第20話「闇を切り裂く、太陽の輝き」後編
それから、約一時間半後のこと。誠人はイリスピーダーを走らせ、アミーが指定した地点に向かっていた。
(ミナミ・・・・・・この取引が、必ずうまくいくって保証はできない。・・・それでも・・・!)
「はい、お兄ちゃん。お父様が用意してくれた、現金500万ギャラット」
それは、20分ほど前のこと。一旦GPウィングでレイ達と合流した誠人に、キリアがギャラット紙幣がぎっしり詰まったアタッシュケースを差し出した。
「ありがとう、キリア。・・・・・・重いな、とても」
「重くて当たり前だよ、誠人君。だってそのお金に、ミナミ先輩の命がかかってるんだもん」
ミュウの言葉に、誠人は強くうなずいた。
「ああ・・・そうだな・・・!」
「β、取引が始まったら、GPブレスで周囲の周波数をスキャンして。ショッキングボムのリモコンからは、遠隔操作用の電波が常に発信されてるの。もし、波形がこの形と違うものになったとしたら、そのリモコンは偽物ってこと」
レイは自身のGPブレスに、リモコンの正しい周波数の波形を表示させた。誠人は自身のブレスレットで、その画像を撮影する。
「分かりました。必ず、確かめます」
「坊や、私からもお願いするわ。・・・必ず、ミナミを助けてあげて」
ソフィアは誠人にそう言うと、彼の耳元でそっと囁きかけた。
「もう・・・教え子を喪いたくないの。絶対に・・・!」
(僕は、必ずあのリモコンを手に入れる。僕を信じて・・・待っていてくれ・・・!)
心の中で叫びかけながら、誠人はさらにバイクを走らせた。一方GPウィングの中では、眠っていたミナミが微かに体を動かし始め、時折うわ言のようなものを口にするようになっている。
「マズいわ・・・そろそろ、私の術が切れようとしてる」
ミナミの姿を見て、ソフィアが焦りの声を上げる。カグラはそれを心配そうに見つめながら、誠人に心の中で叫びかけた。
(頼んだよ、少年。ミナミを・・・助けてやってくれ・・・!)
その叫びが届いたかのように、誠人はバイクのスピードを上げた。そして午後9時58分、誠人は指定された廃工場に辿り着いた。
「アミー、約束通り来たぞ!僕は見ての通り一人だ、500万ギャラットもここにある!」
アタッシュケースをかざしながら、誠人は見えない相手に叫びかけた。すると闇の中から、アミーがゆっくりと姿を現す。
「よく来たわね、虹崎君。・・・さあ、そのケースをこっちにちょうだい」
「その前に、リモコンをこっちに渡してもらおうか。でないと、このお金は渡せない」
アミーは肩をすくめると、懐からリモコンを取り出した。誠人がGPブレスで周波数を確かめると、確かに本物のリモコンと分かった。
「これが欲しいのね?いいわ、あげ・・・る!」
アミーがリモコンを誠人の方へ投げた、その時だった。彼女は左手の機械から、リモコンに向けて光弾を発射した。
だが、その光弾がリモコンに届くことはなかった。リモコンに届く直前、光弾が空中で何かに当たり、消滅したのだ。
「な・・・!一体、なぜ!?」
「ふふ・・・そんなことだろうと思った。お前が発射した光弾は、こいつが受け止めてくれたんだ」
リモコンを手にして得意げな笑顔を浮かべる誠人のそばに、グリーンビートルがその姿を現した。先ほどアミーが放った光弾は、保護色で姿を消していたグリーンビートルがその身で受け止めていたのだった。
「これでリモコンは確保した。さあ、これをレイさん達の所へ!」
誠人がリモコンを掲げると、彼が待機させていたゴールデンホークが足でそれを掴み、レイ達が待機するGPウィングの方へと飛んでいった。慌ててその後を追おうとするアミーの前に、誠人が立ちはだかる。
「邪魔はさせない。ミナミの命を、救うためにも・・・!」
「くっ・・・なら、あんたを殺して、その死体をミナミ・ガイアに届けてやる!」
アミーは怒りの形相で誠人を睨みつけると、左腕の機械を操作して戦闘スーツを身に纏った。
「あいつに味わわせてやる。大切な人を喪う悲しみを・・・自分のせいで、想い人が死んだという無念をね!」
「悪いけど、ここで死ぬ気はないよ。ミナミのためにも・・・僕を信じてくれた、皆のためにも!」
そう宣言すると、誠人はある物を懐から取り出して腰に装着した。それを見て、アミーが驚きの声を上げる。
「それは・・・あのデュアルとかいう刑事が、身に着けてた・・・!」
話は、約二時間前まで遡る。
「お坊ちゃま・・・あなたに、お渡ししたい物がございます」
ミナミを助けるという決意を固めた誠人に、シルフィはある物を手渡した。それは彼女がデュアルへの変身に使う物と同じ、GPドライバーV2であった。
「V2ドライバー・・・でも、これは・・・」
「数日前、ガイルトン長官から送られてきた物でございます。長官は、お坊ちゃまが万一イリスになれなくなったときのことを想定し、ご自身で身を守れるよう、このドライバーをお坊ちゃまに贈るとお決めになったのです。そして私とディアナに、これを確実にお坊ちゃまにお渡しするようにと、厳命なさいました」
誠人はシルフィが差し出した箱から、ドライバーを手に取った。シルフィは誠人の肩を掴むと、誠人の目をまっすぐ見つめて言った。
「どうか・・・どうか無事に、お戻りください。ミナミ様のためにも、あなたご自身のためにも。そして・・・・・・あなたを信じる、全ての者のためにも・・・!」
その言葉に、誠人は強くうなずいた。そしてシルフィが差し出したブランクカードを受け取り、自身のGPブレスにスキャンさせる。
『Authentication start、please wait a moment.』
「約束します・・・・・・僕は、必ず生きて帰ります・・・!」
『Authentication complete』
誠人が宣言すると同時に、カードの認証が完了した。ブランクカードは今まさに昇ろうとする太陽が描かれた、『SUNRISE』と刻まれた紅いカードに変化していた。
誠人はカードを手に取ると、GPドライバーV2のパーツをスライドして待機モードにした。そしてカードを持ち直し、勢いよくドライバーに挿し込む。
「アーマー・オン!」
『灼熱!焦熱!光熱!アーマーインサンライズ!サンライズ!』
電子音声が鳴り響くと同時に、誠人の体を真紅の強化スーツ、そして鎧が包み込んでいった。物の数秒で装着は完了し、バイザー状の複眼が赤く輝くと同時に、誠人はイリスV2 サンライズアーマーへとその姿を変えた。
「力が・・・力が体中にあふれてくる!これが・・・V2ドライバーの、力・・・!」
「ふん、こけおどしを・・・うあああああああああああああっ!!」
アミーが両手に剣を握り締め、イリスV2に向かって駆け出した。だが彼女が目の前に迫った瞬間、イリスV2の体が眩い光に包まれ、アミーの身動きを封じ込める。
「くっ・・・何、今の!?」
「これは・・・そうか、太陽の力か・・・!」
誠人の身を包むサンライズアーマーは、太陽の力を宿した姿であった。その力は、例え陽の光が射さない夜であっても、誠人の意思で自由に使うことができた。
「はあああああ・・・はっ!」
誠人は全身を駆け巡るエネルギーを右手に凝縮させ、アミーに強烈なパンチを放った。紅い光に包まれた拳から繰り出されるその一撃は、剣で防ごうとしたアミーの体に大きなダメージを与え、その体を大きく吹き飛ばした。
「すごい・・・ん?」
誠人が自身の力に驚きの声を上げたその時、ドライバーが眩い輝きを放った。そしてその輝きの中から、一本の真紅の剣が飛び出してイリスV2の手に収まる。
『ライズガンセイバー』
「これは・・・プラモデラッシャーとは、違う武器か・・・」
そう呟いた誠人に、立ち上がったアミーが再び襲い掛かる。繰り出された剣の攻撃をイリスV2は手にした剣で受け止め、お返しとばかりにカウンターの一撃を仕掛ける。
「うっ・・・何!?」
その一撃を片手の剣で受け止めようとしたアミーだったが、ライズガンセイバーが直撃した途端、その剣は粉々に砕け散った。動揺したアミーの隙を見逃さず、イリスV2は剣を一閃させてその体を深く斬り裂く。
「くっ・・・なら!」
アミーは隠し持っていた小型のリモコンを操作し、待機させていたドローンから無数のソルジャーロイドを召還した。それを見て、イリスV2は武器を剣から銃の形状へと変化させる・
『ガンモード』
「はっ!」
ライズガンセイバーの銃口から、太陽の力を凝縮させた紅い光弾が連続で発射された。光弾はソルジャーロイドの体を一撃で爆散させ、誘爆させる形で次々と周囲のソルジャーロイドを破壊し、その爆発の余波でアミーの体は大きく吹き飛ばされた。
「アミー・・・これで終わりだ」
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
イリスV2は武器を投げ捨てると、フィニッシュカードをドライバーに挿し込んで太陽の力を右足に収束させた。アミーはグロッキーな状態になっていたが、それでもなお残った剣を握り直して立ち上がる。
「ほ・・・ほざけえええええええええええええっ!!」
アミーは一矢報いんと、剣を振り上げてイリスV2へと駆け出した。それを見て、誠人はドライバーのパーツを再度展開させる。
『サンライズフィニッシュ!』
「はっ!」
イリスV2は大きくジャンプし、空中で右足を突き出した。そして収束させた太陽の力全てを、アミーの体に叩き込んだ。
「はああああああああああああああああっ!!」
渾身の叫びと共に繰り出された跳び蹴りが、アミーの体を大きく後退させた。アミーの体を覆う強化スーツにいくつもの小さな稲妻が迸り、彼女が力なく倒れこんだ瞬間、その場で大きな爆発が起こった。
「うあっ・・・あっ・・・・・・」
かっと目を見開きながら、丸腰となって倒れ伏したアミーがうわごとのような声を漏らし、その場で気を失った。誠人は勝利の余韻に浸りながら、新たな自分の姿をまじまじと見つめていた。
「これが・・・新しい、僕の力・・・・・・」
☆☆☆
その後。GPウィングに届けられたリモコンを使い、レイがミナミの中のショッキングボムの機能を停止させた。これでミナミは他人と触れ合うことが可能となったが、念のため銀河警察の医療機関で、埋め込まれた爆弾の除去手術を受けることとなった。
そしてジョージが手配した部隊によって、アミー・スタークは大量殺人や殺人未遂、脅迫などの罪で現行犯逮捕され、宇宙刑務所に収監されることとなった。数多くの無関係な人々を巻き込んだ彼女の身勝手な復讐劇は、こうして終わりを迎えることとなった。
「それで、どうだ?術後の体調は」
「はい、もうまったくもって健康そのものです!警察病院なんて早く退院して、誠人さんのおそばに戻りたいですよ!」
ミナミの手術が完了して、数日後のこと。GPブレスに映るミナミの元気そうな姿に、誠人はほっと安堵のため息を漏らした。
「そっか・・・なら、よかったよ」
「誠人さん・・・・・・今回は、ありがとうございました。・・・レイから聞きました。誠人さんが、私の命を救ってくれたって」
突然改まったような口調で、ミナミは誠人に礼を述べた。それを受けて少し気恥ずかしい気持ちを覚えながら、誠人はミナミに言葉を返す。
「いや・・・そんなに、大したことはしてないって。・・・僕はただ、自分にできることをしたまでなんだ。本当に」
「誠人さん・・・・・・」
ミナミはしばらくブレスレットに映る誠人の顔を見つめていたが、やがて小さくクスッと笑った。
「それでも、あなたは私のヒーローです。本当に・・・ありがとうございました」
「ミナミ・・・・・・」
恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながらも、誠人はミナミに笑みを返した。そして照れ隠しのように、彼はあることをミナミに提案する。
「なあ・・・退院して、こっちに戻ってきたら・・・・・・もう一回、デートしないか?」
「え・・・?誠人さん、それ・・・本気で仰ってます?」
「ああ・・・本気だ」
その言葉を聞いた瞬間、ミナミは急に両手で顔を押さえた。それを見て、誠人が心配そうに声をかける。
「ど・・・どうした!?どこか痛んだか?」
「いいえ・・・嬉しさのあまり、涙出ちゃいました・・・」
顔を上げたミナミの目には、かすかに輝くものが見えた。ミナミは慌ててそれを拭うと、念を押すように誠人に言った。
「誠人さん・・・約束ですよ。退院したら、もう一回デートを・・・」
「ああ、約束する。必ず、君とデートする。絶対だ」
誠人はうなずきながら言うと、GPブレスの画面に片手の小指を向けた。ミナミはそれに応えるように、自らの片手の小指をGPブレスの画面に向け、誠人の指に合わせるようにそっと画面に触れるのだった。
☆☆☆
その夜。一人の人物が、暗闇の中である映像をじっと見つめていた。
その映像は、誠人が変身したイリスV2が、強化スーツを纏ったアミーと戦った時の物であった。映像は誠人が使用したGPドライバーV2に記録されていたもので、その人物は左腕に着けたGPブレスとドライバーをコードでつなぎ、戦闘の様子をじっと見つめていた。
「・・・やっぱりおかしい。同じドライバーを使っていたデュアルが負けて、なぜイリスV2が勝てたのか・・・」
その時、その人物のGPブレスから通知音のようなものが響いた。モニターを操作すると、そこには人体をかたどったホログラムと、何かの解析結果のようなものが表示された。
「これは・・・」
映像を見ていた人物は驚きの声を漏らすと、すぐにGPブレスで何者かに連絡を取った。
「こちら360号。オケアノス星人民軍本部、応答願います」
「コードナンバー360号、正式名称レイ・オケアノス、通信を受諾した」
窓から射しこむ月の光が、その人物の顔を照らし出す。その正体は、いつになく困惑した表情を浮かべたレイであった。
「虹崎誠人、通称βが、GPドライバーV2を使用しました。その戦闘データを解析した結果、驚くべき事実が判明いたしました」
レイは緊張と驚きのあまり声を震わせながら、自分を励ますように声を絞り出した。
「して、その事実とは?簡潔に説明せよ、360号」
レイは確かめるようにもう一度GPブレスの画面を見ると、マイクに声を吹きかけた。
「彼のGPドライバーV2との適合率は・・・・・・200%を超えています」
第20話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです




