友達②
翌日。僕はまた輝秋と明人と一緒に登校した。
今日は雪が降っていて、気温も低かった。気温差が激しいと体がだるくなってくる。
今日は厚着をしてホッカイロを手に持って待ち合わせの公園に向かった。
公園にはやはり先に来た2人が雪合戦をしている。
しばらく遠くで見ていると明人の必殺技が炸裂したのか輝秋が手を挙げて降参していた。僕もそれを見て近づく。
2人も僕に気づいたのか笑顔で迎えてくれる。それに僕は手を挙げて答える。
「おはようキーくん」
「はよ」
「おはよ」
僕達は駅に向かう。その少しの移動距離も雪のおかげで結構疲れた。
朝早くなのでやはり駅には学生の姿は見てさえなくサラリーマンなどが見える。
「キーくん。昨日はやらかしたみたいだね。転校初日の女の子を怒鳴りつけたって言う噂が流れているよ」
電車の中で深く腰掛けながら明人がそんなことを言ってきた。輝秋は笑っているが僕はため息をつく。
「そうなんだよ」
「おまえ、意外と短気なんだな」
「輝秋だって、少し腹が立たなかった? だって――――」
「あぁ、分かってるよ。でもちゃんと話も聞いてみようぜ。もしかしたら今日『昨日はやりすぎたごめんなさい』って謝られるかもよ」
「………………そうだといいな」
隣町まで行って僕達は降りた。今日はゲームセンターに向かわずに本屋にたちよる。
本屋は駅から学校までの道のりにあるので移動が楽だった。
「お前らよく本なんて読めるな、俺長すぎて読めないわ」
「アキちゃん…………君も運命の出会いをすべきだよ」
明人が本を手当り次第に選びパラパラと捲りながらそう言う。
明人がここで言う“運命の出会い”とは恋愛ものの小説のことを言っている。
明人が運命の出会いをした時はすごかった、一日中本の感想を述べ、その本を僕に貸してくれると言って「まだ他の本が読み終わってないから」と断ったのだが「これを読まなきゃ死ねないよ!」と言って無理やり貸してもらった。
僕はその本を読んでみたがかなり感動した。明人の言う通り号泣した、この本を読まなければ死ねない、というのもあながち間違ってはなかったかもしれない。
「まあ、いいや。俺には漫画があるもんねー」
そう言って輝秋は漫画コーナーのところへ消えてしまった。
途端、明人が内緒話をするように声の音量を小さくして話し始める。
「なぁ、昨日、何があったのさ。僕、噂でしか聞いてなくて」
僕は昨日の起きた出来事を順を追って説明した。咲雪と出会ってから、それから遊ぶようになったこと、昨日になって僕のことは知らないと言うこと、それを全部話し終わると明人は盛大に笑った。
「あははははははは、なに、キーくん振られたの」
「ち、ちげーよ。僕は告白もしてない」
「この後するの?」
「しないよ」
「あはははははははははははは」
お腹を抱えて笑う明人の目元には涙が浮かんでいた。笑いすぎだ。
「お客様、申し訳ありませんが周りのお客様の迷惑になりますので少しお静かにしてもらいませんか?」
突然やってきた店員に驚く。中年の男性でアルバイトらしい。見たことがない。僕はこの店によく出入りをしているので店員にどんな人がいるのか把握している。
「周りにお客なんていないよ」
ボソッと呟いた明人の声を僕はしっかりと聞いていた。店員もその声が聞こえたのか眉をピクピクとひくつかせる。
「あまりうるさいと出禁にしますよ」
「…………短気かよ」
またもボソッと言う明人、しかしその音量は絶対に店員にも聞こえていたと思う。
変なところで張り合う明人、僕は「やめとけよ」とだけ耳元で呟いたがその行為が店員の目には自分を侮辱されたと思ったのか僕達をハタキで追い払う素振りを見せた。
僕と明人は渋々外に出た。
すると明人が大声で「僕がこの店にどんだけ貢献してるか知ってるか?!」すぅーと息を吸って「小説400冊!漫画200冊だぞぉぉぉぉぉー」
ビリビリと鼓膜が痛くなってくる大声だった。ハァハァと息をきらせて明人は僕と顔を合わせる。
「ふっ」
「あは」
どちらがともなく吹き出してしまう。
「あははははは」
「笑いすぎだ」
僕達は顔を見合わせながら笑いあった。何がそんなに面白いのかわからないが笑がお腹の底からでてきた。
「何笑ってんだお前ら、俺も出禁になっちまったよ」
店内から出てきた輝秋、輝秋も僕達と同様に出禁になってしまったようだ。輝秋は顔をしかめていたが次第にほころんでくる。
「おもしれーもう学校行こうぜ」
「そうだね」
僕は答えて3人で学校に向かった。