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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第18話「活力の捕食者」後編

 それから、数十分後。誠人達は、なんとかカグラとソフィアを虹崎家まで避難させることに成功していた。

「あら・・・ここ、坊やの家?・・・ちょっと横にならせて・・・ふわあ・・・」

「買い物の・・・途中だった気がするけど・・・・・・もうめんどくさいからどうでもいいやあ・・・」

「ふう・・・参りましたね、これは・・・」

「ああ・・・まさか、ソフィアさんとカグラさんまで、あいつに骨抜きにされるなんて・・・!」

 すっかり骨抜きにされたソフィアとカグラを見て、ミナミと誠人がうめくように声を上げた。するとシルフィが、左右で色の違う瞳を潤ませながら絞り出すように言った。

「私の・・・私のせいなのでございます・・・・・・カグラ様は、バリティーターから私をかばって、このようなことに・・・!」

 力なく頽れながら、シルフィが肩を震わせて嗚咽を漏らし始めた。その肩に優しく手を置きながら、誠人が励ましの言葉をかける。

「誰も悪くありません。今はとにかく、バリティーターを捕まえることに集中しましょう」

「βの言う通り。バリティーターの角には、被害者から吸い取った活力が溜め込まれてる。その角をへし折って中の活力を解放すれば、皆元に戻るはず」

 レイの言葉に、シルフィは小さくうなずいた。一方で、ミナミは寝転ぶソフィアを見て毒づく。

「ま、正直ソフィアはこのままでいいですけどね。これ以上この女に引っ掻き回されるのはうんざりですし」

「ミナミ」

 誠人がやや強い口調でミナミをたしなめたその時。一同のGPブレスに、ジョージからの通信が入った。

「刑事諸君、バリティーターは捕獲できたか?」

「いえ・・・それどころか、カグラとソフィアがバリティーターに活力を奪われて、戦力にならない状態です。先ほどは追い詰めるところまでいったのですが、あと一歩というところで逃がしてしまい・・・」

 レイの言葉を聞いた瞬間、ジョージは酢を飲んだ表情で言いにくそうに言葉を発した。

「それはまずいな・・・・・・実は、つい先ほど分かったことなのだが、バリティーターという生物は思った以上に執念深いらしい。一度攻撃された相手は決して忘れず、その優れた嗅覚を使ってどこまでも追い回し、活力を奪おうとするのだとか・・・」

「な・・・?ということは、奴が次に狙うのって・・・」

 誠人が嫌な予感と共に呟いた、その時だった。誠人の家の窓ガラスが割れ、そこからバリティーターが中に飛び込んできた。

「バ・・・バリティーター!」

 思わず叫び声を上げた誠人の目の前で、バリティーターは怒ったような鳴き声と共に頭部の角を光らせ、偶然近くにいたレイに迫った。あっという間にレイの体から活力が奪われ、バリティーターの角に吸収される。

「レイさん!・・・シルフィさん、カグラさんとソフィアさんを頼みます!」

「は・・・はい!」

 狭い室内で暴れまわるバリティーターの攻撃をなんとか避け、シルフィは近くにいたソフィアの体を担いで退避を始めた。一方の誠人はイリスバックルを腰に装着してミナミと合体しようとしたが、バリティーターはミナミに向けて角を光らせ、彼女からも活力を奪ってしまった。

「ミナミ!くっ・・・これはマズい・・・!」

 合体する相手を失った誠人に、バリティーターは容赦なく襲い掛かった。ソフィアの避難を終えたシルフィは今度はカグラを連れて逃げようとしたが、その時バリティーターが標的を急にシルフィに変え、その前に立ち塞がった。

「きゃあっ!」

「シルフィさん!・・・こうなったら!」

『Read Complete』

 誠人はブランクカードをバックルにスキャンさせてブランクモードのイリスとなり、手がふさがっていてデュアルになれないシルフィをバリティーターから守るために立ち塞がった。バリティーターは容赦なくイリスに攻撃を仕掛けて大きく吹き飛ばし、再びシルフィに襲い掛ける。

「くっ・・・なれば!」

 シルフィは一旦カグラの体を床に置き、GPドライバーV2を取り出した。だが次の瞬間バリティーターは大きく跳躍してシルフィに跳びかかり、シルフィは何とか直撃こそ免れたものの、手にしていたGPドライバーV2が彼女の手を離れて宙に舞い上がり、それをバリティーターが口を開けて飲み込んでしまった。

「あっ!・・・ドライバーが!」

 デュアルに変身する術を失ったシルフィに、バリティーターが再び襲い掛かる。だがその時、イリスが死角からバリティーターに跳びかかり、そのまま組み付いてバリティーターと共に窓から外に飛び出した。

「誠人お坊ちゃま!どうか・・・どうかキリア様と合体を!」

 シルフィは窓から身を乗り出しながら、イリスに向かって叫びかけた。

「駄目です!キリアには・・・ミュウを看ててもらわないと!」

「い・・・今そのようなことを仰っている場合ですか!?このままでは、誠人お坊ちゃまが・・・!」

「僕なら・・・平気です!うわっ!」

 イリスがそう言葉を返した瞬間、動きを抑え込まれていたバリティーターがイリスの手を抜け出し、角から黄色い光線を浴びせかけた。その威力は絶大で、イリスは大きく吹き飛ばされて地面を転がった。

「誠人お坊ちゃま!・・・こうなったら、一か八か・・・!」

 シルフィはへたり込むカグラにちらと視線を向けると、彼女の方へ駆けだして必死に叫びかけた。

「カグラ様!どうか・・・どうか正気に戻ってくださいませ!誠人お坊ちゃまが、ピンチなのでございます!」

「え?少年がピンチ・・・?でも・・・なんにもする気起きないんだよねえ・・・はあ~あ・・・」

『おい、こりゃ駄目だシルフィ。今のこいつに何か言ったところで、どうにもなりゃしねえぞ』

 ディアナが見かねて声を上げたが、シルフィはそれを無視してカグラに訴え続けた。

「カグラ様の役目は、誠人お坊ちゃまをお守りすることでございましょう!?このままでは、誠人お坊ちゃまの身が危のうございます!」

「そう言われてもねえ・・・体がだるくて重くて、もう眠くてしょうがないんだよ・・・はぁ・・・」

 必死の呼びかけにもかかわらず、カグラは生返事を返すのみだった。その反応を目にしたシルフィは、ついに最後の手段に打って出た。

「いい加減に・・・なされませ!」

 シルフィは音高く、カグラの頬を平手打ちした。その衝撃で目を閉じかけていたカグラも、目を開けて驚いたような表情を浮かべる。

「シルフィ・・・さん・・・?」

「カグラ様・・・あなたは、そのように意志が弱いお方ではないはずです!・・・先ほど、あなたはこう仰いました。『日頃の感謝と、早くよくなれという願いを込めて、ミュウ様に晩御飯を作ってあげたい』と!その時のあなたからは、後輩を・・・仲間を想う強い気持ちが感じられました。左様に人を想うことができるほど強いお方が、仲間の危機に立ち上がらずしてなんとなされます!?」

「ミュウ・・・ミュウ・・・・・・」

 その時、カグラの虚ろな瞳に、微かではあるが光が再び灯った。それを確かに目にすると、シルフィはカグラの肩に手を置いてさらに訴えかけた。

「どうか・・・再び闘志を燃やしてくださいませ!今誠人お坊ちゃまを助けられるのは、あなただけなのでございます!」

「少年を・・・助ける・・・?少年・・・少年・・・・・・!」

 シルフィの言葉を受け、カグラの脳裏にこれまで誠人と過ごした記憶が濁流のように押し寄せてきた。そのいずれにおいても、彼女は誠人を守るために、ミナミを始めとする仲間達と共に全力で戦ってきた。

「そうだ・・・あたし、守らなきゃいけないんだ。少年を・・・この手で・・・!」

 思い出したようにそう口にすると、カグラは拳を握り締めて立ち上がった。彼女の表情は、バリティーターに活力を吸われる前のものに戻っていた。

「・・・!カグラ様、よくぞお戻りになりました・・・!」

「ああ・・・あんたのおかげだよ、シルフィさん。あんたが叫び続けてくれたから、あたしは思い出すことができたんだ」

 完全に光が戻った瞳で、カグラはシルフィに微笑みかけた。

「ありがと、シルフィさん。・・・さて、一仕事といきますか!」

 彼女は両手に剣を握り締めると、割れた窓から外に飛び出した。それを見て小さくうなずくと、シルフィも家の玄関から外に出る。

「うわあああああああああっ!」

 それと時を同じくして、イリスがバリティーターの攻撃を受けて大きく吹き飛ばされ、変身が強制的に解除された。バリティーターは誠人に狙いを定めると、角を黄色く光らせて誠人の方へ駆けだした。

「おおりゃああああああああああああっ!」

 その時、剣を手にしたカグラがバリティーターの前に立ちはだかり、剣を振り回してその体を誠人から遠ざけた。相手との距離が開いたことを確認すると、カグラは誠人に向き直った。

「大丈夫かい、少年!?」

「カグラさん!よかった、元に戻れたんですね!?」

「ああ、シルフィさんのおかげでね。さて・・・これからどうすればいいんだい?」

「奴の角をへし折って、そこにため込まれてる皆の活力を、解放する必要があります」

 誠人は立ち上がりながら、ベルトのホルダーからフレイムのカードを取り出した。

「あと、シルフィさんのドライバーを取り戻さないと。さっき、あいつが飲み込んじゃって・・・」

「なるほど、やることが多いね。じゃあ・・・行くよ少年!」

「はい・・・お願いします、カグラさん!」

 誠人はイリスバックルのボタンを押し、待機モードにした。そして手にしたフレイムのカードを、勢いよく認証部分にかざす。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.燃え盛る業火!フレイムアーマー!』

 カグラが姿を変えた赤い鎧が、イリススーツの上から装着されてゆく。やがて合体が完了すると、イリスは双剣モードのプラモデラッシャーを手に駆け出した。

『うおおおおおおおりゃああああああああああっ!!』

 イリスはバリティーターの攻撃を見切ってかわすと、その隙をついてプラモデラッシャーで攻撃を仕掛け、相手の体力を奪っていった。怒ったバリティーターはジャンプしながら突進を仕掛けたが、イリスは飛びずさってその攻撃をかわし、その横っ腹に強烈な蹴りをお見舞いした。

『おりゃあっ!』

「ギャウッ!」

 腹に強烈な負荷がかかり、その弾みでバリティーターは飲み込んでいたGPドライバーV2を吐き出した。シルフィが戦いの場に駆け付けたのは、まさにそんな折であった。

「シルフィさん、これを!」

 イリスはドライバーを拾い上げると、シルフィに向かって投げつけた。それをキャッチすると、シルフィは腰に装着してパーツをスライドさせ、待機モードにする。

『うへっ・・・なんか汚えな、おい』

「言ってる場合じゃないでしょ!?今はとにかく、あいつを止めなきゃ!アーマー・オン!」

 バリティーターの胃液がこびりつくドライバーに、ディアナが思わず苦言を呈した。シルフィはそれを黙らせると、手にしたカードをドライバーに押し込んだ。

『Read Complete.疾風!烈風!暴風!アーマーインハリケーン!ハリケーン!』

 シルフィの体を突風が包み込み、その風が姿を変えた鎧が彼女の体に装着されてゆく。鎧はものの数秒でシルフィの体を覆いつくし、彼女の姿をデュアル ハリケーンアーマーへと変えた。

「プラモデライザー!」

 デュアルは武器を召還すると、風を身に纏って宙を浮遊しながら、バリティーターに攻撃を仕掛けた。デュアルの遠距離からの攻撃はバリティーターを翻弄し、その最大の武器である機動力を封じ込めることに成功した。

『おおりゃああああああああああっ!』

 そして一瞬動きが止まったバリティーターの隙をつき、イリスが手にした剣をその角に叩き込んだ。その一撃でバリティーターの角は折れ、バリティーターが苦悶に満ちた声を上げる。

「よし・・・これで角は奪った!」

「あとは捕獲するだけです。カグラ様、同時攻撃を叩き込んで、バリティーターを弱らせましょう!」

『オッケー・・・!』

 地面に着地したデュアルに言葉を返すと、イリスはプラモデラッシャーの認証部分にフィニッシュカードを読み込ませた。デュアルも手にしたフィニッシュカードを、GPドライバーV2に挿し込んでスキャンさせる。

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 イリスの剣に炎が宿り、デュアルの体を小さな竜巻が包み込む。デュアルはその竜巻と共に上空へと浮遊し、カードを挿し込むパーツを一旦スライドさせて再度展開した。

『ハリケーンフィニッシュ!』

 電子音声が鳴り響くと同時に、デュアルが体を360度横回転させながら急降下し、バリティーターに強烈なキックをお見舞いした。吹き飛ぶバリティーターに追い打ちをかけるべく、イリスもプラモデラッシャーのトリガーを引いた。

『フレイムストライク!』

 イリスが剣を振り払うと、剣に宿っていた炎が衝撃波となって、バリティーター目がけて飛んでいった。その衝撃波を受けてバリティーターの体は大きく吹き飛び、地面にたたきつけられて戦意を失った。

「よし、今だ!」

 イリスはGPブレスから捕獲用の光線を放ち、バリティーターの体を拘束することに成功した。ようやく大捕り物を終えると、イリスとデュアルはそれぞれ変身を解除し、労いの笑みを向け合うのだった。


☆☆☆


 それから、数時間後。誠人達はバリティーターの角に宿っていた人々の活力を解放し、ミナミを始めとするバリティーターの被害者を元に戻すことに成功した。

 捕獲されたバリティーターは、駆けつけた銀河警察の職員にその角と共に引き渡された。今後は残る被害者を元に戻すためにその角が使われること、バリティーターは人の住まない辺境の惑星で飼育されるということを、誠人達は駆けつけた職員から聞かされた。

「うん・・・うまくできたよ、シルフィさん!」

 そしてその夜。シルフィの指南を受けて、カグラがミュウのために夕食を作り上げた。主食はお粥、そしておかずはレバーの卵とじ。ミュウの風邪が早くよくなるよう、栄養たっぷりの食材を選んで作ったものだった。

「とても美味しそうでございます。さあ、早くミュウ様に召し上がっていただきましょう」

「う・・・うん!」

 少しん緊張しながらも、カグラは笑顔でシルフィにうなずきかけた。そしてミュウとキリアのもとに、出来立ての料理を運ぶ。

「で・・・できたよ、ミュウ!」

「わあ、美味しそう!じゃあ・・・いただきます!」

 ミュウは嬉しそうに声を上げると、カグラが作ったレバーの卵とじを一口食べた。固唾をのんで見守るカグラだったが、すぐにその表情は和らぐこととなった。

「うん、美味しい!美味しいです、カグラ先輩!」

「ほんと!?・・・ああ、よかった・・・」

 カグラはほっと安堵のため息をつくと、シルフィのもとに向かって深々と頭を下げた。

「あんたのおかげだよ、シルフィさん。色々と・・・ありがとう」

「いいえ、私は何もしておりません。全ては、ミュウ様を想うカグラ様のお気持ちがあればこそ、ですわ」

 そんな二人の様子を、キリアが微笑みながら見つめていた。彼女はレバーの卵とじを夢中で食べるミュウに、笑顔で話しかける。

「カグラとシルフィ・・・きっと、いい仲になれるね、あの二人」

「うん・・・ボクもそう思う」

 キリアにそう応えながら、ミュウはあっという間に卵とじを平らげた。この味はミュウにとって、生涯忘れられない大切な思い出となるのだった。


☆☆☆


 数十分後。自宅であるマンションに向かいながら、シルフィがふっと小さくため息をついた。

「色々あったけど・・・いい一日だったわ、本当に・・・」

『はっ、まったくな。でもま、おめえが楽しそうで良かったよ、シルフィ』

「楽しそうって・・・まあ、少し楽しかったのは否定できないけど、いろいろ大変だったのよ」

 体の中のディアナに言葉を返しながら、シルフィはエレベーターに乗って自分の部屋の階に向かった。やがてエレベーターが止まり、自分の部屋の前に辿り着いた時、彼女は玄関前に箱が一つ置かれていることに気づいた。

『おいシルフィ、これ・・・』

 箱のふたには、銀河警察のシンボルマークが刻まれていた。緊張の面持ちで小さくうなずくと、シルフィは箱のふたを開ける。

「ようやく、届いたわ・・・・・・あとは、これをしかるべき時にお渡しするだけ・・・・・・」

 そう言いながら、シルフィが箱から取り出した物。それはようやく完成した、二つ目のGPドライバーV2であった。

第18話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです。

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[一言] バリティーター、絶滅危惧種でも滅ぼしてしまえよと思ったけど被害者がどこからでてくるかわからないから絶滅させるわけにはいかないのか…言われてみると確かに みんながぐでーっとなってる光景的に映…
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