普通の冒険者(ノーマルアドベンチャー)が、普通に冒険者登録し、普通に冒険したい話
「僕は普通の冒険者になりたいんです。」
ダンジョン都市にある冒険者ギルドの受付で、平凡な見た目をした、冒険者登録をする平均年齢くらいの少年は語った。
「昨今、冒険者を題材にした読み物は多々ありますが、僕が読みたいのは、普通の冒険者が、普通に冒険をして、普通に成長をしていく物語です。」
「へー。そうですか」
「もちろん、普通の冒険者はいっぱいいるのでしょう。だけど、たくさんの普通じゃない冒険者の話が溢れていて僕の目に入ってこないのです。」
「それはすごいですね。」
「だから、僕が普通の冒険者になることにしたんです。普通に」
「こちらに記入をお願いします。」
美人な受付嬢は、また個性的な新人がきたわね。と思っていた。
「みてください、僕の名前「トム」です。どこにでもいそうでしょ?」
「そうなんですね。」
「職業へ剣士にします。出身は村ですね。」
「すごいですね。」
そこへ、モヒカンで蛮族的な恰好をした冒険者が割り込んできた。
「ここはお前のようなお子様が来るところじゃないぜ、家に帰ってママのおっぱいでも飲んでな。」
「すごい!よくあるあれだ!」
「そうですね。」
「あーん?俺様に逆らうってか!?」
「うーむ。どうしよう、どっちが普通なのか、、」
「なんですか?」
「一目置かれるのが普通か、一度やられて這い上がるのが普通か、どう思います?」
「私も、そう思います。」
「てめー!なめてんじゃねーぞ!」
「まぁまぁ、落ち着いて。」
そこに、いかにもよくある魔法使い的な恰好の、とんがり帽子をかぶって杖を持った魔法使いがやってきた。
「話は聞かせてもらったよ。少年。」
「これは親切にみせかけて裏で手を引いてる展開だな。」
「・・・(怒)」
「すごいですね。」
「ふ、普通というものは普通の事ではなく、人々の努力によってなされているんだよ」
「え?」
「例えば、彼は自分の個性に悩み。この冒険者ギルドでの立ち位置を確保するために。必死で粗野な言い回しを練習し、こうして新人冒険者に絡んでいるんだ。」
「実は親切ってパターンじゃなかったのですね!?」
「ふん。わかればいいんだよ。わかれば。」
モヒカンは照れながら去っていった。
「そもそも、冒険者って職業が普通じゃないんだ」
「嘘だ!。物語がいっぱいあるし、ここにもたくさんいます。」
「そうですね。」
「普通の人は冒険者なんて特別な職業ではなく普通の職業に就くものだよ。」
「冒険者が、、特別?」
「すごいですね。」
「君、冒険者登録をした新人の2か月後の人数は?」
「半分です」
「一年後は?」
「一割以下ですね。」
「どうだい。ここにいるたくさんの冒険者は一割以下の特別な冒険者なんだ。」
「確かに!」
「ふふ、解ってくれたようだね。」
「はい、つまり普通には「能力」と「あり方」と「状況」があって、この場合は「あり方」が普通ではないと言うことですね!」
「・・・何を言っているんだい?」」
「だから、「状況」が普通でなくても、物語として普通なら、それは普通ということです。」
「そーなんですか。」
魔法使いは去っていった。
「普通はそろそろギルマスが来る頃ですね。」
「そうですね。」
そこに、受け付けの奥から胸の大きな美人の受付嬢が近づいてきた。
「あなたの考えは普通ではないわ。」
「え、先輩、この話に入るんですか!?」
「聞かせてください。」
「あなたは「普通じゃない」を基準に「普通」をみているの。」
「む」
「本来は「普通」があって始めて「普通じゃない」が存在するのよ。」
「なんと、」
「「普通」は土台なの「ゼロ」みたいなものね。「普通」に足したり引いたりして「普通じゃない」になっていくのよ。」
「へーそうなんですか。」
「そいつは見解の相違だな」
今度こそギルドマスターっぽい威厳をもったギルマスが出てきた。
「「普通」は「個」の集合から観測されて出てくるもんだ、「個」は蔑ろにしていいもんじゃねぇ。俺達一人一人の「特別」の中に「普通」があるんだ。」
「僕は、、特別、、だった?」
「そうだ。坊主、お前は特別な普通だ。」
「!」
「ギルドはお前を歓迎するぜ。未来の特別の誕生だ!」
「すごいですね。」
少年はギルドを見まわしていった。
「皆さん。僕はこれから普通の冒険者の普通の物語を普通に紡いでいくので是非、読んで、面白いと思ったら、下にある★★★★★で評価して、応援してください。」
冒険者ギルドは喝采に包まれた。
「おめでとー」
「ぱちぱち(拍手)」
「若いころを思い出すぜ」
「一時はどうなることかと思った、、」
「パチパチパチ(拍手)
胸の小さな美人受付嬢はファイルに「評価:普通」と書いて登録を受理した。