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タオルの下のティニの頭ががくんと舟をこぐ。ユーダレウスは曇天色の髪があらかた乾いているのを確認すると、髪を拭く手を止めてタオルを畳んだ。
「眠いならベッドに行くぞ、ティニ」
早々に風呂に入ったティニの眠気はもう限界だった。昼間に散々はしゃいだせいで疲れていたのもあるのだろう。
もうほとんど眠っているかのような返事を聞きながら、ユーダレウスは促すようにティニの肩をとんとん叩く。
眠いなら寝るべきだと思って提案したのだが、当のティニはまだ眠くないと強がって首を横に振る。それを鼻で笑って一蹴したユーダレウスは、問答無用とばかりに弟子を抱き上げた。
眠たい時の子供を諭すのは果てしなく面倒臭い。どうせすぐに寝てしまうのだから、強制的に寝かしつけてしまうに限る。
マーサたちはまだ下で店の片付けをしているのか、食器の音や話し声が時折聞こえるが、それ以外はとても静かな夜だった。
明日の夜はどうなることやらと嵐の前の静けさを感じながら、ユーダレウスは諦め悪く寝まいと頑張っているティニを抱えたまま寝室の扉を開ける。
二つ並んだベッドに、簡素なデザインのクローゼット。ベッドサイドには趣味のいいデザインのランプが柔らかな明かりを灯していた。そこまで大きくはないが、しっかりとした造りの窓からは海が見えた。
ここはかつて、マーサたち夫婦が住んでいた場所だ。まだまだ現役で使えそうな部屋だが、息子にその妻に孫と、年月が立つにつれて家族が増えたこともあり、裏の家が空き家になった時思い切って引っ越したらしい。
斜めの天井にはめ込まれた四角い天窓からは、まるで真珠の粒のような輝く満月が見えた。
「ああ、そういや満月だったか」
「ん……まんげつ……」
師と同じように天窓を見上げたティニの身体が、瞬間的に硬直したのをユーダレウスははっきりと感じた。
小さな手がぎこちない動きで自らのパジャマのシャツの胸元を握りしめる。は、は、と短い呼吸を繰り返し、それすらも時折やり方を忘れたようにぴたりと止まった。再び酸素を求めて喘ぐように始まる呼吸は、一向に整う素振りを見せない。
弟子の異変に気が付いたとき、普段は人形じみた顔は既に苦悶に歪んでいた。
「おい、ティニ、ティニ!」
少年の名を呼ぶ男の声だけが、部屋にこだました。




