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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第15話「逆転の一手」後編

 それから、数十分後。ブラックマキナの秘密基地では、磔にされたミナミ達をライラスが冷酷な瞳で見つめていた。

「間もなく、メッセージを送って一時間が経つ。銀河警察から返答がない場合、お前達の一人を抹殺する。これもマザーの命令だ」

「ふん!マザーマザーって、あんたらマザーの命令がなきゃ何にもできないんですか、このマザコン星人!」

 十字架に縛れらながらも、ミナミは強気な声でライラス達を挑発した。ライラスは一瞬怒りの表情を浮かべると、手にした棒をミナミの十字架に押し当てて電気を流し込んだ。

「ひやああああああああああっ!そ・・・それやめなさいっての!」

「黙れ!マザーを侮辱することは、我が星の法律においては死罪に値する。・・・最初に殺す相手は決まったな。ミナミ・ガイア、お前からだ!」

 ライラスのその声を合図に、彼の配下達が銃口をミナミに向ける。なんとか逃れようともがくミナミだったが、手足を拘束されている以上どうにもできない。

「ボク達・・・もう終わりなのかな・・・」

 絶望的な状況に立たされ、ミュウが弱気な声を上げる。すると隣で拘束されているキリアが、励ますように言葉をかけた。

「諦めちゃだめ。お兄ちゃんを・・・信じよう!」

「そうよ。あの坊や、この状況におけるただ一つの勝ち筋に気づいている。だから・・・私達は、絶対に助かる!」

 キリアに続き、ソフィアも確信したように声を上げた。だが勝利を確信しているライラスは、二人の言葉を鼻で笑った。

「ふん。イリスになれない虹崎誠人が、我らに勝てるはずもない。たった一つの勝ち筋とやらも、イリスキラーの前には無駄な抵抗に終わる!」

 と、その時であった。基地の周囲を警戒していた科学者の一人が、ライラスに声をかけた。

「プロフェッサー、何者かがこの基地に接近しています!」

「何?映像を見せろ」

 基地の巨大モニターに、映像が映し出される。基地の入り口に設置された監視カメラが捉えたのは、イリスピーダーを走らせるブランクフォームのイリスの姿だった。

「あれは・・・誠人さん!」

「ん?あれは初期状態のイリスではないか。それに、何だあのバイクは?」

 初めて見るイリスピーダーに、ライラスが困惑の声を上げる。一方のイリスは基地の入り口が隠されている崖の岩肌を目掛け、イリスピーダーを走らせ続けた。

「座標はここをまっすぐ行ったところ・・・あの岩肌はカモフラージュか!」

 そう確信すると、誠人はさらにバイクを加速させた。それを見て、ライラスが冷たい笑みと共に呟く。

「馬鹿め。バイクで突っ込んだところで、そちらが死ぬだけだ」

 だが、次の瞬間その表情は一変することになった。イリスはバイクをウィリーさせながら岩肌に突っ込み、カモフラージュの壁を粉砕して一気に基地の中に飛び込んだ。

「ば・・・馬鹿な!我らの科学力の粋を尽くして作った壁が・・・!」

「なら、イリスピーダーだって、銀河警察の科学力の粋を尽くして作られたバイクよ」

 混乱して声を上ずらせたライラスに、レイが勝ち誇ったような笑みと共に告げた。

「あなた、肝心なデータを二つほど取り忘れたみたいね。ブランクフォームでもイリスはイリス、そしてイリスピーダーは、そのイリスに残された最後の武器・・・!」

 その言葉が続く間にも、イリスはイリスピーダーを駆って基地内を文字通り蹂躙していった。途中で袋小路に行き当たった時、彼はハンドルの近くにあるいくつかのボタンの存在に気づく。

「そうだ・・・確かこのバイク、ビームとか出せたよな・・・」

 以前、ショッピングモールで宇宙からのテロリストと戦った時、合体していたミュウがバイクに装備されている武装を使ったことを誠人は思い出した。だが、どのボタンが武器に対応しているか、誠人には全く分からない。

「これ・・・とりあえず押してみるか」

 適当に緑色のボタンを押した瞬間、前輪の近くに隠されていた砲口のような物が姿を現した。続けて緑色のボタンの上にあった黄色いボタンを押すと、砲口から光弾が発射されて袋小路の壁をいともたやすく粉砕した。

「すごい・・・これなら・・・!」

 イリスはさらにバイクを走らせ、立ちはだかるブラックマキナの兵士達をなぎ倒しながら先へと進んでいく。そしてついに、彼はミナミ達が囚われている基地の中心部へと辿り着いた。

「誠人さん!来てくださったんですね!」

 イリスの姿を見るなり、ミナミが歓喜の声を上げた。レイもその言葉に続く。

「たった一つの勝ち筋・・・気づいてたみたいね、β」

「ええ・・・僕達がこいつらのロボットと戦った時、そのいずれにおいてもイリスピーダーを使うことはなかった。だったら、当然そのデータがあるはずがない!」

「ふん、たかがバイク一台がなんだ。イリスキラー、奴を倒せ!」

 ライラスの言葉を合図に、起動したイリスキラーがイリスの前に現れる。それを目にすると、イリスはバイクをアクセルターンさせてイリスキラーに叫びかける。

「こっちだ!ついてこい!」

 挑発するように言うと、イリスはバイクを走らせてその場を後にした。イリスキラーも高速移動しながら、その後を追い始める。

「誠人さん!私達は置き去りですか!?」

 走り去ったイリスの姿を見て、ミナミが喜びから一転絶望感に満ちた声を上げる。だがその時、隣で縛られていたソフィアがあることに気づいた。

「いや、そうでもないみたいよ。・・・ほら」

 ソフィアがあごを動かし、目の前のある一点を示す。するとそこには、ランドタイガーを足でつかんで飛ぶゴールデンホークと、マグマスコーピオンを背中に乗せて飛ぶグリーンビートルの姿があった。

「プラモデロイドの皆・・・そうか!誠人君が持ってる予備のカードだ!」

 ミュウが声を上げると同時に、プラモデロイド達がミナミ達の手足を縛る鎖を壊し始める。ライラスやその部下達もそれに気づいて妨害しようとするも、新たに現れたアクアドルフィンが放つ音波と、ルナスネークが吐き出す幻惑効果のミストに苦しめられ、身動きすらろくに取れない。

「よっしゃ!助かりましたよ、ランドタイガー君!」

 そうこうしているうちに、ついにランドタイガーがミナミの拘束を解くことに成功した。続けてカグラ、レイ、キリアの拘束が解かれ、程なくミュウとソフィアも自由の身となった。

「マズい・・・全員退避だ!宇宙船に避難しろ!」

 自由になったミナミ達を見て、ライラスが情けない声を上げて逃げ始める。一方のミナミは指をパキパキと鳴らしながら、ぞっとするような笑みを浮かべて言った。

「ふっふーん・・・さあ、やられた分きっちりやり返させてもらいますよー!」

 ミナミ達がライラスとその部下を追い始めた、まさにその頃。イリスとイリスキラーの追走劇が、基地の外で繰り広げられていた。

「どうした!?こっちだこっち!」

 イリスピーダーを全速力で走らせながら、イリスがイリスキラーに叫びかける。イリスキラーはゴールドアーマーを上回るスピードでそれを追うものの、さすがに最高時速850キロを誇るイリスピーダーには追いつけず、距離が徐々に開いていく。

「よし、この辺で・・・!」

 イリスはバイクをターンさせてイリスキラーを正面に見据えると、ハンドル付近のボタンを押して光弾を連続で発射した。そのうちの数発がイリスキラーの足元に炸裂し、爆風と共にイリスキラーの体が宙に舞い上がる。

「今度はこれだ!」

 イリスは光弾を発射するボタンの上にある、赤いボタンを押した。するとメーターのディスプレイに、照準を合わせるような画面が表示される。

「よし、ロックオン・・・何が出るか分かんないけど、発射!」

 イリスは迷うことなく、再度赤いボタンを押した。するとバイクの砲口が光り輝き、そこからレーザービームが発射されてイリスキラーに直撃し、大きく吹き飛ばして地面に叩きつけた。

「よし・・・とどめだ!」

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 フィニッシュカードをバックルにスキャンさせると、イリスはイリスピーダーを再び全速力で走らせ、イリスキラーに向かって突っ込んだ。ようやく立ち上がったイリスキラーが光線を発射してきたが、イリスは恐れることなくバイクを加速させ、バックルのボタンを押す。

『ブランクフィニッシュ!』

 イリスの体、そしてイリスピーダーの車体が、黒い光に包まれる。その光はイリスキラーの光線をも弾き飛ばし、イリスはその勢いのままバイクでイリスキラーに突進を仕掛け、その体を貫いた。

「よし・・・!」

 イリスキラーと最高速度でぶつかったにもかかわらず、イリスとイリスピーダーには微々たるダメージもなかった。一方のイリスキラーは高速のイリスピーダーの突進を受けたことで体に大きな穴が開き、程なく大爆発を起こして跡形もなく吹き飛び、その体内に収められていた6枚のカードがイリスの手の中に戻った。

「馬鹿な・・・イリスキラーが・・・我らの最高傑作が・・・!」

 その爆炎を宇宙船の中で目にしたライラスが、呆然と声を上げる。すると次の瞬間、部下である女性の声が彼の耳に飛び込んできた。

「プロフェッサー!マザーからの緊急メッセージです!」

 その言葉が終わるとすぐ、船内の全モニターにマザーからのメッセージが表示された。それは、ライラス達にとって衝撃的な内容であった。

「『イリス打倒プロジェクトの失敗を確認。ブラックマキナは今回の件に一切関与せず、全てはプロフェッサーライラス及び、その一党の独断で引き起こされた事件であるとの公式見解を発表する。そして治安維持のため、事件を引き起こした者達の即時抹殺を断行する』・・・・・・マザー、なぜ・・・!」

 ライラスの言葉が終わらぬうちに、宇宙船、そして基地に仕掛けられていた自爆装置がブラックマキナからの遠隔操作で起動し、程なく宇宙船は大爆発を起こした。基地から立ち上ぼる炎を見届けると、イリスは変身を解除する。

「誠人さん!」

 それとほぼ同時に、GPブレスを取り戻して脱出したミナミ達が、誠人のもとに駆け寄ってきた。彼女達の無事な姿を目にし、誠人も心からの笑みを彼女達に向けるのだった。


☆☆☆


 数時間後。誠人の家では、イリスキラーを倒したと事と誠人の免許取得を祝い、ささやかな祝賀会が行われていた。

「今回の事件は、虹崎君のお手柄だったな。・・・虹崎君、君の行動に、心からの感謝を」

 そのさなか、ジョージから誠人に通信ががかかってきた。誠人は一旦中座すると、その通信に応じて言葉を返す。

「いえ・・・僕は、大したことはしてません。ただ・・・」

 そこで一旦言葉を切ると、誠人は豪華な食事に盛り上がるミナミ達に視線を向けた。ミナミとソフィアがいつものようにつまらぬことで言い合いを始め、それを呆れたような顔をしながらレイがなだめている。その一方で、楽しそうにミュウとお喋りするキリアの隙をついてカグラが彼女の皿に載っていたエビフライをかすめ取り、それに気づいたキリアが子供のように大声を上げる。

「ただ・・・皆の命を、助けたかった。いつも彼女達が、僕にそうしてくれているように。・・・それだけです」

「そうか・・・なら、これ以上無粋なことはもう言うまい。皆と楽しみたまえ、虹崎君」

 その言葉を最後に、ジョージは通信を打ち切った。すると彼のもとに、中座に気づいたキリアとミュウが駆け寄ってくる。

「お兄ちゃん!主役が抜け出しちゃだめじゃない!」

「そうだよ!せっかく誠人君が免許を取ったお祝いなんだから、楽しまなきゃ!」

 二人に手を引かれ、誠人は再び座に戻った。すると隣に座るミナミが、ほのかに頬を赤らめながら誠人に告げる。

「誠人さん・・・今日の誠人さん、すごくかっこよかったです。まるで・・・本物のヒーローみたいに」

 その言葉に、今度は誠人が赤面した。彼はミナミから視線を逸らすと、しどろもどろになって言葉を発する。

「そ・・・そうか?・・・そうだった、かな・・・?」

「ええ!私、あなたに惚れ直しちゃいました!だから誠人さん・・・・・・この愛を、その身で受け止めちゃってくださーい!」

 そう叫ぶように言うと、ミナミはいきなり誠人に抱き着いてきた。その体を受け止めきれず、誠人が床に倒れこむ。

「な・・・・・・急にそういうことはよせって、ミナミ・・・!」

「だってぇ、もう我慢できないんですもの♡ 誠人さん、このまま行けるところまで行っちゃいましょう!果ての果てまで!」

「よ、よせって・・・息が、息が苦しい・・・!」

「あらあら。若いのにお盛んね、ミナミったら」

 久しぶりに派手に誠人に抱きつくミナミを見て、ソフィアがくすくすと笑いながら言った。その一方では、カグラがキリアとミュウの目をその手で押さえて見せまいとしている。

「やっぱりミナミ、ポンコツ刑事・・・」

「レイさん・・・ソフィアさんや他の皆も、見てないで助けてええええええええっ!!」

 孤軍奮闘する誠人の叫びが、虹崎家の中に響き渡る。彼の長い戦いは、ある意味ではここからが本番であった。

第15話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] この緊急事態っていうので何で免許なの!?ってかんじがとても良い やはり戦ってばかりだと地球が舞台ってことわすれそうになりますもんね… そしてやはり主人公のバイクは強くてかっこいいに限る!
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