2-3
「…」
そうこうしているうちに、昼休みになってしまった。
喧嘩をしてしまってから約四時間。
休み時間が来る度に話しかけようとした。
だけど、どう話出せば良いのか、話し出したとしてどうすれば解決できるのかと考えると、ダメだった。
よくよく考えれば、知り合ってからこの方、僕から話しかけたことなど数える程度しか無かった。
そうしてようやく、僕なんかが二人とも話せているのは、二人が気をつかってくれて話しかけてくれているからだということに気がついた。
どうして今まで気が付かなかったのかが不思議なくらい、二人は自然に僕を会話の輪に入れてくれていたのだ。
ああ、なんて優しいんだろう。
やはり、神様のような人達だ…。
「笹原クーン」
「えっ、うん?」
「なんかおもしろそ…じゃなかった。忙しそうなところ悪いんだけど、そろそろ気づいてあげて?」
「え?」
そう言われて、肇くんを見ると、僕の左右に手のひらを差し出す。
それに誘導されるようにゆっくりと視線を移すと、左右にはうずくまった赤野木さんと渡會くんがいた。
「えっ、どうしたの二人とも!」
驚いて声を上げると、二人は顔を上げて弱ったような笑顔を浮かべる。
正直可愛い。
きっと今はこんなことを考えるべき時ではないのだろうけど、とても可愛い。
笑顔は今までにもたくさん見てきたが、そのどの笑顔とも違う。
いうなれば、レア中のレア。
なぜ僕は今カメラを持っていないのだろうと、心の底から後悔をしている。
「笹原クン、またトリップしてるよ」
後ろから肇くんがボソリと呟いた声に、現実に引き戻される。
しまった、悪い癖が出てしまった。
咳払いをして、二人の顔を見る。
「えっと…」
何から話すべきだろう。
そもそも、どうして今の状態になったんだっけ。
ああ、そうだ。
登校中に気まずくなって…そもそもどうして気まずくなったんだ?
「…」
考え始めると、言葉が出てこない。
その間も、二人は困ったようにこちらを見ている。
まるで捨てられた子犬のようで可愛い…。
いけない、またループしてしまうところだった。
話ができない、だけどなんとか元に戻りたい…。
(ああ、そうだ)
今は昼休み。
誘う口実はこれしかないだろう。
「二人とも、ご飯食べよう?」
笹原が真剣に悩んでいる頃。
「…なにやってんだよ」
「あんたこそ」
「…分かってるけど、でも」
「うん…」
「「話しかけようとしてくる笹原が可愛すぎる!!!」」
幼馴染は、わりと通常運転だった。
「でも、本当に呆れられちゃう前になんとかしないとね」
「ああ、そうだな」