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第38話 作戦開始


「こちらネココ、作戦位置についたニャ」


「あ、えっと、こちら静子、わたしも作戦位置につきました」


「よし、じゃあ、そのまま監視を続けて、ところどころで彼をサポートしてくれ」


「了解ニャ!」「了解ですっ」



 生前の職場で後輩だった管野 錬(くだの れん)と、彼の恋を応援するという約束をした数日後。


 俺は、恋愛系の雑誌を提供してくれた、見た目は少女、中身は年齢不詳なネココと、知り合いの中で一番若い女子の感性をもっているかもしれないと、当初は淡い希望を抱いていた四条 静子(しじょう せいこ)という現役女子高生、二人の協力者と共に、錬の初デートを見守っていた。


 まぁ、見守ると言っても、地縛霊である俺は廃ビルの敷地から出ることが出来ないので、現地でのサポートは二人に任せて、俺は自分の部屋でスマホを手に音声通話の情報だけを頼りに司令塔をするという役割を担っているのだが……。


「しかし、錬のスマホを実体化して静子ちゃんに渡すことで、俺たち三人が通話できるようにするとは、盲点だったな……」


「にっしっし、伊達にあの世は見てないニャ!」


「いや、現世に留まっている俺たちは、あの世を見たことはないだろ」


 年齢不詳の猫が発した、多分静子ちゃんには元ネタが伝わっていないであろうセリフはともかく、ネココがこの作戦を思いついたのは、なかなかの発想力だ。


 俺たち幽霊の持つスマホは、充電切れとか電波状況とかの概念が無く、いつでもどこでも無限に使えるって代わりに、その幽霊スマホ同士としか通話できないという欠点がある。


 だから、生きた人間で、普通のスマホを使っている静子ちゃんと、本来であればこうして音声通話を繋げることが出来ないんだが、そこを錬の持っていたスマホで代用することで、静子ちゃんとも通話が可能になった。


 ネココの能力で実体化しているから、生者である静子ちゃんでも普通に持つことが出来るし、傍から見て、誰も彼女が幽霊と通話をしているとは思わないだろう。


「そろそろ時間ですけど、美鈴さんはまだ現れませんね……」


「礼二くん……錬っちは本当に美鈴にゃんをデートに誘えてるのかニャ?」


「うーん、俺の横でその電話をしているのを聞いてたから、それは間違いないし……男性向けの恋愛雑誌に書いてあった通りに、デートがしたいとは直接言わずに、ちょっと二人で遊びに行きたいみたいな伝え方もしたはずなんだが……」


 今も目の前に数冊並んでいる、俺たちが錬の恋を応援することを決めた翌日、ネココがどこからか集めてきた、女性向け、男性向けそれぞれの恋愛雑誌。


 俺たちは、女性向けの恋愛雑誌から、今の女性が男性に求めるものや、逆にこんな男性とは付き合わない方がいいというようなNG集……男性向けの恋愛雑誌から、デートのプランから誘い方、当日のファッションまで、様々な情報をかき集めて、それを錬に共有した。


 とはいっても、当然、錬がその全てを丸暗記できるわけがないので、今もこうして俺たちが隠れて見守りながら、逐一サポートする態勢を整えているわけだが、今のところは何も間違えていないはずだ。


 出発前に確認した錬の服装が、ちょっと気合の入り過ぎたフォーマル寄りのファッションだったことが気になる点ではあるが、まぁ、相手も硬そうな人だし、変にカジュアルすぎる服装を選ぶよりは、清潔感のある真面目そうな今の服でいいだろう。


「あっ、来ました……あれ、美鈴さんじゃないですか?」


「え? どこにいるにゃ?」


「えっと、珈琲ショップの陰からあたりをキョロキョロ見回している、サングラスをかけた……」


「ニャニャ!? あれ、美鈴にゃんかニャ!? ちょっと予想外の格好すぎて気が付かなかったニャ……」


「なんだそれ? 美鈴ちゃんはどんな格好をしているんだ?」


「それが……」


 静子ちゃんの説明を一言でまとめると、その格好は、季節感を間違えた大物女優。


 平日にもかかわらず、ここに現役女子高生がいるように、今は夏休み真っ最中……つまり、完全に猛暑なわけだが……。


 美鈴ちゃんは、エレガントなドレスワンピースを身に纏い、煌びやかな装飾品を身に着けて、モコモコなフェイクファーラップショールを肩にかけ、目にはサングラスをかけているらしい……確かに、冬の大物女優って感じだ。


 ほんとか? それ……幽霊じゃなかったら絶対に道行く人から注目を浴びてるぞ……いや、逆にそこまでくるのに注目を浴びてなかったから、違和感に気づかなかったのか?


 いや、だとしても、ファッションに疎い俺でも、流石にそれは無いというのは分かるし……いくら幽霊が夏の暑さを感じないって言っても、周りの人の服装と季節感が合っていないことくらい気づかないか?


 ひょっとして、美鈴ちゃんがいつも恥ずかしげもなくミニスカポリスを演じているのも、服装にこだわりが無かったから、とか……。


「えっと……どうしましょう? ちょっと錬さんよりも、美鈴さんの方をフォローした方が良さそうなんですけど」


「うーん、ちょっとそれは予想外だったなぁ……」


 いやまぁ、なんか、どちらも恋愛初心者感が全開ってことで、俺たちの緊張は解れたんだが……逆に困ったな。


 流石に男側がそんな状況に対応する策なんか、手元にある雑誌に載っているはずも無いし……ん?


 俺がそんな風に頭を悩ませながら、恋愛雑誌をパラパラとめくっていると、1つのページが目に留まる……あった。


「よし、ネココ隊員! これから言うことを、錬にこっそり伝えてくれ」


「了解ニャ!」


 こうして、俺たちの恋のキューピット大作戦が始まった。


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