*別の精神科医(氏名非公開)による調査報告文書 No.01
患者第20211337号はバプテスト系のプロテスタントであり、神道の信者ではなかったはずだ。にもかかわらず、この文章が、担当医に勧められて書いていた日記の数ページにわたって何遍も(正確には27周)書き連ねられていたことは不可解である。
下記の文章は可読性を高めるために空白と改行を挿んだが、原本のノートにはそれらがなく、ただ平仮名がびっしりと、しかもパソコンで打ち込んだように等間隔で敷き詰められていた。これは、一連の文章を意味立てて書いていたというよりも、呪文のように無意識的に書いていた可能性が高い。
筆跡は、はね・はらいといったものがみられず、文字を直線的あるいは図形的に書くのが特徴的である。
ノートの内容とは無関係だが、そのノートの状態に不審な点が見られる。物自体は一般的に売られているB5サイズB罫の大学ノートで、外装の色は薄紫、表紙には「日記 2021ねん6月から」(原文ママ)と記されている。そのノートは短辺が波打ったような形状をしており、縦にノートを持って両手でつぶしたような力が加わったと推測される。また、最後の4ページが何度か噛み千切られたような破損痕と歯形が見られた。この歯形は患者第20211337号のものである可能性が高く、過去に患者が通っていた歯科クリニック(別添)のカルテから照合することを進言する。
以下、ノートに書かれていた本文(実際はこれが何度も途切れることなく書かれている)
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たかまのはらにかむづまります すめらがむつかむろぎ かむろみのみこともちて やほよろづのかみたちをかむつどへにつどへたまひ かむはかりにはかりたまひて あがすめみまのみことは とよあしはらのみづほのくにを やすくにとたいらけくしろしめせと ことよさしまつりき かくよさしまつりしくぬちに あらぶるかみたちをば かむとはしにとはしたまひ かむはらひにはらひたまひて こととひしいはね きねたち くさのかきはをもことやめて あめのいはくらはなち あめのやへぐもを いつのちわきにちわきて あまくだしよさしまつりき かくよさしまつりしよものくになかと おほやまとひだかみのくにをやすくにとさだめまつりて したついはねにみやばしらふとしきたて たかまのはらにちぎたかしりて すめみまのみことのみづのみあらかつかへまつりて あめのみかげ ひのみかげとかくりまして やすくにとたひらけしくしろしめさむくぬちになりいでむあめのますひとらが あやまちをかしけむくさぐさのつみごとは あまつつみくにつつみ ここがくのつみいでむ かくいでば あまつみやごともちて あまつかなぎをもとうちきり すゑうちたちて ちくらのおきくらにおきたらはして あまつすがそをもとかりたち すゑかりきりて やはりにとりさきて あまつのりとのふとのりとごとをのれ
かくのらば あまつかみはあめのいはとをおしひらきて あめのやへぐもをいつのちわきにちわきて きこしめさむ くにつかみはたかやまのすゑ ひきやまのすゑにのぼりまして たかやまのいほり ひきやまのいほりをかきわけてきこしめさむ かくきこしめしてば つみといふつみはあらじと しなどのかぜのあめのやへぐもをふきはなつことのごとく あしたのみぎり ゆふべのみぎりを あさかぜゆふかぜのふきはらふことのごとく おほつべにをるおほぶねを へときはなち ともときはなちて おほうなばらにおしはなつことのごとく をちかたのしげきがもとを やきがまのとがまもちて うちはらふことのごとく のこるつみはあらじと はらへたまひきよめたまふことを たかやまのすゑ ひきやまのすゑより さくなだりにおちたぎつ はやかはのせにますせおりつひめといふかみ おほうなばらにもちいでなむ かくもちいでいなば あらしほのしほのやほぢのやしほぢのしほのやほあひにますはやあきつひめといふかみ もちかかのみてむ かくかかのみてば いぶきどにますいぶきどぬしといふかみ ねのくにそこのくににいぶきはなちてむ かくいぶきはなちてば ねのくにそこのくににますはやさすらひめといふかみ もちさすらひうしなひてむ かくさすらひうしなひてば つみといふつみはあらじと はらへたまひきよめたまふことを あまつかみ くにつかみ やほよろづのかみたちともに きこしめせとまをす
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