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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第16話「疾風怒濤の新刑事」後編

「ユナイトハンターに?大丈夫だったの、β?」

 一方。虹崎家に帰宅した誠人は、レイに先ほどの襲撃について報告していた。

「ええ、なんとか。たまたま近くを通りかかったカグラさんとミュウが、異変を察知して駆けつけてくれたこともあって」

「いやあ、驚いたよ。ミュウと一緒に買い物に行こうと思ったら、まさか少年に出くわすなんて。それも・・・あんな美人な家政婦さんと一緒とはね」

 どこかからかうような目で、カグラは誠人とシルフィを交互に見つめた。その意図に気づき、誠人とシルフィは顔を真っ赤にして同時に否定の声を上げる。

「ち・・・違いますから!僕とシルフィさんは、今日会ったばっかりで・・・!」

「そ、そうです!私と誠人お坊ちゃまは、その・・・決して、そういう関係じゃありませんから!」

「はいはい、分かってるよ。・・・ミナミ、うかうかしてたら危ないんじゃないのかい?」

 カグラは今度はミナミに向き直り、再び煽るように言った。

「な、何を言うんですか!?私の愛しい誠人さんには、誰であろうと手出しはさせませんよ!?」

「ああ、もう黙っててくれ。収拾がつかなくなる・・・!」

 誠人が眉間を押さえながら、うめくように声を上げた。と、その時。シルフィが何かに気づいたように、あっと声を上げた。

「お坊ちゃま、伏せて!」

 シルフィは叫ぶように言うと、懐からブレスレットのような物を取り出して片腕に装着し、そこから光弾を誠人の頭上に向けて発射した。

「うわっ!」

 慌てて誠人が、頭を両手で押さえながらその場に伏せる。するとシルフィのブレスレットから放たれた光弾は空中で消滅し、同時に蠅のような形をした小型のロボットが姿を現して地面にポトリと落ち、耳障りな羽音を周囲に響かせた。

「これは・・・一体、何だ・・・?」

「惑星クリムゾンの住民が使う、偵察用ロボットでございます」

 誠人に冷静な声で答えると、シルフィはハンカチを使って蠅型ロボットを拾い上げた。

「先ほど襲ってきたあの兄弟も、その星の出身です。恐らくこれを使い、誠人お坊ちゃまの居場所を突き止めようとしているのかと」

「随分詳しいようだけど・・・なぜ、あなたがそれを知ってるの?」

 他の惑星の事情に詳しいシルフィを訝しみ、レイが彼女に問いかけた。カグラもそれに続いて声を上げる。

「そうだ。それに、あんたが今つけてるブレスレット・・・・・・それ、GPブレスじゃないか!」

 その言葉通り、シルフィが腕に巻いているのはGPブレスであった。さっと右手でブレスレットを隠したシルフィだったが、もう後の祭りであった。

「シルフィ、あなた一体何者なの?もしかして・・・キリア達と同じ、銀河警察の刑事なの?」

「そ、それは・・・」

 シルフィがキリアに言葉を返そうとした、まさにその時。突然ミュウが、あっと大きな声を上げた。

「どうしたんですか、こんな時に!?」

「た、大変です!さっきの二人組が、無数のソルジャーロイドを率いてこの近くまで来ています!これ、グリーンビートル君からの映像です!」

 ミュウがGPブレスの映像を見せながら、ミナミに叫ぶように言葉を返した。彼女が口にした通り、グリーンビートルから送られてきた映像には、ソルジャーロイドの大群を引き連れて虹崎家の近くを歩くクリムゾンブラザーズの姿が映っている。

「来ましたね・・・・・・いいでしょう。皆様に私の正体、全て白状いたします」

 そう言うと、シルフィは誠人達を誘うように、虹崎家を飛び出した。彼女とその後を追う誠人達は、程なく虹崎家に向かっていたクリムゾンブラザーズと遭遇する。

「いたぞ、兄貴」

「ああ。今度こそあの小僧を捕らえるぞ、ザンよ」

 手にした武器を握り直しながら、二人が誠人達に向かって歩みを進めていく。シルフィは一歩進み出ると、二人の前に立ち塞がった。

「何だお前は?邪魔だ、失せろ」

「いいえ。失せるのはあなたがたの方です。レグ・クリムゾン、そしてザン・クリムゾン。あなた方にはレッドレベルの手配がかかっていること、ご存知でありましょう?」

 レグが槍を突き付けて言葉を投げかけても、シルフィは眉一つ動かさなかった。その彼女の言葉に、ザンが苛立ち混じりの声を上げる。

「だから何だ?てめえは引っ込んでろ、女!」

 そう言うが早いか、ザンは手にした剣でシルフィに斬りかかった。シルフィはその攻撃をかわしながら、左腕のGPブレスに一枚のカードを読み込ませる。

『Start up、Wind Pegasus』

 召還されたプラモデルが、一瞬で翠色のペガサスの如きプラモデロイド・ウィンドペガサスの姿となった。ウィンドペガサスは両翼から小型の竜巻を放ち、ザンの体を大きく後退させた。

「警告が無視されたと見なし、実力行使に移ります。・・・お覚悟願います、お二方」

 そう冷たい声で言うと、シルフィはベルトバックルのような物を腰に押し当てた。するとバックルから瞬時にベルトが伸び、シルフィの体に装着される。

「な・・・何だい、あのベルトは・・・?」

「『イリスバックルを超えるベルト』というコンセプトのもと開発された、GPドライバーV(バージョン)2(ツー)。そして私は、イリスと共に誠人お坊ちゃまを守るために派遣された、銀河警察特殊部隊員・・・!」

 カグラにそう答えると、シルフィは展開していたベルトの中央パーツを右側にスライドさせ、待機モードにした。待機音声が流れると同時に、彼女はベルトにセットされたカードホルダーから『HURRICANE』と書かれた翠色のイラストのカードを取り出し、力強く宣言した。

「アーマー・オン!」

『Read Complete』

 シルフィが手にしたカードをベルトのパーツに押し込むと、電子音声が鳴り響いてパーツが自動的に再度展開された。それと同時に彼女の体をすさまじい突風が包み込み、その風が翠色の鎧へと変化して、シルフィの体を包み込む。

『疾風!烈風!暴風!アーマーインハリケーン!ハリケーン!』

 鎧が完全に装着されると同時に、鎧と同じ翠色の複眼が一瞬光り輝いた。新たに現れた戦士の姿に、クリムゾンブラザーズのみならず誠人達も息を飲む。

「あ・・・あれ、は・・・」

「銀河刑事デュアル。これが、私のもう一つの名です・・・!」

 思わず声を上げた誠人に、シルフィが鎧の下から言葉をかけた。一瞬動きを止めていたクリムゾンブラザーズの二人だったが、気を取り直して再び武器を握り締める。

「やれ」

 レグが槍をデュアルに向け、ソルジャーロイドに攻撃を命じた。それに応じるようにソルジャーロイド達が、一斉にデュアルを目掛けて動き始める。

「プラモデライザー」

 デュアルそう声を発すると、彼女の腰に巻かれたドライバーから巨大なプラモデルが現れた。プラモデルは一瞬で各パーツが合体し、巨大なボウガン状の武器・プラモデライザーとなってデュアルの手に収まる。

「参ります。はっ!」

 彼女は体に風を纏うと、宙を浮遊しながらプラモデライザーから光の矢を放ち、次々とソルジャーロイドを倒していった。ソルジャーロイドも手にした銃で上空のデュアルに攻撃を仕掛けるが、デュアルは軽やかに宙を舞ってその攻撃を回避し続け、さらに光の矢を連続で発射する。

「す・・・すごい・・・」

「なるほど。あの子、特殊部隊所属の刑事だったのね」

 デュアルの戦いに感嘆の声を上げた誠人の隣で、いつの間にか現れていたソフィアが得心したように声を上げた。

「ソ、ソフィアさん!」

「どうも、坊や。面白い奴が現れたと思って観察してたんだけど、あれはさすがに予想外だったわ・・・」

 そう言うと、ソフィアはデュアルの方へ視線を向けた。デュアルはソルジャーロイドをあらかた殲滅し、今度はクリムゾンブラザーズの二人を相手にしていた。二対一の状況でも彼女はまったく苦戦することなく、適度な距離を保ってウィンドペガサスと連携し、互角の戦いぶりを披露している。

「僕達も加勢しましょう!ソフィアさん、行けますか!?」

「ええ、そう来なくっちゃ」

 イリスバックルを装着した誠人に、ソフィアが目をギラリと光らせながら微笑みかけた。誠人はムーンライトのカードを手に取ると、待機状態のバックルにスキャンさせる。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.ムーンライトアーマー!』

『プラモデラッシャー!』

 誠人と合体したソフィアはプラモデラッシャーを召還し、デュアルとクリムゾンブラザーズの戦いに割って入った。デュアルの背後を取ろうとしていたレグの攻撃を、イリスは槍で受け止める。

「ッ!誠人お坊ちゃま、どうかお下がりを!」

「そういうわけにはいきません!シルフィさん、敵は二人です。連携させないように、分断して倒しましょう!」

 デュアルにそう叫びかけると、イリスはレグに攻撃を仕掛けた。一瞬躊躇うような反応を見せたデュアルだったが、襲ってきたザンの攻撃に即座に反応し、距離を取って応戦を再開する。

「なるほど、彼が・・・・・・私から見れば大したことはないように思えるが、あのデュアルとかいう刑事はなかなか侮れない・・・」

 そんな彼らの戦いぶりを、近くの建物の屋根からファルコがじっと観察していた。それに気づくこともなく、ザンがデュアルに猛攻を仕掛ける。

「おらおら!くたばんな!」

 ザンは長剣を振るいながら、果敢にデュアルに斬りかかっていった。だがその動きが徐々に大振りになり、わずかだが隙が生じるようになると、シルフィはその隙を見逃さなかった。

「はあっ!」

 ザンの攻撃をかわしたデュアルは大きくジャンプすると、ボウガンから光の矢を連続で発射し、ザンに直撃させて大きく吹き飛ばした。地面に着地すると、デュアルはホルダーから『FINISH』と刻まれたカードを取り出し、プラモデライザーのカード挿入口に挿し込んだ。

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 電子音声が鳴り響くと同時に、プラモデライザーの先端に翠色に輝く風のエネルギーが収束されてゆく。一方のザンはようやく立ち上がると、グロッキーな状態ながらも剣を握り直した。

「クソが・・・うああああああああああああああっ!!」

 雄たけびの如き叫びを上げながら、ザンがデュアルを目掛けて走り出す。一方のデュアルは武器にエネルギーが最大まで溜まると、ボウガンのトリガーを引いた。

『ハリケーンブラスト!』

 電子音声と共に放たれた光の矢が、ザンの体を一気に貫いた。その手から剣が零れ落ち、彼は地面に膝をついた。

「あ・・・兄貴いいいいいいいいいいいいっ!!」

「ザ・・・ザン!」

 断末魔の叫びと共に、ザンの体は爆発四散した。それを見たレグは一瞬動揺を見せたものの、鍔迫り合いを繰り広げていたイリスを押しのけ、隙が生じた相手に槍を繰り出した。

『ああっ!』

「うわっ!」

 その一撃が胸部に炸裂し、イリスは大きく吹き飛んで地面を転がった。デュアルはそれに気づくと、急いでイリスのもとに駆け寄ろうとする。

「誠人お坊ちゃま!・・・うっ、ううっ・・・ううぅぅぅ・・・!」

 その時、デュアルが急に胸を抑えて苦しみだした。突然の事態に、その場にいた誰もが困惑の表情を浮かべる。

「ど、どうしたんだろう・・・なんだか、すっごく苦しそうだけど・・・」

 ミュウが不安そうに、隣にいたキリアに声をかける。すると次の瞬間、デュアルの仮面の下からシルフィとは違う女性の声が聞こえてきた。

『おいシルフィ、今すぐ代われ!ずっと主導権握らせてやったんだ、今度はオレに遊ばせろ!』

「だ・・・誰があなたなんかに!うっ・・・やめな、さ・・・・・・うああああああああああああああああああっ!!」

 デュアルはその場に頽れて体をのけぞらせると、悲鳴のような絶叫を上げた。するとその鎧が強制的に解除され、次の瞬間その場にいた誰もが己が目を疑った。

「え・・・?シルフィさん・・・じゃない!?」

 鎧が解除されて露わになったのは、シルフィとは瓜二つの顔立ちながらも、紫の髪をポニーテールにした若い女性の姿であった。彼女は荒い息をつきながら、思わず声を上げたイリスを睨みつけた。

「おい、今度オレをシルフィって呼んだら、その顔一発ぶん殴ってやるぞ。オレはディアナ・ベンブリッツ、シルフィと体を共有してる、もう一つのれっきとした人格だ!」

「・・・!あの女、二重人格・・・!?」

 その事実を知ったレイが、あまりに予想外な展開に思わず驚きの声を上げる。ディアナはその場に立ち上がると、腰に巻かれたベルトのホルダーから『LITENING』と書かれた紫色のカードを取り出し、ドライバーをスライドさせて待機モードにした。

「アーマー・オン!」

『Read Complete』

 ディアナがカードをドライバーに挿し込んだ瞬間、彼女の周囲に激しい雷が降り注いだ。レグやイリス達が手をかざして身をかばう中、雷が紫色の鎧となってディアナの体に装着されてゆく。

『迅雷!激雷!強雷!アーマーインライトニング!ライトニング!』

 電子音声が鳴り響くと同時に、鎧の装着は完了した。複眼が鎧と同じ紫色に輝き、雷の力を宿したデュアル ライトニングアーマーへと変身を遂げると、ディアナは右手をかざして声を発した。

「プラモデライザー!」

 その声に応えるように、GPドライバーから巨大なプラモデルが現れる。先ほどシルフィが変身したハリケーンアーマーの時とは違い、プラモデライザーは巨大なハンマーモードへと合体を遂げ、デュアルの右手に収まった。

「さあ・・・遊んでやるぜ!来いよ!」

 ハンマーを片手で引きずりながら、デュアルがレグに向かって歩みを進める。ハンマーがこすれた地面からは火花が散り、それを引きずるデュアルの周囲には、紫色の雷が絶えず降り注いでいた。

第16話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです。

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[一言] シルフィがなかなかに予想外のキャラ てっきり正統派メイド系キャラかと思ったのに二重人格キャラですか
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