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顔バレしたVTuberはお別れした双子の妹で……  作者: ほづみエイサク
第2章 推しか妹か、それとも■■■■か
17/45

第16話 妹とのデートは難しい

 レイ(メタマちゃん)とのデート当日。


 ハジメは不審者のようにウロウロしていた。

 すでに集合時間は過ぎているはずなのに、待ち人の姿は無い。



(なにか事件にあったんじゃ!?)



 不安に駆られてスマホを取り出すと、レイからのメッセージが届いた。



《色々あって遅れるー。あと30分ぐらい。メタマの配信でも見て待ってて》


(いや、もう時間過ぎてるんだけど……)



 心の中で文句を言いながらも、端的なメッセージを返す。



《了解》



 下手にグチグチ文句を言っても、無駄なことだと知っているのだ。

 それどころか、機嫌を損ねすぎて、デート自体が無くなる可能性もある。


 そんな妹だと分かっていても、思わずため息があふれ出てしまう。



(気分転換がてらに、コーヒーでも飲むか)



 まず目についたのは、コーヒーショップだった。



(注文方法わかんないし、オシャレ過ぎて気後れするから、違うところにしよう)



 幸いなことに、集合場所は駅前だった。

 飲食店探しに困ることは無い。


 馴染みのあるファミレスを見つけて、入ることにした。


 カランコローン、と。


 ベルが鳴ると、店員が反応した。

 だけど、ハジメの姿を見た瞬間「ゴホッ」と、突然噴き出した。



「い、い、いらっしゃいませー。好きなお席でどうぞ」



 店員の挙動が不審だったけど、ハジメは気にする余裕が無くて、適当な席で腰を下ろした。



(1時間も前に来たんだけどなぁ)



 なんだか、自分がないがしろにされている気分になって、沈み込んでしまう。



(いや、双子の妹とのデートで、ここまで気合入れているのがおかしいのか)



 それでも、ハジメは後悔していない。

 なんだかんだで、デートの準備をするのは新鮮で、楽しんでいたからだ。


 特に、デート用の服を選ぶのには、かなり気合を入れていた。



(Tシャツは自信があるんだよな。レイも絶賛してくれるはずだ)



 服装には(うれ)いはないのだけど、他の部分は気になり出してしまう。



(あれ、髪型は大丈夫かな。寝ぐせはないよな……?)



 スマホのミラーアプリで髪型を何度も確認する。



(そういえば、この髪型はなんて言うんだ?)



 ハジメにはファッション知識は皆無だった。


 ハジメが知っているのは、1000円カットで使う『全体を整えるような感じで』とか『短くしてください』というオーダーだけだ。


 細かい指定なんてしたことがない。



(気にしても無駄な気もするんだけど、気にしないと落ち着かない)


 

 自分の身だしなみをチャックして、コーヒーをチビチビ飲む。


 そうこうしている内に、時間は過ぎて行った。



(そろそろかな)



 ファミレスを出て、集合場所に戻る。



 すると、すぐに不審者みたいな女性が反応した。

 帽子とマスクで顔を隠していて、身に着けている服は黒一色だ。

 服はダボっとしていて、体のラインはわかりにくい。


 それでも、ギリギリ女性っぽい体格だと判別できる。



 そんな人が、近づいてきている。



(レイか……?)



 疑心暗鬼で身構えていると、突然、陽気に手を挙げた。



『よっ、じめにい』



 声を聞いた瞬間、ハジメは破顔(はがん)一笑(いっしょう)した。



「よっ、レイ。顔を隠しているからわからなかったよ」

『当たり前でしょ。顔バレしちゃったんだから。大事にはならないだろうけど、面倒事は避けるべきだしね』

「あと、黒ずくめなんだ……」とハジメががっかりしながら指摘すると

『じめにいのために、そんなオシャレするわけないでしょ』とレイは言い切った。


(やっぱり、デートって、形だけだよなぁ)



 肩を落としていると、レイが少し震えた声で――



『それで、じめにい』と切り出した。

「なんだ?」



 レイはハジメの胸元に向かって、指を差す。

 指先がプルプルと震えていて、動揺していることがわかる。



『その服装は、一体なんなの……?』

「なにって、メタマちゃんTシャツだけど」

『そんな顔がデカデカとプリントされたTシャツ、出した記憶が無いんだけど』



 ハジメが着ていたのは、痛Tシャツだった。

 VTuber『一星雨魂』の顔がデカデカと印刷されている。


 下はなぜか8分丈のズボンで、ボーボーと生えたすね毛が見えてしまっている。


 その姿を見て、誰もデートをする格好だとは思わないだろう。



「無かったから特注したんだぞ。この日のために。絵師に許可も取ったし、問題ないだろ」



 ハジメが胸を張ると、プリントされたメタマちゃんの顔が歪んだ。


 頭を抱えたレイは、幽霊に声を掛けるような、震えた声を出す。



『一応訊くけど、なんでその服をチョイスしたの?』

「ファッションに自信が無かったから、メタマちゃんの力を借りることにしたんだ」

『どういうこと……?』

「メタマちゃんは最高にかわいいんだから、その顔がプリントされたTシャツは最高のファッションになるだろ」



 おかしなことを口走っているのだけど、ハジメの顔は真剣そのものだった。


 それを見て、レイの姿勢はさらに沈んでいった。

 顔は見えなくても、態度だけでウンザリ具合が伝わってくる。



『まずは服を買いに行こうか。後、ガスバーナーも必要かな』

「え、せっかく作ったのに……」

『じめにい。その服を捨てるか、アタシと絶縁するか、選んで』



 レイの低い声を聞いた瞬間、ハジメの背筋がピンと伸びた。

 本気で怒っている時のトーンだ、と瞬時に察したのだ。



(捨てなかったら、本当に絶縁される……!)



 こうなってしまえば、ハジメに逆らう術はない。



「……はい。すみませんでした」

『じゃあ、行くよ。アタシが服を選んであげる』



 痛々しいオタクファッションのおっさんは、不審者のような女性に手を引かれて、ショッピングモールに消えるのだった。


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