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極彩色のアルトシエラ  作者: 楠木黒猫きな粉
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始動聖歌と終了残響

ここで世界は終わった。正確には終わらされたの方が正しいのかもしれない。

終わった世界は酷く荒んでいる。広がる荒野にはたった二人の天使が舞う。

その場所は荒んでいる。荒野になっている。しかし、地獄のように燃えてもいて凍土のように凍っている。

太陽は照りつけるが雨は降り、氷はあるが水はない。

人はあるが人ではない。

暑く冷たく狭く広く、そのように荒野はある。

その世界に天使は舞う。

六枚の羽を広げ空を飛び、極光を生み出し破壊する。地に落ちては空を飛び、空へ飛んでは地に落ちる。光が瞬けば辺りは燃え凍り消える。

救いのない破壊が荒野を駆け巡り有を無に還し無を有に還す。

積み上げてきたものは儚く散り、歴史は消える。

終わりが駆け抜ければ始まりが走り抜ける。

終了と始動は駆ける。明確な理由を連れて終わりを始め、始まりを始める。

天使は羽根を汚しあう。砂埃で汚し、煤で汚し、血で染める。

意味が無いと叫ぶ者も居た。それは届かず光に消える。

気にする必要は無いよ、と天使は駆け巡る。

二人の天使は告げることしかせず忠告はせず警告もせずに待てと言う。

終わるまで始まるまで待てと。いつかは終わるから、と。その待ち望んだ終わりは訪れず観ることもなくたった二人のせいで訪れなくなる。

知っていることなんて一個もないヒトには何も出来ず眺めるだけ。

それで良かった。天使には都合がいいからだ。どうせ消費される生物なのだ待つだけでいい動かなくていい。

残響のように残る残骸は過去の栄光で聖歌のように新しくなる世界は始動する。

残り物の人類は身を潜め数を増やす。残響すら消えて始まりがもたらされた場所に人は集まる。

この地獄が始まる前に天使二人はこう宣言した。


「私は終わらせる者。終末を与える者。破壊し残響を遺す者」

「私は始める者。始まりを与える者。再生し聖歌を詠う者」


その言葉を境に有り得ない終末と知りたくない始まりの戦争が始まった。

その時は人類も抵抗をしていた。しかし何一つ通用しなかった。

そして隠れることを選んだ。隠れて希望を待つことにした。

神にさえ届く力をもった者を待ち続けた。

そして、地獄が始まって数年後に希望は産まれた。

様々な色に変わる瞳には光があった。

そして彼女は防いだ。破壊の極光を。

人々は希望を込めて彼女に名前を与えた。いつからか着けることすらしなくなった物を与えたのだ。

そう、この物語は残響と聖歌の狭間にある雑音の物語。

たった一つの希望が描く彼女──『アルトシエラ』の物語。

色彩に花束を与え極光に仇花を与える。ただのありきたりで王道的で気にもとめられないそんな普通の物語だ。

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