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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第28話「相棒」前編

 翌朝。都内某所を走るバスに、一人の男が乗り込んだ。

 男はフードを目深にかぶり、バスに乗る直前周囲を警戒するようにきょろきょろと見まわしていた。乗り込んでからも注意深く周囲の乗客に目を向けていたが、やがて安堵したようにため息をついて空いた座席に腰を下ろす。

 だが、その直後であった。運転手が懐からボールのような物を取り出すと、それを男の足元に転がした。ボールは男の足元にぶつかって止まり、次の瞬間その中から緑色の液体が溢れ出した。

「あ・・・ああ・・・うあああああああああああああああああっ!!」

 一瞬絶望の表情を浮かべた男の体を、液体は瞬く間に包み込んでいった。悲鳴を上げる男の体は液体に飲み込まれ、やがて液体が彼の体を離れると、そこには衣服を纏った白骨のみが残されていた。

「うわああああああああああああっ!」

「きゃあああああああああああっ!」

 その惨劇を目の当たりにした他の乗客が、相次いで悲鳴を上げる。そして液体は次の獲物を求め、他の乗客を襲い始めた。

「う・・・うわああああああああっ!」

「きゃあああああああああああっ!!」

 乗客達の悲鳴と断末魔が、バスの中にこだまする。だが運転手は、ただ黙々とバスを運転し続けるのだった。



 それから、数十分後。街外れで停車したバスを、偶然近くを通りかかったカグラとミュウが発見した。

「あれ・・・変ですね。あそこ、バス停も何もないのに・・・」

「気になるね・・・ちょっと、行ってみるか」

 不審に思ったカグラとミュウが、バスに近づいてその中に入り込む。そこで二人が目にしたのは、地面に脱ぎ捨てられた数十人分の衣服と、服を纏った一体の白骨死体であった。

「これは・・・一体、何があったっていうんだい・・・?」

 あまりに異様な光景に、カグラが思わず声を上げる。とその時、座席を調べていたミュウがある物を発見した。

「ん?これって・・・」

 ミュウが目にしたのは、座席の隅で蠢く小さな緑色の液体であった。興味本位で彼女がそれに触れようとした、次の瞬間――

「触るな!」

 鋭い声が車内に響き渡り、同時に一本の針が風を切って飛んできたと思うと、ミュウが触れようとしていた液体を貫いた。反射的に手を引っ込めるミュウの目の前で、液体は針から放たれる熱によって蒸発し、程なく消滅した。

「運が良かったな。触れていたら、お前もこの乗客達と同じ運命をたどっていた」

 ミュウとカグラが視界を声のした方へ向けると、そこにはGPブレスを身に着けた一人の青年の姿があった。

「あ・・・あんた、カムイじゃないか!」

 嬉しそうに小さく叫ぶと、カグラは青年の方へ駆け寄った。カムイと呼ばれた青年も、嬉しそうな微笑みをカグラに向ける。

「久しぶりだな、カグラ」

「ああ、本っ当に久しぶりだ!まさかこの星で、あんたに会えるとはね!」

「あの・・・お知り合いなんですか?この人と」

 ミュウが問いかけると、カグラは大きくうなずいて答えた。

「ああ、紹介するよ。こいつはカムイっていって、あたしがこの星に来る1ヶ月前まで、バディだった男だ」

「バディって・・・相棒、ってことですか?」

「ああ、そうだ。銀河警察の上層部も、よほど人を見る目がないと見える。この俺に、まさかこんなじゃじゃ馬のお守りを命じるとはな」

「ふん、減らず口も相変わらずだね。お守りをしてやってたのは一体どっちだい?」

 軽口を叩き合うカグラとカムイの姿を見て、ミュウは確信した。この二人は、お互いのことを心の底から信頼し合っている、まさに理想的なバディなのだと。

「でも、なんであんたがこの星に?・・・まさか、どこかの犯罪者を追ってきた、とか?」

「ああ・・・残念ながらその通りだ。そしてもう一つ残念なことに、俺が追ってきた男の一人が、今この場で見つかった・・・・・・白骨死体となってな」

「それ、まさか・・・!」

 うめくように声を上げると、カグラは唯一白骨が残っている死体に目を向けた。カムイは重々しくうなずくと、白骨死体に目を向けながら語り始めた。

「この男は、様々な惑星で犯罪行為を働いていた、卑劣な三人組の一人だ。俺の手で必ず捕まえてやると思っていたが、まさかこいつも犠牲者になるとは・・・」

「それって・・・さっきの変な液体が、関係しているんですか?」

 先ほどの奇妙な液体を思い出し、ミュウがカムイに問いかけた。

「そうだ。あれこそが、今回の事件に使用された恐るべき殺戮兵器・・・・・・宇宙カビだ」


☆☆☆


「宇宙カビ?何ですか、それは?」

 数十分後。カグラとミュウが連れてきたカムイから話を聞いた誠人が、初めて聞いた物質の名前に思わず声を上げた。

「正式名称は異なるが、ここでは便宜的に宇宙カビと呼ばせてもらう」

 誠人にそう答えると、カムイは自らのGPブレスを使って宇宙カビの情報をホログラムで映し出した。

「恐らくはこの星にもあると思うが、宇宙の大半の惑星にはカビというものが存在する。程度の差こそあれ、どの星でも有害な物質ではあるが、ザバルトという惑星で繁殖するカビは、他の星のそれとは一線を画して危険な存在だ」

 そう言うと、カムイはある映像を映し出した。そこには両手足を縛られ、目隠しをされて横たわる一人の男に、フードを纏った人物が不気味な液体をかける様子が映されていた。

「うっ、うわあああああっ!うあああああああああああああっ!!」

 液体はあっという間に悶える男の体を覆いつくし、数回不気味な輝きを放つと、潮が引くように男の体から離れていった。男が横たわっていた場所には、彼が身に着けていた粗末な衣服だけが残されていた。

「これが・・・宇宙カビ・・・!」

「おえっ・・・キリア、気分悪くなってきた・・・」

 衝撃的な映像に、レイとキリアが思わず顔をしかめて声を上げた。その映像を消しながら、カムイがさらに説明を続ける。

「見ての通り、このカビは生物の体を瞬く間に侵食・溶解し、吸収するという恐るべき性質を秘めている。それ故に、ザバルトの住民はこのカビを悪魔の使者と呼んで恐れているというが・・・・・・このカビの威力に目をつけ、悪用しようとする者達が現れた」

 そこで一旦言葉を切ると、カムイは三人の男の顔を映し出した。そのうちの一人は、先ほどバスで白骨死体となって発見された男であった。

「この三人は、いずれもザバルトの出身だ。だが奴らは宇宙カビを恐れず、むしろ兵器として売り出し、巨万の富を得ようとしていた。しかも、ネビュラカンパニーを始めとするいくつかの大企業が、このカビに興味を示していたようでな」

「そんな・・・もしこんなものが、兵器として使われたら・・・!」

「ええ。恐らくは、史上最悪の殺人兵器となるでしょう」

 声を震わせて言った茜に応えると、カムイは再び三人の男の映像に目を向けた。

「奴らはいくつもの星で宇宙カビの人体実験を行い、多くの命を奪ってきた。俺は奴らを徹底的に追い、逮捕しようとしたのだが・・・・・・残念なことに、連中はこの星に逃げ込んできてしまった」

「まあ、この星は本来、銀河警察の管轄外ですからね。それで、その三人組の居場所は分かってるんですか?」

 ミナミが尋ねると、カムイは残念そうに顔をしかめた。

「いや・・・俺が居場所を掴んでいたのは、この男・・・タルフ・ケーニグだけだ。だが数十分前、彼は白骨死体となって発見された。宇宙カビにやられてな」

 カムイがGPブレスを操作すると、タルフのホログラム映像に赤いバツ印がつけられた。それを見て、ミュウが疑問の声を上げる。

「でも・・・どうしてタルフが、宇宙カビにやられたんでしょう?宇宙カビって、タルフ達が実験のために持ち込んだんですよね?」

「そうだ。これはあくまで俺の推測だが、恐らくは、この三人組の間で仲間割れがあったんだろう。そしてタルフは不運にも、宇宙カビを持っていなかった」

「つまり・・・残る二人のどちらか、もしくは両方が、タルフを殺したということですか?」

「きっとそうに違いない。それも、無関係な人達を巻き込んでね」

 カムイに問いかけた誠人に、カグラが怒りに声を震わせて応えた。

「いずれにせよ、残る二人・・・ハモン・ダイラとヌーヴ・カミュラの居場所を突き止め、宇宙カビを回収するのが目下の急務だ。タルフの遺体に残されていた通信端末を使えば、二人の居場所を追えるかもしれない。・・・君達にも、協力を依頼したいのだが」

「もちろん、協力します」

 カムイの言葉に、誠人が真っ先に賛同の声を上げた。

「こんな恐ろしいカビ、放っておくわけにはいきません」

「なら、私も。誠人さんを守るのが、私の一番の任務ですから!」

 誠人に続き、ミナミもカムイに協力することを宣言した。キリアとミュウもそれに続く。

「キリアも手伝うよ!」

「ボクも!」

「そうか・・・とてもありがたい。恩に着る」

 次々と賛同の声を上げる刑事達に、カムイは深く頭を下げた。カグラが誇らしそうにカムイに告げる。

「カムイ、こいつらの腕は信用していいよ。確かに経験こそ浅いけど、並の刑事以上の死線を潜り抜けた連中ばかりだからね。そうだろ、レイ?」

 カグラが声をかけると、レイも力強くうなずいた。

「そうね。なんとしても、宇宙カビをこっちで押さえないと」

「よし。ではまず、タルフの通信端末を解析してみよう。カグラ、手伝ってもらえるか?」

「もちろん!茜さん、部屋一つ借りますね!」

 意気揚々と声を上げながら、カグラはカムイと共にリビングを後にした。そんな二人の姿を見ながら、キリアが誠人達に声をかける。

「ねえねえ、なんかいい感じじゃない?あの二人」

「あ、キリアちゃんもそう思った?ボクもさっきからずっと思ってたんだ。あの二人・・・もしかしたら、って!」

「残念だけど、あの二人はそういう関係ってわけじゃないわ」

 カグラとカムイの仲を想像して盛り上がるキリアとミュウに、レイが冷静な言葉をかけた。

「おや、レイはあのカムイって刑事、知ってるんですか?」

「・・・まだ、カグラとの仲が悪かった頃、一度だけ会ったことがある。あの二人すごく仲が良かったから、私もキリア達と同じようなことを考えたの」

 ミナミにそう答えると、レイは近くにあったソファに座り込んだ。

「でも、それはカムイにはっきりと否定された。『カグラは最高のバディだけど、最高のパートナーは別にいる』って、そう言っていたの」

「それは、つまり・・・」

 誠人が声を上げると、レイは小さくうなずいて言った。

「きっと、そのことはカグラも知ってる。例え、彼女がカムイにそういう想いを抱いていたとしても、きっと自分から身を引いているはず。・・・あの子、ガサツに見えてそういう所には、すごく敏感だから」

 まるでカグラのことをすべて理解しているかのように、レイはそう言い切った。そんな彼女の姿は、カグラを嫌っていた頃のレイを知る誠人とミナミにとって、どこか感慨深いものがあった。



「いやあ、あんたとまた仕事ができるなんて、夢にも思わなかったよ」

 数分後。端末を解析しながら嬉しそうに声を上げたカグラに、カムイも笑顔で言葉を返した。

「俺もだ。まさか連中が、こんな辺境の星に逃げ込むとは思わなかったのでな」

「でも、変わらず元気そうで良かったよ。・・・あ、ナタリーは元気?あれから、仲は進展してるのかい?」

『ナタリー』。その名を口にした瞬間、カムイの表情が一変した。

「彼女は・・・・・・死んだ」

「え・・・?」

 カムイの言葉に、カグラは大きく目を見開いた。

「一か月前のことだ。俺はとある惑星で、タルフ達による宇宙カビの実験を突き止め、そしてそれを阻止した。だが・・・・・・奴らは俺の家を突き止め、報復として宇宙カビを放った。・・・俺はその時留守だったが、待ってくれていたナタリーが・・・宇宙カビの犠牲に・・・!」

 怒りに声を震わせながら、カムイは握り締めた拳をもう片方の手に叩き込んだ。その薬指には、小さな宝石が飾られた指輪がはめられている。

「半年後には、式を上げるつもりだった。ナタリーも、それを毎日楽しみにしてくれていた。それを・・・奴らは・・・!」

 かつての相棒が直面したあまりに残酷な現実に、カグラはかける言葉を見つけられなかった。ただただ同情の視線を向ける彼女に気づくと、カムイは我に返ったように言葉を発した。

「すまない・・・私情で熱くなるとは、俺もまだ刑事としては未熟だな」

「そんなこと・・・ないよ。だって、それが人間ってもんじゃないか」

 いつになく熱のこもった言葉で、カグラはカムイを励ました。

「私情に左右されて何が悪いのさ。あたし達はロボットじゃない。感情を持った、生きた人間だ。その感情があるから、悪を憎む心だって生まれる。理不尽な犯罪に立ち向かおうっていう、勇気だって生まれる。それこそが、あたし達刑事の力の源じゃないか」

 カグラのその言葉を受け、カムイはふっと小さな笑みを浮かべた。

「ああ・・・そうかもな。・・・やはり、お前に会ったのは正解だった。お前の言葉は、いつも俺に力をくれる」

「そ、そうかい?・・・なら、嬉しいよ・・・」

 照れ臭そうに頬を赤らめながら、カグラがいつになく小さな声で言った。するとその時、端末の解析が完了した。

「一人の位置が特定できた。・・・この信号は、ヌーヴ・カミュラの端末から発せられている」

「よし・・・じゃあ、行くかい?」

「ああ。奴を捕まえれば、きっとハモンの居場所も分かる。一刻も早くこの事件を終わらせるのが、ナタリーへの手向けにもなる」

 そんな二人の会話を、廊下を掃除していたシルフィが立ち聞きしていた。どこか深刻そうな表情を浮かべるシルフィに、彼女と体を共有するディアナが声をかける。

『その様子・・・どうやらオレと同じこと考えてるようだな、シルフィ?』

「ええ、そうみたいね。・・・いずれにせよこの事件、注意深く見守る必要があるわ・・・」


☆☆☆


 それから、およそ一時間後。誠人達の姿は、とあるショッピングモールにあった。

「こちらレイ。β、ヌーヴと思しき奴は見つかった?」

 キリアとミュウと共に周囲を警戒するレイが、GPブレスで誠人に問いかけた。誠人もミナミと共に周囲を注意深く観察しながら、レイに言葉を返す。

「いえ、こっちは・・・カムイさん達はどうですか?」

「あいにく、こっちもそれらしき奴の姿は見えない。だが、端末の座標は確かにこの辺りだ。この建物のどこかに、奴がいる」

「奴が宇宙カビを持ってるとしたら、早いとこ見つけないと。・・・ん?あれは・・・」

 その時、カムイの近くにいたカグラが一人の不審人物を発見した。黒いフード付きの外套を纏い、どこか落ち着かない様子で周囲を見渡すその男が、一瞬その顔をカグラ達に向けた。

「あれは・・・ヌーヴだ!間違いない!」

 カグラのGPブレスの顔認証システムが、男をヌーヴ・カミュラと断定した。ヌーヴも異変に気付いたのか、踵を返してその場から逃走を図る。

「カグラ、追ってくれ。俺は回り込む、挟み撃ちといこう」

「オッケー・・・皆、ヌーヴが見つかった!急いで!」

 誠人達のGPブレスにヌーヴの位置座標を送りながら、カグラは全速力でヌーヴを追った。ヌーヴも追われていることに気づいたのか、人ごみの中に逃げ込んでカグラの目をくらませようとする。

「逃がすか・・・・・・止まれ!ヌーヴ・カミュラ!」

 だがカグラの必死の追跡も虚しく、ヌーヴは巧みに人ごみや曲がり角を使用し、従業員の専用通路に逃げ込んだ。ほっと一息ついて施設の外に向かおうとした、その時であった。

「な・・・なんだ、お前は!?」

 突然、目の前に装甲服を身に纏った、謎の人物が姿を現した。その人物は手にした球体をヌーヴの足元に転がし、球体の動きが止まった次の瞬間、その中から宇宙カビがあふれ出してきた。

「まさか・・・お前がタルフを・・・!?」

 全てを理解したヌーヴが、絶望の表情で目の前の人物に問いかける。だがその問いかけにも、装甲服を纏った人物は何も答えなかった。

「嫌だ・・・嫌だああああああああっ!!」



「カグラさん!ヌーヴは!?」

 一方。カグラから連絡を受けた誠人達が、彼女のもとに駆け付けてきた。

「見失っちまった。カムイが、背後から回り込んでるはずだけど・・・」

「うわああああああああああああああああああっ!!」

 その時、どこからか男の悲鳴が聞こえてきた。すぐにそちらに駆け出した誠人達は、従業員用の通路でおぞましい光景を目にした。

「うっ・・・!これは・・・!」

 思わず声を上げた誠人が目にしたのは、ヌーヴが着ていた服と同じ衣服を纏った白骨死体から、緑色に光る宇宙カビが離れていくところだった。宇宙カビは装甲服を纏った謎の人物が持つ、カプセルのような物に収納されていく。

「宇宙カビ・・・まさかあんた、ハモン・ダイラかい?」

 戦闘モードに切り替えたGPブレスを突き付けながら、カグラが謎の人物に問いかけた。装甲服の人物はそれに答えず、左手の装置から光弾のような物を発射すると、通路の壁を破壊して一般客のいるエリアに逃げ込んだ。

「あ・・・待て!」

 カグラを先頭に、誠人達が慌ててその後を追う。装甲服の人物は手にしたカプセルの蓋を開け、騒然とする利用客達の方へ振り返った。

「まさか・・・ここで宇宙カビを使う気!?」

「そうだ。こいつらには死んでもらう。止められるものなら止めてみろ」

 エコーがかかった声でキリアに答えると、謎の人物はカプセルの蓋を開けて宇宙カビを放出した。宇宙カビはしばらく床で波打っていたが、程なく利用客達を獲物と定めて人々の方へ向かっていく。

「止めなきゃ!ミュウ、キリア、手伝って!」

『Start Up、Magma Scorpion』

 カグラは大きくジャンプして宇宙カビの方へ駆け寄り、GPブレスの光弾の威力を最大にして宇宙カビに撃ち込んだ。彼女が召還したマグマスコーピオンも、尻尾から放つ火炎を宇宙カビに浴びせかける。

「宇宙カビは、熱に弱いんだ。GPブレスの光弾を最大威力にして、その熱でカビを殺すんだよ!」

「は・・・はい!」

 遅れて駆けつけたキリアとミュウも、GPブレスの威力を最大に上げてカグラに加勢する。一方の誠人とミナミ、レイの三人は、空のカプセルを投げ捨てた装甲服の人物と対峙していた。

「あんたがタルフとヌーヴを殺した犯人ですね?一度しか言いません、大人しく投降しなさい!」

「銀河警察か。悪いが、今捕まるわけにはいかん」

 ミナミにそう答えると、謎の人物は左腕の装置から光弾を放ち、誠人達に威嚇射撃を浴びせかけた。その攻撃をなんとかかわしながら、誠人はイリスバックルを装着する。

「ミナミ、行くぞ」

「はい!」

 誠人はイリスバックルを待機モードにすると、ホルダーからグランドのカードを取り出した。それを見て装甲服の人物が再度光弾を放とうとしたが、それをレイが見逃すはずもない。

「させない・・・!」

 レイが右手をかざすと周囲の空気中の水分が水に変換され、彼女が手を伸ばすと大量の水が水流となって謎の人物に襲い掛かった。その攻撃に敵が身動きを封じられている間に、誠人はカードをスキャンさせた。

「ありがとうございます!ユナイト・オン!」

『Read Complete.グランドアーマー!』

 ミナミと合体してイリスになると、誠人はソードモードのプラモデラッシャーを手に謎の敵に挑みかかった。敵も長剣を手にすると、イリスと互角以上の腕前でその攻撃をさばき、反撃を仕掛けてくる。

『くっ・・・誠人さん、こいつ手強いですよ・・・!』

「そうだな・・・だったら・・・!」

『Start Up、Land Tiger』

 誠人はランドタイガーを召還すると、プラモデラッシャーに合体させてその威力を増大させ、再度敵に挑みかかった。威力が上がった攻撃にわずかに怯みはしたものの、それでも敵は余裕の態度を崩さない。

「その程度の攻撃で、俺を止められると思うな・・・!」

 装甲を纏った男は剣を振り回し、その刃に赤いオーラを纏わせた。そして勢いよく剣を振るい、イリスに向けてオーラの刃を放つ。

『くっ・・・うわあああああああああああっ!』

 その一撃を剣で受け止めようとしたイリスだったが、あまりの威力の大きさに防ぎきれず、大きく後ろに吹き飛ばされた。

「あの技・・・くっ・・・!」

 敵の技を見た瞬間、レイは何かに気づいたように声を上げた。だが彼女はすぐに考えを切り替え、GPブレスから光弾を乱射する。

 だがその攻撃も、男の身を包む装甲には傷一つつけられなかった。悠々と退散しようとする男だったが、その時彼をある物が襲った。

「うっ・・・これは・・・!?」

 男に攻撃を仕掛けたのは、シルフィのプラモデロイドであるウィンドペガサスであった。空を飛んで素早い攻撃を仕掛けるウィンドペガサスに、男は翻弄される。

「くっ・・・邪魔だ!」

 男は小さく叫ぶと、手にした数本の針のような物をウィンドペガサスに投げつけた。そのうちの一本がウィンドペガサスの片翼を射抜き、そこから炎が上がってウィンドペガサスが床に落下する。

「これ以上は時間の無駄だ。ふん!」

 男は光弾を乱射して誠人達の動きを封じ、あっという間に姿を消した。それと時を同じくして、カグラ達はようやく宇宙カビを消滅させることに成功した。

「ふう・・・終わった・・・」

 ほっとしたように呟くと、キリアがその場に腰を下ろした。それと同時に、カムイが現場に駆け付ける。

「カグラ、ヌーヴはどこだ?」

「それが・・・変な奴に殺された。多分、ハモン・ダイラだと思うんだけど、装甲服を纏ってて正体は分からなかった」

 残念そうにそう告げたカグラの言葉に、カムイも表情を暗くした。

「そうか・・・いずれにせよ、容疑者は残り一人。今は、奴を捜そう」

 カムイの言葉にうなずくと、カグラは彼について店を後にした。変身を解除した誠人達もそれに続く中、レイは地面に落ちたウィンドペガサスを複雑な表情で拾い上げるのだった。

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