虫料理などは想像さえできないし、他県の名物は見たことはあるが食ったことは無い。きりたんぽとか。
もっとも俺のいた世界と比べてしまったら軍配は前の世界にあがる。むしろ前の世界より機械的というか均等になるというか、冷凍食品に近いものを感じる。
やはり料理にも魔術を使ってたりするんだろうか…。
「よし、今日はここで食おう」
見つけた場所はよく酒場だ。
ウキドイが店で飯を取るとなれば大抵はこういった雰囲気のある酒場だと相場は決まっている。
もっとも、この世界の酒場なんて大抵は雰囲気がある、逆に雰囲気がない方が雰囲気があるのか?…うん、我ながらよく分からない。
「サシア5杯くださいぃ」
パボラが酒を注文した。手慣れているこの速度、まさにプロの所業だ。
ちなみにサシアというのは、この世界でのお酒の代名詞みたいなものだ。
とりあえず生、ならぬ、とりあえずサシア。という訳だ。
味はワインに近く梨みたいな形をした果物を発酵させてつくっているらしく黄緑色をしている。
なんか濃いし匂いも強く、初めて飲んだ時は結構苦手だった。
しかし、慣れれば癖になる。進撃や、ジョジョなどを絵柄で無理と判断していた時と同じ気分だ。
「よし、じゃあザルデが酔っ払う前に明日の確認をしとくぞぉ」
「そんな呑まないよ、この後馬を見に行くんだし…」
「ザルデさんは2、3口で酔うでしょ」
1番酒豪みたいな見た目してるのに、とてつもない下戸だ。
「まずこの後ぉ、馬を3頭借りてカリメラ王国の首都ぉカリメラ国に向かうぅ。
先頭が俺ぇ、後続がザルデェ、イロセェ、最後尾にワシオカァ、タカトォ、荷物などは余裕のある俺が多めに持とうぅ。
基本的には平らな道を進むがぁ、何度か深めの谷があったり凸凹とした山の地点があるぅ。その時は俺の"移動"を使うつもりだぁ。」
その後も、パボラがカリメラ王国まで行く計画も伝えた。
イロセはいつの間にか頼んでいた飯を頬張りながら。
ワシオカはサシアの2杯目を飲みながら。
ザルデは机に突っ伏し倒れ込みながら。
明日、もう一度ザルデに説明する必要がありそうだ。
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「ここですね」
酔いつぶれたザルデと食いすぎたイロセを抱えて、パボラたちは先に宿に行ってしまった。
馬宿への地図を渡され、俺とワシオカは馬宿まで来ていた。
なんでも、以前もここの馬宿で馬を借りたことがあり、その時に宿主と仲良くなり、ウキドイのギルドカードを見せれば安くしてくれるんじゃないか、との事らしい。
「まぁ借りるのは明日ですから、今日は馬を見るだけです」
「そうですね。」
そうですねとは言ったものの、馬の見分け方なんて知らんぞ。生で馬を見ることすら初なんだが。
「ああそうだ、ワシオカさん」
ちょうど2人になったんだし、馬に乗った時に頼もうと思っていたが、今の方がちょうどいい。
「俺に魔術を教えてくれませんか?」




