第25話「心、体、一つに」後編
「はあっ!」
『うわあっ!・・・くっ、あいつ前より強くなってますよ、誠人さん・・・!』
戦いが始まって、数分が経過した。勢いよくマウォルスに挑みかかったイリスではあったが、新しいスーツを纏ったマウォルスの力は先ほどの戦闘の時よりも強化されていた。
「当然だ、これはDOE社から買った新スーツ。俺の力は、このスーツによって先ほどの数倍に増幅されている!」
得意げに言い放つと、マウォルスはイリスに向かって剣を振り下ろした。その一撃にイリスは吹き飛ばされ、大きなダメージを受ける。
「近距離戦は不利か・・・なら、ミュウ!」
「うん!」
『フォレストアーマー!』
ミナミに代わってミュウと合体すると、イリスはアローモードのプラモデラッシャーから光の矢を連射した。だがマウォルスは超人的な脚力でそれをことごとく回避し、逆にイリスの懐に一気に飛び込むと、剣の切っ先をイリスバックルに押し当てた。
「あ、しまった!」
「もらったぞ、貴様の力。喰らえ、秘技・草木自然斬!」
マウォルスの剣から放たれた緑色の波動が、イリスの体を大きく吹き飛ばした。その拍子にミュウとの合体が解除され、イリスの姿が誠人に戻る。
「お兄ちゃん、ミュウ!・・・だったら!」
キリアが両手に武器を握り締め、高速移動でマウォルスに迫ろうとした。だがマウォルスはスーツの力を使ってその攻撃をかわし、逆にキリアの胸ぐらを掴んで締め上げた。
「キリア!」
「よし・・・まず一人」
必死にソルジャーロイドと戦うレイが声を上げる中、マウォルスはキリアに剣を突き立てた。そして彼女を突き刺そうと腕を引いた時、その腕をイリスV2となった誠人ががっちりと掴んで静止させた。
「させない・・・お前には、誰一人殺させない!」
「イリスV2・・・いいだろう。お前には、借りもあることだしな!」
マウォルスはキリアの体を投げ捨てると、体を大きく動かしてイリスV2を振り払った。そして剣を握り直し、雄たけびと共にイリスV2に挑みかかっていった。
一方。公園に残されたシルフィは、ブランコに腰を下ろしてディアナに話しかけていた。
「・・・本当なの?もう二度と、表に出ないと言ったのは」
『ああ・・・これ以上、お前に迷惑かけるわけにもいかねえだろ。それに・・・』
そこで一旦言葉を切ると、それきりディアナは黙りこくった。先を促すように、シルフィが問いかける。
「それに、何よ?」
『・・・もしかしたらの話だけどよ・・・・・・オレがお前の中でずっと大人しくしてりゃ、そのうちオレという人格が消えるかもしれないと思ってよ。そうすりゃ、この体はお前だけのもんだ。嫌いな奴がいなくなって、晴れてお前は独り立ち、ってわけさ』
「な・・・馬鹿なことを言わないで!そんな・・・あなたが、消える・・・なんて・・・!」
思いがけないディアナの言葉に、シルフィは思わず大声を上げた。そんな彼女の姿に、ディアナが少し戸惑ったように声を上げる。
『何だよ。お前、オレのことが大嫌いなんだろ?そのオレがいなくなるんだったら、万々歳じゃねえのか?』
「何を言ってるのよ?あなたは・・・あなたは私にとって、かけがえのない家族なのよ?そのあなたがいなくなるなんて、そんなの・・・堪えられないわよ・・・!」
『シルフィ・・・』
叫ぶように口にしたシルフィの両目から、大粒の涙がこぼれ始めた。シルフィはそれを拭うことなく、自らの体を強く抱きしめた。
「ねえ・・・覚えてる?ディアナ。私とあなたが、初めて言葉を交わした時のこと」
『ああ・・・よーく覚えてるさ。あれは5歳の頃、孤児院で過ごしてた時だったよな』
「ええ・・・あの時も、よくいじめられた。目の色が左右で違う、たったそれだけの理由でね・・・」
『その時』のことを、二人はよく覚えている。その日、いじめっ子達に追い詰められていたシルフィの姿が、突如として別人のように変わった。彼女は普段のシルフィとは思えない強さでいじめっ子達を返り討ちにし、逃げ惑う彼らの背中に言葉を投げかけた。
「いいか!今度こいつをいじめたら、オレが許さないからな!」
勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、彼女はいじめっ子達の後ろ姿を見ていた。と、その時――
『あなた・・・誰?それに・・・ここどこ?』
突然訪れた初めての感覚に、幼いシルフィは怯えて声を上げた。
「あ、いっけね・・・体、返さなきゃな」
そう口にした途端、その姿は再びシルフィへと戻った。驚くシルフィに、声が体の中から話しかける。
『よっ。はじめまして・・・になるよな?』
「こ・・・声だ!でも・・・わたしの中から聞こえてくる・・・」
『そりゃそうだよ、お前の体の中にいるんだもん。・・・ごめんな。いきなり出てきて、びっくりしたよな?』
「う、うん・・・」
謎の声に驚きながらも、シルフィはその声になぜか強い親近感を抱いていた。彼女はその場に腰掛けると、確かめるように声に問いかけた。
「ねえ、さっき助けてくれたの・・・あなた?」
『へへーん、その通り。どうだ?オレ、強かったろ?』
「うん!すごくかっこよかった!・・・ありがとう、助けてくれて」
『え?い、いやあ・・・えっと、こういう時なんて言えばいいんだ?』
戸惑うようなその声に、シルフィはクスリと笑って答えた。
「先生が言ってた。そういう時は、『どういたしまして』って言うんだって」
『そ、そうなんだ。じゃあ・・・どう、いたしまして・・・』
ぎこちない言い方に、シルフィは思わず吹き出してしまった。彼女はそこで、ふと気になったことを尋ねてみた。
「ねえ・・・あなた、お名前は?」
『え?・・・オレの・・・名前・・・?』
どこか困ったようなその声に、シルフィはあることに気がついた。
「もしかして・・・お名前ないの?」
『あ、ああ・・・ずっと、お前の中にいたからな・・・』
「そうなんだ。・・・じゃあ、わたしがお名前つけてあげる。あなたは・・・ディアナ。もしわたしに妹ができたら、つけてあげようと思ってた名前!」
『ディアナ』。その名前を、彼女はすぐに気に入った。
『ディアナ、か・・・じゃあ、オレはディアナで・・・』
「わたしは、シルフィ!よろしくね、ディアナ!」
「あれからずっと、私達はいつも一緒だった。いっぱい喧嘩して、いっぱい笑い合って、泣き合って・・・・・・その思い出の全てが、私にとって、かけがえのない宝物よ」
『シルフィ・・・』
自分の体を優しく抱きしめながら、シルフィはディアナに心からの言葉を贈った。その彼女の両目から、再び涙が流れ出す。
「なのに・・・私は、あなたにとてもひどいことを言ってしまった。一時の感情に流されて、あなたのこと、大嫌いなんて・・・・・・本当に、ごめんなさい・・・!」
涙に声を震わせながら、シルフィは心からディアナに詫びた。するとディアナが、穏やかな口調でシルフィに言葉を返す。
『いいさ。赦すよ、お前のこと。・・・っていうか、オレがそんなこと言えた立場じゃねえんだよな。オレの方こそ、お前の気持ち踏みにじって、とんでもないことしちまった。・・・すまなかったな、本当に』
まるで真正面から向き合って言われているかのように、ディアナの言葉はシルフィの胸を打った。彼女は目元の涙を拭うと、小さく穏やかな笑みを浮かべる。
「ええ・・・私も赦すわ、あなたのこと。だから・・・今度こそ一緒に止めましょう。お兄様と・・・お母様を」
☆☆☆
「うわああああああああああっ!」
一方。マウォルスの猛攻の前に、イリスV2は完全なる敗北を喫していた。
「誠人君!・・・皆!」
悲痛な声で叫んだ茜の目の前には、変身が解除されて倒れこむ誠人と、その戦いの余波を受けて同じく倒れこむ刑事達の姿があった。彼女達も大きなダメージを受け、すぐに立ち上がれる者はいない。
「終わりだ。全員まとめて、その命を奪ってやる」
剣を握り直しながら、マウォルスが誠人達に言い放つ。だがその時、ソフィアがおぼつかない足取りながらも必死に立ち上がった。
「まだ・・・勝負はついてない。・・・私達には、最後の切り札がある!」
「切り札・・・それはシルフィのことですね」
マウォルスの背後に控えるモイラが、ソフィアを哀れむような目で見つめて言った。
「しかし、あの子が来て何ができるというのです?まさか、この状況を逆転できるとでも?」
と、その時であった。どこからかバイク音が聞こえてきたと思うと、デュアルスピーダーに跨ったシルフィが、ソフィアとマウォルスの間に割って入ってきた。
「皆様・・・お待たせ致しました!」
「シルフィ・・・どうやら、ディアナと心ゆくまで話せたみたいね」
ソフィアの言葉にうなずくと、シルフィはヘルメットを外してバイクから降り、兄と母にその鋭い視線を向けた。
「お兄様、お母様・・・・・・お二人は、私達が止めてみせます。あなた達に、これ以上の罪は重ねさせない・・・!」
「フン、ほざけ。貴様など、我が相手ではないわ」
一度倒したシルフィを、マウォルスは完全に嘗めきっていた。するとその時、シルフィの姿がディアナへと変わり、その腰にGPドライバーV2を装着した。
「どうかな?その言葉、後悔させてやるぜ」
「ディアナさん!・・・ということは、まさか!」
思わず声を上げた誠人の目の前で、ディアナの姿が再びシルフィへと戻った。彼女はカードホルダーからハリケーンのカードを抜き取ると、ドライバーにセットしてスロットを展開した。
「アーマー・オン!」
『Read Complete.疾風!烈風!暴風!アーマーインハリケーン!ハリケーン!』
ハリケーンアーマーのデュアルに変身すると、シルフィはフュージョントリガーを握り締め、そのスイッチを押した。
『フュージョントリガー、スタートアップ』
電子音声が流れると、シルフィは一瞬の沈黙の後にトリガーを握り直し、ドライバーの右上部にセットした。覚悟したように目をつぶったシルフィだったが、先ほどとは違いその体に稲妻は走らなかった。
「よし・・・行くわよ、ディアナ!」
『ああ・・・行こうぜ、シルフィ!』
デュアルはホルダーからライトニングのカードを取り出してスロットをスライドさせ、フュージョントリガーのスイッチを押した。するとトリガーから、新たな電子音声が発せられる。
『レディ』
GPドライバーV2から、これまでのものとは全く異なる待機音声が流れ始めた。デュアルはカードを握り直すと、一気にドライバーに挿し込んでスロットを展開させた。
『フュージョン、スタート!』
フュージョントリガーから電子音声が流れた、次の瞬間。デュアルの右半身がライトニングアーマーのものへと変化し始め、同時にドライバーから新たな電子音声が流れ始めた。
『疾風!迅雷!烈風!激雷!暴風!強雷!二心一体、ライトニングハリケーン!』
電子音声が鳴り終わると同時に、デュアルは右半身がライトニングアーマー、左半身がハリケーンアーマーの姿へと変わり、複眼のバイザーがより刺々しい形となった。その複眼が紫と翠に輝くと、シルフィ達はあることに気が付いた。
『これ・・・もしかして、オレ達・・・』
「ええ、今私達は一心同体。あなたと私の力が一つとなって、新たなデュアルを生み出したの・・・!」
新たなデュアル・ライトニングハリケーンの姿に、その場にいた誰もが息を飲んだ。だがそれでも、マウォルスは尻込みすることなく次の行動に移る。
「フン、所詮二つが一つになったところで、貴様らが俺に勝てるはずもない!」
マウォルスは剣を握り直し、雄たけびと共にデュアルに挑みかかった。そして勢いよく剣を繰り出したが、その一撃はデュアルの右手にしっかりと受け止められた。
「何!?」
「はっ!」
攻撃を受け止められてひるんだマウォルスの隙を、シルフィは見逃さなかった。その左足から繰り出された強烈なハイキックがマウォルスの体に炸裂し、同時にディアナが手を彼の剣から離すと、強烈な右ストレートをお見舞いした。
『おおりゃああっ!』
「ぐああっ!」
そのパンチの一撃に、マウォルスの体は大きく吹き飛ばされた。ハリケーンとライトニング、二つの力が一つとなったデュアルは身体能力も上がり、パンチやキックの威力もそれまでとは桁違いとなっている。
「マウォルス!・・・ソルジャーロイド、あの子を守りなさい!」
モイラの指示で、周囲に控えていたソルジャーロイドが一斉にマウォルスを庇うように立ちはだかる。するとデュアルのドライバーから、斧のような武器が飛び出してデュアルの手に収まった。
『アックスガトリング』
「これは・・・新しい武器?」
『なら早速試してみようぜ。シルフィ、お前からいけ!』
デュアルは左手に斧を握り締めると、体に風を纏わせながら周囲を浮遊し、すれ違いざまにソルジャーロイドの体を切り裂いていった。そして敵がひるんだところで、武器のカードスロットに新たなフィニッシュカードを挿し込む。
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
斧の刃に、翠色の風のエネルギーが溜まっていく。その力が最大まで溜まると、デュアルは武器のトリガーを引いた。
『ハリケーンエンド!』
「はあっ!!」
デュアルが武器を振り払うと同時に、斧に溜まっていた風のエネルギーが光の刃となり、ソルジャーロイドに向けて放たれた。それによって多くのソルジャーロイドが破壊されたが、残った機体がデュアルに攻撃を続ける。
『よし、今度はオレだ!』
『ガトリングモード』
デュアルが斧の刃の部分を反転させて持ち手にすると、それまで柄だった部分が伸びて銃身へと変化した。ガトリングモードになった武器を左手で構えると、デュアルは右手でトリガーを引いて無数の弾丸を連続で発射し、ソルジャーロイド達を撃ち抜いていく。
『こりゃすげえ・・・じゃ、こっちもこれでフィニッシュだ!』
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
デュアルはスロットのフィニッシュカードを一旦抜くと、再度スロットに装填した。すると武器の銃口に、今度は紫に光る雷のエネルギーが充填されていく。
『ライトニングエンド!』
エネルギーが最大まで溜まると、デュアルは武器のトリガーを引いた。雷のエネルギーを上乗せした無数の弾丸がソルジャーロイド達に向けて発射され、その体を粉々に粉砕した。
「すごい・・・これが、フュージョントリガーの力・・・!」
あっという間に全てのソルジャーロイドを片付けたその力に、誠人が息を飲む。その一方でデュアルは武器からフィニッシュカードを抜き取り、再び立ち上がったマウォルスに向き直った。
「お兄様・・・これで、終わりといたしましょう」
『これ以上、お前らに罪は重ねさせねえ。それが・・・オレ達の・・・』
「願いです!」
『願いだ!』
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
声を揃えて兄に言葉を投げかけると、デュアルはフィニッシュカードをベルトに装填した。一方のマウォルスも剣を握り直し、その刃にオレンジ色のオーラを纏わせる。
「ほざけ・・・喰らえ、大地断裂斬!」
マウォルスが剣を振り払い、オレンジ色の衝撃波を飛ばす。それとほぼ同時に、デュアルはドライバーのスロットを展開させ、必殺技を発動させた。
『ライトニングハリケーン!デュアルエンド!』
電子音声が鳴り響くと同時に、デュアルの体を落雷と疾風が包み込み、マウォルスが放った衝撃波を弾き飛ばした。周囲の地面に衝撃波が直撃して大爆発が起こる中、デュアルは風を全身に纏わせて上空に浮遊し、紫と翠の光に包まれた両足を同時に突き出してマウォルスに向けて急降下した。
「はあっ!」
マウォルスはオーラを纏った剣をデュアルの足にぶつけ、必死の抵抗を試みた。だがデュアルの両足を包むエネルギーの威力はすさまじく、程なく彼の剣にひびが入り、粉々に砕け散った。
「何!?」
「『はああああああああああああああっ!!』」
デュアルの両足蹴りが、身を守る術を失ったマウォルスに直撃した。その一撃はマウォルスの体を大きく吹き飛ばし、その体を地面に叩きつけた。
「馬鹿な・・・この、俺が・・・ぐあああああああああああああっ!」
よろよろと立ち上がったマウォルスのスーツから、激しい火花が散った。やがてスーツは大爆発を起こし、傷ついたマウォルスが戦意を失ってその場に倒れこむ。
「マウォルス!マウォルス!」
モイラが悲痛な叫び声をあげ、倒れる我が子のもとへ駆け寄った。マウォルスは必死に顔を動かし、母親にか細い声で詫びる。
「くっ・・・申し訳ありません、母上・・・」
「いいえ・・・あなたが無事なら、私は・・・私は・・・!」
そんな二人に、デュアルは無言で歩み寄っていった。それに気づくと、モイラは懐から短剣を取り出してデュアルに向けて構える。
「この子を殺すというのなら、私も共に殺しなさい。この子がいない世界になど、私は生きていたくありません!」
血走った目でデュアルを睨みながら、モイラは叫ぶように言った。だがその彼女の眼前で、デュアルは変身を解いてシルフィの姿に戻った。
「実の母を、実の兄を、手にかけられる者などおりましょうか。私は、あなた達の死など望みません」
「シルフィ・・・」
娘の言葉に、モイラは驚いたような表情を浮かべた。そんな母の両肩に、シルフィは優しく手を置いた。
「生きて、罪を償ってくださいませ。それが・・・私達の願いでございます」
「シルフィ・・・」
両目を涙で潤ませながら、シルフィは静かな口調で母に告げた。モイラの手から短剣が滑り落ち、地面から乾いた音が聞こえる頃には、彼女の目から殺気は消え失せていた。
☆☆☆
それから、数十分後。シルフィの手配で駆け付けた銀河警察の職員が、マウォルスとモイラを逮捕、連行していった。
「後悔するぞ。俺達を殺さなかったこと、いつか必ずな」
最後までシルフィに敵意を向けながら、マウォルスは職員に連行されていった。一方のモイラはシルフィに、穏やかな笑みを向けて言った。
「本当なら、口にすべき言葉ではないのでしょうが・・・・・・ありがとう、シルフィ」
「お母様・・・」
シルフィに小さな笑みを向けたまま、モイラは職員に連れられてシルフィの前から去った。シルフィは職員の一人に、フュージョントリガーを手渡した。
「ガイルトン長官にお渡しください。これが確かに安全な物なのかどうか、調べていただきたいのです」
「承知しました。必ず、お渡しします」
フュージョントリガーを受け取った職員が乗り込むと同時に、護送用の宇宙船が飛び立ち始めた。シルフィはその船が見えなくなるまで、じっと空を見上げていた。
「シルフィさん、あなた達に助けられたわ。ありがとう、本当に」
宇宙船が見えなくなると、解放された茜がシルフィに礼を述べた。
「私一人の力では、為せないことでした。全てはディアナの・・・そして、ソフィア様のおかげです」
茜にそう応えると、シルフィはソフィアの方に向き直り、深々と頭を下げた。
「ありがとうございました、ソフィア様」
「ふふっ、何を言っているの。これも全部、あなたとディアナの手柄よ。まずはディアナに礼を言いなさい」
どこか照れ臭そうに笑いながら、ソフィアはシルフィに言葉を返した。シルフィは続いて胸に手を置くと、ディアナにも感謝の言葉を述べた。
「あなたのおかげで、皆様を助けることができたわ。・・・ありがとう、ディアナ」
『ふっ、いいってことよ。・・・よろしくな、これからも』
「ええ・・・こちらこそ、よろしくね」
シルフィの体を使わない限り、ディアナの言葉がシルフィ以外に聞こえることはない。だがそれでも、互いをいたわる言葉をかけあっていたのだろうと、誠人達は確信するのだった。
☆☆☆
「ほう・・・これが、フュージョントリガーの力か」
その夜。ジョージに届けられたフュージョントリガーの戦闘データを分析し、眼帯の男が満足そうに声を上げた。
「フュージョントリガーは正規品、技術部が先走ってベンブリッツ刑事に届けた。・・・そのように返答いたしますが、よろしいですか?」
「ああ、その辺りのことは全て君に任せる、ガイルトン長官。・・・銀河に平和あれ」
「はっ・・・銀河に、平和あれ」
どこか歯切れの悪い口調で、ホログラムで通話するジョージが男に応えた。男はジョージのホログラムを消すと、自室の窓から広大な宇宙を眺めて呟いた。
「デュアルの進化は完了した。次は・・・虹崎誠人の番だ・・・」
第25話、いかがだったでしょうか。
今回でこの作品も折り返しとなりました。今後も連載を続けられるよう、努めてまいります。




