第14話 冒険者
昔熱弁された。
胸とお尻。どっちが好き?
この問いとはたけのこorきのこよりも、犬or猫よりも難しい全人類への問いだと俺は考える。
しかし、これは人によってはある程度の好みはあり、答えがしっかりとある人もいる。
だが、女性には更に魅力的な部分もあるのだ
脇or太ももだったら?思考は絶えない。
当時を俺は7歳くらいでピカピカの小学1年生だった。そんな子供にそんな知識を母の浮気相手Cは熱弁してきた。そもそも女性自体嫌いだったが(母のせい)その熱弁を聞いて大人が楽しむものだと知った時、多分その時に俺の三大欲求は二大欲求になった。
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「まじで最悪だ…」
最近、昔の夢ばかり見てしまう。寝覚めが悪い。寝覚め悪く起きてしまった時は大抵深夜だ。
もうトイレいやや…
俺は夜中にトイレに起きるストレスがこれほどまでなのかと思いながら布団から出た。
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寝覚めの悪い朝の気分を塗り替えるために、俺は外に走りに出ていた。体を動かすのは結構好きだった。いや、ただ母に働かさせられてるのを苦だと思わないために思い込んでただけかもしれないが…。
それでも体を動かすのは悪い気分を払拭してくれる。
「おはようございます!」
走っていると目の前から褐色肌をした子が走ってきて俺に挨拶をした。
「おはよう!」
陸上部の子か?ってかこの世界ってそもそも学校とかあるのか?
陸上部、褐色肌と聞いて歓声を上げるような紳士の方々に残念なお知らせをすると走ってきたのは"彼"だ。
「…?もしかして旅の方ですか?」
「へ?あ、ああ1週間くらい前からここにいさせてもらってるんだ。」
話しかけられると思っていなく少しキョドる。でもそうか…なんだかんだ1週間もいるのか…。
「少年の名前は?」
「僕ですか?僕はタルっていいます!」
タルくん。すごい身体をしている。少年とは思えないほど鍛えられたその筋肉は決して太いわけではなくベースは細いがその細身には筋肉が詰まっている感じだ。男として憧れる。
「タルくん偉いね、こんな朝から…」
「いえいえそんな!この村には俺くらい若い人はあんまりいないから…僕が強くならないと…」
偉い。敬語も上手いし…ってかザルデこの前敬語が上手いからいいとこの家とか言っていたがタルくんもそうなのか?
「タルくん敬語も上手いね…。ご両親が子育て熱心な人なのかな?」
「…そんなことは…このくらいはできないとですよ!」
…もしかしてザルデって結構適当か?俺は今更な疑問を考えから消すために少しだけ走るスピードを速めた。
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俺はなんだかんだ1時間ほど筋トレをし、みんなのいる宿に戻ってきた。
やはりというか筋トレ慣れしているタルくんは、俺にも筋トレの仕方を教えてくれいい感じに筋肉が悲鳴を上げている。
この異世界で身体を作るのは大事だな…。三日坊主にならない程度に頑張ろう。
と筋トレをしていこうとここの中で誓った。
「おかえり!どこいってたんだ?」
「ちょっと走りに…」
「え!なんだよ俺も言ったのによぉ」
「お前はうるせぇし、お前のペースについていける自信がない。」
タルくんも声はデカいがそれは元気であってただ単にうるさいバカとは違ういい子だ。―だからこそ、少し気になった。俺が親の話を降った時に、少しだけ間があった。
俺を初対面なのに質問しまくってくる不審者と思っただけなのなら別にいいが、パボラの話もある。少し心配だ。
「おぉ、帰ってきたかぁ」
「あ、おはようございますパボラさん」
「おうぅ、それじゃぁ、今日はギルドに行くぞぉ」
「えっ、この村にギルドってなかったですよね…村を離れても大丈夫なんですか?」
いつあのGGコンビが攻めてくるのかは分からない。俺も心配だが、1番そういうの気にして心配するリーダーはいいのか?
「離れると言っても移動を使えばギルドのある街まで1時間程度だぁ、1時間休憩を貰えればいいしぃ、3時間程度しか離れん…」
「でもギルドに行くってことはなんか仕事受けるんじゃないんですか?」
「いやぁ、今回ギルドに行くのはぁお前らのカードとぉスタイル達のカード返却とかだァ」
「へーぇ、そういうのいるんすね…」
思ったよりちゃんとしているんだな。なんかもっとシンプルでわかりやすい感じなのかと思っていたが…。あれ、でもこの前は普通に狼狩ってたよな…。
「でもこの前のウィルダネスウルフはそういう手続きなかったですよね…?」
「あぁ、あれはパーティのメンバーが死ぬ前に受けた任務だからなぁ…任務中に死亡した扱いだぁ」
「はぁ…なるほど…」
任務中に死んだならギリギリセーフでその任務は遂行した扱いになるのか…。死人が出てる時点でセーフもクソもないが…。
「とりあえずギルドに向かうから準備をしておけよぉ…」
「うっす!」
うっすは俺じゃないぞ。イロセだ。
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「リミッター解除ぉ獣人化ぁ…」
モコモコと炭酸のように大きくなっていくパボラを横目に俺はザルデと村長の挨拶を見守る。
「それでは3時間ほどで戻って参りますので。」
「はい…皆様もお気をつけて…」
ほんとこの村長お決まりのセリフしか言わないな…。
「ほらぁさっさと行くぞぉ」
「タカト、トイレはいいんか?」
「背負い投げすんぞてめぇ」
俺たちは冒険者ギルドに向かった。
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1時間ほどの空の旅を終えた俺たちは少し小さめな国に降り立っていた。
「そういえば、魔領域ではあんな小さな村にさえギルドはあったのに、なんであの村にはなかったんですか?」
「まぁ魔領域だからね、魔物の出現率も魔物の強さも段違いだから冒険者のクエストのレベルも高くなるのさ。だから結構どこにでもギルドが…とゆうか、あの村は多分ギルドを置くために作られた物だよ」
「あ、そうなんですか…。」
魔領域とその他の領域の違いか…まぁそういうのもあるよな…。
国の入り口前には検問があり獣族かどうか見定めているようだ。あれ…パボラは入れるのか?
まぁ見た目は完全に人族だし、バレる心配はないか…。ん?そういえばこの世界の獣族って人の姿しかしてないよな…。検問って何のためにあるの?
「はい、じゃぁ1人銀の延べ棒2本で合計8本ね」
検問って入場料のためだったのかよ…。しかし、国に入るのにお金がいるのか。確か銀の延べ棒って1本で1万くらいの価値だったよな
1人2万か…。遊園地とかそういう所に行ったことないから分からないけど多分高いんだろうな。うちはお金に関して、大丈夫なのだろうか
「ウキドイの予算って、あとどのくらいあるんですか?」
「んー?ざっと金の延べ棒6本分ってとこだね」
90万でアッシュ王国まで足りるのか?魔領域には結構魔物も多く自給自足もできたが、国を点々とするなら食費もかかるだろうしパボラの移動もそんなに何回も使える訳じゃないし…まぁそのためにギルドにきたんだが━━━━
考えにふけっていた俺は国の中に入りあることに気がつく。それはこの世界に来た時に少し頭の中にあったことで魔領域ではあまり出会わず忘れてしまっていたが、生きていく上で絶対に必要な物。
言葉は通じたが読み書きは分からない可能性の方が高いと思ってたんだが…。
文字が………読める……?
普通に日本語なんだが?てっきり言葉は通じるが文字は読めない系の展開だと思ってたが、日本語も通じるし、文字も読める。しかも魔法も使えた。
ちょっとこの世界のことが、ってか今あげた点全部俺の特徴だよな…?
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冒険者ギルドは国に入って10分ほど歩いたらすぐに見つかった。受付嬢はなんとも整った顔をしている耳の尖ったエルフのお姉さんだ。
「すみません…新しく入ったメンバーに手続きをお願いしたいんですがぁ」
「はい。新規メンバーの方のギルドカードですね、では新しく入ったメンバーの方は?」
「あ、俺です。」
「俺もっす!」
エルフのお姉さんの問いかけに答える。
「ではお名前の方を」
「俺はタカトです。こっちがイロセ…」
「ではタカト様は私に、イロセ様は今から呼ぶ受付嬢に説明を受けてください。」
「おっす!」
こいつ、誰にでもこういうテンションなのかよ…恥ずかしくないのか?
「ではタカト様、いくつかご質問させていただきます。出身地と種族、現在お住まいのご住所は?」
さて、なんて答えるべきだろうか?記憶喪失って言ったら許してくれるのかな?まぁとりあえず…
「実は記憶が無くて…出身地はわからないんですけど、種族は人族、住所は無くて宿で暮らしてる感じです。」
「なるほど、では出身地は不明。住所は未定で宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします」
エルフのお姉さんがピコピコと耳を動かしながら今言ったことをメモする。
「ではギルドカードを発行して参りますので、少々お待ちください。」
そう言ってお姉さんは椅子から立ち上がり裏の方へ行った。こんな簡単な質問だけなのか…。もっとテストとかそういうのがあるのかと思ったが、まぁそんなことしてたら1、2時間で帰れないしな。
「ってゆうかギルドカードとかあったんですね。知りませんでした。」
俺は近寄ってきたパボラに話しかける。
「あぁ、本来ならギルドのクエストを受けるには必要なんだがなぁ、この前ぇ、おまえらはギルドカードを取らずにクエストに参加したからぁ、あれはよくないことなんだよぉ、一般人を巻き込んだことになるからなぁ…」
あぁ、免許証みたいなものか。
「そっちは終わったかい?」
「ザルデかぁ、こっちはタカトもイロセもぉギルドカードの発行で終わりだぁ」
「こっちも2人のギルドカードを受付嬢の子に見せたら終わりさ」
「?…ザルデさんは何してたんですか?」
「亡くなっちまったみんなの諸々と新しく入るあんたらのパーティ介入とかのことで色々とね…」
よく分かんないけどザルデも色々とやっていたらしい。ちゃんとできてるかな…?少し心配に感じていたら、受付のお姉さんが帰ってきた。
「お待たせしました。こちらがタカト様のギルドカードです。パーティ入隊はあちらの受付嬢に、クエストを受けるのであれば、出入口のすぐ前にある掲示版から札を取り、あそこの受付嬢にお渡しください。それでは、お気をつけて。」
「はい、ありがとうございます…。」
受付嬢のお姉さんはニコッと微笑みながらそう行った。これで俺も冒険者なのか…。ギルドカードを手にした俺はようやくその実感を持ち始めた。