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顔バレしたVTuberはお別れした双子の妹で……  作者: ほづみエイサク
第4章 推しに言われて■■■することになりました
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第34話 ハジメのセンスは壊滅的

 モニターを前に、ハジメは困惑顔を浮べている。


 モニターにはメタマちゃんが映し出されているけど、隣にもう一人いる。

 イラストで描かれた男性だ。


 ハジメは彼を指さしながら、呆れたように言う。



「なあ、これはイケメンすぎないか?」

『これぐらいは普通だよ』



 イラストの男性は、女性向け恋愛ゲームに出て来そうな見た目をしている。

 甘い声で「俺の女になれよ」と囁く姿がありありと浮かぶような、俺様系イケメンだ。 


 なぜ、そんなイラストを表示しているのか。


 ハジメの次の言葉が答えだ。



「これ、オレのVTuberとしてのアバターなんだよな?」



 イラストレーラーに依頼していたキャラクターデザインの初稿だ。

 ハジメはイラストレーターに詳しくないため、レイに一存していたのだけど、予想外のものが出てきていた。


 ハジメの困惑した声を聞いて、リツが突然「ぶほっ!」と噴き出す。



「これが先輩? いひひひひひっ」



 余程笑いのツボに入ったのか、聞いたことのないような奇妙な引き笑いをしている。



(そんなに笑うなよ……)



 ハジメは最初、不服そうにしていた。

 でも、リツが楽しそうに笑っているからいいか、とすぐに思い直して、モニターに向き直る。



「もっと普通なオッサンでいいじゃないか。実際、そういうVTuberはいるし。穀物みたいなVTuberだっているんだから」

『それじゃあ、新規客を得るのが大変だよ? 見た目は釣り餌ぐらいに割り切ろうよ』



 ハジメは腕をクロスしてバツマークを作って、口を「いー」と



「いーや。イヤだ。絶対にイヤだ」

『ありゃ。今日は頑なだね』

「こんなのオレじゃない。もっとブサイクじゃないとイヤだ!」

『言ってて悲しくならないの……?』



 レイの呆れ顔を見ても、ハジメの考えは変わらない。



「声だって合っていないだろ。オレの声、イケボでもないし」

『わかんないじゃん。素の声からイケボな人って少ないし。試しにイケボだしてみてよ』

「うわ。想像しただけでも寒気がする」

『まあまあ。何事を試してみないとわからないでしょ』


(まあ、一回やってみれば気が済むだろ)



 ハジメは「んんっ」と咳払いをして、声を整えた。

 それからできる限り顔を引き締めて、少しでもイケメンに成り切ろうとする。


 そして、生温かい吐息を漏らしながら、イケボを出そうとする。



「オレノ オンナニ ナレヨ」



 イケメンを意識しすぎるあまり、片言になっていた。


 それを聞いたリツは一瞬固まった後

 


「ブホッ!」と、また噴き出した。



 苦しそうにお腹を抱えているのに、まだまだ笑いが治まらない様子だ。


 その姿を見てしまって、ハジメは拗ねてしまった。



「絶対にイヤだ! もうイヤだ! 2度とやんない!」

『ちょっとリツちゃん、じめにいが完全にヘソ曲げちゃったじゃん!』

「だ、だって、面白すぎるから……!」



 リツはの笑い声は止まっていない。



「絶対にイヤだからな!」

『しょうがないな。この案は無しだね。じめにいに似合うと思ったんだけど』

身内贔屓(みうちびいき)に見すぎだろ」

『んー。そうかなー?』



 レイはとぼけたように言った。



「大体、オレの今のリスナーはほとんど男だしな。イケメンはウケが悪いだろ」

『あー。確かにそうかもね。初期からのリスナーは本当に大事だ』

「そうそう。リスナーが喜んでくれるのが一番だ」



 ハジメの何気ない言葉を聞いて、レイは意外そうに「ほう」と息を吐いた。



『やっぱり、じめにいは配信者に向いてるよ』

「どういう意味だよ」

『リスナーを大切にしてるところだよ』

「そんなに大事にしてるかなぁ」

『メタマちゃんであるアタシが言うんだから、間違いないよ』



 ハジメは納得がいかなそうな表情を浮べているけど、レイの顔は自信満々だ。



『じゃあ、イラストレーターさんに頼んでみるよ。もっとブサイクにして、って』

「よろしく頼む」



 そして、レイはイラストレーターに変更要望を伝えたのだけど、困惑されたのは言うまでもないだろう。


 尚、リツはしばらく、腹筋の筋肉痛に悩まされることになった。



(ざまあみろ)





◇◆◇◆





『じめにい。アバターの動きも完成したよ』

「まじか!」



 キャラデザは修正されていて、冴えないオッサンに変わっている。

 実際に動かしてみても、動作がモッサリとしていて、全く輝きがない。



「そうそう。こういうのでいいんだよ!」

『こだわりの方向が間違っている気がするけど……』



 ハジメはとことん、オッサンっぽさを求めてしまったのだ。

 イケメンな要素は微塵も残っていない。



『もうじめにいがいいながら、それでいいや』



 レイはさっさと匙を投げて、スマホの画面の中で肩をすくめた。


 そのスマホを持っている女性は、かなり不機嫌な様子だ。



「というか、先輩。最近ずっとウチにいますよね」



 リツが口を尖らせて言うと、ハジメは横を向いて返す。



「まあ、配信していると自然にな」

「多分、自分の部屋よりも、ボクの部屋にいる時間の方が長いですよね」

「そうだな」

「じゃあ、いっそのこと、この部屋で一緒に住みますか?」

「はあ!?」



 あまりに突然すぎる提案に、ハジメは目を剥いた。


 すると、ロボットを使って折り紙を折っていたレイが、嬉々として声を上げる。



『お、いいじゃんいいじゃん。久しぶりにじめにいと一緒に住めるし』

「レイはそれでいいのか?」

『アタシが決めることじゃないでしょ。当事者が決めることじゃん』



 レイに突き放されると、ハジメは情けない顔になった。

 まさに優柔不断だ。



「オレが決めないとダメ?」

『ダメに決まってるでしょ』

「ダメに決まってますね」



 ハジメは思わず「はああぁぁぁ」と大きくため息をついた。


 それでもまだ縋ろうとする。

 


「すぐに答えださないとダメか?」

「先延ばしにしないならいいですよ」

『じめにいは絶対先延ばしにするじゃん』

「うぐっ……」



 バッサリと切られてしまって、ハジメはぐうの()もでなかった。

 そして、ハジメは考え始めた。


 リツと同居して、どういうメリットがあるのか、デメリットがあるのか。


 メリットは配信をする環境が整っていること。

 そして、レイと一緒に住めること。


 デメリットは非常に大きいものだけど、対処法はハッキリしている。



(魅力的だし……。まあ、なんとかなるかなぁ)



 案外早く、ハジメの意思は固まった。



「じゃあ、一緒に住もう。そっちの方が楽だし」

「お、素晴らしい決断ですよ、先輩」



 リツに握手を求められたけど、ハジメはジェスチャーでストップをかけた。



「だけど、一つだけ約束してほしい」

「お、いい御身分ですね。住まわせてもらう立場なのに。でもボクは寛大なので、聞いてあげましょう」


 

 リツは偉そうに仁王立ちしながら言った。

 その姿を見て、ハジメの眉がピクリと動く。



(なんか最近、村木のキャラが変わってない?)



 でも結局「今の方が接しやすいからいいか」とスルーすることにした。


 そして改めて、同居の条件を告げる。



「村木は料理を作らないでほしい。最悪オレが作るから」



 それを聞いて、リツの顔が真っ赤になった。



「なんでですか! こんなにかわいいボクの手料理が食えないって言うんですかっ!」

「もう嫌なんだ。塩辛くて、油まみれのオムライスは食べたくないんだ。どんだけバターと塩コショウを入れたんだよ!」

「せっかくケチャップでハートを描いたんですよ!?」

「それで味がよくなるわけないだろ!」

「ボクはおいしかったですよ!?」

「タバコで舌がやられてるんだろっ!」



 ハジメとリツの言い争いはヒートアップしていき、喧嘩へと発展していく。


 その横で、レイはひっそりとほくそ笑んでいた。



『いやー。二人とも素が出てきてるねー。仲良くなってきてるねー』



 折り紙でカエルを作り終わると、ピョンピョンと跳ばせて遊ばせている。

 そして、何気なく口にする。



『アタシが成仏できる日もそう遠くないなー』



 その声は、バカップルみたいに喧嘩する二人には届いていなかった。


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