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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第17話「その強さ、迅雷の如く」前編

「そうか。シルフィとディアナが、君達と接触したか」

 戦いが終わってから、数十分後。虹崎家に戻った一同は、銀河警察太陽系支部長であるジョージに連絡を取っていた。

「はい。でも、彼女一体何なんです?特殊部隊員、って言ってましたけど・・・」

「それに、彼女が使ったあのベルトは一体?イリスバックルとは、全く違うものということは分かりましたが・・・」

 ミナミとレイが、立て続けにジョージに尋ねる。するとシルフィが、おずおずと二人に言葉をかけた。

「あの・・・それにつきましては、私からご説明いたします」

 一同の視線を一身に受け、シルフィは緊張しながらも口を開いた。

「先ほど申し上げました通り、私は、銀河警察の特殊部隊に所属する刑事でございます。先日、機械惑星ブラックマキナの攻撃によってミナミ様達が捕らえられた際、長官は応援の刑事を一名、この星に派遣すると決定されました。・・・その刑事が、私でございます」

(そうだ、あの時・・・!)

 一週間ほど前、ブラックマキナの科学者が作り出したロボット・イリスキラーに敗北し、ミナミを始めとする刑事達が敵の手に落ちるという事態が発生した。それをジョージに告げた際、確かに彼は応援の刑事を大至急派遣すると言っていた。だが、誠人はその刑事の到着を待つことなく敵の本拠に攻撃を仕掛け、見事にミナミ達を救い出すことに成功した。それ以降、その応援の刑事の存在は、誠人の頭からきれいさっぱり忘れ去られていた。

「今後、再びあのような事態が起きてもすぐに対処できるよう、私はシルフィ達に新型のベルトを託した。それが彼女達の使う、GPドライバーV2(ブイツー)だ」

「銀河警察の科学グループが、バージョン1・・・略してV1(ブイワン)タイプであるイリスバックル以上の力、そして使いやすさを求め、開発していたものでございます」

 シルフィはドライバーを懐から取り出すと、一同に見えるようにテーブルに置いた。

「これの基本的原理は、イリスバックルと同様です。そのベルトを使う者の体質や性格、得意な戦い方に応じたアーマーを瞬時に生成し、使用者の肉体に装着させる。イリスバックルとの違いは、ユナイトの能力を持たない者でも使えること、ただそれだけです」

「じゃあ、もしボクがそのベルトを着けて、誠人君との合体の時に使うカードを読み込ませれば・・・」

 ミュウが例え話を口にすると、シルフィは小さくうなずきながら応えた。

「ええ。ミュウ様の体に、カードの効果を反映した鎧が装着されます。・・・もっとも、今お使いのカードはV1タイプのドライバー用ですから、V2タイプ用にアップデートしていただく必要がございますが」

「でも、それはそれで面白そうじゃない。ねえジョージ、このドライバー、一つ私に譲ってくれないかしら?」

 ソフィアがドライバーを手に取りながら、GPブレスに映るジョージにねだった。

「ソフィア・・・・・・久しぶりだな、君の顔を見るのは」

 どこか懐かしそうな表情を一瞬浮かべながらも、ジョージはきっぱりとソフィアの願いを断った。

「いいか?君はもう刑事じゃない。そんな君に、まだ完成間もない新戦力をただで渡すわけがないだろう?」

「それに、このドライバーの完成品は、まだこの一個だけなんです。いずれは量産も検討されていますが、現時点で使えるのは、この一つのみで・・・」

 シルフィが申し訳なさそうにソフィアに告げた、次の瞬間。彼女の姿は文字通り一瞬で、ディアナの姿へと変身を遂げた。

「要するに、これはオレ達専用のベルトってことさ。ま、諦めてくんな、おばさん」

「お・・・おお、お・・・おばさん!?」

 これまで呼ばれたことのない呼び名に激しいショックを受け、ソフィアが目を丸く見開いたままその場に倒れこんだ。思わず吹き出すミナミを尻目に、ディアナの姿が再びシルフィに戻る。

「こ・・・こらディアナ!あなた、大先輩になんて無礼な口を・・・!」

「・・・ともかく、シルフィ刑事とディアナ刑事、一つの体を共有する二人の刑事が、今後は新たに虹崎君の護衛に加わる。・・・いろいろな意味で大変だろうが、どうか、よろしく頼む」

 その言葉を最後に、ジョージの通信は打ち切られた。その一方で、ソフィアは『おばさん』と呼ばれたショックから未だに立ち直れず、倒れたままうわごとを呟き続けている。

「おばさん・・・おばさんって呼ばれた・・・・・・おばさん・・・おばさんって・・・・・・」

 倒れたソフィアの体を、カグラとキリア、そしてミュウの三人が担ぎ、別室へと運んでいく。シルフィは心から申し訳なさそうな顔で立ち上がると、誠人とミナミに深々と頭を下げた。

「誠人お坊ちゃま、ミナミ様、先ほどは、ディアナがとんだご無礼をいたしました。お許しください」

「もういいですって。そんなに何度も謝らないでください」

「そうですよ。あれはシルフィがやったわけじゃないんですから」

「しかし・・・ああ、ディアナったらなんでいつもこうなのかしら。いつもいつも、私を困らせることばかりして・・・」

 シルフィは太いため息をつくと、近くにあった椅子に腰を掛けてうなだれた。それを見て、レイが思わず同情の声を上げる。

「なんか・・・大変ね、色々と」

「ええ、同感です。・・・そうだ。今日はもう、上がってください。ほら、初日でいろいろなことがあって、疲れたでしょう?」

「誠人お坊ちゃま・・・」

 シルフィの翠と紫の目が、誠人の顔をじっと見つめる。それに若干の気恥ずかしさを誠人が覚えた時、シルフィは小さな笑みを浮かべて口を開いた。

「承知いたしました。・・・お心遣い、感謝いたします」

 誠人に小さく頭を下げると、シルフィは彼とミナミ、そしてレイに見送られながら玄関に向かった。

「では、本日はこれにて失礼いたします。誠人お坊ちゃま」

「はい。明日からも、よろしくお願いします」

 誠人に小さく会釈すると、シルフィはドアを開けて外に出ようとした。だが彼女がドアに手をかけた瞬間、その姿は再びディアナへと変わっていた。

「そうそう。お前に言い忘れてたことがあったんだ、ボウズ」

 突然のことに息を飲みながらも、誠人がディアナに言葉を返した。

「な・・・何でしょう?」

「もし・・・シルフィのこと異性として意識し始めてるんだったら、やめといた方がいいぜ」

「は・・・はあっ!?何を言って・・・」

 あまりに予想外な言葉に、誠人は思わず素で大声を上げた。そんな彼の顔を見て、ディアナが腹を抱えて笑い声を上げる。

「あーっはっは!マジでおもしれえな、お前!冗談だよ冗談、さっきじっと見つめ合ってたみたいだったから、つい・・・な」

「あ・・・あんた!いい加減にしないと私本気で怒りますよ!」

 怒りの声を上げて進み出たミナミに、ディアナは肩をすくめながら応えた。

「大丈夫だって。あんたの彼氏には興味ねえしよ。・・・ただ」

 そこで一旦言葉を切ると、ディアナはミナミから誠人に視線を向けた。

「シルフィはやめとけっていうのは本当だ。・・・20年以上一緒にいたからよく分かる。あいつはろくな女じゃない。・・・きっと向こうも、そう思ってるだろうけどよ」

「ディアナさん・・・?」

 どこか寂しそうな表情を浮かべながら、ディアナがぼそっと声を上げた。その表情が気になって誠人が声を上げた瞬間、ディアナの体はシルフィへと戻っていた。

「あ・・・あの、今ディアナが出てました・・・?」

「え?・・・ええ、ちょっとだけ」

「もう、あの子ったらまた勝手に出てきて!・・・申し訳ございません、誠人お坊ちゃま。では、私はこれにて・・・」

「ええ・・・お疲れさまでした、シルフィさん」

 誠人に小さく頭を下げると、シルフィは足早に去っていった。その後ろ姿を見つめながら、誠人は先ほどのディアナの言葉を思い出していた。

『・・・きっと向こうも、そう思ってるだろうけどよ』

 そう口にした時の、ディアナの寂しげな表情。それが、誠人にはずっと引っかかっていた。

(あの言葉・・・一体、どういう意味があって・・・・・・)



「くそっ・・・・・・ザン、お前の仇は必ず討ってやる・・・!」

 一方。下水道をおぼつかない足取りで歩きながら、レグが亡き弟の復讐を誓っていた。

「おや。これはまた無残な姿ですねえ、レグ・クリムゾン様」

 そんな彼の前に、一人の青年が姿を現した。その声と顔に、レグは覚えがあった。

「お前は・・・DOE社の・・・!」

「ええ、ファルコです。・・・まずはお悔やみを。ご兄弟の件、誠に残念としか言いようがありません」

「ああ・・・全ては、あの奇妙な刑事のせいだ・・・・・・頼む。あいつに勝てるほどの兵器を、今すぐ俺に売ってくれ!」

 身を乗り出すようにして懇願するレグに、ファルコは冷徹な瞳を向けて尋ねた。

「もちろん、お売りすることはできます。しかし・・・まずはソルジャーロイドの代金をお支払いいただきたい。前払いで代金の2割はいただいておりますが、残り8割・・・つまり1万8000ペルクをいただかないことには、新しい取引などとてもできません」

 その言葉に、レグは一瞬酢を飲んだような表情になった。だが彼は腹を決めると、ファルコに強い意志を秘めた眸を向ける。

「金なら必ず払う。だが・・・俺も弟の仇を討たぬことには、前に進めぬのだ!・・・頼むファルコ、俺に力をくれ!」

 余計なプライドはかなぐり捨て、レグは必死の形相でファルコに哀願した。そんな彼の顔をじっと見つめていたファルコだったが、やがて唇の端を歪めて小さな笑みを浮かべる。

「分かりました。では・・・これなどいかがでしょう?」

 ファルコが手にしたタブレットのような物を操作すると、そこから光が放たれてレグの足元を照らし出した。程なくして光は消滅し、代わりに鎧のような物が現れる。

「アーマーオブデアデビル、通称AOD。装着者の体力を最大まで引き出すことのできる、まさに理想的な鎧。しかし・・・・・・この鎧は、装着者の生命をエネルギー源とします。戦いが長引けば長引くほど、あなたの命も危うくなってくる。・・・どうです?他の商品にも目を通されますか?」

「いや・・・これでいい」

 レグは血走った目で、目の前の鎧を鷲掴みにした。

「俺の命をかけて、ザンの仇を討ってくれる。ザン・・・・・・お前の墓前に、あの憎き刑事の首を捧げてみせようぞ・・・!」

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― 新着の感想 ―
[一言] おばさん呼ばわりされて落ち込むソフイアさんカワイイw こういうキャラ崩壊みたいな場面は日常ぽくて良いw そしてユナイトの能力なくてもいけるとは、なんかもう凄いのが出てきた これ一つでいくつ…
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