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第40話 協力の代償


 ネココや静子ちゃんと一緒に、恋のキューピットとして錬と美鈴ちゃんの恋愛に協力してから、数日がたった。


 俺たちの協力は予想以上にうまくいったようで、原宿デートをした翌日には、初々しく照れる二人が俺の元を訪れ、付き合うことになったと報告してきた。


 てっきり、願いが叶ったらそのまま成仏するのかと思っていたんだが、どうやら他の幽霊カップルと同じように、まだしばらくこの世で恋人生活を楽しむらしい。


 今まで未成年の不良を相手にとはいえ、盗みを働いていた錬も、これを機に真面目に働くことにしたようだし、警察である美鈴ちゃんにとっても嬉しい変化だろう。


 今日も飽きずに原宿でデートしているようだし、二人が幸せそうで、俺も協力した甲斐があったなぁー……。


「ってなるかぁぁあああああああ!!!!!!」


「にゃ! 礼二くんが荒れてるニャ!」


 俺が自室で頭を抱えながら天井に向かって叫んでいると、今日も大荷物を持ってこの廃ビルを訪れていたネココが大げさに驚く。


 ネココは数日前から、いつもの勝手にゴミを配る慈善事業ではなく、化猫配達という二つ名に恥じない正式な宅配の仕事を受けていて、お給料をもらって各地から家具や雑貨などを運んできているのだ。


 ……俺の部屋の、一つ上の階へと。


 そう……あの運命の日の翌々日。

 俺の絶望が始まった……運命の分岐点。


「俺たち、今日からこの廃ビルに住むことになったっす」


 そう言って、急に上の階に引っ越してくると宣言した、頭をかきながら照れる錬と、彼の陰に隠れるようにして服の裾を掴み、何だかすっかりしおらしくなってしまった美鈴ちゃん。


 恋は人を変えるとは聞いたことがあるが、まさか彼女がこいつを手錠や簀巻きではなく、裾を掴むだけという、捕まえるには頼りない拘束方法を選び、錬がその頼りない拘束を甘んじて受け入れる日が来るとは……。


「あ、ああ、そうか……よろしく」


 俺はその時、そんなすっかり雰囲気が変わってしまった友人たちに動揺して、付き合い始めた翌日から同棲かよ、とは思ったものの、その結果によって俺の身に降りかかる悲劇について、想像が行きついていなかった……。


 錬も仕事をするならいつまでも住所不定じゃ不味いだろうしな、と、一昨日から変わらない協力的な考えに傾いていたんだ……その日の夜までは。


「ネココ、お前が最初に上の部屋に運んできた家具は覚えているか?」


「寝心地のよさそうなダブルベッドにゃ!」


「そして、俺の目の下のこれが何か分かるか?」


「数日はぐっすり寝むれていなさそうな立派な隈ニャ?」


「つまり、そういうことだ……」


「なるほど……それはご愁傷様ニャ」


 ネココにはそれで伝わったらしいが、つまり、そういうことだ。


 錬も美鈴ちゃんも、仲の良い恋人のようで大変結構なことだが、このボロボロの廃ビルに防音機能が無いことくらい理解して欲しい……。


 毎晩毎晩、ベッドの軋む音や、知り合いの艶やかな声を聞かされて、俺は頭がどうにかなりそうだ……。


「俺……引っ越そうかな……」


「地縛霊の礼二くんには無理ニャ」


 俺の儚い願いに、引っ越し業者と化したネココの無慈悲な言葉が刺さる……。


 ああ……どうか今夜は静かに……安らかに眠れますように……。


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