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6.新しい家族が出来ました。

 町から少し外れたところにある墓地に、お別れの挨拶をしにきた。

 またいつ来られるかわからないし、両親の店がなんとかなったので報告もしておきたかった。

 イクスベリー卿が派遣してくれた人がとても優秀で、すぐに運転資金の借入金ととんとんくらいで店と在庫を購入してくれる人を見つけてきてくれた。

 短期間で探したのに足元を見られなかったのは伯爵家の威光のおかげだなと、思わぬ効果に有難く思った。7歳の孤児だけではこうはいかなかったな。

 雇ってた人の給金は幸い月初で店を閉めていたので、日割りで計算すれば大した額にならなかった。

 取引先への挨拶回りも済んだし、これで店の整理がついた。


「……7年間、私を育ててくれてありがとうございました。生まれ変わってから穏やかな日々を送ることができたのは、お父さんとお母さんのおかげです。一度失敗した貴族の世界に戻るけれど、これからも私を見守っていてね」


 この後イクスベリー卿と落ち合うことになっているのだけれども――まぁ、彼なら目が赤いことには触れずにいてくれるだろう。






「荷物はこれで全部かな?」


 待ち合わせ場所に来たイクスベリー卿は私の荷物を取って従者に渡した。

 使いの者に送迎させてもいいところを自ら出向いてくれて、さっと荷物を取ってくれる。やはり彼は紳士だなと思いながらエスコートされ馬車に乗り込む。

 車内はイクスベリー卿と私の二人で移動するようだ。


「実は帰ったらすぐ領府に行かなくてはならなくなってね。せわしなくて申し訳ないんだけど、家族に紹介した後は、君の兄になるランバートと弟になるジョシュアに家を案内してもらってね」


「わかりました。では研修は明日から、ということですか?」


「あぁ、いや、そうだね。とりあえず家庭教師を付けるけど、そんなに急いでないから。色々あって疲れているだろうし、ひと月くらいはゆっくりして――」


「イクスベリー卿」


「あれ?違うよね。私は君の父になるんだけど」


「……では、お義父様と呼ばせていただきます。今回迎えていただくまで、期間が空きましたので、気持ちの整理はついております。……むしろやることがある方が、それを支えに立っていられるものですよ」


「そう……わかった。じゃあ見学を兼ねて明日の午後からちょっとしたお手伝いをしてもらおうかな。午前中はお勉強だよ」


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」


 出来るだけ早く仕事を覚えたいので、早めに教えてもらえるのはありがたい。

 まずは見学からの研修かな。新人が入ることで邪魔になることはわかっているが、領民の為になることを少しでもさせてもらいたい。

 午前中は勉強か。何を学ばせてもらえるのだろう。

 勉強……言語と算術と魔法学は問題ないが、問題は歴史か。ガレリア王国の歴史は大まかにしか知らないし、それも前の私の国から見た歴史だから覚え直さないといけないな。

 他に何か要望はあるかと聞かれたので、遠慮せずに実践魔法と剣術と徒手格闘技を学びたいと言ったら驚かれた。

 前世で野盗に襲われた時に習っていなかったことを後悔したので希望したが、剣術と徒手格闘技をやりたいという女性貴族は少ないし、魔法は……そういえば私はまだ7歳だった。

 普通は11,2歳から学び始めるから……でももう使えるから良くないか?4年ぐらい誤差の範囲だろう。

 精密身体強化魔法のことを説明するとさらに驚かれ、とりあえずそれぞれ週一で教えてもらえることになった。


「こんなに手を掛けていただけるなんて……早くお役に立てるように頑張りますね」


「これに加えて貴族としてのマナーの勉強もあるからね?ある程度できてるようにも見えるけど……大丈夫?ハード過ぎない?」


「はい、大丈夫です。ありがとうございます。必ずやお義父様のご期待に応えて見せます」


 確かに政務の手伝いをすると前世に比べて勉学の時間は削られるだろうが、それこそ皇妃教育の貯金があるから少しくらいスローペースでもいいだろう。

 気を抜くつもりはないが、人は流されやすいと知っている。

 常に民に関わる仕事をすることで初心を忘れないようにしないと。――あら?お義父様がなんともいえない顔をしている。


「? どうされましたか、お義父さま」


「うーん、いや、アリアと話してると最近貴族の間で噂になっている第一王子のことを思い出してしまってね。優秀すぎて問題が起きているらしいんだよ」


「問題?王太子が優秀で何の問題が?」


「いや、彼はまだ王太子というわけではなくて――あ、もう屋敷が見えてきたね」


 窓の外に大きな屋敷が見えた。さすが大国ガレリア、伯爵家の屋敷であっても前世の私の公爵家の家と張るぐらい立派だ。

 と、屋敷を眺めていたら頭をなでられたので、お義父様の方に向き直る。


「詳しい話はまた今度に。ただ君もとても優秀だから、彼の気持ちがわかるかもしれないと思ってね。結構大変そうだし、良かったら彼の力になってあげてくれないかな」


 にこやかに笑いながら話すお義父様を見つめる。

 ふむ。前世のこともあって王族には積極的に近づく気が起きないが、お義父様が望むなら仕方がない。

 イクスベリー家は第一王子派なのかな。


「わかりました。私に何ができるかはわかりませんが、機会がありましたら殿下のお力となるよう全力を尽くしましょう」


「ありがとう。機会は頃合いを見てこっちで作るからさ。よろしく頼むね。さ、着いたよ。お手をどうぞ、アリア」


 お義父様に差し出された手を取って馬車から歩き出す。

 頑張ろう。

 アレクシア・エイスグレイスに出来なかったことを、今度はアリア・イクスベリーとして。






 通された部屋には二人の男の子がソファーに座って待っていた。

 話に聞いていた義兄弟と思しき彼らに、お義父様から私を紹介してもらう。


「彼女が話していたアリアだ。今日からランバートの妹で、ジョシュアの姉だよ」


「アリアです。よろしくお願い致します」


 第一印象は大事なので、ことさら丁寧にお辞儀をした。

 ガレリア王国の方式のものに慣れていないので、あまり優雅ではないだろうが……まぁ、見苦しくない程度には練習したし、気持ちは込めたということで。


「ランバート、ジョシュア。二人とも挨拶を」


「はい、父さん。……ランバートだ。よろしく。困ったことがあったら何でも言ってくれ」


「ジョシュアです。お姉様ができるなんて嬉しいな!よろしくね」


 とりあえず受け入れてもらえたようで、二人はにこやかに対応してくれた。

 ランバート様はイクスベリー卿によく似ていたが、ジョシュア様はあまり似ておらず、亡き奥様に似たのかなと思った。

 系統は違うが、どちらも貴族らしく整った顔をしている。

 素朴な雰囲気の多かった町の人々と違うそれらを見て、貴族の世界に戻ってきたのだなと実感した。


「よし。私たちは今日から家族だ。皆仲良くするようにね」


「「「はい!」」」


 とてもあたたかな雰囲気の新しい家族……大切にしていこう。






この時点ですでにアリアはファザコンです。

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