第6話「母の試練」前編
一方。誠人は母親に、初めてミナミたちと遭遇した日から今日までのことを、包み隠さず話していた。
「なるほど・・・つまり、誠人君はユナイトとかいう特異体質の持ち主で、宇宙のいろんな犯罪者から狙われている。そこでミナミさんたちが、誠人君を守るために派遣されてきた、ということなのね?」
「はい。大体はそんな感じです」
レイが刑事一同を代表してそう答えたが、その時キリアが口を開いた。
「ま、キリアは少し事情が違うんだけどね。もう任務は終わってるけど、この星とお兄ちゃんが気に入ったから、もう少しこの星にいようと思って」
「こらキリア、誠人さんのお母様には敬語を使いなさい!まったく、世間知らずのお嬢様はこれだから・・・!」
「あー!またキリアのことお嬢様扱いした―!」
「ああもう、いい加減にしてくれって・・・」
ミナミの言葉に、キリアが金切り声を上げて抗議する。頭を抱える誠人とは対照的に、茜は微笑ましく二人の口論を見守っている。
「ふふっ、賑やかでいいわね。・・・分かりました、ミナミさんたちの同居を認めます」
「え?・・・いいの、母さん?」
「ええ。ただし、条件が一つだけあるの」
茜はそう言うと、ミナミたち四人の刑事の顔を見据えて続けた。
「あなたたち一人一人に、一人前の刑事としての資質があるかどうか・・・・・・それを見極させてもらうまでは、同居を認めることはできません」
「それはつまり・・・刑事としての力を示せと、そういうことですね?」
確認するように問いかけたレイに、茜は大まじめにうなずいた。
「ええ、そういうこと」
「ちょ、母さん!・・・力を示すっていったって、何か事件が起きないことには・・・」
と、その時だった。一同のGPブレスに、銀河警察太陽系支部長・ジョージから、緊急通信が入った。
「刑事諸君、緊急連絡だ。先ほど、7件の身代金誘拐罪で指名手配されている、自称ダブルファントムの二人組が、地球に向かったという報告が入った」
「ゆ、誘拐犯・・・?」
「ダブルファントム・・・聞いたことがあるよ。大富豪の息子や令嬢を誘拐して、巨額の身代金を払わせることで知られているね」
カグラが誠人にそう説明すると、GPブレスに映るジョージが再び口を開いた。
「その通りだ。しかも情報筋によれば、今回のダブルファントムの標的は・・・・・・キリア刑事、君らしい」
「え!?キリアが!?」
思いがけない展開に、キリアが驚きの声を上げた。
「もちろん、君は今や銀河警察の刑事の一人だ。特段の心配はしていないが・・・・・・ともかく、この二人組を目撃したら、速やかに逮捕するように。彼らには、イエローレベルの手配がかけられている。・・・では刑事諸君、健闘を祈る」
その言葉を最後に、ジョージからの通信は打ち切られた。
「あら、さっそくいい機会ができたじゃない。あなたたちがどうやって、そのダブルファントムっていう誘拐犯を捕まえるか・・・・・・お手並み拝見と行きましょう」
「というわけで、ここからはガチもガチ、大真面目の勝負と行くわよ。何せ私たちにとっては、この星での住まいがかかってるんだから・・・!」
数分後。虹崎家のリビングで開かれた作戦会議で、レイが開口一番鬼気迫る表情で言った。
「レイさん・・・本音が漏れてます、本音が・・・」
「まず、キリアをどこに隠すか決めましょう。誘拐犯が簡単に見つけられないような場所、ここ以外にどこかありますかねえ・・・」
ミナミがそう口にしたその時、キリアが冗談じゃないと言わんばかりに声を上げた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!キリア隠れるのなんてやだ、みんなと一緒にその誘拐犯捕まえる!」
「何言ってるんですか!あんたは仮にも誘拐犯に狙われてるんですよ!」
「ミナミの言う通りだよ。あんたが捕まったら、元も子もないじゃないか。ここはあたしたちに任せて、あんたは安全な場所に身を隠すんだ。いいね?」
カグラがそう諭すように言ったが、キリアはますますむきになって駄々っ子のようにその場でジタバタし始めた。
「やだやだー!キリアも一緒に戦って、お兄ちゃんのお母さんにいいとこ見せるんだもーん!」
「はいどうどう、嫌でも隠れる先にぶち込みますからね。・・・それで、ダブルファントムへの対処法はどうしましょう?」
「それについては、過去の彼らの犯罪データが役に立つと思う」
ミナミにそう答えると、レイは自分のGPブレスにダブルファントムが過去に起こした事件のデータを映し出した。
「ダブルファントムは、ギャラクシーコンツェルンの開発した狩猟用ドロイドを違法改造して、誘拐のための兵器として使ってきた。つまり、このドロイドさえ何とかしてしまえば、それを操ってるだけのダブルファントムを捕まえることはたやすい」
「・・・ねえ誠人君、あのレイって子が、いつもみんなのブレーンになってるの?」
作戦会議の様子を眺めていた茜が、誠人の耳元で囁くように問いかけた。
「うん・・・ミナミの話によれば、レイさんは太陽系支部でも一二を争う秀才らしいんだ。だから自然と、あの人がみんなの参謀兼、リーダーみたいな感じになってる」
「なるほどね・・・じゃあ、彼女は合格と見ていいかしら」
「母さん・・・」
ほっとするような表情を浮かべる誠人だったが、茜は釘をさすように息子に告げた。
「だけど、あとの三人はこれから見極めるわよ。・・・個人的には、あの赤毛の子がなかなか見どころあると思うんだけど」
「え?カグラさん?・・・いや、あの人はここに住んでるわけじゃないし、別に見極める必要はないんじゃ・・・」
「そうはいかないわ。あの子も誠人君を守るために来た刑事なんでしょ?だったら、それにふさわしいだけの力を持ってるかどうか、ちゃんと確かめないとね」
そう口にした茜の視線の先で、カグラは未だに駄々をこね続けているキリアにうんざりとした表情を浮かべていた。そして、あるとんでもない作戦を思いつく。
「ねえレイ、いっそのこと、キリアを囮にして奴らを誘い出すってのはどう?ほら、この子なら襲われてもすぐに逃げられるし、わざわざ隠れる必要もないし、ウィンウィンってやつじゃない?」
カグラの提案に、駄々をこねていたキリアが目を輝かせた。
「うん、それいい!ねえレイ、そうしようよ!」
「却下。馬鹿なこと言ってないで、真剣に作戦考えて」
「うーん・・・ちょっと短絡的なところがあるわね、あの子・・・」
カグラにわずかながらも期待を寄せていた茜が、少し失望したように声を上げた。
「ああいういかにも押せ押せタイプの子なら、誠人君に合うかと思ったんだけど・・・」
「・・・母さん、見極めるってそういうことだったの・・・?」
怒ったように問いかける誠人を、茜は口笛を吹いてごまかした。その一方で、ダブルファントム逮捕のための作戦が、紆余曲折を経て出来上がろうとしていた。
☆☆☆
翌日。都内の街中を、小型の球体のようなドローンがいくつも飛び回っていた。
「ねえルキア、まだ見つかんないの?」
「うるさいな、ちょっと待ってて・・・・・・覚悟はしてたけど、このテラって星無駄に広すぎ・・・・・・」
ルキアと呼ばれたダブルファントムの女の方が、スマホのような端末を見ながらうんざりと声を上げた。この端末はドローンの視界とリンクしており、ドローンから送られてくる映像をルキアは注意深く見つめている。
「・・・あ!バレク見て!ほら、こいつそうじゃない!?」
その時、ドローンの一台が捉えた映像に、ルキアが思わず大声を上げた。バレクと呼ばれた男の方が端末の画面をのぞき込むと、そこには帽子とコートで身を覆ってはいるものの、確かにお目当てのキリアによく似た少女が映っていた。
「うん、多分こいつだよ!ルキア、そのドローンの場所はどこ?」
「えっと・・・P-37地点。急ごう、バレク!」
二人はドローンに少女の後をつけさせ、すぐに現場に向かい始めた。それから数十分後。少女が人気のない空き地に入ったその時、ダブルファントムの二人組が姿を現した。
「ねえ、あなたキリア・ブリジッド・ゴルドスタイン、だよね?」
「急で悪いけど、僕たちと一緒に来てくれない?・・・素直について来てくれるなら、手荒な真似はしないけど」
目の前の少女をキリアと信じて疑わず、二人は彼女の方へ歩み寄った。するとその時、少女が帽子とコートを脱ぎ捨てた。
「な・・・バレク、あいつキリアじゃない!」
露わになった少女の顔を見た瞬間、ルキアが驚きの声を上げた。彼女の言う通り、二人の前に立っていたのはキリアではなく、金髪のウィッグをかぶったミナミであった。
「やっぱり釣られてきましたね、ダブルファントム!」
「あなたたちのことだから、絶対に捜索用のドローンかドロイドを使ってると思った。ならそれを逆に利用して、キリアの偽者を掴ませればいいと思ったの」
物陰から誠人ともに姿を現したレイが、得意げにダブルファントムの二人に言い放った。ルキアが忌々しそうにつぶやく。
「じゃあ、本物のキリアは・・・」
「本物なら、今とあるホテルで身を隠してる。・・・いや、あれは実質軟禁だな・・・」
誠人の言葉通り、キリアは今都内某所の小さなホテルで、カグラと共に身を潜めていた。
「やだやだー!こんな狭い部屋、早く出たいー!」
「もう少し待ってなって。少年たちがダブルファントムを捕まえれば、それで解決なんだからさ・・・」
ベッドの上でバタバタと身を動かすキリアを持て余し、カグラがGPブレスで誠人に連絡を取った。
「少年、こんな感じだから早く済ませちゃって。このままじゃ、キリアの奴ドアをぶち破って逃げかねないよ」
「分かりました。・・・というわけであんたら二人、今すぐお縄についてもらうよ!」
ミナミやレイと共に、誠人はGPブレスをダブルファントムの二人に突き付けた。それを物陰から見ていた茜が、息子の姿に思わず声を上げる。
「あらあら。誠人君、まるでヒーローか何かになったみたい」
「くっ・・・こうなったらあんたたちをぶちのめして、キリアの居場所を吐かせてやる!バレク!」
「うん!」
バレクがタブレットのような端末を操作すると、彼らの宇宙船に積まれていた二台の捕獲用ドロイドが起動し、船内のワープ装置を使って一瞬で空き地に姿を見せた。元々巨大な人型ドロイドは二人によって改造を施され、全身に重火器や剣などを装備していた。
「ハンター1とハンター2に命じる、あの宇宙刑事たちを叩きのめせ!」
『ハンター1、了解』
『ハンター2、了解』
バレクが命じると、二台のドロイドは武器をフル稼働させて誠人たちに襲い掛かった。その攻撃をなんとかかわすと、誠人は物陰に隠れてイリスバックルを腰につける。
「ミナミ、行くぞ!」
「了解!お母様にいいとこ見せますよ!」
一人意気込むミナミに小さくため息をつくと、誠人はイリスバックルを待機モードにした。そしてベルトのホルダーからグランドのカードを引き抜き、バックルの認証部分にかざす。
「ユナイト・オン!」
『Read Complete.震える大地!グランドアーマー!』
『プラモデラッシャー!』
ミナミと合体してグランドアーマーのイリスになると、誠人はプラモデラッシャーを手にドロイドたちに挑みかかった。息子の変身を見て、常人の何倍も肝が据わっている茜も、驚きを隠せず声を上げる。
「へ・・・変身した・・・・・・」
半ば呆然として立ち尽くす茜の目の前で、イリスは二台のドロイドに敢然と立ち向かってゆく。だが巨大なドロイドたちの攻撃力はすさまじく、ドロイド1の両腕の刃物、そしてドロイド2の全身に装備された銃火器からの攻撃に、さすがのイリスも苦戦を余儀なくされる。
『くっ・・・これは、一筋縄じゃいかない相手ですね・・・!』
「なら、これならどう・・・!?」
『Start Up、Aqua Dolphin』
苦戦する二人を見かねたレイが、自身のプラモデロイドであるアクアドルフィンを召還し、音波攻撃で二台のドロイドを停止させようとする。だが、ドロイドたちに音波は通用せず、かえって激しい攻撃をイリスたちにお見舞いしてゆく。
「はっ、馬っ鹿じゃないの!?音波攻撃の対策くらい、ちゃんとしてるっつうの!」
嘲るようなルキアの言葉に一瞬唇をかむレイだったが、すぐに頭を切り替えて次の行動に移った。
「なら・・・ミナミ、選手交代して!ここからは私が・・・!」
『な、馬鹿言うんじゃないですよ!せっかくお母様にいいとこ見せるチャンスなのに・・・!』
「言ってる場合か!レイさん、頼みます!」
誠人の言葉に、レイは力強くうなずいた。誠人はバックルを待機状態にすると、ホルダーからスプラッシュのカードを引き抜く。
「ユナイト・オン!」
『Read Complete.逆巻く荒波!スプラッシュアーマー!』
イリスはスプラッシュアーマーにアームズチェンジすると、ガンモードのプラモデラッシャーでドロイドに攻撃を仕掛けた。だがドロイドたちの体は頑丈で、プラモデラッシャーの銃撃ではびくともしない。
「そんな豆鉄砲じゃ、ハンタードロイドは倒せないよ!やれ、ハンター1、ハンター2!」
バレクの声に応えるように、ドロイドはさらに激しくイリスに襲い掛かる。その攻撃の雨あられをかわしながら、イリスは物陰に身を潜めた。
「どうするんですか、レイさん!?」
『・・・こうなったら最終手段・・・・・・来て!アクアドルフィン!』
レイが呼びかけると、宙を舞っていたアクアドルフィンがイリスのもとにやって来た。同時にその体が各パーツに分かれ、砲口のような形に再度自動合体すると、プラモデラッシャーの銃口にセットされた。
「おお・・・これで、どうなるんです!?」
『プラモデロイドを合体させれば、プラモデラッシャーの性能は倍以上に増幅される。この状態で、必殺技を放てば・・・!』
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
イリスは物陰から飛び出すと、プラモデラッシャーを二台のドロイドに向かって構えた。その銃口に、通常の必殺技の時よりも大きな水の弾丸が形成される。
『スプラッシュシュート!』
イリスがトリガーを引くと同時に、巨大な弾丸が二台のドロイドに向かって放たれた。近くに迫っていたハンター1はその一撃を受けて大破し、ハンター2も直撃こそしなかったものの、右腕が千切れるほどの大ダメージを受けて倒れこんだ。
「うお、すごい威力・・・やりましたね、レイさん」
『ううん、これは悪いお手本』
いつも以上の必殺技の威力に思わず声を上げた誠人だったが、レイは沈んだ声で答えた。同時に銃口にセットされていたアクアドルフィンが自動的に分離し、空中で粉々に砕け散った。
「あっ・・・壊れた・・・」
『プラモデラッシャーとの合体は、プラモデロイドにすごく大きな負担をかけるの。通常の攻撃ならともかく必殺技まで使うとなると、プラモデロイドはその衝撃に耐えられない』
「壊れたプラモデロイドは機密保持のために修理できませんし、これまでラーニングさせたデータも全部吹っ飛びますから、新たに調達して一からやり直すしかないんですよ。なので、プラモデロイドを使うなら一撃必殺!・・・じゃないと」
「なるほど・・・でも、壊し損ねたドロイドだって、あれじゃもう使い物に・・・って、え・・・?」
ハンター2に視線を向けた誠人は、その不気味な挙動に思わず言葉を詰まらせた。ハンター2の目が不気味に赤く点滅し、機械音声が壊れたレコードのように鳴り響く。
「タ・・・対象・・・対象ヲ捕獲・・・捕獲、抹殺・・・・・・抹殺・・・抹殺捕獲・・・」
「ね、ねえ・・・あれ、なんかヤバくない・・・?」
「嘘でしょ、なんかバグった・・・?ハンター2、一度撤退だ!ハンター2!」
不安そうなルキアの肩を抱きながら、バレクが懸命にハンター2に呼びかける。だが次の瞬間、点滅していたハンター2の目が真っ赤に光り、とんでもない言葉がその頭部から発せられた。
「対象、キリア・ブリジッド・ゴルドスタインヲ抹殺スル。邪魔者モ全テ、抹殺シテ排除スル」
「な・・・抹殺だって!?」
ハンター2の言葉に、誠人がイリスの仮面の下で驚きの声を上げた。
『とにかく止めなきゃ。β、行くわよ!』
「は、はい!」
イリスはハンター2を止めようとプラモデラッシャーを乱射したが、固い装甲の前に水の銃弾はびくともしなかった。すると攻撃を受けたことで、ハンター2の赤い目がイリス、そしてその周囲の者たちを捉えた。
「任務ノ支障トナリウル存在ヲ複数検知。抹殺、排除」
ハンター2は全身の重火器を、足元の者たちに向けて一斉に発射した。ルキアやバレク、そして茜はなんとか物陰に隠れたが、イリスはハンター2が放ったミサイルの雨が足元で炸裂し、大きく吹き飛ばされてその変身が解除された。
「・・・!誠人さん!」
無防備な状態で地面に転がる誠人を、ハンター2の左腕に装備された機関銃が容赦なく襲った。物陰に逃げようとしていたミナミだったが迷うことなく誠人のもとに駆け寄り、その体に覆いかぶさって地面を転がった。
「うっ・・・!」
「ミナミ!」
銃弾の一発が左足をかすり、ミナミが思わずうめき声を上げる。だが彼女は誠人の体を放すことなく、共に物陰へと退避することに成功した。
『障害ヲ排除。コレヨリ、対象、キリア・ブリジッド・ゴルドスタインノ抹殺ニ移ル』
ミナミたちの姿が視界から外れると、ハンター2は足のジェット噴射を使って空に浮遊し、ステルス機能を駆使してその姿を消した。
「だ・・・大丈夫でしたか、誠人さん?」
「僕は大丈夫。・・・それより君の方こそ・・・」
「これくらい、平気ですよ。・・・ただ、誠人さんとの合体は、二、三日できそうにないです・・・」
少し残念そうに言うと、ミナミは血が流れる左足に包帯を巻こうとした。その姿を見た茜が彼女のもとに歩み寄り、包帯を持つミナミの手に自分の手を置いた。
「私にやらせて。あなたは誠人君の命の恩人、少しでも恩返ししたいの」
「お・・・お母様・・・」
ミナミの手から包帯を受け取ると、茜は彼女の傷口に包帯を巻き始めた。これまでの経験で手馴れているのか、彼女は手際よく包帯を巻いていく。
「あなたは身を挺して、誠人君を救ってくれた。・・・ありがとう、息子を助けてくれて」
「いえ・・・これも、刑事としての仕事ですから」
照れ臭そうにミナミが笑うと同時に、茜の処置も完了した。それと時を同じくして、レイがGPブレスから放たれる光の縄をダブルファントムの二人に巻き付けて拘束し、ミナミたちのもとに歩み寄る。
「この二人は捕まえたけど、あのドロイドを放っておくわけにはいかないわ。・・・β、悪いけどすぐに動ける?」
「ええ。ただ、ミナミが見ての通りで・・・・・・まず、彼女を家まで送りたいんです」
「なら、それは母さんに任せて。でもレイさん、あのドロイドを追いかける方法なんてあるの?文字通り姿を消しちゃったみたいだけど」
「それは大丈夫。キリアから預かったこれがあるから」
『Start Up、Golden Hawk』
誠人がキリアから渡された予備のカードを使い、ゴールデンホークを呼び出した。ゴールデンホークはその目で透明化したハンター2のジェット噴射の痕跡を発見し、その後を追って飛び始めた。
「あいつの後を追っていけば、必ずあのドロイドに辿り着ける。・・・母さん、ミナミは任せたよ」
「了解。じゃあ、ミナミさんを家まで送り届けたら、すぐにまた向かうわ。カグラさんとキリアちゃんも、しっかりと見極めなきゃいけないし」
「母さん・・・・・・とにかく、ミナミを頼んだよ。・・・レイさん」
「うん。行くよ、β」
『Iri-speeder、come closer.』
レイがGPカードでイリスピーダーを呼び寄せ、その運転席に跨った。後部座席に誠人が乗り込むと同時に、彼女はアクセルを全開にしてゴールデンホークを追い始めるのだった。