女神「私のせいで亡くなってしまったので異世界転生を」法の神「おい、不正」
始めて書く処女作です。
「ごめんなさい」
「……」
今この場いるのは、へたりこんで混乱しているスーツを着た普通の男と頭を下げている露出の多い服を着た美女がいる。
男がなぜ混乱しているのかと言うと、ある日男はトラックと衝突し、その後目の前には頭を下げている正体不明な人物、このたった二つの情報をバズーカで不意打ちで脳内に撃ち込まれたようなものだからだ。
「すみません。いきなりですから、困惑していますよね。質問してくださっても大丈夫ですよ」
美女は男の様子を察し、提案をし、男もその提案を聞き、自分を落ち着かせる。
そして、少しの時間がたち男も今の状況になんとか適応し、早速質問をする。
「えぇっと、まず、あなたはどちら様でしょうか。それに、ここはどこで、どうなっているのか知りたいです」
男の質問を聞き美女は頷く。
「まず、私は女神アルセリアです」
「め、女神!? それはほ、本当ですか!?」
男は女神と言った彼女によって驚愕と更なる混乱を招き、本当に神がいたことに驚きを隠せない。
「はい、本当です」
男の問いに少し苦笑しながら、返答をする。
「そうですか。こちらも礼儀として、自分は佐藤広志と言います。女神様これは一体どういうことでしょうか」
彼も今知りたいのはもっと詳しい状況説明のため、本当にこの人物が女神というのは本当か嘘かということは置いておく。
「そうですね。広志さんはトラックに轢かれたことは憶えていますか?」
広志はトラックに轢かれたことは本当だったのかと、知り苦虫を噛み潰したような顔をする。
そして、なんとなくだが、予想する、自分は死んだのだと。
じゃなければこんな不可思議な状況にはならないはずだからである。
トラックの運転手の不注意か、それとも自分が運転手と同じように周りを見ずに横断歩道を渡った不注意かで怒りと後悔の感情がのぼる。
「自分は死んだのですね」
「ご名答です。しかしあなたのせいではありません」
「どういうことですか?」
アルセリアの言う事に広志に疑問を持つ、どう考えても彼女には事故と関係ないはずだからである。
「……その大変申し訳ないのですが、広志さんを殺したのは私です。原因は私のミスです」
もう一度頭を下げながら驚きの事実が判明される。
この事実に広志はさすがに怒りを覚え、罵声を浴びせる。
「ふざけるな! 神なら自分を生き返らせろ! それが神がやることか! 責任を取れ!」
「それは無理です。神々の法律上で一度亡くなった者は生き返らせるのは違法だと」
アルセリアは非常に申し訳無さそうな顔をしつつ、彼の望みを叶えてあげられないことを伝える。
仮に死んだ人が生き返れば、世の中は大混乱してしまう、書類上にも、家族にも、社会にも迷惑をかけ、動かなくなってしまう。
「ですが、他の世界への転生なら大丈夫です」
広志はその言葉に思わず、怒りも止まり耳を傾ける。
二つ目の選択支をした女神に多少は視線を柔らかくする。
「他の世界というのは、それは漫画やアニメみたいな剣と魔法の世界という感じですか?」
広志はラノベを思いだし、そのチート主人公のような状況にちょうどはまっていることに気づく。
そのため心の中では少し期待している。
「その通りです。もちろんお詫びとして来世は幸せに生きられるように様々な力を付与して転生します」
「……そうですか」
広志は考える、剣と魔法の世界は誰もが思い描く夢の世界、そのチケットが今目の前にあり、次など絶体にないと予想し、この千載一遇のチャンスに手を取る。
「では、生き返られないのでは自分は転生します」
「良かったです。では来世に祝福あれ」
広志の返答を聞いたアルセリアは笑顔を浮かべ、手を軽く振り、手から光の風が出て、その風が広志の周りへと纏う。
「これは?」
「来世でも幸せに生きられるようにするための物です。では行きますか?」
「はい、行きましょう」
即断即決と言わんばかりの気持ちで広志は行く。
そして、広志の目の前にはドアが一つ現れ、異世界行きと書かれている。
広志はそのドアへと向かい歩き出す。
現世では平凡で冴えない生活をしていたため、異世界には大きく期待し、意気込む。
(来世こそは、素晴らしい人生をおくるんだ!)
ドアのぶへと手をかけてドアを開く。
「来世はない。転生もない。死は死だ」
ドアの向こうには光に満ち溢れた来世などなく黒い服を着た謎の人物がいた。
「なっ!法神」
「神歴一垓二年、三十四時二十四分、転生神アルセリアを証拠隠滅の罪で現行犯逮捕」
法神はそう言い終わると、アルセリアの周りに透明な壁が出現してアルセリアを拘束、密閉をする。
アルセリアは完全に閉じ込められたと悟った瞬間、絶望したかのような顔になり、へたりこむ。
そして、透明な壁は縮小して異空間へと消える。
「あ、あなたは誰なんですか!?」
広志は、さぁ、行くぞと、意気込んだらいきなり謎の人物が現れ、また状況がめちゃくちゃとなり、出鼻を挫かれたような状態となり、思わず指を指して質問をする。
「ん? 自分は神々の法を司る神だ。人間の世界で言えば、警察官であり監察官と言える存在だ」
「じゃあ、さっきの発言はどういうことです? あの『転生もない』というあの発言は?」
広志は焦る、もしその言葉通りだとしたら、輝かしい来世をおくれない。
期待に期待をしていた幸せの未来への道が閉ざされる。
「言葉通りだよ。記憶を持ったまま転生などない。理由は法律に反するからだ」
しかし、現実は厳しかった。
「そ、そんな、自分は彼女のせいで死んだんですよ。自分は被害者だ! なぜこんな目に会わなくてはならないのだ!」
「御愁傷様です。でも原因は何であれ、死は死だ」
そんな現実に耐えられないと言わんばかりの大声で法神に訴え叫ぶ。
その訴えも法神にとってはどこ吹く風という雰囲気で受け流し、現実を言い渡す。
それでも広志は納得しないため、またもや文句を言う。
それを見た法神は仕方なさそうに、詳しい理由を言い始める。
「二つあるけど、一目は魂の取り扱いはかなり厳重に管理してあるんだよ。一つたりとも逃しはしないほどにね」
お金の横領と一緒で一円たりとも横領は逃していけないから、やった瞬間即座に逮捕である。
「二つ目は、異世界の知識の移入はその世界の本来の文化、文明、自然、生命、法則を乱し、悪影響を与える可能性が大きく、正当な進化を進めなくなってしまうかもしれないからだ」
地球でもそうだった。
アフリカ、南米の植民地政策により、数多の文化、貴重な知識、歴史が消え去ってしまい、現在はとても後悔している状況だ。
「それに、地球で1日に亡くなる数は15500人くらいはあるんだ。その中でも君以上に悲惨な死に方をしている人なんて沢山いるんだよ。だから、君一人いなくなっても変わらないのだよ」
所詮は人間、神々の視点から見れば少し頭の良い猿のようなもの。
だから、代えは効くしなんとでもなる存在だ。
「だが、神にも責任はあるだろう!」
「これから法の下に責任を追及するから、大丈夫」
地球でもほとんどの国が法治国家、裁判も法によって裁かれる、神々は法を強く重視している。
なぜなら、自分達は巨大な力を持っている、そのため何かやらかした場合はその他、周りへの影響が大きいため、社会的な縛りをつけ、コントロールしている。
「そ、そんなりじゃあ自分はこれからどうなるのですか?」
広志はほぼ諦めかけている、何を言っても神という絶対的な存在に勝てない状況に諦観する。
だが、せめてでも自分がどうなるか知りたい、もしかしたら、楽園の天国に行けるかもしれないからだ。
「こうなる」
法神はそう言うと同時に広志はその場から消える。
まだ魂が熟成していないため、輪廻転生に戻された。
次は虫になるか植物になるか、神にもわからない。
確実なのは記憶は消えたことだ。
「全く、最近の人類は強欲だな、彼は特に功績を残したわけでもなないのに」
運だけで良い思いができるのは神々の間ではないし、よもや何もない人間に恵みは与えない。
読んでくださりありがとうございます。