第20話 カリメラ王国へ
村は7割…まぁほぼ壊滅状態だが、村の人たちにらそこまで死人は出ていなかった。
魔力の回復したパボラが回復魔法を使えば全回復するものも、多く、すぐに村の復旧作業も始まった。
とはいえ、そこまでというだけで死者は出た。
村の何人かにはもっとはやくきてくれよと言われさすがパボラをいじめていた場所だなと少し関心してしまった。
言わんとしてることは分かるし。確かに俺たちももっとはやく来れればと後悔もした。
しかし、お前らがそれを言うかと、そう思ってしまう。
ザルデの親父さんが何とか制裁もしたりとしていたはずだが、この通りだ。
おそらくこいつらは救いようがない。
まぁ次何かがきても俺たちは助けないし、俺たちは何もしないからさっさと死ねよって感想だ。
もちろん、こんなことを村の住民全員に思っている訳ではない。
村の唯一の良心、タルくんは村人の発言に頭を下げ、礼をしてくれた。
「タルくんも頑張ってたじゃん…てゆうか、タルくんが頑張ってたから俺たちが間に合ったんだし、MVPはタルくんだよ。」
「いやいや!僕は何もできませんでしたよ!えむぶいぴー?が何かは分かりませんけど、頑張ってくださったのは皆様です!」
謙遜のオンパレードだ。
「それで…いつ頃までこの村に居られる予定ですか?」
分かりやすく話題を変え、言い逃げた…。
まぁ大人だし、素直に乗ってあげよう。
「体的にはもう冒険しても大丈夫だし、明日にはたとうかなってパボラさんは言ってたよ」
これ以上この村にいれば、イロセがブチ切れるしな。
ただでさえ もっとはやくきてほしかった と言われた時にキレて、止めるのが大変だったのだ。
「そうですか…。」
タルくんは残念そうにそう言った。
そんなあからさまにしょんぼりされると来るものがある。これが母性というものか…。
「じゃあ、いつか会いに行きますね!」
タルくんはさっきのしょんぼりが嘘のように、ニコリと笑ってそう口にした。
やはりこれが母性か。
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フフフ・・・。皆気になっているだろう。
なぜ俺が普通にしているのかを……!
正直なところ、俺も…というか今のところ誰もよくわかっていない。
そもそも、俺は魔術を絞り出そうとしたところで記憶は無いのだ。
話によると獣化?というものをしてフミとヨウを倒したらしい。
意味わからん。
まぁ本当なのかは分からない。パボラ達が俺を見つけたのはフミとヨウの死体が転がっていて近くに俺も倒れていたから、状況からしてそういうことなのだろうと言っていた。
獣化ってのは獣人化の一個前の変身的な感じで、これも獣族にしかできないことだと言われた。
俺は獣族だったのか!
通りで母親があそこまで浮気をしていた訳だ!
まぁ冗談は置いといて…実際なぜ、衝撃砲が使えるのかは何となくわかった。
俺に獣族の能力が使えるなにかの能力が……スキル?
やっぱり神みたいななんかが俺をこの世界に転移させたと見るべきか?
情報が少なすぎて、謎が増えただけになったな…。
タルくんと別れて、道を歩きながらそんなことを考えていた。
気づいたら宿に着いていた。
「戻りました」
「おぉ、おかえり!調子はどうだい?」
「変わりありません、問題ないです」
出迎えてくれたのは、ザルデだ。
イロセは多分、村の復興作業に向かっているんだろう。また喧嘩をしていなければいいんだが…。
パボラはどこだ?
「おぉ、帰ったのかぁ…」
そう思った瞬間に、パボラが帰ってきた。
「はい、パボラさんも、おかえりなさい」
「あぁ、ただいまぁ」
なんかこう聞くと、ちょっと関西弁に似ているな…。ただいまぁとただいまー。
うーん、なんとも言えん。
「ザルデェ、お前に手紙だぁ。正確にはウキドイになんだがなぁ」
「手紙?」
声を出したのは、俺ではない。ザルデでもなく、イロセだ。
「お前も帰ってきたんか。おかえり」
「今な、ただいま」
?…なんか、違和感があるな…なんでだ?
「それで手紙ってなんすか?」
あぁ、こいつ…俺にだけ敬語やめたな…。
敬語っても、運動部あるあるの〇〇っすって「っす」つけるだけのやつだけど…。
「あぁ、えっと?カリメラ王国からだ!」
?……カリメラ王国って二人の故郷だよな?あぁパボラはちゃうのか。
国からの手紙ってなんだ?しかも戦争中だよな…。
「どうゆう事っすか?カリメラオウコクって人からの手紙ってことすか?」
んな訳ねぇだろ。
「んな訳ねぇだろ」
「正確にはカリメラ王国の当主代理ぃ、ザルデ様が死んだ後に今ぁ、当主役をしている護衛だった者からだぁ、俺の同期でもあったぁ」
今の当主って護衛だったやつがやってんのか…。国王役を召使いがやるって結構な事だな…。
「なんて書いてあるですか?」
「今から読むよ」
『
冒険者パーティ ウキドイ 殿
ザルデ様。
はじめまして。いや、お久しぶりでございます。ユイナ様。
私、ユイナ様の召使いでございましたシデーンでございます。
覚えておられるか分かりませんが、私はユイナ様、そして当時一緒に働いていたパボラのご活躍を耳にし、この手紙を送らせて頂いた所存でございます。
獣族の主戦力である、クティノスの幹部を撃退されたとのご活躍をお聞きしました。
是非、カリメラ王国への帰還を、そして共に獣族と戦って頂きたく、できることならばお顔だけでも拝見をし、ご挨拶させて頂きたい所存であります。
突然の手紙に驚かれたかもしれませんが、ご検討いただきたい限りです。
何卒、よろしくお頼み申す。
カリメラ王国 当主代理 シデーン』
「だってさ…」
ナガを倒したことが知れ渡ってるのか。
それで戦力として…ってのは多分建前だな。ザルデの無事を確認したいのと、行ったら確実に保護だろう。
ってかクティノスって結構有名だったのか、もっと隠密機動隊的な…。いや、その割にパボラとかは知らなかったような?
まぁ王国なんだし、それくらいの情報は仕入れてるのかな?
「どうするんだぁ?ザルデぇ」
そうだ。この冒険の目的は戦争を止めること。
獣族の主戦力と言われてたクティノスを倒してんだし、目的は着々と近づいてきてる。
でも、そのためにも、戦力が欲しく、アッシュ王国への協力要請を求めに行く。それが目的だったはずだ。
「距離的には、どんな感じなんですか?」
「アッシュ王国の方が近いなぁ、まぁさほど変わりはしないがぁ、アッシュ王国は海に囲まれた島にあるぅ。だから、行くには少し時間がかかるなぁ、船に乗らなければならないからなぁ」
アッシュ王国に行ってからカリメラ王国に向かうってのは時間がかかりすぎる訳か…。
「呼ばれたんだったら行きゃいんじゃないっすか?」
お前はもうちょっと考えろよ…。
「決めた!」
ザルデがそう声を出した。
「カリメラ王国へ向かうよ!シデーン達の無事も確認したい!」
かくして、俺たちはカリメラ王国へ向かうことになった。
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「この度はどうもありがとうございました…」
村長さんが頭を下げる。生きていたようでよかった。パボラの治癒魔法のおかげなんだろうけど、初めて会った時よりピンピンしている。
「いえ、こちらこそお世話になりました。それじゃあ…」
「タカトさん!ありがとうございました!」
元気な声がして、そちらの方に目を向ける。
「タルくん!見送りにきてくれたんだ!」
「はい!俺いつかもっと強くなって、村から出るんで、また会いましょう!」
「…うん!」
元気な子だ。ありがとう…って、久しぶりに言われた気がするな…。
俺達は村を出た。
次の目的地はカリメラ王国だ。
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「強くなりてぇ」
「急にどうした?」
「だって俺、まだ回復魔法もつかないんだよ」
そう、俺が使えるのは風のD級と水のE級。付け焼き刃の土盾くらいだ。それも全部魔力で、威力を高めてるだけのごまかしに過ぎない。
あと訳分からんビーム(衝撃砲のこと)が暴発するくらいだ。
「回復魔法を使えるようになりたいです!俺、非力だからすぐ怪我もするし…」
「俺は回復魔法を教えるのは得意じゃないぃ」
そんな一言で拒否されるとは…。
「まぁでも手紙を出したシデーンは魔術を教えるのも上手かったぁ、シデーンに教えてもらえばいいぃ」
「そういえば、どんな人なんすか?そのシェーンさん」
「シデーンさんな、イヤミか。」
……その顔やめろ。伝わらないこと言った俺が悪かったから、違いますけど?みたいな顔やめろ。
「俺と同じ魔術師ではあるがぁ、あいつは結界魔法が得意なやつだったなぁ…ちなみにイケメンだぁ…」
「なるほど。俺の嫌いなタイプですか」
「なんでそんなに顔の良い奴嫌いなんだよ?タカトも悪かねぇだろ?」
「……だからだよ…」
そりゃあの浮気女の遺伝子継いでんだから、面も良くなっちまったんだよ。
この顔を見ると、あの女との繋がりを感じて嫌になる。
あぁ腹立つな。
長年のブラック企業で偽ってた外面が、最近はがれきてた気がする。
昔の自分に戻り始めてて嫌な気分だ。
「まぁ、顔だけじゃなくて、性格もいいやつだったさ。」
ザルデがそういうと、イロセはザルデの方を向き、シデーンについて聞き始めた。
しかしそうだ、話がそれてしまったが、俺も強くならなければ、クティノスに勝てたのは本当に運。訳分からん力のおかけで勝ってるが、全員に勝てるとも思えん。
第一、奴らはフミでもNo.7。
少なくともあと6人は上に強いやつがいるということになるはずだ。
もっと強くなりたい。
……なんか今のセリフかっこよくね?
「!……止まれぇ!」
「ふぇ?!」
馬鹿みたいな事考えてたら、変な声出た。なにかあったのか?
ガサガサという物音がしたあと、草むらからなにかが出てきた。魔物だ。
「なんだこいつ…狼か?」
デカイ…。2mはあるだろうか、まるでと〇りのト〇ロだ…!
「人狼だなぁ…まぁ脅威ではあるがぁ、どうやら理性がないぃ。動きは単調だしぃ、力だけだぁ」
そう言ってパボラは指を少し噛んだ。
血がポタポタとたれ始め、人狼はパボラに気を取られ始める。
「ぅぅぅう゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
遠吠えを上げパボラに突っ込む。
が、そしたらもうこちらの思う壷で、いつの間にか剣を抜いていた二人が人狼の足を切り落とす。
「嵐よ、敵を切り裂き我の力になれ嵐裂面!」
こちらに倒れてきた人狼の頭に向かって、俺は嵐裂面をぶつけた。
ゴシャア!
「やったか…」
おっと、これはフラグだったな。まぁ頭も潰れてるしここから生き返るなんてことは…。
「ほぉ〜、強いですなぁ、皆さん…」
え…は?
今こいつが喋ったのか?
生きてる?ってかこんな喋り方すんの?
なんか嫌なんだけど。
「誰だ!」
ザルデが声をあげた方向を見る。良かった、人狼が言ったんじゃないのか。
「すいませんっ、決して敵意があった訳では無いですがねぇ」
そう言って、木陰から現れたのは…
「あっし、ワシオカと申します…。今年で65歳の魔法使いでございあす。」
定年のジジイだった。
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「へぇ〜、あんたらも冒険者やってんすか!」
「おう!っつっても俺とタカトは入りたてなんすけどね!おっちゃんはこんなとこで何してたんすか?」
「いやね、キノコ狩りに来てたら迷っちまって、気づいたらこーんなところまで来ちまってよぉ」
「ハハッ、ドジだなーおっちゃん!」
俺たちはあの後、暗くなって来たこともあり、人狼の食える部分を剥ぎ取って焼いて、飯を食っていた。
その間にワシオカの話を聞いているわけなのだが、これまた驚いたのが、この人、この歳で冒険者をやっていたのだ。
こういう世界のあるあるとして、ジジイキャラは確実に強い。
だが、ワシオカは見た感じ、本当に気の良いおっちゃんって感じだ。
絶対孫に甘いタイプだ。
「いやぁ、この歳になると方向感覚がなぁ…あんたら、カリメラ王国ってのはどっちか知ってるかい」
ワシオカは頭をポリポリと搔きながら、少し小っ恥ずかしそうに聞いてきた。
「あぁ、それならぁ、俺達も今ぁ、ちょうど向かっているとこだぁ」
「うぇ!ホントかい!」
「ああ、良ければ一緒に来るかい?」
「いいんかい?いやー恐縮だねぇ」
ワシオカがカッカッカと笑う。こうして、カリメラ王国へ向かうまでワシオカが仲間になった。
一応、警戒はしておくかな…。何もないで欲しいし、何も無さそうだが、タイミングがあまりにも良すぎる。
クティノスの刺客なんて可能性もある。
一応、注意をしておく程度だ。
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翌日、朝早く起きて、俺は昨日の焚き火の片付けをする。
「まだ若干ボヤボヤしてるな…顔でも洗うか…」
まだ眠気が残っており、少し目が開けずらい。
近くの川まで行き、顔を洗おうとする。
「ん?……なんだ?」
顔を洗っていると茂みの方から昨日のようにガサガサと音がし始めた。
寝起きのせいであまり思考が働かない。
「ガァアアア!!」
なにかが飛び出してきた。
熊、草熊だ。
魔術…いや、詠唱は間に合わない。
ヤバい、避ける暇も………食われる……!
「岩弾!!」
ガン!!という音がする。
目を開けると、そこには大岩に吹き飛ばされて痙攣を起こしている草熊がいた。
「大丈夫ですかい!」
「わ、ワシオカ…さん?」
ワシオカが駆け寄ってきた。
「怪我はねぇ見てぇですね、良かったぁ」
何が起きたんだ?……いま、岩って、しかも詠唱してなかったくね?
「おっと…今のこと、3人には内緒にしてくだせぇね?」
この人、何者だ……?
第二章 夢獣騎士編 完




