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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第29話「動乱」アバン

第29話です!以前より暗躍していたキャラクターが、いよいよ本格的に動き始めます。彼がもたらす波乱の展開をぜひご覧ください!

「じゃあ誠人君、またしばらく留守にするけど、一人で大丈夫ね?」

 その日。茜は荷物が詰まったスーツケースを手に、誠人にしばしの別れを告げていた。

「うん、大丈夫。もう母さんがいないことには慣れてるし、それに今は一人じゃないし」

 母にそう言葉を返すと、誠人は後ろの玄関を振り返った。そこにはミナミとレイ、そしてキリアとシルフィが、彼と共に茜の見送りのために集まっていた。

「くすっ、それもそうね。・・・皆さん、息子のこと、どうかよろしくね」

「はい!お任せください、お母様!」

「茜様、お仕事、どうかお気を付けて。お坊ちゃまは、私達がしっかりとお守りいたします」

「おう、オレ達に任せな。いい土産話、期待してるぜ茜さん」

「ええ、私もそれを楽しみにしてるわ。・・・それじゃ、行ってくるわね」

「うん・・・行ってらっしゃい、母さん」

 誠人達に見送られ、茜は新たなる冒険の旅に向かった。そんな彼女の背中を見送ると、誠人は伸びをしながら言った。

「さて、勉強の続きといきますか。明日から、いよいよ中間テストだし」

「うぐっ・・・誠人さん、なんで今そういうこと思い出させます?」

「だって、事実だからしょうがないじゃないか。どんなに嘆いたところで、明日は、未来は必ずやってくる。さ、勉強に集中しないと」

 事もなげに言うと、誠人は自室へ向かっていった。そして部屋のカレンダーを見ながら、少し寂しげな表情で呟く。

「そう・・・必ずやってくるんだ。どんなに抗っても、未来というものが・・・」

 自分を戒めるために、誠人はカレンダーの日付に『共通テストまであと〇〇日』と書き込むようになっていた。過ぎた日付にバツ印をつけるたびに、誠人は二つの時が迫っていることを身に染みて思い知らされていた。

(ミナミ・・・・・・あと何日、君達と一緒にいられるんだろうな・・・・・・)


 一方。DOE社と並ぶ宇宙で指折りの軍事企業・ネビュラカンパニー。その研究室の一つに、社長であるバラム・リーベルトが姿を見せていた。

「よし・・・準備はいいな?」

「はい。お願いします、社長」

 研究員の言葉にうなずくと、バラムは手にした四角い装置を目の前の台の上に置いた。するとその上に用意されていた機械から、いくつもの光が装置に向けて照射される。

 その光を、バラムはまばたき一つせずじっと見つめていた。そして光が収まった時、黒かった装置には金の装飾が施され、中央にはネビュラカンパニーの社章が金と赤で刻まれた。

「完成率、80%か」

「はい。我々ができるのは、ここまででございます」

「ふむ・・・・・・ソンブラー、いるか?」

 新たな姿に生まれ変わった装置を手にしながら、バラムが呼びかける。すると彼の背後に、黒いマントを纏った女が一瞬で姿を現した。

「はっ、ここに」

「いよいよこの時が来たぞ。ソンブラー、虹崎誠人を襲い、奴が持つイリスバックルを奪え」

 手にした装置を腹心のリヤ・ソンブラーに差し出しながら、バラムは彼女にそう命じた。それを受け取ると、ソンブラーはバラムに首を垂れる。

「承知しました。では、直ちに・・・」

 ソンブラーはその体に黒い霧を纏い、一瞬でその場から消え失せた。それを見届けると、バラムは誰に言うともなく呟く。

「ついにここまで来た・・・いよいよ、我が社の画期的な新商品が完成する。誰にも・・・邪魔はさせん・・・!」

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