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チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
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第9話「因縁の相手」アバン

第9話です!今回から、第6話ラストに登場した謎の女性が本格参戦いたします。

 その日の夕方、いつも通りの帰り道を、誠人はどこか不満げな表情で歩いていた。

「あのさ、どこまでついて来るわけ?」

「え?そりゃあ誠ちゃんの家までに決まってるじゃーん!」

 そう陽気に言葉を返したのは、誠人の同級生である柚音だった。彼女は誠人とミナミが下校するところに付き合いたいと言い出し、半ば無理やり二人にくっついて来ていた。

「ふぅ・・・なんでそうなる・・・」

「だって気になるじゃーん!年頃の男の子と女の子が、一つ屋根の下で生活を共にしてるんだよ?あたしも色々参考にしたいと思ってさあ、今後のために」

「あのね・・・僕達別に付き合ってるわけじゃないし、何の参考にもならないと思うけど?」

「そうかなあ・・・そんなことないよね、ミナミちゃん?」

「・・・・・・」

 柚音が話を振っても、ミナミは何の反応も示さなかった。彼女はどこか上の空な表情で、前方をまっすぐ見ながら歩いている。

「あ、あれ・・・?ミナミちゃん?ミナミちゃん?」

「・・・っ!あ・・・ごめんなさい!あの・・・何か私に話しかけました?」

「え?う・・・ううん、別に」

(なんか変だ・・・ミナミの奴、いつもはこんなに静かじゃないのに・・・)

 いつもと違うミナミの様子に、思わず誠人は心の中で声を上げた。普段登下校を共にする際は鬱陶しいほど明るいというのに、今の彼女からはそういった明るさは微塵も感じられない。

「ねえ、いつもこんな感じなの?ミナミちゃん」

「いや・・・普段は、もっとテンション高いんだけど・・・」

 小声で問いかけてきた柚音に、誠人も小声で言葉を返す。すると道の途中で、突然ミナミが歩みを止めた。

「誠人さん・・・今日は、先に帰っててください。私・・・寄るところがありますので」

 誠人に視線を向けることなく、ミナミがいつになく静かな口調でそう告げた。

「あ、ああ・・・分かった。先に帰ってる」

 その返事を聞くと、ミナミは普段は使わない道を歩き始めた。どことなく近寄りがたい雰囲気を、誠人は彼女の背中から感じ取った。

「あの・・・あたし、もう帰るね。誠ちゃん、また明日」

 その場にいるのが気まずくなったのか、柚音が誠人に声をかけた。

「ああ、また明日・・・・・・それにしてもあいつ、どこに行く気だろう・・・?」

 柚音と別れると、誠人はミナミにばれないようにその後を追い始めた。しばらく後をつけているうちに、ミナミは一軒の花屋で花束を一つ買うと、二年ほど前まで多目的ビルとして使われていた廃墟へと辿り着いた。

(あれは・・・GPブレス?)

 その廃墟の入り口の近くに、ひびが入ったり古ぼけたGPブレスを四つ積み重ねた、オブジェのような物が置かれていた。その前には花束が一つ置かれており、ミナミはそれを見てどこか複雑な微笑みを浮かべると、その隣に自分が買った花束を置いて祈るような仕草を取った。

「マリー、ナタル、シレーヌ、リタ・・・私は、こうして元気で頑張っていますよ・・・・・・」

 そう優しく四つのブレスレットに語り掛けるミナミの様子は、さながら墓参りをしているようでもあった。そんな彼女を盗み見ている自分が、なんだか急に厭らしく誠人には感じられた。

「あれから、もう二年が経つんですね・・・・・・私、皆のことは、絶対に忘れませんから」

 これ以上、自分はここにいてはいけない。そう強く感じながら、誠人はミナミに気づかれないように来た道を戻り始めた。

「でも・・・誰なんでしょうね。いつ来ても、私より先に花を供える人がいる・・・」

 一方のミナミはそれに気づくことなく、先に置かれていた花束に目を向けながら呟いた。

「まさか・・・あの女が?いや・・・・・・それだけは、ないですよね・・・・・・」



 ミナミが花束を見つめて呟いたのと、ほぼ同時刻のこと。都内某所の小さな埠頭に、黄色い髪をなびかせた若い女の姿があった。彼女はグレーの瞳で夕日に光る海を見つめながら、潮風にかき消されてしまいそうな声で呟いた。

「ミナミ・・・・・・」

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