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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第12話「思い出の牢獄」後編

「ッ・・・!ここが・・・異次元ですか・・・?」

 それから、数分後。時空の穴をくぐってきたミナミが、オーロラが空に輝く不思議な世界に足を踏み入れた。

「とにかく、誠人さんを捜さないと。・・・それと、ソフィアも放ってはおけないでしょうしね・・・!」

 苦々しく吐き捨てると、ミナミは一面の砂漠を歩き始めた。しばらく歩くうちに、一軒の古びたビルのような物が彼女の視界に入る。

「いかにも怪しそうな建物・・・あそこから当たってみますか・・・」



「異次元人って・・・本当に、ミナミがそう言ってたの?」

 一方。現実世界では、カグラから連絡を受けたレイが、キリアを連れて誠人達が消えた現場に辿り着いていた。

「ああ。あたしも姿を見たわけじゃないけど、ミナミははっきりそう言ってた。・・・それに、ここには一人の男の子が、意識を失って倒れてた。・・・多分、その異次元人とやらに何かされたんだ」

 その時、ゴールデンホークでその場所を探っていたキリアが、困り果てたように声を上げた。

「レイ、全然駄目。お兄ちゃん達がここにいたのは確かみたいだけど、それ以降の足取りが全くつかめないの。・・・突然消えたとしか、言いようがないよ・・・」

「そう・・・やっぱり、本当に異次元人が・・・?」

 と、その時。一同のGPブレスに、星南を病院まで送った救急車に付き添いで同乗していたミュウから、通信が入った。

「ミュウだ・・・はい、こちらカグラ」

「あ、ミュウです!今病院にいるんですけど、お医者さんもどうしたらいいのか分からないみたいです。体の状態も脳の状態も、至って正常なはずらしいんですけど・・・」

「そっか・・・やっぱり、例の異次元人とやらの仕業・・・?」

「かもしれません。少し調べてみたんですけど、ここ何日かの間で同じような状態で発見された人が、少なくとも30人は超えてます。皆、今も眠り続けたままで・・・」

「そう・・・ありがとう、ミュウ」

 通信を打ち切ると、レイは苦々しく目の前の空間を見つめた。これまで多くの宇宙人犯罪者と戦ってきた彼女も、異次元の敵と向き合うのはこれが初めてのことであった。

「レイ、キリア達どうしたらいいんだろう・・・?」

 不安そうに尋ねてきたキリアの頭を、レイは慰めるように優しく撫でた。

「信じましょう。ミナミが・・・きっとβとソフィアを助けてくれる。あの子なら・・・きっと・・・!」

 そう口にしたレイの手は、小刻みに震えていた。それを見て彼女の心中を察し、キリアとカグラはそれ以降、何も口にすることはなかった。



「教官!・・・教官!」

 同時刻。眠りに落ちていたソフィアは、耳に飛び込んでくる声に目を覚ました。

「・・・!あなた・・・マリー!」

 ソフィアの目の前でこちらを覗くようにかがみこむ、ピンクの髪の少女。それは二年前に死んだはずの、教え子の一人・マリーであった。

「どうして・・・?あなた、二年前に・・・」

「もう、何言ってるんですか教官?・・・皆!教官目を覚ましたよ!」

 その声を合図に、近くにいた少女達がこちらに駆け寄ってくる。彼女達もまた、二年前にゼロワールドによって命を奪われた、ソフィアの教え子であった。

「ナタル・・・シレーヌ、リタ・・・・・・そんな・・・どうして・・・」

「教官!今日が何の日か・・・分かりますよね?」

 黒いショートヘアの少女・リタが、ソフィアの手を取ってある場所へ案内する。そこにはテーブルが一つ置かれており、その上には蝋燭が立てられたケーキが用意されていた。

「教官、今日がお誕生日でしょう?・・・おめでとうございます、教官!」

「おめでとうございます!」

 青い髪のナタル、金髪のシレーヌが、相次いでソフィアに祝福の言葉を贈る。目の前で繰り広げられている光景は、ソフィアの記憶の中に確かに存在するものであった。

「ああ・・・これ、地球の任務の一週間前の・・・」

 その時、リボンを結んだ小箱を持って、ミナミが姿を現した。彼女は屈託のない笑顔で、箱をソフィアに差し出した。

「おめでとうございます、教官!これ・・・私達からのプレゼントです!」

 ソフィアがその箱を受け取って開けると、そこにはドッグタグが収められていた。タグにはソフィアの星の言語で、『親愛なる私達の教官へ』と記されている。

「嬉しい・・・私の誇りよ、皆・・・」

 ソフィアは目から涙を流すと、五人の教え子と抱き合った。そこで記憶が巻き戻り、再び誕生日をマリーから祝福される場面から始まる。

「ふふっ・・・なんて幸せそうな顔」

 記憶に浸るソフィアの顔を、カリーナが冷酷な笑みと共に見つめていた。ソフィアから奪った生気を小瓶に詰めると、カリーナはソフィアの頭をそっと撫でた。

「安心なさい。あなたは貴重な研究材料、少しでも長生きできるよう生気は少なめに取っておきました。・・・生きている限り、あなたはその思い出にずっと浸っていられるのですよ。ふふふ・・・」

 ソフィアに微笑みながら声をかけると、カリーナは部屋を出ていった。だがこの時、彼女は気づいていなかった。部屋の隅でルナスネークが、とぐろを巻きながら一部始終を見ていたことに。




「ふむふむ・・・ここ、研究所か何かみたいですね・・・」

 数分後。建物に踏み入って中を歩いていたミナミが、いくつもの部屋に置かれた実験器具などを見て声を上げた。

「そういえば・・・あのカリーナって女、『研究対象』とかなんとか言ってたような・・・どうやらビンゴかもしれませんね、ここ」

 ミナミは確信を深めると、GPブレスを構えながらある部屋に足を踏み入れた。そこにはいくつもの監視モニターが設置されており、その一つには手術台のような物に拘束されている、一人の少年の姿があった。

「・・・!誠人さん!」

 ミナミが小さく叫んで部屋を飛び出した、まさにその頃。カリーナは研究室の一つに誠人を連れ込み、その四肢を拘束してメスを一本手に取った。

「さて・・・あなたが他のヒューマノイドと合体できるのは、そのベルトのおかげ?それともあなた自身の体質?・・・まあどっちにしろ、解剖してみれば明らかになりますわね」

「ふ・・・ふざけるな!星南から奪った生気を、どうするつもりなんだ!?」

「ああ、これのこと?」

 手にした小瓶を見せつけるように振ると、カリーナは高揚したような声を上げた。

「ふふっ。私は異次元の人間の生気を、電力に代わるエネルギーとして使う研究をしていますの。もしこの研究が成功すれば、電力などという不安定なエネルギーに頼ることなく、この次元世界をさらに発展させることができる!・・・しかし、そのためにこの次元の人間から生気を奪うのは、あまりにリスクが大きい。そこで・・・」

「異次元である僕達の世界の人間に、目をつけたってことか・・・!?」

「ええ、その通り!異次元の人間であれば、いくら死んだところで痛くも痒くもありませんもの。それに生気をもらった相手には、対価として最も幸福な思い出に浸らせてあげています。それで十分でしょう?」

「お前・・・!くそっ、放せ!」

 なんとかそこから逃れようとする誠人だったが、四肢を鎖で拘束されて身動きが取れなかった。そんな彼に冷酷な笑みを向けると、カリーナはメスを手に誠人に迫り寄る。

「さあ、たっぷりあなたの体を見せて。なるべく活きがいい状態で見たいから、まずは麻酔なしで・・・うっ!」

 その時、カリーナがうめき声と共に背中をのけぞらせ、その場に倒れこんだ。何事かと誠人が首を動かすと、そこにはカリーナに向かってGPブレスを構えるミナミの姿があった。

「くぉおらあっ!私の誠人さんに、何しようとしてくれてんですか!?」

「ミナミ!?君も来てたのか!?」

「ええ。誠人さんが行く所、たとえ火の中水の中・・・!」

『Start UP、Land Tiger』

 ミナミが召還したランドタイガーが、その鋭い爪と牙で誠人を拘束する鎖を壊し、彼を解放する。自由になった誠人が立ち上がると同時に、ミナミの攻撃を受けて倒れていたカリーナも立ち上がった。

「くっ・・・一人逃がしたと思っていましたが、まさかこの世界まで追って来るとは・・・!」

「行くぞ、ミナミ。あいつから皆の生気を取り戻す・・・!」

「ええ。リベンジマッチと行きましょう、誠人さん・・・!」

 誠人は腰に装着していたイリスバックルのボタンを押し、待機モードにした。そしてホルダーから取り出したグランドのカードを、力強く認証部分にかざす。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.震える大地!グランドアーマー!』

『プラモデラッシャー!』

 ミナミと合体してイリスとなると、誠人はプラモデラッシャーを振るってカリーナに襲い掛かった。杖で攻撃を受け止めようとしたカリーナだったがその連撃をさばききれず、剣の一撃が彼女の体に直撃して大きく吹き飛ばした。

「ああっ!」

 地面に倒れこんだ拍子に、彼女が懐に収めていた人々の生気を詰めた小瓶が地面に落ちる。イリスがそれを手に取ったとみるや、カリーナは戦意を失ってその場から逃走した。

『待ちなさい!』

「待て、ミナミ!」

 カリーナの後を追おうとしたミナミだったが、誠人が彼女を引き留めた。

「あいつならいつでも倒せる。それより、ソフィアさんを捜そう。カリーナが『貴重な研究サンプル』とか言ってたから、この建物の中にいるはずだ」

『ふぅ・・・あの女を助けるのは、正直気が進みませんね』

「ミナミ・・・」

 気乗りしないような口調で言ったミナミだったが、彼女もすでに腹を決めていた。

『でも、誠人さんならきっとそう仰ると思ってました。・・・さあ、行きましょう。早くあの女を助け出して、こんな気味悪い世界おさらばです!』

 ミナミの言葉に、誠人は心の中で安堵のため息を漏らした。

「よし・・・行くか!」

『ええ!・・・ん?あれは・・・』

 ソフィアを捜そうと思った矢先、イリスの前にルナスネークが現れた。ルナスネークは誘うように首をもたげながら、ある場所に向かって進みだす。

「ソフィアさんのプラモデロイド・・・ミナミ、僕達ついてるかもしれないぞ」

『ええ。あの後を追っていけば、きっとあの女がいる・・・!』



「うう・・・こうなったら、ここは捨てるしかありませんわ」

 一方。イリスの攻撃から逃れたカリーナが、ソフィアを監禁している部屋にやってきた。

「でも、この女だけは連れて行かないと・・・こんな貴重な研究サンプル、もう二度と手に入らないでしょうから・・・」

 カリーナの視線の先で、ソフィアは未だ昏睡状態に陥っていた。カリーナが部屋の機械を操作し、ソフィアの体をストレッチャーに固定しようとした、その時であった。

「やめろ、カリーナ!」

 横たわるソフィア、そしてカリーナの姿を目にしたイリスが、剣を手に部屋に駆け込んできた。それを見て酢を飲んだような表情になりながらも、カリーナは懐から小さなリモコンを取り出した。

「ソフィアさんを返せ!」

「ふん、誰が返すもんですか!・・・あんた達は、この子達と遊んでなさい!」

 カリーナがリモコンのスイッチを押すと、部屋に置かれていた3Dプリンターのような機械が光を照射し、一瞬で数体のロボットのような物を作りだした。ロボットはその手に銃や剣を装備し、一斉にイリスに襲い掛かる。

「くっ・・・急ぐって時に・・・!」

『だったら・・・来なさい!ランドタイガー君!』

 ミナミがそう呼びかけると、イリスの後を追いかけてきたランドタイガーが咆哮を上げてジャンプし、空中で刃のようなパーツに再度合体した。そしてプラモデラッシャーの刃先に合体し、その威力を増強させる。

『ふっ!はっ!おりゃああああああああっ!!』

 威力が増加したプラモデラッシャーの一撃は、襲い来るロボットをいとも簡単に切り裂いた。その攻撃を受けたロボットの一体が大きく吹き飛び、ソフィアを乗せたストレッチャーを運び出そうとしていたカリーナに直撃して動きを封じる。

『一気に決めますよ・・・!』

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 イリスはフィニッシュカードをプラモデラッシャーにスキャンさせ、大地の力を剣に凝縮させた。そしてパワーが最大まで溜まると、トリガーを引いて勢いよく剣を振り払う。

『グランドスラッシュ!』

『はああああああああああっ!!』

 強化された剣の一撃に、ロボット達は粉々に粉砕された。同時にランドタイガーがプラモデラッシャーから分離し、粉々に砕け散る。

「ソフィアさん!」

 敵を殲滅すると、イリスはソフィアが横たえられているストレッチャーに駆け寄った。そして人々の生気が詰まった小瓶を手に取り、その蓋を開ける。

「戻ってきてください、ソフィアさん・・・!」

 イリスは小瓶を振り、中の生気をソフィアに振りかけた。それと同時に彼女の体がピンク色に輝き、その夢の中でもある変化が現れた。

「っ・・・!そうね・・・今私が見ているのは、過ぎ去った過去の思い出の一つ・・・」

 我に返ったような表情になると、ソフィアは教え子達の顔をじっと見つめた。そしてドッグタグを握り締めると、決意を込めた表情で言葉を発する。

「皆・・・私、皆のこと絶対に忘れないわ。だから・・・・・・私、もう行かなきゃ・・・・・・私は・・・私は皆の分まで、生きないといけないから・・・!」

 ソフィアの視界が光に包まれ、教え子達の姿が消えていく。そしてその視界を完全に光が覆いつくした時、眠っていたソフィアの目が開かれた。

「・・・!ソフィアさん!」

「ここは・・・・・・そっか。私、異次元に連れ込まれたんだっけ・・・」

 一瞬で状況を把握すると、ソフィアはイリスの手を借りてストレッチャーから起き上がった。

「助けてくれてありがとう、二人とも。ようやく・・・悪夢から解放されたわ」

「うぅ・・・悪夢、ですって・・・?」

 吹っ飛ばされたロボットが直撃して倒れていたカリーナが、ようやく立ち上がって怒りの声を上げた。

「人がせっかく幸せな記憶を探り当てて、その思い出に浸らせてあげたというのに、なんて恩知らずな!」

「何が『恩知らず』よ!人の頭勝手に覗き込んで、死ぬまで醒めない夢に閉じ込めておいて!」

 ソフィアは怒りに声を荒げると、カリーナを鋭く睨み据えた。

「あんたは思い出という牢獄に人を閉じ込めて、自分の研究を正当化しようとしてただけ。そんなふざけた研究、今日限りで終わらせてあげるわ!」

「くっ・・・このあばずれ!よくもそんな減らず口を!」

 完全に怒りに囚われたカリーナが、手にした杖から光弾を発射した。それを紙一重でかわすと、ソフィアはイリスに声をかける。

「ミナミ、悪いけど交代してくれない?あいつ一発ぶん殴らなきゃ、私の気が晴れないの」

『な、何言ってるんですか!?せっかくの見せ場を渡すわけが・・・』

「分かりました。行きましょう、ソフィアさん」

 ミナミの言葉を遮るように言うと、誠人はイリスバックルのボタンを押してムーンライトのカードを取り出した。

『ちょ、誠人さ・・・!」

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.神秘なる月光!ムーンライトアーマー!』

 ミナミの体がイリススーツから分離され、同時にソフィアが変化した鎧がスーツに装着された。その複眼が紫に輝くと、ソフィアはイリスバックルに向かって声を発する。

『プラモデラッシャー』

 バックルから現れたプラモデルに拡張パーツを投げ込み、イリスはランスモードとなったプラモデラッシャーを手にカリーナに襲い掛かった。カリーナは杖から光弾を放って応戦しようとするが、その攻撃はことごとくイリスが振るう槍に弾き飛ばされ、逆に接近を許してしまい槍の連撃を受ける羽目になった。

「うあっ!・・・ならば・・・これはいかがかしら!?」

 カリーナは最後の手段として十体ほどに分身し、イリスを取り囲んで同時に杖から光弾を放った。だがそれも、ソフィアからしてみればただの悪あがきに過ぎなかった。

『秘技・鏡返し』

 イリスが左手を宙に掲げると、光弾はイリスに当たる直前でその動きを止めた。そして次の瞬間光弾はカリーナの方へとはね返り、それが直撃したダメージで本体のカリーナが吹き飛び、分身も光弾が当たったことで消滅する。

『さて、これで終わりね』

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 イリスは槍を投げ捨てると、待機モードにしたバックルにフィニッシュカードをスキャンさせた。同時にイリスの体が数体に分身し、お返しとばかりにカリーナを取り囲む。

『ムーンライトフィニッシュ!』

 イリスがバックルのボタンを押すと同時に、分身が六方からカリーナに攻撃を仕掛けた。その攻撃にカリーナがひるんだ瞬間分身は消滅し、本体のイリスが黄色いオーラを右足に纏って飛び蹴りを放った。

『はああああっ!!』

「いやあああああああああああああっ!!」

 その一撃が直撃し、カリーナの体は大きく吹き飛んだ。その体は空中で爆発し、跡形もなく消滅する。

「・・・っ!これは・・・!」

 イリスが地面に着地した瞬間、周囲の景色が光に包まれて消えていった。その光が収まると、イリスとミナミの姿は最初にカリーナと戦った住宅街に戻っていた。

「あ・・・!お兄ちゃん!ミナミ達も!」

 事件現場を調べていたキリアが、戻ってきたイリスとミナミの姿に歓喜の声を上げた。彼女と共に現場を調査していたレイとカグラも、三人が戻ってきたのを見て安堵の笑みを向け合う。

「異次元人が奪った、人々の生気です」

 ソフィアとの合体を解くと、誠人は手にした小瓶を一同に見せた。

「これを振りかければ、皆元に戻ります。さあ、急いで病院に!」


 ☆☆☆


 それから、数十分後。星南を始めとしたカリーナの被害者達は、誠人達が異次元で取り返した生気が体に戻り、カリーナが作り出した思い出の牢獄から解放された。

 この一件を機に、彼らは皆前を向いて生きる決意を新たにした。決して巻き戻らない思い出を胸に、彼らは一歩ずつ、未来へと進んでいく。

「今回ばかりは、坊やとミナミに助けられたわね。・・・少しは成長した、って認めてあげていいかも」

 病院を後にしながら、ソフィアがミナミに視線を向けて言った。

「ふん。あんたに認められたところで、嬉しくも何ともありませんよ」

「ミナミ・・・」

 ミナミをたしなめようとした誠人だったが、ソフィアが軽く手を上げてそれを制した。

「じゃあ、またね皆。・・・いい夢見たわ、本当に」

「え・・・?ソフィアさん、それって・・・」

 ミナミにちらと視線を向けながら言うと、ソフィアは誠人の問いかけを無視して去っていった。その背中を睨みながら、ミナミが毒を吐くように言う。

「何ですか。さっきは悪夢とか言ってたのに・・・」

 その言葉を聞きながら、誠人はソフィアが見た夢について考えていた。カリーナの言葉が正しければ、彼女に生気を奪われた者は皆、その人物にとって最も幸せな思い出を延々と見せられていたはずだ。

(ソフィアさん・・・あなたが見た夢って、一体・・・?)

 自分が立ち入る領域でないことは、十分わかっている。それでも誠人は、ソフィアが見た夢について嫌でも考えさせられるのだった。




 その夜。自分の住まいに戻ったソフィアは、ワインをグラスに注いで一枚の写真立てに向き合った。そこには、地球に来る前の彼女と五人の教え子が、輝くような笑顔で写る写真が収められている。

「乾杯。・・・なんてね」

 写真立てにそっとグラスを向けると、ソフィアは中のワインを一気に飲み干した。空いているもう片方の手に、教え子達から贈られたドッグタグを握り締めながら。

第12話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、評価やご感想をいただけると幸いです。

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[一言] 夢系のキャラって大体物理というかゴリ押しに弱いんですよね… これもまた良きテンプレ怪人ですかな
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