第10話 バナナはおやつに入りますか?
1週間経った。
俺はあの戦いが終わった後、気絶していた。
気がついた時には既に村に戻ってきており、パボラがおぶってくれていたらしい。
あのカラスぶりっ子は姿を消していた。俺がクジラを倒した後、ザルデ達が探しても既に逃げた後だったのかどこにもいなかったらしい。
そして…なぜか俺がクジラを倒したことになっている。俺的には衝撃砲が当たる!ってなった瞬間に気絶して起きた時にはベットの上だったから、全く知らないがパボラ達が言うには
「お前が倒したぁ」
ということらしい。ほんとに気絶しただけなんだけどな…
ウキドイのメンバーの肉片は、皆あの砂漠にて埋めてやったらしい。1週間程度…いや下手したらそれ以上に短い付き合いかもしれないがそれでも良い奴らだった事はわかっているし、俺はアイツらを好きだった。
だからせめて、俺も一緒に弔ってやりたかった。
奴らが狙いは"ザルデ"と言っていた事もあり、巻き込んでしまったとザルデは少し塞ぎ込んでしまった。
当然だと思う。自分のせいで今まで一緒に過ごした仲間が死んだのだと思っているのだから。
しかし、さすがの精神力と言うべきだろう。すぐに立ち上がり、クティノスを復讐リストに追加していた。
でも、発言する時にちょっとだけ!が付く数が減った気がする。少し心配だ。
後日談は終わり、ここからはこれからの話だがウキドイのメンバーが4人になってしまった今一応ウィルダネスウルフを狩らなくても生きていけるくらいの資金になったが身体も回復しウィルダネスウルフを狩りに出た。
今度は特に襲われることもなく、普通に狩りをして普通に毛皮を手に入れた。
〜魔領域 ゴルグ砂漠の冒険者ギルド〜
「それじゃあ、第1回!新生ウキドイの作戦会議を始めるよ!」
「まず大前提として、このパーティの目的は人獣戦争を終わらせること。」
「それは何となくわかってます。しかし戦争を終わらせるって……具体的にどういう方法で?シャンクスじゃあるまいし…」
「シャンクス?誰のことだい?」
「いや、なんでもないです、」
異世界、やっぱりまだ慣れないな…。ついアニメネタをやってしまう。
「具体的には名をあげることだなぁ冒険者としてでもなんでもいいから力をアピールしないとぉ戦力も集まらないぃ…」
なるほど。力があると名をあげ冒険者でも荒くれ者でもなんでもいいから人手を手に入れ力をつけていくと……なんともまぁ…よくいえばシンプルでわかりやすい、悪く言えば、頭の悪い方法だ。
「あったま悪ぃ方法っすね笑」
こいつ直球に言いやがった…。
「この方法を提案したのはザルデだしぃ使えるって思ってたのもザルデだけだぁ」
「はぁ?!当時は11歳の少女だったんだし!11歳の少女が思いついたにしてはいい案だろ!」
「11歳でもどうかと思いますけどね…」
しばらくヤイヤイと文句を言っていたザルデだがスイッチを入れかえ会議を再開する。
「ウィルダネスウルフの毛皮も売って資金もまぁまぁ手にしたが人手がかなり減っちまった。…から!これから向かうのは人領域のアッシュ王国だ!」
「アッシュ王国…って確かカリメラ王国と同じの三王国でしたよね?なぜアッシュ王国が出てくるんですか?」
「アッシュ王国ってのは一番冒険者が多いんだぁそこで仲間を増やそうってんだろぉ?」
「それもあるけどね…」
「それも?んじゃ他にもなんかあんすか?」
「ああ!もう1つの理由はアッシュ王国に直接カリメラ王国の援助を頼みたいのさ!」
「へー、そんなことできるんですね。」
まぁ元王女だしな…人脈的なあれでいけるのかもしれない…。パボラが出来るわけないみたいな顔してるけど…
「元王女っても今はただの冒険者っすよ?んなことできるんすか?」
イロセ、言葉はもっと包んでほしいがまともなことしか言ってない。
「まぁ冒険者でも支援を申し込むくらいはさせてくれるだろぉ。しかしザルデェお前ぇ王女の座には頼らないぃって言ってたろぉどうゆう風の吹き回しだぁ?」
「…私のせいで仲間がいっぱい死んだからね…使えるものはなんでも使う…そして、みんなの仇も打つ。」
「…そうかぁ……」
パボラは赤ん坊が頃から見てきた少女の成長を嬉しく思っているのか辛い思いをさせている自分に情けなくなったのか分からない苦々しい、しかし優しい顔をしていた。
〜宿部屋〜
会議は1時間ほど続いた。と言ってもあの戦いの反省会みたいなもんが半分くらいだった。
俺は足でまといだった。そもそも相手の体力切れで勝ったみたいなもんだし、手加減されていなければ絶対負けていた。あの嵐裂面もあまり効いてはいなかったし、パボラが言うには俺から衝撃砲が出たらしいがなぜそんなものを俺が放てたのかも分からない。魔力回復の異常速度ともうひとつ、攻撃の跳ね返し?ができるという新たな謎が加わった。
この村は魔領域の中心でアッシュ王国は魔領域からはいちばん近い。つまり、魔領域と面してる場所にあるということだ。それでも3ヶ月程はかかるらしい。ちなみにパボラの"移動"を使っても1ヶ月ちょっとしか短縮できないとの事だ。結構凄いとは思うがな…。
まぁ特に話す理由もないので俺は明日から3ヶ月も歩くと言われたので明日に備え小学生ぶりに9時に布団に入った。
〜獣領域 多大山地下の渓谷〜
「もどりました〜♡」
「?…ナガはどーした?」
「せんぱいはやられちゃって〜」
シワスは悲しい顔の”演技“をしながら身体に”1“と刻まれた男に報告を続けた。
ー翌日 魔領域の村ー
ぐっすり眠れたと言いたいが何度もトイレで起きてしまったのであまりいい睡眠はとれていない。俺まだ25歳なのに…
「それじゃあ、アッシュ王国に向けて出発!」
ザルデの大きな声に朝からすげぇなと感心しながら俺はあることに気づいた。
………遠足定番ネタのバナナのくだりやり損ねた…。
第一章 異世界転移編 完