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第4章 寝る時は横になって

作業が終わると、先輩奴隷の男が無言で顎をしゃくった。


「こっちだ。今夜から、お前の寝床な」


 ついていった先には、小さな木造の小屋。壁はところどころ隙間が開いていて、床は固く締まった土。室内には藁がいくつか、適当に束ねられて置いてあった。


「そこらの藁を敷いて、寝ろ。くれぐれも、うるさくすんなよ。明日も早ぇからな」


「……はい! ありがとうございます!!」


 心の底から出た言葉だった。


 寝床だ。横になって寝ていいスペースだ。


 周りに気を遣わなくていい。誰にも「まだ仕事があるだろ」って怒られない。物音にビクビクしながら仮眠室のソファに丸まる必要もない。


「……俺、ここに……寝ていいんですか?」


「は?」


「横になって寝ていいんですか……!? 足、伸ばしても!? 何も気にせず……!? えっ、こんな……こんなことあっていいんですか……!?」


 俺は藁の上に倒れ込んだ。背中がチクチクする。でもそれすらも愛おしい。


 仰向けになれる。大の字になれる。心の底から、叫びたくなった。


「寝られるッッ!! ちゃんと寝られるううううう!!」


「お、おい……な、何騒いでんだ……」


 近くにいた先輩奴隷が困惑して立ち上がった。あっ、まずい、またやっちゃった。


「す、すいません! つい……その……感動が止まらなくて……!」


「お前……どんな暮らししてきたんだよ?」


「俺……もともとは別の世界で、ブラック企業ってところに……」


「ブラック……なに?」


 先輩の眉がぴくりと動いた。


「あっ、いえ、つまり……深夜まで働いて、仮眠室も狭くて……座ったまま寝てたんです……。寝ても電話が鳴って起こされて……。それが、ここは……横になって寝られるなんて……もう……」


「……お前、なんか病気とかじゃないよな?」


 先輩が距離を取った。ちょっと引き気味だ。いや、完全に引いてる。


 でもいいんだ。俺は今、人生で一番贅沢な時間を味わってるから。


「うぅ……すいません……ありがとうございます……。俺、明日も頑張ります……!」


 藁に顔をうずめながら、声を殺して泣いた。


 ――俺、今日からちゃんと寝れる……!

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