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2-1

*2章はずっと笹原目線です

僕以外の人達は、とてもキラキラしている。

運動が得意な人、絵が上手な人、字が上手な人、喋るのが上手な人、歌が上手な人。


僕はそのどれにも当てはまらない、凡庸な人間。

やりたいことも、好きなことも見つからなかった。


ただ時間通りに毎日を過ごすだけ。

そんな人生だ。


「「笹原、おはよう」」


明るく、よく通る声が二つ。

聞こえた瞬間に、胸が高鳴るのが分かる。


「おはよう、二人とも」


どうにかして緩む表情を抑えながら、振り返って声をかけてくれた二人を見る。

ああ、今日も美しい。


「ね、今日のテストの範囲ってさ〜」


柔らかい笑顔で僕の右隣に来たのは、赤野木さん。

胸元まで伸びた赤茶色の髪が風にそよいで、とても綺麗だ。


出会った頃にこの色はどのように表現出来るのかと、調べたことがあったが、見た感じでは“蘇芳”という色が一番近いと感じた。


なんだか色の名前もかっこよくて、凛とした雰囲気の赤野木さんによく似合っている。


「…」


静かに僕の左隣に来たのは、渡會くん。

背が高く、ガッシリとしていて、とてもかっこいい。


野球をしているからか、肌はよく焼けている。

昔はつけていなかったようだけれど、最近は赤野木さんに怒られて日焼け止めをキチンと塗っているんだとか。


美形二人に挟まれる、平凡な僕。

なぜか出会った頃から気がついたらこの立ち位置になってしまうことがほとんどだ。

僕は後ろから美しい二人を眺めていたいのになあ。


「そういえば笹原」

「ん?」


そんなことを考えていると、不意に渡會くんに話しかけられる。

平常心を保ちつつ、返事をすると、心配そうな表情でこちらを見ている。


ああ、そんな表情も素敵です…!

写真におさめたい気持ちを何とか抑えながら、記憶に刻み込むために脳のシャッターをきる。


「…お前、昨日後ろのやつにやたらと絡まれてたろ。大丈夫か?」


後ろのやつ、というのはきっと、僕が醜態を晒してしまった彼のことだろう。


だけど、そんな醜態を見てもなお友達になってくれるというのだから、彼も本当に素晴らしい人だ。


「肇くんのことだよね。大丈夫だよ。とても良い人なんだ」


僕がそう言うと、二人はピタリと動きを止める。

不思議に思い、振り返ってみると、なんだか少しだけ震えているようだった。


「どうしたの?」


聞いてみても、反応が無い。

何か気に触ることでもしてしまったのだろうか。


「…なんで」

「え?」


近づいてみると、渡會くんはボソリと何か呟いた。

普段の彼からは考えられないほど小さな声だったので、聞き取ることができなかった。


「笹原!」

「え、なに?」


渡會くんに集中していると、赤野木さんが突然声をあげる。


「私のこと呼んで」

「えっ?」

「良いから!」

「あ、赤野木さん…?」


よく分からない要求に困惑したが、勢いにおされてとりあえず呼んでみる。


普段は二人のことを呼ぶのが烏滸がましくて、できるだけ呼ばないようにしているから、いざ呼ぶとなると少し恥ずかしい気持ちになる。


「なんで!」

「ええっ?」


なんだか怒っているようだが、今のどこに怒る要素があったのかがまるで分からない。


「なにあれ…」

「喧嘩…?」


周りがざわつき始め、ハッとする。

ここは道のど真ん中。

そんなところで関係性の良く分からない男女三人組が騒いでいるだなんて、めちゃくちゃ目立つ。


モブになりたい身として、そんな目立つようなイベントは避けたい。

もちろん、傍観者側であればいつでもウェルカムなのだけど、今は騒ぎのど真ん中。

少し…いや、かなりよろしくない状況だ。


「ふ、二人とも。そろそろ動かないと、学校に遅れるよ?歩こう?」


少し強引に二人に動くよう提案すると、渋々といったように足を進めてくれる。


しかし、学校までの間、一言も発することは無かった。

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