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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第19話「非情なる罠」アバン

第19話です!今回は物語が動き出す、新たなターニングポイントになります。タイトル通り不穏な展開となりますが、ぜひご覧ください!

 その日。誠人は自分の部屋で、黙々と勉強に励んでいた。

(この夏は・・・勝負の夏・・・)

「・・・誠人さん、います?」

 一日一日と減っていく、高校生活最後の夏休み。残された時間に必死にしがみつくように、誠人はノートにペンを走らせ続ける。

(最後の・・・夏・・・)

「誠人さん?・・・入りますよ?」

(勝負の・・・夏・・・最後の、夏・・・)

「誠人さん?・・・誠人さん?」

(勝負の、最後の・・・勝負の最後の・・・最後の・・・勝負の・・・)

「誠人さん!」

「え?うわあああっ!」

 後ろに感じた気配に振り返った誠人は、すぐ真後ろに立っていたミナミを見て思わず驚きの声を上げた。彼の反応に驚いたミナミがその場に尻餅をつき、手に持っていたお盆に載っていたアイスコーヒーが床に落ちた。

「な・・・何だよ・・・脅かすなって・・・!」

「ご、ごめんなさい誠人さん!でも、いくら呼んでも返事がなかったから、つい・・・」

 床にこぼれたコーヒーをハンカチで拭きながら、ミナミが誠人に釈明した。それを見て、誠人がある可能性を思いつく。

「そのコーヒー・・・僕に?」

「え、ええ・・・誠人さん、最近部屋にこもってずっと勉強頑張ってますから。私も、その・・・できる範囲で応援を、と思いまして・・・」

 少し照れ臭そうに笑いながら、ミナミが床を拭き続ける。誠人は小さくため息をつくと、近くにあったウェットティッシュを手にミナミを手伝い始めた。

「ま・・・誠人さん!」

「ごめんな。僕、一つのことに集中すると、他のことが見えなくなったり、聞こえなくなっちゃうんだ。昔からの悪い癖で、なんとか治そうとは思ってるんだけど・・・」

 ミナミに謝罪しながら、誠人は慣れた手つきで床のコーヒーを拭きとった。彼はウェットティッシュをごみ箱に捨てると、ミナミの隣に腰を下ろした。

「思えば、この夏休みだってそうだな。勉強に集中しすぎるあまり、最近君達の顔、ろくに見てない気がする」

「そ・・・それはしょうがないことですよ!誠人さんにとって、この夏は勝負の夏なんですから。だから、その・・・・・・私も、誠人さんに会うのを我慢するって決めたんです。・・・それが、誠人さんの夢を応援することに繋がるなら・・・少しくらい会えないことなんて、なーんにも苦しくありません!てへっ」

 そう明るく言いながらも、ミナミの顔には隠し切れない寂しさが浮かんでいた。それを見てある決意を固めると、誠人はミナミに言葉をかけた。

「なあ、ミナミ・・・・・・明日、二人でどこか出かけないか?」

「え・・・ええっ!?」

 思いがけない誠人の言葉に、ミナミの方が慌てて声を上げた。

「ど、どうしたんですか急に!?はっ、さては夏の暑さにやられちゃいました!?」

「そうじゃないよ。・・・改めて気づいたんだ。僕は君に対して、今までろくな恩返しもできていなかった、って。せっかくの夏休みだ、たまには、その・・・・・・二人で過ごすのもいいかな、って・・・・・・」

 そう口にしながらも、誠人は自分の顔が気恥ずかしさで熱くなっていくのを感じ、ミナミから顔をそむけた。

「で・・・でも、いいんですか?勝負の夏なんでしょ、今年は?」

「一日くらいだったら、後からいくらでも取り返せるよ。それに、勉強は帰ってきてからすればいい。だろ?」

「ま、まあ・・・確かに・・・」

「よし。じゃあ決まりだ。・・・一応、レイさん達にはこのことは黙っておけよ。特にシルフィさんとキリアがこのことを聞いたら、ただじゃ済まないと思うから」

「わ・・・分かりました。・・・本当に、いいんですね?」

「ああ。・・・楽しみだよ、明日が」

「はい・・・私もです・・・!」

 心を躍らせながら、ミナミは誠人に言葉を返した。だが、これが新たな戦いの幕開けであることを、この時の彼女は知る由もなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この惨劇まみれの世界だと、進学塾とかあってもすぐ崩壊しそうだから、自宅勉強なんでしょうね… 設定次第では塾で仲間増えたり敵増えたりもしますが、このせかいかんだと 確かに自宅がぴったり
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