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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第22話「重なる体、交わる想い」前編

「ネビュラカンパニーが・・・?本当なのですか、社長?」

 宇宙某所に存在する、巨大軍事企業・DOE社の本社衛星。その社長室に呼び出されたエージェントのファルコが、社長の言葉に驚きの声を上げた。

「ああ。どうやらネビュラカンパニーは、ユナイトの力を使った新商品を開発するつもりらしい。経営不振のために新たに社長の座についた男が、とんだ荒療治で会社を立て直そうとしているようだ」

「なるほど・・・しかし、そのユナイト持ちを確保するためとはいえ、あのバンダッドファミリーを脱獄させるとは・・・」

「うむ。新社長はどうやら、目的のために手段を選ばぬ男らしい。なんでもバンダッドファミリーだけではなく、私兵まで地球に送り込んだとか。・・・いずれにせよ、面倒な男が社長になったものよ・・・」

 社長はため息をつくように言うと、一枚の紙を机の上に置いた。その紙には、新たにネビュラカンパニーの社長となった、バラム・リーベルトという壮年の男の写真が印刷されていた。



「社員諸君、私はバラム・リーベルト。この度ネビュラカンパニーの新たな社長にと打診され、謹んでそのお話を承った」

 宇宙全土に点在する、ネビュラカンパニーの支社や兵器工場。その全てに、新社長であるバラムの訓示が同時に放送された。

「諸君らも知っての通り、今我が社は危急存亡の秋を迎えている。この危機を脱するには、私を含め全ての社員が、文字通り命を懸けて職務に当たる必要がある。我が社の命は私の命、そして君達の命でもある。社員諸君、君達のその命と情熱で、我が社を永久(とわ)に発展させてくれたまえ」

 放送を終えると、バラムは社長室の自席に腰掛けた。そして手にしたタブレット型の機械に映る、各工場の従業員の仕事ぶりをチェックし始める。

「・・・む、第四兵器工場の製造管理部に、気の緩んでいる社員がいる」

 彼が目にとめたのは、あくびをしながら工場の廊下を歩く一人のヒューマノイドの社員だった。よく見ると彼の服装もずぼらで、ズボンに上着のシャツの裾を中途半端に入れている。

「あくびは大目に見るとして、この服装のたるみは許されん。・・・私だ。第四兵器工場の全職員の給料を、三ヶ月間20%カットしろ。理由は追って私から連絡すると伝えておけ」

 秘書に電話で指示を出すと、バラムはタブレットを操作して画面を二人の男女の写真に切り替えた。

「さて・・・お前達は私の期待に応えてくれような、ツインズよ」

 バラムのタブレットに映る男女。それはバンダッドファミリーのボスであるカムロを始末した、カイとメルの二人であった。



「ミナミ様、朝食をお持ちしました。・・・ミナミ様、どうか開けてくださいませ」

 その頃。部屋にこもってしまったミナミに、シルフィがドアをノックしながら声をかけていた。

『あーあ。こりゃ駄目なパターンだぜ、シルフィ。あのボウズとミナミがお互いにごめんなさいしない限り、どうにもならねえよ、これは』

 全く返事が返ってこない様子を見て、ディアナがあきらめたような声を上げた。

「うるさいわね、まだどうなるか分からないでしょ?・・・ミナミ様、ミナミさ・・・」

 その時、部屋のドアが唐突に開けられた。どこか虚ろな表情を浮かべたミナミが、シルフィの顔を見て声を上げる。

「シルフィ・・・私のことは、ほっといてください。・・・あ、これはもらっときますね。じゃあ・・・」

 シルフィの手から朝食が載った盆を取ると、ミナミは再び部屋のドアを閉めた。それを見て、ディアナが再び声を上げる。

『な?言ったとおりだったろ?』

「ええ、そうみたいね。・・・ん?」

 ディアナに不機嫌そうに言葉を返したその時、シルフィは自身のGPブレスから着信音が鳴っていることに気づいた。

「長官・・・?はい、こちらシルフィです」

「私だ。バンダッドファミリーの件はレイから報告を受けた。・・・彼らを倒せたのはよかったが、別の問題が起きてしまったようだな」

「ええ・・・ミナミ様もお坊ちゃまも、お互い意地の張り合いになってしまわれて・・・」

 部屋の中のミナミを気遣い、シルフィはやや声を潜めてジョージに言葉を返した。

「お互いを大切に想われているからこそ、余計に引き下がれなくなってしまっているのです」

「ふむ・・・だが、それは二人の間の問題だ。我々が介入すべきことではないな」

「ええ。こればかりは、お二人で解決していただかなければ」

 シルフィの言葉に小さくうなずくと、ジョージは話題を切り替えた。

「そうだ。こんな時になんだが、君達にとっては朗報を伝えようと思ってね。以前より、君達も乗り物が欲しいと言っていただろう?ついに完成したぞ、デュアル専用のマシンが」

「お・・・長官、それマジの話か!?」

 シルフィから体の主導権を奪ったディアナが、子供のように目を輝かせながらジョージに問いかけた。

「ああ。イリスピーダーの実戦データを基に、我が銀河警察の科学部が開発した、次世代マシン。それこそがこの、デュアルスピーダーだ」

 ジョージの言葉が終わると、画面に一台のバイクが映し出された。車体の右半分に紫色の雷、左半分に翠色の風を模したパーツがつけられたバイクの姿を見て、ディアナが興奮して声を上げる。

「すっげえ・・・これが、オレ達の物になるってことか・・・」

「遅くとも明日には、そちらに送ることができるだろう。君達の任務を円滑に進めるうえでも、このマシンはきっと、役に立つはずだ」



 ジョージがデュアルスピーダーの完成をシルフィ達に告げていた、まさにその頃。部屋にこもったミナミは受け取った朝食にもほとんど手を付けず、ひたすら物思いにふけっていた。

(誠人さん・・・・・・もう、私の力なんか、必要ないんでしょうか・・・・・・)

 ――もしそうなれば、君達に余計な無理をさせなくて済む。僕が、V2ドライバーの力で戦えば――

 キリアにもうイリスバックルはいらないのではないかと言われた時、誠人は前向きにそう言ってみせた。だがそれは、これからはもうミナミ達の力に頼らず、自分一人で戦うという意思表示としかミナミには思えなかった。

 ――今の君とは、合体できない・・・!――

 ――もういい。今の君と話したところで、きっと僕の気持ちは分からない――

(もう・・・誠人さんにとって私は、必要じゃない。もし・・・もし、そうだとしたら・・・・・・)

「私・・・もうここにいる意味、ないじゃないですか・・・・・・」



 一方。虹崎家を飛び出した誠人は、近所の公園で一人ブランコに腰掛けていた。

(ミナミ・・・僕は、ただ・・・)

 ――私はもう、十分休んだんです!もう十分、今までのように戦えるんです!だからさっき、合体して一緒に戦おうって、そう言ったんですよ!――

 ――私、無茶なんてしてません!やっと二つ目が完成した新型ドライバーを気軽に使ってる誠人さんの方が、よっぽど無茶をしてますよ!――

 先ほどミナミにぶつけられた言葉が、誠人の脳裏にこだました。彼はブランコを握る手に力を込めながら、声を震わせて呟いた。

「僕はただ、君に無茶をしてほしくないだけなんだ。・・・どうしてここまで嚙み合わないかな、僕達・・・」

 と、その時だった。背後から、誰かがやってくる足音が聞こえた。

「どう?少しは、熱くなってた頭は冷えた?」

「レイさん・・・キリアも・・・」

 誠人に声をかけたのは、キリアを連れてやってきたレイであった。キリアは手に持っていたタッパーを、誠人に差し出して言った。

「これ、シルフィがお兄ちゃんにって。お兄ちゃん、朝ごはんも食べずに飛び出していったから、きっとお腹がすいてるだろうって」

「そっか・・・ごめん、心配かけて」

 誠人はブランコから下りると、近くにあったベンチに腰掛けた。そしてタッパーのふたを開けると、中に入っていたおにぎりにかじりつく。

「私達への謝罪なんて必要ない。・・・必要があるとしたら、それはミナミに対してじゃなくて?」

 レイの言葉に、かすかに誠人の顔に浮かんでいた笑みが消えた。彼は食べていたおにぎりをタッパーに戻すと、二人から顔を背けて呟いた。

「僕は・・・なにも間違ったことは・・・」

「もう、素直になりなよ、お兄ちゃん。自分でも分かってるんでしょ?ちょっと言いすぎちゃったかも、って」

 誠人の顔に視線を向けながら、キリアが誠人をたしなめた。

「お兄ちゃんの気持ちも分かるよ。キリアだって、もうミナミが危険な目に遭うの、やだもん。・・・ミナミだけじゃない。レイも、ミュウも、他のみんなも同じ。もう誰にも、あんな危険な目に遭ってほしくないの」

 そこで一旦言葉を切ると、キリアは誠人の目をまっすぐ見つめて続けた。

「でも、ちゃんとその思いをミナミに伝えてあげなきゃ、いつまでもすれ違いは終わらないよ?・・・もう、子供みたいな意地の張り合いはやめて、仲直りしようよ。ね?」

 裏表のない無邪気なキリアの言葉が、誠人の胸に突き刺さった。彼女に諭される日が来ようとは、誠人は夢にも思っていなかった。

「意地、か・・・・・・確かに、僕は一方的に、ミナミに気持ちを押し付けてただけかもしれないな。・・・ミナミに傷ついてほしくないって思いを、言い訳にしてしまってた。それが、あいつの気持ちを傷つけてるって、気づいていながら・・・・・・」

 誠人は一瞬目を伏せると、決意に見た表情で顔を上げた。

「ありがとう、キリア。君のおかげで、目が覚めたよ」

「ほ・・・本当?なら・・・嬉しい、な・・・」

 照れくささに頬を赤らめながら、キリアがしどろもどろに声を上げる。レイは安堵の表情を浮かべると、誠人に声をかけた。

「β、すぐにミナミに会ってあげて。ミナミもきっと、心の底ではあなたと仲直りしたいって、そう思ってるはずだから」

「分かりました。・・・ありがとう、二人とも」

 おにぎりを急いで平らげると、誠人は公園を後にしようとした。と、その時――

「虹崎誠人。ようやく見つけたぞ」

 公園の出口に黒いスーツを纏った一人の男が現れ、誠人の前に立ち塞がった。その男は、バラムが送り込んだ私兵の一人・カイであった。

「お前は・・・誰だ?」

「答える義務はない。お前を捕らえて連行する、それが俺達の役目だ」

「左様。あなたはただ、私達と共に来てくれればいいのです」

 カイと同じく黒いスーツを纏ったメルが、誠人達の背後から姿を見せる。二人は同時に着ていたスーツを脱ぎ捨て、その下に着込んでいた専用の戦闘服を露わにした。

「こんな時に、ユナイトハンター・・・?β、ここは私達が」

「お兄ちゃんは、早くミナミの所に行ってあげて!」

「分かった・・・二人とも、気を付けて!」

 レイとキリアが、誠人を守るようにカイとメルの前に立ちはだかった。二人に後を任せて家に急ごうとした誠人だったが、カイ達が両手を宙にかざすと辺り一帯が光の壁に包まれ、そこから先への進入が不可能となった。

「な・・・何だ、これは・・・?」

「愚かな。我ら双子(ツインズ)の秘技からは、誰も逃れられぬ」

「突破したければ、私達を倒してごらんなさい」

 得意げに言い放つと、カイとメルはその両手にそれぞれ雷と炎を宿らせた。戦いが避けられないことを嫌でも悟り、誠人はイリスバックルを腰に装着する。

「相手が火を使うなら・・・レイさん、頼みます!」

「分かった。行こう、β」

 誠人はイリスバックルを待機モードにすると、ホルダーからスプラッシュのカードを取り出した。そして待機モードのバックルに、カードを勢いよくかざす。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.スプラッシュアーマー!』

 レイが変身した鎧が、誠人の身を包むイリススーツに装着されてゆく。合体が完了したイリスにメルが両手から火球を連射したが、イリスも負けじとガンモードのプラモデラッシャーから水の弾丸を発射し、火球を打ち消してゆく。

「あんたの相手はキリアだよ!」

 その一方で、キリアが得意の高速移動を活かし、カイに攻撃を仕掛けていた。始めのうちはその攻撃に翻弄されていたカイだったが、全く動じることなく右手に電の力を集中させ、球状になったと見るやそれを地面に叩きつけた。

「え!?ひやああああああっ!」

 雷の球は地面にぶつかるや広範囲に拡散し、カイの死角から襲い掛かろうとしていたキリアに直撃してその体を痺れさせた。メルの火球を打ち消して反撃に出ようとしていたイリスだったが、キリアの悲鳴に気を取られて思わずそちらに視線を向ける。

『キリア!』

 その隙に、メルはすぐさま反撃の手はずを整えた。彼女は両手に天まで届く火柱を立ち昇らせ、それを一気にイリスに浴びせかけた。

『くっ・・・ああああああっ!』

 両手から水を放出して炎を防ごうとしたイリスだったが、メルの炎はその水を瞬く間に蒸発させ、イリススーツを包み込んだ。抜群の防火能力を持つイリススーツもその威力には抗しきれず、大きく吹き飛ばされて

 地面を転がり、その弾みに変身と合体が解除された。

「くっ・・・なんて強い、炎なの・・・?」

 辛うじて火傷こそ免れたが、あまりの強さの炎にレイがうめき声を漏らす。そのすぐ近くでは、雷エネルギーによる攻撃を受けたキリアが、未だに全身に走る痺れに悶えていた。

「結局、これを使うことになるか・・・!」

 誠人はなんとか立ち上がると、GPドライバーV2を腰に装着した。そして待機モードにしたドライバーに、サンライズのカードを挿し込む。

「アーマー・オン!」

『Read Complete.アーマーインサンライズ!サンライズ!』

 誠人は真紅の鎧を身に纏い、イリスV2へと変身を遂げた。その姿、そしてドライバーを見て、メルが怪訝そうな表情を浮かべる。

「あのドライバー・・・今までの記録にはないものです」

「最新型ということか。ならその力も測らねばならん」

 カイはまったく恐れることなく、イリスV2に向けて手から電撃を放射した。イリスV2はその攻撃をライズガンセイバーの刃で受け止め、剣を力いっぱい振り払って電撃を周囲に飛散させ、周囲に爆発を引き起こした。

「何!?」

「今度はこっちの番だ!」

『ガンモード』

 攻撃をさばかれて驚くカイに、イリスV2はガンモードにしたライズガンセイバーから太陽の力を凝縮した弾丸を放った。メルが火球を放って弾丸を打ち消そうとしたが、弾丸は火球を飲み込んでさらに威力を増し、カイとメルに襲い掛かった。

「ぐあっ!・・・何だ、この力は・・・?」

「この威力・・・通常のイリスの武器の、数倍の強さです・・・!」

 ライズガンセイバーの威力に、カイとメルが驚愕の声を漏らす。一方のイリスV2は武器のスロットに、フィニッシュカードを挿し込んだ。

『Read Complete.Be prepared for burning impact.』

 ライズガンセイバーの銃口に、真紅のエネルギーが充填されてゆく。それを見て、カイとメルは大技が来ると悟った。

「ここは退くぞ、メル」

「ええ。私達のみでは、あのイリスには敵いません」

 二人は撤退を決断すると、互いの手を重ね合わせた。それと同時に、イリスV2は武器の引き金を引く。

『バーニングサンライズ!』

 太陽の力を凝縮した光線が、カイとメルに向けて放たれる。だが光線が直撃すると思われた瞬間二人の体は眩い光に包まれ、その場から文字通り消え失せた。

「くっ・・・逃がしたか!」

 変身を解除した誠人が、悔しそうに吐き捨てる。二人の逃走と同時に、周囲を覆っていた光の壁も消失した。

「キリア!大丈夫か、キリア!?」

「うん、なんとか・・・でも、まだ体が痺れる・・・」

「あいつら、よほどの能力持ちね。それに、あのバトルスーツは今まで見たこともないものだった。多分あれが、二人の力を強化してるんだと思うけど・・・」

 レイが考察を交えてそう口にした、まさにその時。誠人のGPブレスから、着信音が鳴り響いた。

「シルフィさん・・・?はい、誠人です」

「誠人お坊ちゃま!すぐ・・・すぐお戻りください!ミナミ様が・・・ミナミ様が・・・!」

「え・・・?」

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[一言] 服装のたるみすら許されない職場とか辛すぎる…
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