無職記念の夜遊びと身バレ??
「三年間ありがとうございました。これは皆さんで食べてください。」
俺は有給休暇最終日に、アルバイト先へ菓子折りと飲み物を合わせて五千円分くらい買ってからやって来た。
「いやー、世鳴くんがこの店で働いて三年も経った事にビックリだよ。こちらこそ三年間ありがとうございました。これからどんな仕事をするかは分からないけどこの店で働いた事がどこかで役立つと嬉しいな。」
「店長、ありがとうございます。次はお客さんとして食べに来ますね(笑)」
そんなやり取りをして俺は三年間働いたファミレスを後にした。
うーん、これで晴れて無職になったけど明日には収益化配信もあるし短い無職生活するか!
「と言う訳で無職になった記念で来てみた(笑)」
「いや、どういうわけ?!急に『今日これから出勤?』ってメッセージ来てビックリしたんだけど??」
ハッハッハ!サプラーイズ!
今夜の俺は以前の旅行で来た夜の店にいる訳だが、何も考えないでやって来たわけではない。これから数ヵ月は殆どプライベートは無いに等しく、連絡を惜しむ程時間に追われる事が決まっているのでその前の英気を養うのと、久し振りに桜の顔を見たかったからだ。
「桜の顔を見たかったから来た。後悔はない!」
桜に会えた喜びとアルコールの摂取で口が普段より軽くなる。まぁまだ酔ったってよりも雰囲気に酔ってる所もあるけど。割とお酒強い方だし。
「私も世鳴に会いたいとは思ってたけどまさかこうして会うことになるとは思ってなかったから驚きが勝つよ。」
だろうなぁ。もしかしたら会えるかも?ってタイミングはあるんだけど、確実ではないし今日来るしか無かった訳だ。
「世鳴くんは沙羅さんには甘いよねー?」
今日は最初から沙羅指名で飲んでいて、ヘルプには翼がついている。
「そうか?翼にも割と甘いと思うんだけど?」
実際おっぱいの大きい翼には甘いと思うよ?いてっ
「そう言う話は私がいない所でしてね?」
お酒のせいもあり、顔を赤くした桜は俺の脇腹を軽くつねってジト目で見てきた。
三人で会話をしつつ新しく入れた『鳥飼』を飲みながら過ごせばあっという間に時間は経って凪が席に来て、桜は他の席へ着くことになった。
「さて、今日は沙羅の誕生日って事で運良く来れた訳だけどお祝いシャンパンってどれが良いと思う?」
桜が席から離れて少し三人で話している時に俺はそう話を切り出した。
「うーん、沙羅さんなら来てくれた事が嬉しいと思っていると思うけど、誕生日でのお祝いならやっぱりドンペリ紅白で貰うのがやっぱり嬉しいんじゃないかな?」
「沙羅さん確かに世鳴さんが来るって知って嬉しそうでしたもんね!世鳴さんがお祝いしてくれるならどんなシャンパンでも嬉しく思いますよ!」
翼と凪はちょっとした裏事情を話してくれて紅白ドンペリ祝いをするかと決めた。
紅白って言うのは、白とロゼのシャンパンを同時に頼むことだ。因みに他のシャンパンでも紅白はあるが定番はこれだ。(今はアルマンドとかエンジェルっていうシャンパンも人気。奥が深いなあ)
「じゃあそれにしようか。沙羅の驚いた顔をこっそり見るよ。」
「「賛成ー!」」
俺の意見に賛成してくれた二人を見ながら黒服の拓さんに沙羅には内緒と念押ししてドンペリを紅白で注文した。そしたら桜の好きなフルーツ盛りをその時出してくれる事になった。ありがたい。
「えっ?!世鳴ありがとう!凄く嬉しい。」
驚いた顔と微笑みを見ることが出来たから今日はもう満足だ。
22時の店内は数組のお客さんがいるから賑やかだ。
俺と桜は少しの間二人きりで話をしているとこう切り出された。
「本当は今日出勤する予定じゃなかったんだよ。世鳴に会いに行こうと思ってたのに連絡くれるから出勤しちゃったんだよね。」
可愛い。怒られないか不安そうにしながらこちらを見つめられると心に刺さる。
「そうだったの?でもいつ祝えるか分からなかったし桜に会いに来れてよかったよ。それに会いに来ようとしてくれてありがとう。その気持ちがとても嬉しいよ。」
俺は素直な気持ちを桜の目を見つめ伝えた。見つめると桜は恥ずかしがってこっち見すぎと言ってくるがやっぱり可愛い。
「でもどうする?今日は早く帰る?俺は明日の昼には新幹線で帰るから深酒も出来ないし。」
そう提案すれば桜は小さく頷いてお願いを言ってきた。
「うん。ねぇ、この後時間ある?二人でご飯にしない??」
「いいけどこの辺の店詳しくないから教えてくれると嬉しいな。」
「ふっふっふ~。任せてよ。」
そんな会話をしながら会計を済ませて俺は先に店を出て近くのコンビニでお茶を飲みながら待つこと十分弱。
着替えた桜はドレス姿とは違いジーンズにオーバーサイズシャツの服装でまた違った魅力がある。
「ごめん、お待たせ。」
「全然待ってないよ。どれがいい?さっき買ったやつ。」
俺は常温の水とお茶、冷たい水とお茶を袋から見せて選んで貰う。
桜が常温の水を選んでありがとうねと言い飲むのを見ながら冷えたお茶を飲む。
何処に行くのかと思っていたらなんと桜の家にお呼ばれらしい。これはそう言うことか?そう言うことなんか?!(荒ぶる魂を鎮めて)
桜の家は歩いて十数分の場所にあるマンションだった。
部屋に入ると整理整頓されていて、キッチンは様々な調味料が見える。料理とかお菓子作るの好きなのかな?
本棚や壁にあるラックには本や漫画、アニメ等のグッズが並んでいて好きなものがわかる。そんな中に見知ったものが混じっていた。
それもそのはずで、吸惑 月夜のグッズが並んでいた。え?!気づかれてる??ドキドキと高鳴るこの鼓動は身バレの危機と好意を抱いている女性の部屋に上がったことによる緊張なのか?!どっちか?!いや、どっちもか?!あー!もう!なるようになれ!
俺が部屋を見て固まっているのに気がついた桜はオタク趣味で引かれたのかと思い恐る恐る声を描けてくれたが、オタク趣味で引いてはいないし、俺の好きな漫画とかアニメのグッズもあるし、Vtuberも知ってるんだと言うような返事をしたら、桜から高速詠唱が返ってきた。
「この漫画はね━━━、このアニメのこのキャラは━━━、
これは━━━、それでこれが最近デビューした個人で活動しているVtuberで、Vtuberって言うのはアニメキャラクターみたいな見た目で素顔を出さない配信をする人なんだけど、ゲーム実況配信とか雑談配信したり、視聴者参加型の配信をしたり、歌ったり踊ったりとにかく出きること殆ど出来るんだけど、この人は吸惑 月夜君って言うんだけど、絵がうまくて歌も上手で、中でも一番声が好きなの!」
「あ、、ごめん引くよね、本当ごめんね。最近のイチオシでハマっててさ。」
俺が出したアクリルキーホルダー全三種、ポストカード、日めくりカレンダーを横目に言われた。
これはどう返すべきか?ファン仲間ってことにしておこう!
「いや、俺も好きなVtuberだからビックリしただけだよ。それに置いてある漫画とかは配信中に好きなやつって言ってたやつじゃん。リアルで同じVtuberを好きな人と会う事って無いから嬉しいよ。」
「本当?確かにリアルで話せる人っていないから私も嬉しいよ。あ、ご飯だったよね。夜も遅いし軽い物だけどいい?」
「ありがとう、楽しみにしてるね。」
「うん、すぐ用意するね!」
桜が用意をする間俺はソワソワとした気持ちで待つ。しばらくして出来たものをテーブルに運んできてくれる。
「お待たせ、じゃあ食べよっか」
「凄い美味しそうだ。いただきます。」
目の前に広がる料理は確かに軽いものだ。野菜サラダにカルパッチョ、クラッカーとチーズ。え?お洒落すぎない??料理できる女性って何か凄いなと思った瞬間だった。
楽しく会話をして吸惑 月夜の話が多かったが、俺自身の事なので話も弾んで、ワインも開けた。気がつけば夜中になっていた。
「ねえ、世鳴。世鳴って月夜の声に似てるよね。」
「そう?自分ではあんまり似てるとは思わないけど好きなVtuberに声が似てるって言われると嬉しいよ。」
やっぱりこれってばれてる??酔っているとは言えここで俺が吸惑 月夜だっていうのか?いや、まだ足掻く!
「そろそろ夜も遅いしおいとましようかな。」
「だめ、今日は泊まって?」
俺が部屋を去ろうとするのを阻止され、上目遣いの桜に負けた。
好意を持ってる女性の部屋に一泊は心が持たんのよ?!そして身バレの危機よ!?
ここは腹くくるしかねえ!
シャワーを浴びた俺達は朝チュンした。そして無事に身バレした。
だろうね!
桜は初期から月夜のファンリスナー。初めて会った時に声がそっくりかつ目が希望に溢れていたのを見て世鳴を良いなと思う。
桜自身は世鳴に対して夜の仕事をしていることに引け目を感じるも、今までの生き方を変えるにはしがらみも多くて。
それでも誕生日に店を休んでまで世鳴に会いに行こうとしたら世鳴が店に来ることになり急遽出勤。
割と独占欲も強く世鳴が他の女としゃべっているのを見ると嫉妬するが、世鳴も実は嫉妬してたり?




