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44.殿下の婚約者2

お久しぶりでございます。長期間更新ができず、申し訳ありませんでした。

会社で馬車馬のように働いておりました。社畜辛い……。

お話を忘れた方ようにあらすじを書いておきますので、良ければご活用下さい。


あらすじ

 平民だったけれど両親を失くし、伯爵家に引き取られたアリア7歳。

 彼女には他の国の貴族として生きた前世の記憶があります。

 アリアは知らないけれど、彼女はなろうで言うところの、悪いことしてないのに転生ヒロインにハメられた悪役令嬢ポジの人間でした。

 その為やたらハイスペックなので、それを活かして日々色々な事に取り組んでいます。

 今は誘拐殺人事件の解決に尽力していて、解決の為に第一王子に期間限定でいいから婚約してと頼んだり、囮となって攫われて誘拐殺人犯の根城を壊滅させたりしました。

その時捕まってた子供二人も助けたんですが、その子達の親が貴族で、今アリア家の領まで迎えに来てます。


そんな感じで、アリアの義父にお礼を言う、助けられた子供の父親(子爵)の視点から始まります。


 泣き疲れて眠ってしまった子供たちの病室から病院の応接室へ移動して、イクスベリー卿と話をさせてもらった。


「この度は本当に、本当にありがとうございました……!イクスベリー卿に助けていただけなければ、あの子達は殺されていました。……もしもこの件で責められるようなら、私もお力添え致しましょう」


 何せ領地を越えて領主の館に押し入っているのだ。かなりの責め苦が予想される。

 ……でも俺は彼の味方でいると心に決めている。

 と言うか土地持ちだろうが何だろうが、イェーツは絶対に許さない。


「いえ、先程ご子息とご息女が言ってらしたように、助けたのは娘と娘の騎士です。私は攫われた彼女を迎えに行っただけですので大丈夫ですよ」


「……攫われた?アリア嬢が?」


「ええ。うちの領内を散歩していたら、たまたま攫われたようで。私は第一王子殿下の婚約者である我が娘を迎えに行っただけなので。……これで口を挟むような貴族はいないでしょう」


 なるほど……それなら大義名分が立つし、何より第一王子の婚約者なのだ。手を出すなんて余程の馬鹿だ。


「こちらに非が無い形で、イクスベリー卿では無くアリア嬢に危害を加えたのなら……イェーツ卿は終わりですね」


 自業自得だな。ざまぁとしか思えん。


「アリアは最初からそこまで考えていたわけじゃないですけど、殿下は違うでしょうね」


「……エリファレット殿下ですか?あの、その言い方だと、まるでアリア嬢が攫われることを予想していたように聞こえますが……」


 まさかそんなはずは無いよな?さっき散歩していたらたまたまって言ってたのは建前とかそんなまさか。

 そう思って聞き返すと、普通に肯定された。

 嘘だろ……。

 そしてイクスベリー領でも度々誘拐が起こっていた事、それからアリア嬢がそれを解決するためだけにエリファレット殿下と婚約した事を話してくれた。


「では、婚約は破棄されるつもりで……」


「いえ、こちらからは無理でしょうね。アリアはそんな恩知らずな事は出来ません。あちらから破棄されることは無いでしょうし……。アリア自身はね、破棄されると思ってるんですけど」


「……なるほど」


 確かに、先日の殿下の様子だと破棄されそうにない。殿下の演技の可能性もあるけど、そこまでは俺にはわからない。


「まぁあの歳で上級防御魔法と上級身体強化魔法を使うんだから、遅かれ早かれ推されてたでしょうし仕方がないです」


「…………え?……っと?……ん?」


 今何か常識ではありえない話が聞こえた気が……?


「アリアは殿下が好きなわけでは無いですけどね。まぁ本当に嫌そうなら何とかします。やっぱり子供は守りたいですし」


「……あの、待ってください。魔法、ですか?確かまだ7歳で、え、上級とは……?」


 ちょっと情報量が多すぎる。

 捌ききれないので少し待って欲しい。

 上級防御魔法と上級身体強化魔法……それが本当なら大変な事だ。

 普通に考えて無理だ。あり得ない。

 けれど、ここでイクスベリー卿が嘘を付く理由は無い。

 え、本当に?


「ご子息達も言われてましたよね?アリアは魔法が使えます。完全防御壁魔法と精密身体強化魔法なんて規格外のものを使うんですよ、あの子。そうでなければさすがに騎士が付いていたとはいえ、組織的誘拐殺人犯達のところに送り出さないですよ」


 イクスベリー卿が少し苦い顔で微笑みながら話すのを見てはっとする。

 娘を組織的誘拐殺人犯のところに送り出す――冷静に聞くととても酷いけれど、では他の解決方法を示せと言われても思いつかない。

 最善で最悪の道だ。

 なんて策を提案するんだアリア嬢は……。

 言動の端々からこの人が優しいことは伝わってくる。だから7歳の少女を危険な場所へ送るのは、多分色々な葛藤があったはずだ。

 それでも彼女の意見を通すことを選んだんだろう。

 二人共、なりふり構わず領民を助けることを、この地を治める貴族として選んだんだ。

 ……この人達が、国の中枢に来ることになる。


『たぶん興味を引くんじゃないかな』


 エリファレット殿下の言葉を思い出す。

 イクスベリー卿の話が本当なら、興味を引くとかそんなレベルの話じゃない。

 むしろ興味を示してもらえるように頑張らないといけないのはこちらの方だ。

 そうだった。アリア嬢はあのエリファレット殿下が選んだ婚約者なんだ。普通のはずがない。


 彼は王になるだろう。

 その隣にはきっと彼女が立っている――


 ……いや、待て。違うだろ。

 あんな小さな子に重責を押し付ける気か。きちんと会って話してみないと。

 彼女は恩人だ。心が伴う婚約でも無いのに、勝手に期待をかけて望まぬ道へ進ませるわけにはいかない。

 それが、どれだけ魅力的に見えたとしても。


「アリア嬢にもお礼を述べさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」


「もちろんです」


「……会って間もない私に詳しい話をして下さってありがとうございます。絶対に他言致しませんので」


 アリア嬢がわざと捕まった事など、あまり相手には知られない方がいいだろう。


「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですよ」


 イクスベリー卿が複雑そうな笑顔で続けた。


「きっともう、全部終わっている筈です」




 ******




 有り得ない……私がこんな屈辱を味わわされるなんて……!

 私の屋敷に押し入ってきたアイヴァン・イクスベリーにやられた時の打ち身が痛くて、まる3日自室でほぼ寝て過ごす事を余儀なくされている。

 あの若造のせいで……!まったく忌々しい!

 アイツは娘を探すと言っていきなり屋敷に来た上に、勝手に家探しして書類を持って行っていたらしい。重要なものが見当たらなくなっていたのだ……クソっ!


『第一王子の婚約者を誘拐するなんて……証拠はきっちり取ってありますので言い逃れはできません。イェーツ卿、ご覚悟を。』


 何だ偉そうに!ここの領主は私だぞ!

 買い取ってもらうはずだった金づるの魔石も持っていかれて大損じゃないか!

 ……向こうに大仰な理由があろうが私の知ったことじゃない。

 第一王子の婚約者?ハッ!あんな子供二人、アイヴァン・イクスベリーと揃って潰してやる。

 そもそもあの若造は生意気で気に入らなかったんだ。

 古参派を敵に回したことを後悔させてやろう。

 閣下に……宰相閣下にご相談しなければ。あのお方なら例えどんなにこちらが不利な状況でも全て覆してくださるはず。

 もうすでに手紙は送っておいたし、後は同じ古参派の私が出向いてお願いすれば何とかして下さるだろう。


「アイヴァン・イクスベリー……!それにアリア・イクスベリー……!このままでは終わらせない……!」


 ノックの音がして使用人が来客を告げた。宰相閣下の腹心の部下だ。

 おお!早速部下を手配してくださったか!

 此度の事を私の詳しくお伝えせねば!

 体が痛むので応接室はなく私の自室に彼を招いた。


「よく来てくださった!申し訳ないがこのままの格好で失礼する。体が痛むのでな」


「お久しぶりですね、イェーツ卿。お体はいががですか?完治までどのくらい掛かりそうなのでしょうか?」


「そうですな……恐らく一週間はかかるだろうかと。それもこれもイクスベリーのせいで……」


「では一週間でここから出て行って下さい」


「………………は?」


 今、出て行け、と言ったのか?いや、まさか、そんな……。


「イェーツ家は取り潰されることになりました。誘拐、横領、薬にまで手を出していたようですね。そして一族の誰もがそれを止める為に動かなかった。……イェーツ家は領主を務める器に非ずと閣下がご判断されました」


 何を、何を言っているんだこいつは……!そんなのうちの領だけがやってるわけじゃないだろ?!


「そんな、宰相閣下がそんな事を仰るはずがない!何かの間違いだ!」


「いいえ、閣下の指示です。問い合わせていただいても結構ですよ?」


「そんな……そんな馬鹿な!適当なことを言うな!呪われし忌み子が!」


「この家や家財は横領の補填のために取り上げさせていただきます。ああ、身支度などはお気になさらなくて大丈夫です。有力商人達を敵に回した貴方がたが、市井で生きていけるはずがありませんからどうせ無駄になります」


 それはつまり、遠回しに死ねと言っているということか……!?

 不味い!何とか閣下にお慈悲をいただかないと……!


「た、助けてくれ……頼む、なぁ頼む!」


「ついでに私のことを忌み子と呼んだことも報告しておきましょう。それでは、さようなら」


 しまった……!いつも心の中で呼んでいたからつい出てしまった!


「あ、あぁぁああああ!ち、違う!違うんだ!お許しください!閣下!閣下ぁ!!」


 宰相閣下は庶子を馬鹿にした者――ひいては亡き奥方を侮辱した者に対して容赦をしない。

 これは、これは不味い……!

 無慈悲にも閣下の従者が出て行く背中を見ながら私は決意する。

 体の痛みなどと言っている場合ではない!早く、早く逃げなければ……!


 私達家族は取るものも取り敢えず慌てて用意をして、その日の内に他国の親類の元に向かうべく家を出た。

 なるべく目立たないように家族全員で一つの馬車に乗って移動する。いつもなら考えられないが、仕方がない。


「父上!なぜ由緒ある子爵家である私達がこのようにコソコソと、それも急に領地を発つなど……」


「うるさい!黙っていろ!」


 何もわかっていない一番上の息子を苛立ちのまま怒鳴りつけて黙らせる。

 しくじった……相手が悪すぎる……。取り敢えず閣下のご機嫌が回復して、ほとぼりが冷めるまで身を隠して、他の古参派の貴族に頼んで取りなしてもらうしかない。

 この国で宰相閣下に睨まれてしまえばひとたまりもないのだ。

 まずは、まずは逃げなくては!

 イクスベリーへの復讐はその後考えて……!何だ!

 急に大きな音と共に馬車が止まった。


「や、野盗だ!」

「うわあああ!」


 金属のぶつかり合う音が外から響いてくる。護衛が野盗と交戦しているようだ。


「野盗だと!?こんな時に……!」


 騒がしい音が落ち着くと、すぐに私たち家族は馬車から引きずり出された。

 護衛は何をやっているんだと周りを見れば、そこには私が雇っていた護衛の3倍の数はいるであろうならず者共がこちらを威嚇していた。

 護衛達の姿は見えないから殺されたのかもしれない。しかしそんなことはどうでも良く、乗っていた馬車を止め、あまつさえ地面に膝をつかせるなどという、子爵である私に対する甚だしい侮辱で怒りに震えた。


「何をする!私が誰だか分かっているのか……!」


 私とこいつらは存在としての格が違うのだ。どうせこの平民共もそのどうにもしようのない差に跪くことになるのだから、いくら威嚇されようが怖がる必要はない。

 先頭に立つ男を睨みつけると、木で月明かりが遮られてよく見えないが、薄く笑ったように見えた。


「どうもこんばんは。今夜は月が明るくて絶好の外出日和ですね。でもそれは俺達みたいなのにとっても同じなんです。もっと警戒しないからこんなことになるんですよ?もう貴族ではないただのイェーツさん」


 イェーツの名を呼んだということは、こいつらは私たちが誰か知っているということだ。

 ハッ!これだから頭の足りない底辺共は嫌なんだ。平民ごときが高貴な私に喧嘩を売ったことを、後悔させてやる。


「お前たちのような者は知らないだろうが、私にはたくさんの為政者の知り合いがいる。今は手違いで一時的に外れているが、いずれ貴族に戻ることになるんだ。こんなことをして、お前やお前の家族がどうなるかわかっているのか?今すぐ私たちを解放するんだ」


 まあ今更止めたところで、減刑してやる気など毛頭ないが。全員処刑しなければこの屈辱の贖いになりはしない。


「ちゃんとわかってますよ?何の問題もないって」


「何……?」


 予想外の返しに訝しげな声が出る。


「宰相が排除すると決めた平民が死んだ所で、あなたの周りの為政者とやらの方々は誰も気に留めないでしょう。逆にあなたが助けることができる立場なら、何か思います?」


 そう言われて大きな衝撃を受けた。私は由緒正しい子爵家の人間で、子爵を継いだ者で、当然助けてもらえるものだと思い込んでいたが……助けない。

 私なら、宰相閣下の不興を買ったものなど、絶対に、助けはしない……。


「ぁ……」


 殺されるかもしれない……!

 自分は必ず助かると言う絶対の自信が揺らぎ、武器を持って威嚇する大勢の男たちに対して、強烈な恐怖心が湧き上がってきた。


「ま、待て、助けてくれ……!金なら渡そう、だから……」


「一つ聞きたいことがあるんですが、アントン・カーターという人物を知っていますか?」


 聞いたことのない人物の名前を挙げられ、私は助かりたい一心で必死で記憶を探ったが、思い出す事ができなかった。


「わ、わからない……。出入りの商人か?そいつの情報を渡せば見逃してくれるか……!?」


「いや、お前が殺した俺の息子の名前だよ」


 男の言葉にひゅっと息が詰まる。間違った……!

 男から薄く笑っていた様子が消え失せ、私は殺気のようなものを感じ背筋が凍った。


「……ぁ、ち、違う。ちょっと待ってくれ……!」


「……ここから先はプロの仕事です。一応全員あなた方に恨みのある人材を集めておきましたので、完璧な結果になるでしょう」


 間違った間違った嫌だこんなところで死にたくない嫌だ嫌だ嫌だ……!


「こ、この身に流れる高貴な血には変わりがない!私たちが死ねば役場の調査が入るはずだ!わ、私に手を出せば、お前たちはどこまでも追われ、捕らえられ、酷い罰が下されるだろう!そっちも破滅するぞ!」


そうだ!助けてもらえなくても、元子爵が殺されれば問題になって、調べが入る。

だから殺さないでくれ……!

男は静かに冷たい目で見下ろしてきた。


「……大丈夫。信頼できる詳しい方にお聞きしたのですが、過去の同じような例では全て行方不明で処理されているようなので問題ありませんよ。明らかに訳ありで面倒な案件を速やかに処理するのに都合がいいんでしょう。誰にとってもね。……策もないのに宰相の敵に回るなんて、本当に馬鹿だな」


「あ……あ……」


 男はもう話すことはないと言うように、私に背を向けた。


「お待たせしました皆さん。……よろしくお願いします」






久々に更新した話におっさんしか出てこない件。あと話重い。

すみません、次はアリア出てくるんで……。


まだ少し忙しいのが続きます。元々早くもない更新頻度が更に遅くなります。

申し訳ないのですが、気長に待っていていただけると有り難いです。




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