表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チーム・イリスの事件譚  作者: 髙橋貴一
24/153

第8話「勇気の矢」後編

「え!?テロリストがこの星に!?」

 一方。ミュウの帰りを待っていたカグラはジョージからの通信で、ようやく危険な宇宙人がこの星を襲っていることを知った。

「ああ。ドゥレンテ政府が情報の隠蔽を図り、こちらへの連絡をギリギリまで渋っていたらしい。おかげで、連絡がここまで遅くなってしまった。すまない」

「いえ・・・それより、奴らの居場所は分かるんですか?」

「ああ。彼らの宇宙船の座標の位置を、たった今ようやく特定した。カグラ、なんとしても連中を止めてくれ。奴らの手配レベルはレッド、場合によっては抹殺も許可する」

「承知しました。すぐに向かいます!」

「そして、これは非常に憂慮すべき事態だが、どうやら連中の居場所に虹崎君とミュウがいるらしい。二人のGPブレスに連絡が取れず、AIに分析させた結果、妨害されている可能性が極めて高いと・・・」

「分かりました。とにかく、現場に向かいます!」

『Iri-speeder、come closer.』

 カグラは通信を打ち切ると、すぐにイリスピーダーを呼び出した。バイクが庭に届くや否や、彼女はそれに飛び乗ってヘルメットをかぶる。

「まったく、少年の周りはいろんなことが起こるよ、ほんとに・・・!」

 悪態をつきながらヘルメットのバイザーを下ろし、彼女はバイクのエンジンを吹かした。そしてアクセルを全開にし、事件現場のショッピングモールに向かうのだった。


☆☆☆


「はあっ、はあっ・・・はあっ・・・!」

 その頃。ショッピングモールの中を逃げ惑っていたミュウは、すっかり人気のなくなった百円ショップに辿り着いた。疲れ切って腰を下ろしたミュウだったが、ほっとした拍子に先ほどの死体の山や、ブラックローグの映像を再び思い出してしまった。

「うっ・・・おえええええええっ・・・!」

 込み上げてくる不快感に耐えきれず、ミュウは思わずその場に嘔吐してしまった。荒い息をつきながら必死に呼吸を整えようとしたその時、彼女の背後からブラックローグが襲い掛かってきた。

「うわあああああああああああっ!!」

 驚きと恐怖で悲鳴を上げた次の瞬間、一発の光線が怪物の顔に命中した。痛みに悶える怪物にキリアが高速移動で接近し、手斧を振り下ろしてとどめを刺した。

「ふう・・・見つけたよ、ミュウ」

「キリアちゃん!誠人君も・・・どうして?」

「こいつのおかげだよ。こいつが、君の逃げた道を案内してくれたんだ」

 GPブレスで周囲を警戒しながら、誠人が頭上を指さした。するとそこには、ミュウの逃げた痕跡をもとにその後を追ってきた、ゴールデンホークの姿があった。

「ミュウ、一体どうしたの?いきなり逃げ出しちゃったりして・・・」

 キリアが心配そうに問いかけると、ミュウは震える手で自らの体を強く抱きしめた。

「ボク・・・怖くなっちゃった・・・・・・あいつらが、人を殺したり食べたりするところを見て、怖くなっちゃったんだ・・・!」

 血を吐くように答えると、ミュウは声を上げて泣き出し始めた。突然の出来事に、誠人とキリアが困惑して顔を見合わせる。

「・・・キリアちゃん、さっきボクに、なんで銀河警察の仕事してるのか、って訊いたよね?・・・・・・ボクの生まれた星は7年前、ある企業の開発事業のために滅ぼされた。美しかった森も、人が住んでいた町も、村も、みんなそいつらに焼き払われた。・・・生き残った住民は、ボク一人だけ。まだ子供だったボクは、大好きな星が滅ぼされる光景を、ただ見てることしかできなかった・・・!」

 ミュウの脳裏に蘇る、故郷の星が滅ぼされる光景。それを思い返すだけで、ミュウの目からは再び大粒の涙がこぼれ始めた。

「そんなボクを助けてくれたのが、銀河警察だった。その時、初めて知ったんだ。銀河中の人々を助ける、すごく立派な仕事があるんだ、って。・・・だからボクは、迷うことなく銀河警察に入るって決めた。銀河警察の刑事になれば、ボクのような思いをする人を無くすことができる。ボクの力で悪い奴らをやっつけて、困ってる人達を助けることができる。そう思って、ボクは銀河警察の一員になったんだ・・・」

 ミュウは涙を拭うと、自嘲するように小さく笑った。

「なのに・・・ボクは逃げだした。あんな悪い奴らが目の前にいるのに、あの怪物が怖くて逃げちゃったんだ。ボクもあんな目に遭うのかと思うと、無性に怖くなっちゃって・・・・・・ボク、本当に駄目な奴だよね・・・?ボク・・・刑事失格だよね・・・?」

「ミュウ・・・」

 あまりにも痛々しいミュウの姿に、誠人はかける言葉が見つけられなかった。だが、キリアは違った。

「駄目なんかじゃないよ!だって・・・キリアだって怖いもん!」

「え・・・?」

 思わぬ言葉に顔を上げたミュウの両肩に、キリアは自らの手を置いて言った。

「あんな化け物が目の前にいて、人を殺したり食べたりするところを見て、怖いって思わない方がおかしいよ!・・・だけど、その怖さに負けて逃げ出したら、またミュウのような思いをする人が増えちゃう。あんな危ない化け物が兵器として使われたら、またどこかの星が滅びちゃうかもしれない。それでもいいの!?」

 キリアの問いかけに、ミュウは首を横に振った。それを見て、ミュウの肩に置かれたキリアの両手に、さらに力が入る。

「だったら、勇気を出して戦わなきゃ!強くて優しい刑事になるって決めたんでしょ?困ってる人達を助けられるようになりたいって、そう思ったんでしょ!?だったら・・・許せないことには許せないって、行動で示さなきゃ!」

「キリアちゃん・・・」

 いつになく熱が入ったキリアの言葉に、ミュウの心は動かされた。と、その時――

「ようやく見つけたぞ。手間をかけさせてくれる」

 奥の方から声が聞こえ、配下の兵士やブラックローグ達を引き連れたデモスが姿を現した。

「デモスだ・・・ミュウ、下がってて」

「ううん、ボクも戦うよ、誠人君」

「え?」

 ミュウを守るため立ちはだかろうとした誠人に声をかけると、ミュウは強い意志を秘めた目で立ち上がった。

「大丈夫なのか?」

「うん。キリアちゃんに、戦う勇気をもらったから。・・・ありがと、キリアちゃん」

 弾けるような笑顔で礼を言われ、キリアの顔が少し赤くなった。そんな彼女を見て小さく笑うと、ミュウはデモスに鋭い視線を向ける。

「ほう・・・さっきは逃げだしたお嬢ちゃんに、戦うことなどできるのかな?」

「できるさ!だってボクは・・・まだ見習いだけど・・・・・・銀河警察の刑事の端くれだ!」

 そうデモスに言い切ったミュウからは、もはや恐怖から逃げ出そうという弱さは消えていた。たとえ怖くてもそれから逃げることなく、勇気をもって許せないことに立ち向かう。その思いが、今の彼女を支えていた。

「よし・・・なら、一緒にあいつらを倒して、カグラさんのカードを取り返そう。・・・行くぞ、ミュウ!」

「うん!」

 誠人はイリスバックルを腰に装着すると、ボタンを押して待機モードにした。そしてフォレストのカードを手に取ると、一瞬ミュウと視線を交わしてうなずき合い、カードをバックルに読み込ませた。

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.怒れる大自然!フォレストアーマー!』

 ミュウの体が緑の鎧と化し、誠人の体を包むイリススーツに装着されてゆく。そして合体が完全に完了すると、イリスの複眼が眩しく黄色に輝いた。

「やれ!」

 デモスがイリスを指さすと、ブラックローグの群れが一斉にイリスに襲い掛かった。ミュウはそれを見てわずかに恐怖を感じつつも、不退転の決意を込めて叫んだ。

『プラモデラッシャー!』

 バックルから現れたプラモデルに拡張パーツを投げ込み、プラモデラッシャーをアローモードに変化させると、イリスは巧みな弓さばきで次々とブラックローグを倒していった。先ほどとは打って変わって矢の軌道は安定しており、その正確な狙いに急所を射抜かれて次々とブラックローグが倒れてゆく。

「馬鹿な・・・ブラックローグが・・・わが軍の最強の兵器が・・・・・・何をしている?撃て!撃て!」

 デモスは思わぬ事態に狼狽し、配下の兵士達に射撃を命じた。その攻撃を軽やかにかわすと、イリスはバックルのボタンを押してフィニッシュカードをスキャンさせた。

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 イリスの体が自然エネルギーを取り込み、緑色の光に包まれていく。イリスが矢をつがえる動作を取ると、数本の光の矢が自動で光の弦につがえられた。

『フォレストフィニッシュ!』

 バックルのボタンを押してプラモデラッシャーのトリガーを引くと同時に、つがえられていた矢が一斉にデモス達に襲い掛かった。光の矢に兵士や生き残っていたブラックローグ達が射抜かれて大爆発を起こし、デモスも直撃こそしなかったものの矢が体をかすり、その懐から先ほど誠人から奪ったフレイムのカードがポトリと落ちる。

「おのれ・・・こうなったら、最後の手段よ!」

 デモスが左腕の機械を操作すると、ショッピングモールの入り口に着地していた宇宙船が宙に浮上し、デモスがいる場所の真上まで移動した。宇宙船から放たれる光がデモスの体を包み込み、彼の体を船内の艦橋へと移送する。

「実験は失敗だ。こうなったら・・・お前らもろともこの建物を破壊して、消滅させてやる!」

 デモスは自ら船の大砲を操作すると、光線をショッピングモールに向けて発射し始めた。

「あいつ・・・この建物を壊す気だ!」

 フレイムのカードを拾い上げた誠人が、デモスの意図を悟って声を上げた。

「早く逃げなきゃ!ミュウ、イリスピーダー!」

『うん!』

 ミュウはキリアに言葉を返すと、ベルトのホルダーからイリスピーダーを呼び出すカードを取り出し、バックルにスキャンさせた。

『Iri-speeder、come closer.』

 銀河警察太陽系支部の母艦・ギャラクシーガーディアンから、七色の光と共にイリスピーダーが届けられた。キリアを後部座席に乗せると、イリスは運転席に飛び乗ってアクセルを全開にした。

『慣れてないから荒い運転になるけど・・・ごめんね、二人とも!』

 二人に一応詫びておくと、ミュウは一気にバイクを加速させて施設の入り口を目指した。途中敵の攻撃で屋根が崩壊し、瓦礫が何度も降りかかってきたが、ミュウは荒い運転ながらもそれをかわして施設の出口を目指す。

「あ・・・マズいぞ、ミュウ!」

 出口が目前と思われた瞬間、落ちてきた巨大な瓦礫が行く手を塞いだ。焦る誠人だったが、ミュウは冷静さを失わずに応えた。

『大丈夫。こういうときは、これで!』

 イリスがハンドル付近のボタンを押すと、前輪の近くに隠されていた砲口のような物が姿を現した。続けてイリスが別のボタンを押すと、砲口から光弾が発射されて瓦礫に命中し、いともたやすく粉砕した。

「す・・・すごい・・・」

 思わぬイリスピーダーの隠し武器に、誠人は呆気にとられて声を上げた。そしてミュウはバイクの運転を再開し、無事に施設からの脱出に成功した。

「あ・・・皆!」

 脱出してきたイリスとキリアの姿を見て、一同の身を外で案じていた茜が歓喜の声を上げる。一方のデモスは苦虫を嚙み潰したような顔になると、今度はイリスに向けて光線を連射する。

「絶対にあいつらを倒すぞ、ミュウ!」

『うん!これ以上、あいつらの好き放題にはさせない!』

『Start Up、Green Beetle』

 イリスはGPブレスにカードをかざし、グリーンビートルを召還した。そしてアローモードのプラモデラッシャーに合体させ、フィニッシュカードを認証部分にかざす。

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 プラモデラッシャーの弝の部分に合体したグリーンビートルの角に、大自然のエネルギーが急速に充填されてゆく。イリスは宇宙船の艦橋に狙いを定めると、プラモデラッシャーのトリガーを押した。

『フォレストインパクト!』

 グリーンビートルとの合体により強化された光の矢が、宇宙船の艦橋を射抜いた。その矢はデモスの体を貫き、彼の体を爆発四散させる。

 そしてその爆発と連鎖し、宇宙船の各所から爆発が起こった。程なく宇宙船全体が大爆発を起こし、跡形もなく消滅した。

「やったな、ミュウ」

「うん・・・ありがとう、誠人君!・・・キリアちゃん!」

 誠人との合体を解除したミュウが、彼とキリアに弾けるような笑顔で礼を述べた。二人がミュウに笑顔で応えると同時に、イリスピーダーに乗ったカグラがその場に到着した。

「お待たせ皆!助けに来た・・・って、あれ?キリア?ってあれ?宇宙船は?テロリストは?」

 困ったように声を上げるカグラに、茜が思わず噴き出した。それに釣られて誠人達も思わず声を上げて笑い出し、四人分の笑い声が辺りに響くのだった。


☆☆☆


「ええっ!?そ・・・そんなことがあったんですか!?」

 その日の夕方。カグラやミュウと共に帰宅した誠人達から昼間の一件を聞き、ミナミは目が点になった。

「ああ。ミュウとキリアがいなかったら、どうなってたことか・・・」

「そ・・・そんなことが起きてたのなら、一言連絡してくださればよかったのに!合体はできなくても、この身一つで助けに行ったものを!」

「ミナミ、私達のGPブレス、今通信機能をストップされてる。停職中だから」

 冷静なレイのツッコミに、ミナミはそれ以上誠人を追及できなくなった。

「た、確かに・・・でも、キリアの行動は問題です!停職中なのに現場に乗り込んで、挙句戦闘行為までしてるんですよ!?」

「それについて、今ボクから長官に報告しました。『キリアちゃんがいなかったら、テロリストを倒せませんでした』って言ったら、今回の件は大目に見るって、そう言ってくれました」

「んな!?・・・あの長官、まーたキリアにえこひいきを・・・!」

「えこひいきなんかじゃないぞ。実際キリアがいなかったら、ミュウはあそこまで活躍できなかった。本当にありがとな、キリア」

「えへへ。それほどのことは、してないよ」

 照れくささに頬を赤らめながら、キリアが誠人に笑みを向ける。それを見て悔しそうな表情を浮かべるミナミを尻目に、ミュウがキリアの手を取った。

「本当にありがとう、キリアちゃん。これからも・・・よろしくね」

「うん!こっちこそよろしくね、ミュウ!」

 互いの手を取り合い、微笑み合うキリアとミュウ。そんな二人の姿を見て、茜が誠人に声をかける。

「あの二人、きっといいお友達になれるわね、誠人君」

「ああ・・・僕も、そう思うよ」

 互いに無邪気な微笑みを向け合う、二人の少女刑事。彼女らの今後にどうか幸あれと、願わずにはいられない誠人であった。

第8話、いかがだったでしょうか。もしよろしければ、ご意見やご感想をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 地味に断末魔無く死んだ敵キャラはデモスが初めてだったっ…ような? そして新人二人の仲が深まったり、キャラが深まったりする新人回 恐らくプラモも新発売されますね… 次回に繋がるフラグが無さ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ