Disc.05 愛したいくらいに殺したい
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天気 雪、最高気温 0℃、最低気温 -7℃
「牧先生。おはようございます。」
「あら? 今日10時半からじゃなかったっけ。んー、私の勘違い?」
「いえ、診察予約ではそうでしたが、受付の方に聞いたところ牧先生は予約が入っていないそうなので、早めに入らせていただきました。」
「なるほどなるほど。そういうことなら先生も大歓迎よ。ちょうどすぐ終わらせなきゃいけない仕事は片付いたところだし、じゃあ早速おしゃべり始めましょっか?」
「それと、これです。」
「あっ、先週の? ほぉ~、どれどれ。……ほうほう。へー。うんうん。…うん、すごくいい詩じゃない! ○○さんがこんなに可愛くて素敵な詩を書けるだなんて、先生感激しちゃったかも~!」
「お褒めいただき、とてもうれしいです。」
「そーだった。先生もねぇ、実は書いてきたんだ~。せっかくだから読んでみてくれない? んふ、ちょっと恥ずかしいわね。」
「では読ませてください。…………。」
「ちょっと~。恥ずかしいから何回も読み直さないでよぉ! 何か感想とか教えてちょうだいな。」
「…………。虫唾が走る。死ね。」
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<付箋メモ>
以下は患者第20211337号による詩である。
「しあわせ」
きっと、つらいことはあなたのすぐそばにある
それは背中よりもあなたにおぶされるように
それは腕よりもあなたに従順なように
それは脳味噌よりもあなたにそっくりなように
でも、たのしいこともあなたのすぐそばにある
あとはきづくだけ
あとはみとめるだけ
あとはのぼっていくだけ
さあ、こんなつまらない人生は終わらせてしまいましょう
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