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8.見学に来ました。

 午後、領府に向かうと、お義父様が出迎えてくれた。


「私の仕事場にようこそ、アリア」


 中に入るとお義父様は早速午前の授業の報告書に目を通し、楽しそうな声を上げた。


「昨日の夕食の時の様子だとそうじゃないかとは思っていたけど、お茶会や食事会のマナーはほぼ完璧みたいだね。すごいじゃないか」


「ありがとうございます。先生にそうご評価いただけたのなら嬉しいです」


 まぁあくまで7歳児にしては、だけども。

 マナーは貴族として生きていく上で必ず必要になるものだから、もっと呼吸するように行い、優雅に振舞えるようにならなければ。


「これなら次のお茶会に間に合うね。急いで参加の返事を出しておくよ」


「お茶会、ですか」


「あぁ、少し前から王宮で月一で行われるようになった、ガーデンパーティーだよ。大人はパーティー、11歳以下の子供はお茶会と、それぞれ分かれて行われる。議会の時期じゃないから領地持ちの有力貴族はほぼ参加していないし、開催時間は昼だ。王都近くに住む似たような貴族が毎度集まっているみたいだね」


「……それに参加されるのですか?」


 そんな参加するメリットのなさそうなものにわざわざ?と言外ににじませると、お義父様は苦笑しながら説明してくれた。


「昨日言っていた『機会』だよ。そのお茶会には必ず第一王子が参加している。というかそれが目的で開かれているようなものだから」


 それが目的?よくわからないが……問題があるらしい第一王子をお茶会に慣れさせたいとか?


「とりあえず会いに行ってみよう。幸いうちの領地から王都はそれほど遠くないしね」


「……お義父様がそうおっしゃるのであれば」


「よし。じゃあお茶会の話し合いは帰ってからにするとして、とりあえず見学に行こうか。オークス、アリアを頼むね」


 お義父様の副官であるオークスさんに付いて仕事場を見学させてもらうことになった。

 前世では私は王宮に出入りしていたのでその仕事は見たことがあったし、手が足りないときは実際手伝っていた。

 領地や貴族との調整、それと外交が主な仕事で、私は皇太子の代わりにひたすら魔道具で会話しながら書類作成をしていた。

 領政というと中央から見たらフロントライン寄りの仕事になるだろう。より民に近い仕事ができるのではないだろうかと、ついそわそわしてしまった。


「……なぜ、アリア様はお義父様のお仕事を手伝おうと?ランバート様でもまだお家でお勉強中ですよ」


 笑顔で対応してくれるが、正直面倒臭いのだろうなと感じた。

 何の実績もない新人、しかも子供の私なんて足手まといになる未来しか見えない。

 アレクシアの時は調整力と処理能力を買われていたが、それはある程度慣れた場所での慣れた業務で、公爵令嬢という権力を持った私が行う場合の話だ。ここでは行う業務も組織系統も違う。

 彼の感情は当然だし、事実最初は使い物にならないだろう。


「なぜ、ですか……今回お義父様が私をイクスベリー家に迎えられたのは、領政の手伝いをさせるためです」


 とりあえず無難に答える。が、私を領政に関わらせたくないだろうオークスさんは優しく、しかし受け入れる気はないといった雰囲気で話を続ける。


「いや、それは大きくなってからという意味では?ここのみんなが見ている紙に書いてあることはとっても難しいんです。焦らなくても、今はしっかりお勉強をして、義父様のお役に立ちましょう。今日は見学だけということで……」


「もちろん、一定の研修期間は必要になるでしょう。最初は雑用を回していただいて、仕事の流れを見ることになると思います。業務について質問させていただくことになるので皆さんのお手も止めてしまうでしょうし、お忙しい中でご負担になることも理解しています。ですが、どうしても私は領民の為になる仕事に携わりたいのです。できるだけ早く業務に慣れるよう頑張りますので、ご指導いただけないでしょうか」


 彼はここでお義父様の右腕として働いている。お義父様の許可があったとしても、彼に眉をしかめられたままで円滑に業務を行えるとは思えない。

 彼の不満が当然のものだとしても、なんとかわかってもらわなければ。

 新人で実績の無い私に示せるのは、誠意と熱意しかない。

 とりあえず役に立たないことを申し訳なく思う気持ちと、仕事へのやる気を語ってみたのだが、オークスさんにぽかんとした顔をされてしまった。……そんなに変わったことを話したつもりはないのだけれど。


「……え?……っと、アリア様今おいくつですか?」


「え?歳ですか?7歳です」


 仕事の話をしていたのになぜ年齢の話に?


「私の息子がですね……同い年なんですよ」


「そうなんですか。偶然ですね」


「…………」


「…………」


 無言で固まってしまった。一体どうしたんだろうか。


「…………とりあえず、ご案内しますね」


「はい、よろしくお願いいたします」


 オークスさんが再び歩き出す。案内する前に緊張をほぐしてくれたのだろうか。

 気を使ってもらったのに会話が広がらなくて申し訳なかったな。

 仕事への意気込みは伝わったか?……いや、結局は仕事が始まってからがすべてなのだから、伝わるまで伝え続ければいいのだ。私は気合を入れながらオークスさんの後に続いた。






話の切りの都合上今回は短いです。すみません。



―――――


※追記です。「そう言っていただけたのなら嬉しいです」→「ありがとうございます。先生にそうご評価いただけたのなら嬉しいです」に修正いたしました。

 ご指摘ありがとうございました!

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