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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第13話「家出少女を捜して」後編

 ミナミが渋々ソフィアの同行を許した、まさにその頃。レイはサニーを連れ、とある廃工場に身を潜めていた。

「ふぅ・・・とりあえずは、ここで様子を見よう」

 周囲を警戒しながら、レイがサニーに言葉をかける。だがその声は、サニーには届いていなかった。

「もうやだ・・・・・・なんで、私がこんな目に・・・・・・」

 うずくまってそう呟いたサニーの目からは、一筋の涙が流れていた。それを見て小さくため息をつくと、レイは確かめるように問いかけた。

「今更聞くまでもないことだと思うけど・・・・・・『追われてる』って言ってたのは、嘘なのよね?」

 その問いかけに、サニーは小さくうなずいて答えた。

「うん・・・・・・それに、お姉さんのGPブレスをおかしくしたのも、私・・・・・・この機械で、通信機能ダウンさせてた・・・」

 震える手で握りしめたスティックタイプの機械を、サニーはレイに差し出した。受け取ったレイが機械のスイッチを押すと、GPブレスの通信機能が復旧した。

「よし・・・皆、聞こえる?」

「レイさん!良かった、やっと連絡取れた・・・」

 レイとの通信が回復し、その声を聞いた誠人が安堵の声を上げた。

「今、サニーと一緒にいるの。でも、ゼロワールドの一味に追われてて・・・」

「やっぱりそうか・・・今、逃げるレイさん達の姿を目撃したマグマスコーピオンに、場所を案内させてるところだったんです」

「でもちょうど行き詰まっちゃって、これからゴールデンホークを使おうとしてたところなの。レイ、今どこにいるの?」

 キリアがそう問いかけると、レイは自らの現在地を示した座標を、彼女達のGPブレスに送った。

「場所の座標を送った。できるだけ早く来て」

「分かった。レイ、もう少しの辛抱だよ」

 カグラが励ましの言葉をかけると、レイは力強くうなずいた。そんな彼女の様子を見て、サニーがふと声を上げる。

「いいな・・・頼れる仲間が一杯いて。私なんて・・・仲間どころか、友達一人もろくに作れなかった。全部・・・お父さんの言いつけで」

「どういう・・・こと?」

 レイが問いかけると、サニーはこれまでの人生をぽつりぽつりと語り始めた。

「私ね、今までの人生、全部お父さんの言う通りにやってきたの。『お前は私の言う通りに生きればいい』って、子供のころからずっと言われてた。学校も、習い事も趣味も、全部お父さんが決めたことばっかり。誰かと仲良くなろうとしても、『お前の友達は私が選ぶ』って言われて、結局お父さんが選んだ友達しかできなかった。だから・・・・・・私には、心から友達と呼べるような相手、一人もいないの」

 そこで一旦言葉を切ると、サニーはふっと自嘲の笑みを浮かべた。

「分かってる。お父さんだけが悪いんじゃない。これまで反発してこなかった、私が一番悪いの。・・・それでも、お父さんの喜ぶ顔が見たくて、私ずっと我慢してきた。・・・だけど、周りの女の子達の自由な姿を見て、私とうとう我慢ができなくなっちゃったの。私も、一度でいいから自由に生きてみたい。そう思って・・・」

「この星に逃げてきた、というわけね?」

 レイの問いかけに、サニーはこくんとうなずいた。

「やっと・・・やっと籠の鳥から解放されたと思った。お父さんの押し付けの人生から、やっと解放された、って・・・・・・なのに、こんな目に遭うなんて・・・!」

 両手に顔をうずめると、サニーは嗚咽を漏らし始めた。そんな彼女の隣に腰掛けると、レイはその肩に優しく手を置いて言った。

「自由に生きたいって思う気持ち、間違ってはいないと思う。私も・・・・・・そう思ったことがあるから」

「え・・・?」

 涙に濡れた顔を上げたサニーに、レイは自らの過去を語り始めた。

「子供の頃、大黒柱だった父さんが戦争で死んで、母さんと私、そして弟と妹が残された。・・・母さんは病気がちで、月並みに働くことすら難しい体だったの。・・・当然、私達の暮らしは貧しかった。それでも母さん、私達姉弟に十分な教育を受けさせようと、必死に内職で学費を稼いでくれた。『お金は自分が用意するから、あなた達はしっかり勉強して』って、いつもそう言ってくれた。・・・だけど、私はいつも母さんに申し訳なかった。私達姉弟のために、自分を犠牲にしてくれてる母さんを見るの、すごく辛かった。だから私・・・・・・学校に行かなくなった。家計のために、夜に簡単なアルバイトはしてたんだけど、それだけじゃなくて昼間も働き始めた。もちろん、母さんには内緒でね」

 遠くを見るような目で、レイは過去を思い出しながら続けた。

「でも、あるときそれが母さんにバレて、私は弟達の前で母さんと大喧嘩した。『誰がここまで育ててやったと思ってる』って言われて、私も思わずカチンときたのよね。『自分の人生くらい、自分で生きさせて』なんて言って、私は家を飛び出していった。そして後はお決まりのコース。夜の街に飛び込んで、年齢を偽って違法なお店で働き始めた。・・・だけど、働いてた店が銀河警察に摘発されて、私も補導されて家に帰された。・・・その時知ったの。母さんが、病気で亡くなってたって」

「え・・・?お母さんが・・・?」

 サニーの問いかけに、レイは表情を歪めて小さくうなずいた。

「弟達から聞かされた。母さん、ずっと私のこと心配してくれてた、って。・・・最後の最後まで、私に会いたいって、そう言ってた、って・・・・・・」

 レイの水色の瞳が、徐々に涙で潤んでいく。その涙を手で拭うと、レイは再び口を開いた。

「あの時は・・・心から自分を呪った。母さんの思いに向き合わずに、逃げてしまった自分を。そしていつしか、私はこう思い始めるようになった。私と同じ後悔をする人を、二度と生みたくないって」

 そこで一旦言葉を切ると、レイはサニーに向き直って言った。

「お父さんの言いつけに反発して、逃げ出したいって思ったことは、決して間違いじゃないと思う。でも逃げてるばかりじゃ、お父さんきっとあなたの気持ちを分かってくれない。すごく勇気がいると思うけど・・・・・・真正面からお父さんと向かい合って、自分の気持ちをぶつけるのが、一番いいと思う。腹を割って向かい合うことで、きっと、お互い分かることもあると思うから」

「腹を割って・・・向かい合う・・・」

 自分の言葉を復唱したサニーに、レイは強くうなずきかけた。

「見知らぬ星に逃げ込むだけの勇気があるあなたなら、絶対にできるはず。だから・・・帰ろう、あなたの家へ」

 レイの言葉に、サニーは決意を込めた微笑みと共にうなずいた。それを見て、レイも思わず小さな笑みを浮かべる。

「いやあ、見つけましたよ。まったく、手間をかけさせてくれる」

 その時、廃工場の入り口にソルジャーロイドを従えたレジュドが現れた。レイはサニーを後ろ手にかばいながら、GPブレスを戦闘モードにして敵に突き付ける。

「レジュド・・・!」

「おや、この戦力差でまだ抗う気ですか。・・・まあいいでしょう。どの道もうすぐ、あなたは死ぬことになる」

 レジュドが指をパチンと弾くと、無数のソルジャーロイドが一斉に動き出し、レイに向けて光線銃を突き付けた。レイはサニーを怯えさせまいと気丈に振舞っていたが、敵のあまりの多さに内心諦めに近い感情を抱いていた。

(数が多すぎる・・・もう、ここまでなの・・・?)

 思わずそんな言葉を心の中で呟いた、次の瞬間。どこからか飛んできた無数の光弾が、レジュドの周りにいたソルジャーロイドを撃ち抜き、破壊した。

「な・・・誰だ!?」

 突然の事態に、レジュドが驚きの声を上げる。光弾の飛んできた方へ視線を向けた彼が見たのは、レイと同じくGPブレスをこちらに突き付ける、六人の人物の姿であった。

「レイ!助けに来たよ!」

「カグラ・・・皆・・・!」

 仲間達の姿を見て、レイは思わず歓喜の声を上げた。誠人やカグラ達はGPブレスから光弾を発射し、レジュドを守ろうとするソルジャーロイドを次々と倒していく。

「今のうち・・・サニー、どこかに隠れて!」

「う・・・うん!」

 サニーを安全な場所に隠すと、レイもGPブレスから光弾を発射し、ソルジャーロイドや移送ドローンを次々と破壊した。そして敵の攻撃をかわし、誠人達と合流する。

「来てくれてありがとう、皆」

「いえ・・・さて、あとはあいつを倒すだけですね」

 レイの言葉に応えると、誠人はGPブレスをレジュドに突き付けた。

「ゼロワールドのレジュド!もうお前に勝ち目はない、降伏しろ!」

「ほう、威勢のいい坊やですね。ですが、私にも切り札というものがありましてねぇ・・・!」

 そう言うが早いか、レジュドは首から下げていたネックレスのような物に触れた。するとネックレスを基点にナノテクのスーツが展開されてゆき、レジュドの体を覆いつくした。

「どうです?DOE社が開発した、次世代型のナノテクアーマーです。これは決して破れぬ鎧、いくらあなた方7人が相手でも、私を倒すことはできない・・・!」

 両手からナノテクの剣を伸ばしながら、レジュドが得意げに言い放った。そしてまだ残っていたソルジャーロイドも、彼を守るように立ち塞がる。

「本当にそうかしら?やってみなければ、何も分からないと思うけど?」

 相手がどれだけ強力な戦力を持っていても、レイはまったく恐れることはなかった。そしてそれは、彼女の隣に立ってイリスバックルを装着した、誠人もまた同じであった。

「ああ。レジュド、僕達と勝負しろ。・・・レイさん、行けますか?」

「ええ、もちろん」

 誠人はバックルを待機モードにすると、ホルダーからスプラッシュのカードを取り出した。そしてレジュドを鋭く見据えながら、バックルにカードをスキャンさせる。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.逆巻く荒波!スプラッシュアーマー!』

 レイが姿を変えた青い鎧が、イリスの強化スーツの上から装着される。やがて合体が完全に完了すると、イリスはマグナムモードのプラモデラッシャーを握り締めた。

『ミナミ達は、ソルジャーロイドやドローンをお願い。・・・行くよ、β!』

「はい!」

 イリスはレジュドに向かって駆け出すと、プラモデラッシャーから水を凝縮した弾丸を放った。それと同時にミナミ達も、ドローンやソルジャーロイドとの戦闘を開始する。

「ふん!はあっ!」

 ナノテクスーツを纏ったレジュドが、腕から伸ばした剣でイリスに攻撃を仕掛ける。イリスはそれをかわすと同時に銃から水の弾丸を放ったが、ナノテクスーツはびくともしない。

「効かないのですよ!その程度の攻撃など!」

 自信満々に言い放つと、レジュドは再び剣で攻撃を仕掛けてきた。イリスはその攻撃を紙一重で回避すると、相手の右腕から伸びる剣に狙いを定め、その根元に連続で銃弾を発射した。

「うっ・・・!」

 根元に立て続けに銃撃を受けたことで、剣はその部分から折れて地面に落下した。だがレジュドが首から下げるネックレスに触れると、そこから液状のナノロボットが右腕に供給され、再び剣を形作った。

「くっ・・・復活した!」

「ふふふ・・・どうです?これがこのスーツの強み。例え一部が破損しても、このようにすぐに復旧できる・・・!」

 得意げに声を上げると、レジュドはイリスに再び襲い掛かった。なんとかその攻撃をかわしながら、誠人がレイに問いかける。

「どうしましょうレイさん・・・このままじゃ、いつまで経ってもあいつを倒せません!」

『そんなことはない。あいつは、あの装備の弱点を自ら晒してくれた』

『Start Up、Aqua Dolphin』

 冷静に言葉を返すと、レイはバックルにカードをスキャンしてアクアドルフィンを召還し、音波攻撃をお見舞いした。その攻撃はナノテクスーツでも防げず、レジュドが苦悶の表情で耳を押さえて膝をつく。

『今よ!来て、アクアドルフィン!』

 レイが呼びかけると、アクアドルフィンが砲口のような形に再度合体し、プラモデラッシャーに装着された。イリスはレジュドの首元のネックレスに狙いを定め、プラモデラッシャーから強化された弾丸を発射した。

「うわあっ!・・・っ!ネックレスが・・・!」

 弾丸の威力に吹き飛ばされたレジュドが、破損したネックレスを見てうめき声を上げた。

『どう?そのネックレスが、ナノロボットをスーツに供給していたんでしょ?だったら・・・それさえ破壊してしまえば、もうそのスーツの強みは失われる・・・!』

「そうか・・・さすがレイさん!」

 先ほど破損した部位を直す時、レジュドがネックレスに触れたことをレイは見逃さなかった。そしてスーツを装備するときにも、レジュドはネックレスに触れていた。この二つの事実から、レイはこのスーツの弱点を見抜いたのだった。

「おのれ・・・うおおおおおおおおおおおっ!!」

 半ばグロッキーになったレジュドが、脇目もふらずイリスに突っ込む。だがイリスは冷静にその攻撃をかわすと、大きくジャンプして強化された弾丸を次々と発射し、レジュドのスーツを大きく破損させた。

「うあっ!・・・ぐっ・・・!」

『よし・・・決めるよ、β!』

「はい!」

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 イリスはフィニッシュカードを取り出すと、バックルにスキャンさせた。同時に空気中の水分が巨大な波となり、イリスの背中から一気に押し寄せてきた。

『スプラッシュフィニッシュ!』

『はっ!』

 イリスはバックルのボタンを押すとジャンプし、押し寄せる波に乗って一気にレジュドに迫った。そしてレジュドに左右の足で交互に連続蹴りを放ちながら、プラモデラッシャーの零距離射撃をお見舞いした。

『はああああっ!』

 最後に両足を揃えた強烈なキックが炸裂し、その一撃にレジュドの体は大きく吹き飛んだ。彼の体を覆うナノテクスーツがダメージ超過で火を噴き始め、やがて大爆発を起こした。

「うわあああああああああああっ!!」

 その爆発に呑まれ、レジュドは断末魔の叫びと共に消滅した。それを見届けると、誠人は変身を解いてレイとの合体を解除する。

「誠人さん!レイ!やりましたね!」

 ソルジャーロイド達を片付けたミナミ達が、レジュドを倒した二人のもとに駆け寄った。それと同時に隠れていたサニーも姿を現し、レイと心からの笑みを交わすのだった。


☆☆☆


「皆さん・・・ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」

 数十分後。地球にやってきた宇宙船の前で、サニーは誠人達に頭を下げた。

「私、お父さんとしっかり向き合って、自分の気持ちを伝えてみます。もう、逃げたりなんてしません」

「うん・・・頑張ってね。私、応援してるから」

 微笑みながらかけられたレイの言葉に、サニーは力強くうなずいた。

「ありがとう、レイさん・・・・・・それじゃあ、私・・・行きます」

 サニーは宇宙船に乗り込むと、自らの故郷へと帰っていった。それを見送りながら、ミナミが伸びをして声を上げる。

「やれやれ、とんだ一日になりましたね。でもまあ、これで一件落着、といったとこですかね」

「ああ。僕達も帰ろう、それぞれの家に」

 誠人の言葉を合図に、一同はそれぞれの家に戻り始めた。レイは宇宙船の姿がすっかり見えなくなるまでその場に残り続け、一番最後に帰路につくのだった。



『お久しぶり、レイさん。私、初めて自分で友達を作れたの!』

 それからしばらく経ったある日のこと。レイのGPブレスに、サニーからのメッセージが届けられた。

 そのメッセージには、一枚の写真が添付されていた。その写真には、サニーとその友人と思しき少女が、弾けるような笑顔で写っていた。

「そう・・・・・・がんばったわね、サニー」

 送られた写真を見て、レイは微笑みながら呟いた。この後も彼女とサニーの交流は、細く長く続いてくことになるのだった。

第13話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです。

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[一言] レイ掘り下げ界 自分だけが不幸なのではなく、皆何かしら不幸な人生を送りそれでも歩んでいるてきなエピソード こういう回の敵は、悪賢そうな幹部っぽい敵に限る
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