第22話 昔々あるところに
昔々あるところに、双子の兄妹が暮らしていました。
ですが、双子と言っても二卵性双生児なので、見た目も性格も全く似ていませんでした。
妹は眉目秀麗・才色兼備。非の打ちどころがありません。
それに対して、兄には、これといった取り柄がありませんでした。
そこで周囲からつけられたあだ名が『母親のお腹の中から美女と野獣』という、あまりにも酷いものでした。
そんな状況なら普通、妹に劣等感を抱いていてしまうでしょう。
しかし、兄にも取柄と呼ぶべきか判断に困る、とんでもない才能が有ったのです。
それは――
妹に対する、異常なまでの愛情です。
常に妹のことを観察し、見守り、愛していました。
そんな彼だったからこそ、妹と比較されて、自分が罵られようとも、妹を褒められていると捉えてしまっていたのです。
「レイ、好きだよ。双子として」
それが兄の口癖でした。
「じめにい。きもい」
口ではそう言っていましたが、妹もまた、そんな兄が大好きでした。
二人は何をするにでも、ずっと一緒にいました。
友達と遊ぶ時も、遠出するときも、いつも
ですが、そんな優しい時間が長く続くはずもなく、大きな転機が訪れました。
中学生入学。
本格的な思春期の到来です。
そして思春期と言えば――
そう、反抗期です。
妹は兄や両親を毛嫌いするようになってしまいました。
特に母親との関係は酷くて、、顔を合わせれば母親と口喧嘩をしていた程です。
夜に遊び歩くことが多くなり、
兄はと言えば、中二病を患っていました。
ですが、苦手なブラックコーヒーを飲んだり、ノートにポエムを書き溜めたり、ドクロマークをこよなく愛すような一般的な中二病とは、少し違いました。
眼帯や手袋をつけて「くっ、右目がうずく」と呻いたり、時空のはざまを探すような、とても痛い人になっていました。
いわゆる邪気眼系中二病というものです。
兄の部屋は徐々に物騒でオカルトなものが増えていき、何故か風呂に入らなくなりました。
妹にとっては非常に不潔で、近寄りたくない存在でした。
兄は邪気眼系中二病。
妹は重度の反抗期。
そんな二人が、分かり合えるはずがありません。
喧嘩はしませんでしたが、口を利くことはなくなりました。
その結果、兄妹には大きな溝が出来てしまいました。
こうして、中学生という倦怠期が生まれてしまいましたが、好転する出来事が高校で待ち受けていました。
◇◆◇◆
「すみません」
リツが手を挙げると、レイが口と手を止めた。
「なんなんですか、その紙芝居は」とレイの手元を指さす。
『レイちゃんお手製の、レイちゃんの半生を大反省会物語』
レイはロボットの指を巧みに操り、紙芝居を披露していたのだ。
絵はキレイに書かれているのだけど、何故か少女漫画みたいな淡い画風である。
「せっかくパソコンの中なら自由にできるのに、手書きで描く必要ありましたか?」
『わかってないなぁ。紙芝居は手書きが一番なんだよ。それに、ロボットの体を動かす練習も兼ねてたから』
「それにしても、なんで時代に逆行を……。先輩もそうお思いませんか?」
様子を伺うように横を向いたリツは、予想外の光景にギョッとした。
「お兄ちゃんは嬉しいよ……。こんなに想ってくれていたなんて……!」
「いや、ところどころ貶されてましたよ?」
ハジメは妹の紙芝居を見ることが出来たのが嬉しくて、ボロボロ泣いていたのだ。
その理由は、本人にしかわからないだろう。
「奇妙にジメジメしてるじめにいは放っておいて、さっきの続きから行くよ」
「まだやるんですか、この茶番」
リツが呆れたようにため息をついても、レイは紙芝居をめくりだすのだった。




