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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第31話「父と子の再会」前編

「まさか、ソンブラーがやられるとは・・・それに、あの虹崎誠人の力は何だ?」

 同時刻、ネビュラカンパニー本社の社長室。側近であった忍者、リヤ・ソンブラーがイリスV2に倒される映像を見て、社長のバラムがうめくように声を上げた。

「二つのガントレットを結合させ、その力で複数の人間と合体する・・・馬鹿な。あのガントレットにそのような力はないし、そもそも複数人との合体などあり得ない・・・!」

 何もかもが、これまでの常識からかけ離れていた。思わず頭を抱えたバラムのもとに、さらに頭を悩ませる報告が入った。

「大変です、社長!ユナイトガントレットの製造工場の一つが、何者かに襲撃されました!」

「何!?下手人は誰だ!?」



「これがユナイトガントレット、そしてユナイト血清・・・なるほど、実に興味深い」

 襲撃された製造工場がある星の上空。猛スピードで工場から遠ざかる宇宙船の中で、DOE社のエージェントであるファルコが、奪った戦利品を眺めて呟いた。

「特にこのユナイト血清。使用者にユナイトの力を与えるらしいが、その原料には何が使われている?・・・調べてみる必要がありそうだ・・・ん?」

 その時、宇宙船に備え付けられている通信機から着信音が鳴り響いた。

「こちらファルコ。どうぞ」

「私だ。例のユナイト持ちの少年が、また面白い進化を遂げたようだ」

 通信の送り主は、DOE社の社長であるアダムだった。彼が口にした『面白い進化』という言葉が、ファルコの興味をそそった。

「ほう、それは一体どのような?」

「映像をそちらに送った。暇ができたら見てくれたまえ」

 通信は終了し、同時に1件の映像が送られてきた。それを再生してみると、新たな力を得たイリスV2が、その力でリヤ・ソンブラーを倒す一部始終が収められていた。

「これは・・・マガ・ユナイト・・・まさか、彼もこの力に・・・?」

 声を震わせながら言うと、ファルコは宇宙船を急停止して映像を食い入るように見つめた。その中でもイリスV2の体が光を放ち、その光が二つのユナイトガントレットを融合させる瞬間を、彼は何度も繰り返した。

「まさか・・・だが、もしそうなのだとしたら・・・」

 ファルコは表情をきつく引き締めると、すぐにある場所に連絡を取った。

「エージェント・ファルコだ。例の装備の開発を急いでほしい。・・・そう、大至急だ。これ以上、波に乗り遅れるのは性に合わなくてね・・・」



 一方。楽しいパーティが開かれるはずだった虹崎家には、なんとも言い難い重い雰囲気が漂っていた。

「おお、このソファ。俺が買ってやってからもう15年が経つが、まだ現役だったとはな」

「宗介さん・・・どうしてあなたがそこにいるの?」

 突然現れてソファに座り込むかつての夫の姿に、茜が険しい表情を浮かべた。

「久々だな、茜。・・・相も変わらず冒険か。たった一人の息子の誕生日くらい、家にいてやったらどうだ?」

「あなたに言われる筋合いはないわよ。それに、質問に答えてもらってないんだけど?」

「実の息子の誕生日だぞ?父親の俺がここに来ちゃいけないなんて決まりがあるか?」

「・・・ねえ、キリアちゃん。本当にあの人、誠人君のお父さんなの?」

 一触即発の誠人の両親を見ながら、ミュウがそっとキリアに問いかけた。

「うん、そうみたい。・・・でも、なんか嫌な感じ。ずけずけしてるし、態度は大きいし、あのお兄ちゃんのお父さんだなんて思えない」

 露骨に不快げな表情を浮かべながら、キリアがミュウに小声で答えた。すると宗介が不意に茜から視線をそらし、キリアを始めとする刑事達に目を向ける。

「銀河警察、か・・・・・・茜の思春期の妄想だと思ってたが、まさか実在したとはな」

「ええ、確かにここに。すみませんでしたね、茜さんの妄想じゃなくて」

 レイが無機質な表情で、しかしどこか棘のある口調で宗介に言葉を返した。彼女もキリアと同じく、突然現れたこの男のことを快く思っていなかった。

「それで、本当は何しに来たの、父さん?・・・どうせ、僕の誕生日を祝うだけに来たわけじゃないんでしょ?」

「なんだよ、お前まで俺のこと疑うのか、誠人?・・・ま、残念ながら正解だ。実は、これを渡しに来た」

 肩をすくめながら言うと、宗介は誠人に一枚の紙きれを手渡した。

「『アミューズメントパーク東郷 モニター用チケット』・・・何これ?」

「実はな、俺の会社が新しい遊園地を立ち上げる準備中なんだ。そこで、お前にモニターになってもらおうと、そう思ったわけだ」

「え?お父さん、社長なんですか!?」

 宗介の『俺の会社』という言葉に反応し、カグラが驚いたように声を上げた。

「まあ、まだ駆け出しのベンチャー企業の社長だがね。それでも、どうにか遊園地の一つを作れるほどまでには、デカくなってきてね。・・・どうだ誠人?友達の一人でも誘って、モニターになってくれねえか?」

 宗介から渡されたチケットを、誠人はしばしじっと見つめていた。だが彼は顔を上げると、そのチケットを破り捨てた。

「お断りだね。9年ぶりに現れたと思ったら、そんな下心があったなんて」

 憮然とした表情で言い放った誠人に、宗介は小さくため息をついた。だが彼の表情に落胆の色はなく、むしろその返事が来ることを分かり切っていたかのような、含みのある笑みが浮かんでいる。

「ま、そうだろうな。・・・それで、他に俺に言いたいことは?あるなら今のうちにみんな言っちまえ。もう会えなくなったら後悔するぞ?あの時文句の一つでも言っときゃよかった、ってな」

 どこか煽るような口調と目で、宗介は誠人にそう言った。誠人はしばらく迷っていたが、やがて意を決したように口を開く。

「なら、言わせてもらうよ。・・・どうして、僕と母さんを捨てて家を出たの?父さんがいなくなったおかげで、あの後僕らは大変だった・・・」

「おっと、続きはここに来てから言え」

 誠人を制するように手を上げると、宗介は懐に隠していたもう一枚のチケットと、電話番号が書かれたメモ書きを目の前のテーブルに置いた。そして腰かけていたソファから立ち上がると、玄関に向かって歩き始める。

「じゃ、そういうわけだ。来る気になったらいつでも連絡しろ。待ってるからな、誠人」

 気障っぽく手を振りながら、宗介は虹崎家を去っていった。その背中をじっと睨みつけながら、誠人は手にしたチケットとメモをくしゃくしゃになるほど強く握りしめた。

「誰が行くもんか・・・誰が・・・誰が・・・!」


 ☆☆☆


 数時間後。パーティが何とも言えない空気でお開きとなった虹崎家では、窓から射しこむ月明かりに照らされて誠人がリビングに座っていた。

「ではお坊ちゃま、私達はこれで・・・お坊ちゃま?」

 シルフィの声に、誠人ははっと我に返った。彼の手には、先ほど宗介が置いていった遊園地のチケットと、連絡先が書かれたメモ用紙が握られている。

「あ、ああ・・・おやすみなさい、シルフィさん、ディアナさん」

 慌てて言葉を返す誠人に、シルフィは小さくため息をつきながら言った。

「迷っておいでなのですね?お父様のお誘いに、応えるべきか否か」

「な・・・僕は迷ってなんて!」

 思わずソファから立ち上がって声を荒げた誠人だったが、程なくしおしおと再びソファに腰を下ろした。

「・・・とは、言い切れないんですよね・・・・・・あの人はいつもこうなんです。自分の主張や都合ばっかり押し付けて、僕や母さんのことなんか何も考えちゃいない。・・・そう、9年前のあの日だって・・・・・・」

 誠人の脳裏に、宗介が去っていった日の記憶が蘇ってきた。――大雨が降りしきる中、宗介は誠人に一切の事情を語らず、虹崎家を去ったのだった。

『じゃあな、誠人。・・・お前もいつか、お前だけの道を見つけろよ』

 そう言って誠人の頭を撫で、宗介は雨の中を去っていった。父がもう戻らないと誠人が悟ったのは、それから数日後のことだった。

「大黒柱だった父さんがいなくなって、母さんは今まで以上に仕事を増やして、僕を育ててくれました。その分、僕が一人になる時間も増えていって・・・・・・子供心に、何度も父さんを恨みましたよ。なんで僕達を捨てて、この家を出てしまったのか・・・何で他の家のように、家族と共に生きてくれないのか、って・・・」

「お坊ちゃま・・・」

「9年も僕達をほったらかしにした人に、これ以上振り回されたくない。けど・・・心のどこかで、またあの人に会いたいって思ってる自分もいるんです。まだ、言いたいことは山ほどある。それに・・・また昔のように、あの人との思い出を作りたい。そんな気持ちが、僕の中で少しずつ大きくなってきてて・・・」

 弱々しく言うと、誠人は顔を両手にうずめた。そんな彼の心中を推し量り、シルフィが優しく言葉をかける。

「ならば、もう一度お会いになってみてはどうです?」

「え・・・?」

 シルフィの言葉に、誠人は両手にうずめていた顔を上げた。

「先ほどのお話を聞いて確信いたしました。お坊ちゃまは、心の底ではお父様と向き合うことを望んでいらっしゃるのだと。・・・せっかく、お父様の方からその機会をくださったのです。ここは、その機会を活かすべきではございませんか?」

「で、でも・・・」

「ああもう、いつまでもうだうだ悩むなよ。親父さんにまた会いたいのか、会いたくねえのか、単純な二択じゃねえか」

 誠人の様子にしびれを切らしたディアナが、シルフィから体の主導権を奪って誠人に答えを迫った。

「で、本音はどっちなんだよ?会いたいのか、それとも会いたくねえのか」

 ディアナは誠人に詰め寄ると、その目を見ながら問いかけた。彼女から目をそらしながら、誠人は震える手でチケットとメモを握り締める。

「僕は・・・・・・僕、は・・・・・・」



 その頃。ファルコはDOE社の研究所の一つに、持ち帰ったユナイトガントレットとユナイト血清を預け、科学者に分析させていた。

「どうです?ユナイト血清について、何か分かりましたか?」

「いやあ・・・これはすごい。まさかとは思いましたが、この血清にはユナイトの血液が使われていますよ」

 血清を分析していた科学者が、興味深そうな声を上げてファルコに答えた。その返事に、ファルコが少し表情を曇らせる。

「やはりな・・・使用されている血液が、誰のものかは特定できますか?」

「データベースを照合すれば特定できるかもしれませんが、何分データベースと呼べるほどデータがありませんからな。それほどまでに、ユナイト持ちは貴重な存在ということです」

「できる限り調べてみてください。血液の出所が分かれば、ネビュラカンパニーの鼻を明かせるかもしれない」

 そう科学者に依頼したファルコの声は、どこかいつもより感情的であった。それを悟ってか、科学者は小さくうなずいて言葉を返す。

「分かりました。それと、例の装備の件ですが、いよいよ完成まであと一歩のところまで迫りました。あとはあなたの銃に鎧を収納し、瞬時に展開できるよう調整を加えるだけです」

「ほう・・・拝見してもよろしいですか?」

「ええ、もちろん」

 科学者に案内されたファルコが目にしたのは、数本のケーブルに繋がれた漆黒の鎧であった。その鎧を見て、ファルコの表情が緩む。

「素晴らしい・・・・・・これが完成すれば、我が社の未来も明るくなる」

「あとはあなたのブラスター銃に、鎧を最小化して組み込むだけです。・・・せっかくだ、ここでブラスターをお預かりしましょうか?」

「ええ、お願いします。この鎧の完成は、我が社にとって目下の急務。血清に使われている血液の調査と並行して、完成を急いでください」


☆☆☆


 数日後。『アミューズメントパーク東郷』と書かれた看板を掲げる完成間近の遊園地の入り口で、宗介が誰かを待ちわびるように立っていた。

「・・・お、来たな・・・」

 するとそこに、一台のバイクが遠くから走ってくるのが見えた。バイクは徐々に近づいてくると、宗介の目の前でその動きを止めた。

「よく来てくれたな、誠人」

「ああ、来たよ。まだ、あなたに言いたいこともたくさんあるし」


「そう・・・あの人と、会うのね?」

 それは、前日のこと。父と再び会う決心をした誠人は、テレビ電話で茜にその旨を告げていた。

「うん・・・あの人の思惑通りになるのは癪だけど、この機会を逃がしたら、もう二度と会えない気がする。それは・・・・・・嫌だ」

 腹を決めた息子の表情に、茜は複雑な笑みを浮かべた。彼女は息子がこういう決断を下すだろうと、薄々とだが悟っていた。

「分かった。なら、いっぱいお話してきなさい。あの人とあなただからこそ、できる話もあるでしょうから」

「母さん・・・・・・ありがとう」

 母に礼を述べると、誠人は電話を打ち切った。ほっと安堵のため息をつく彼に、様子を見守っていたミナミが声をかける。

「あの・・・もしよろしければ、私も、同行させてもらえませんか?」

「ミナミ・・・?」

「いついかなる時も誠人さんをお守りするのが、私の使命ですから。それに、モニターは一人より二人の方がいいでしょう?」

 それが建前であることは、誠人は十分わかっていた。きっとミナミは、宗介のことをもっとよく知りたいのだ。

「ありがとう。でも、これは僕達家族の問題だ。君を巻き込むわけには・・・」

「それでも!・・・知りたいんです。誠人さんのお父様が、一体どんな方なのか・・・」

 誠人の言葉を遮って思わず大声を上げたミナミだったが、次の瞬間はっと我に返った。

「ご・・・ごめんなさい!私、出しゃばりすぎですよね?すみません、忘れてください・・・」

 早口で誠人に詫びると、ミナミはそそくさと立ち去ろうとした。そんな彼女の背中に、誠人が言葉を投げかける。

「分かった。もし・・・君が父さんに会いたいというのなら、君も一緒に連れていく」

 その言葉に、去りかけていたミナミが足を止めて振り返った。

「誠人さん・・・」

「だけど、これだけは忠告しておく。知っての通り、僕と父さんの仲は複雑だ。きっと、楽しい時間にはならないと思う。・・・もしかしたら、僕達と一緒にいるのが辛いだけの時間になっちゃうかもしれない。・・・それでもいいか?」

 そう言葉をかけてきた誠人に、ミナミは小さくうなずきながら答えた。

「構いません。誠人さんも、私に変な遠慮なんか、しなくていいですからね」

 ミナミの言葉に、誠人は小さく笑いながらうなずいた。彼の微笑みを見て、ミナミも安堵の笑みを浮かべるのだった。


「あんた、あの時にいた子だな?・・・さては、彼女か?」

 誠人に続いてバイクを降りたミナミを見て、宗介が声をかけてきた。

「え!?べ・・・別に彼女ってわけでは・・・」

「父さん、彼女は銀河警察の一人で、僕を守りに来てくれたんだ。・・・さあ、早く遊園地の中、案内して」

 恥ずかしそうに顔を赤らめるミナミに助け舟を出しつつ、誠人が鋭い視線を宗介に向けた。

「そうだな。・・・では、どうぞ中へ。今日は、楽しんでいってくれ」


☆☆☆


 それから、数時間。誠人とミナミは宗介に案内され、貸し切り状態の遊園地を巡ることになった。

 ジェットコースター、コーヒーカップ、お化け屋敷、観覧車・・・・・・遊園地の定番とも呼べるアトラクションの数々を、ミナミは心から楽しそうに満喫していた。

 その一方で、誠人の表情からはどこか張り詰めたような緊張感が窺えた。ミナミも宗介も、そのわけは十分理解している。誠人はただ、遊園地のモニターになるためだけに、ここに来ているわけではない。

「ふぅ・・・いろいろ回って、ちょっと疲れちゃいましたね、誠人さん」

 宗介に案内されたカフェのテラスに腰掛けながら、ミナミが誠人に声をかけた。

「ああ、そうだな・・・」

「ほれ、お二人さん。疲れを癒すには、甘くて冷たいものが手っ取り早い」

 宗介が二本のソフトクリームを手にやってくると、それを一本ずつ誠人とミナミに手渡した。

「ありがとうございます!・・・くーっ、冷たくて甘くておいしいです・・・!」

「はは、そりゃよかった。・・・さて、これで一通りアトラクションは案内したわけだが、お二人のご感想は?」

 宗介が尋ねると、ミナミが目を輝かせながら答えた。

「ここ、どのアトラクションもすっごく楽しかったです!オープンしたら、絶対皆を誘ってまた来ます!」

「そうか、楽しんでもらえたか!・・・じゃあ、我が息子様の意見もうかがおうじゃないか。どうだった、誠人?」

 ミナミの感想に心から嬉しそうな表情を浮かべつつ、宗介は誠人にも意見を求めた。

「・・・面白いアトラクションもいくつかあったけど、他の遊園地と似通ってる所が多い。もうちょっと特徴のあるもの作らないと、生き残れないんじゃない?」

「ちょ、誠人さん・・・!」

 刺々しい口調で答えた誠人に、ミナミが思わず声を上げる。だが宗介はそれを手で制すると、小さく笑みを浮かべながら言った。

「いいんだ、そういう意見も大事だ。やっぱりお前に来てもらったのは正解だったよ。身内からの辛辣な意見なくして、成功はない。・・・ほんとは茜にも来てほしかったが、海外にいるんじゃしょうがねえよな」

「え・・・?もしかして、あの二枚目のチケットって・・・」

 あの日、チケットを二枚持ってきていた宗介の真意に、ミナミは気づいた気がした。だが宗介はそれを無視するように、誠人に声をかける。

「さて・・・俺に言いたいことがあるんだろ、誠人?この際だから全部聞いてやる。遠慮なく言ってみろ」

「・・・じゃあ、遠慮なく言うよ」

 その時を待っていたといわんばかりに、誠人は父を睨みつけながら口を開いた。

「あなたがいなくなってから、僕と母さんは大変だったんだ!あの日から・・・母さんが夜中に一人で泣いてる姿を、僕は何度もこの目で見た!その度にあなたを恨んで、そして呪った!どうして・・・どうして僕達の前からいなくなってしまったんだよ、父さん!?」

「誠人さん・・・」

 いつになく感情を爆発させる誠人に、ミナミは思わず言葉を漏らした。一方の宗介は息子から一切視線をそらさず、彼の言葉を全て真正面から受け止めた。

「そうか・・・いよいよ、お前にも全部話す時が来たか・・・」

 宗介は一呼吸置くと、誠人に目を向けて口を開き始めた。

「話してやるよ。あの時、俺達が別れたのは・・・」

 と、その時だった。突然三人の頭上に、巨大な円盤らしきものが現れた。

「あの、お父様?あれも・・・何かのアトラクションで・・・?」

「いや、あんなものは・・・何だ、ありゃあ?」

 宗介が呆然と見つめる中、円盤からスロープのようなものが降りてきた。そしてそれを伝いながら、二足歩行の黒く矢じりのような頭部のロボットが姿を現す。

「あれは・・・賞金稼ぎドロイドの、GR-13(サーティーン)!」

「知ってるのか、ミナミ!?」

「ええ・・・でも、あいつがここにいるってことは・・・狙いは、まさか・・・」

 そう口にするミナミの目の前で、ロボットは右手を動かしてホログラム映像を浮かび上がらせた。そこに表示されたのは宇宙文字と、誠人の顔写真だった。

『標的発見、確保開始』

 宇宙語のボイスが流れた次の瞬間、ドロイドは左腕に持っていたライフルから光弾を誠人達に向けて連射した。ミナミは辛うじてその攻撃を回避したが、状況を飲み込めない宗介にも容赦なく光弾の雨が襲いかかる。

「父さん!」

 誠人がそんな彼の体を引きずるようにして、なんとか物陰へと避難する。標的が視界から消えたことでGR-13の攻撃はやんだが、ロボットは物陰を見つめて獲物が飛び出すのを待ち構えている。

「な・・・何なんだよ、ありゃ・・・?」

「あのロボット、間違いなく狙いは誠人さんですね。・・・誠人さん、ここは私が」

「いや、僕が行く。ミナミ、父さんを頼む」

「お・・・おい、誠人!」

 父の制止を振り切り、誠人はGPドライバーV2を手に物陰から飛び出した。そしてドライバーを腰に装着し、待機状態にしてカードを挿し込む。

「アーマー・オン!」

『Read Complete.アーマーインサンライズ!サンライズ!』

「な・・・誠、人・・・?」

 初めて目にする息子の変身に、宗介は呆然と声を上げた。イリスV2が剣を手に敵に立ち向かう隙に、ミナミは宗介を安全な場所へ避難させ始める。

「はあっ!」

 敵の光弾を剣で弾き飛ばしながら、イリスV2は一気に相手との距離を詰めた。そして剣を斜めに振り下ろし、ロボットの体を斬り裂いた。

「はあっ、はあっ・・・」

 機能停止したロボットの姿に、誠人はほっと安堵のため息を漏らした。だが次の瞬間、上空の宇宙船の中から先ほど破壊したロボットと同じ機体の物が続々と姿を現し、イリスV2に攻撃を仕掛けてくる。

「くっ・・・一匹見たら、三十匹ってか・・・!?」

 ロボットの中には背中にジェットパックを装着し、空を飛びながら攻撃してくるものもいた。イリスV2は武器をガンモードに切り替えて敵を次々と射ち落としていったが、敵の圧倒的な数に押され気味になっていく。

 そんな中、数体の敵が武器の銃口のパーツを別の物に差替え、イリスV2を攻撃した。すると銃からは強烈な空気弾が発射され、イリスV2の体に直撃して大きく吹き飛ばした。

「うわあああああああああっ!」

 吹っ飛ばされたイリスV2の体は、避難していたミナミと宗介の目の前に落ちてきた。地面に叩きつけられた衝撃で、彼の変身は解除されてしまう。

「誠人、大丈夫か!?」

 ミナミの手を押しのけながら、宗介が倒れこむ息子のもとへ駆け寄る。するとそこに、誠人を追ってきたロボットの大群がやってくる。

「お二人とも、逃げて!」

 ミナミが二人をかばうように立ちはだかり、GPブレスから光弾を乱射し始める。なんとか立ち上がった誠人は宗介を連れ、敵の光弾の雨を縫いながら避難していった。

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[一言] 理想のダメ父親でめでたい(めでたくはない) そしてGR-13、なんとなく何の説明もなくても容姿が分かるぜ
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