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「喧嘩でもした?」
自分の席につくと、肇くんは開口一番にそう言った。
「どうして?」
「いや、雰囲気がさ…。というか、今もあの二人こっちに来ないし」
肇くんは苦笑いをして、二人のことをチラリと見る。
確かに、いつもなら鞄を置いたらすぐに僕の席に来るのに、今日は来ない。
見る人によれば不自然に見えるだろう。
「笹原クンとは今日で三日目だけど、三日で飽きるなんて関係じゃないだろ、キミら」
「…うーん」
どうだろう。
僕はいつになっても飽きない自信がある。
だけど、あの二人はどうだろう。
中学からの仲だから、高校で新しい人間関係が出来れば飽きられてしまう可能性はある。
もしかしたら、昨日に新しい友人ができた可能性だってある。
新しい友人の方が良いとなってしまえば、僕に止めることはできない。
できれば、仲良くしている姿を見ていたいとは思うけれど。
「そんで、なんでそうなったの?」
肇くんはどこか楽しそうな様子で聞いてくる。
きっと、漫画のネタになるとでも思っているのだろう。
特に隠すようなことでもないので、今朝起こったことを簡単に話す。
最初の方こそ、興味深そうに聞いていた肇くんだったが、話が進むにつれて顔つきが暗くなっていく。
話し終えた頃には、気まずそうに俯いてしまった。
「…そんなわけで、今この状況なんだ」
「…」
「肇くん?」
声をかけると、深い溜め息が返ってくる。
「つまりあれか、うーん、そうか…うん、ごめん!」
「えっ」
何か唸っていると思ったら、急に謝られてしまう。
きっと、肇くんの中で何かを掴んだのだろうけど、僕には何も分からなかった。
「肇くん…」
「はーい、席に着いてください」
何か分かったのであれば教えてほしい、と思ったのだが、教室に入ってきた声によって阻止される。
周りの様子を見ると、皆が席に着いており、机の上には教科書が出ていた。
肇くんを見ると、彼もしれっと教科書を出している。
どうやら、僕が気づかないうちにチャイムが鳴っていたようだ。
入学早々怒られるのは本意では無いので、大人しく前を向く。
できれば、今日の放課後までには解決したい気持ちがある。
もしかしたら、明日から皆忙しくなってしまう可能性が高いから―