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32.ずっと言いたかった。

↓以下、暗すぎる前回を飛ばした方用のあらすじです。既読の方は飛ばしてください。


 魔力枯渇寸前で倒れたジョシュアだったけど2日後に目覚めました。

 でもやっぱ元気ないし、様子変だし、お義父様が心配してても聞いてない様子。

 実は元々ジョシュア中で小さいころから自分いらないかも疑惑があったんですけど、優秀すぎるアリアが来て「あれ?父親がクズな僕より必要とされてない?」疑惑が浮上します。

 で、ジョシュアはアリアより小さい自分が魔法使えれば挽回できると思ったんですけど、普通に失敗して落ち込みます。

 そんなときにアリアが部屋に乗り込んできて「逃げないで話そう。上手く話せなくても別に良くない?だって私のこと嫌いでしょ?」って言ってきて、ジョシュアは頭が真っ白になります。←今ココ


 そして現在ジョシュア視点でお送りしております。


 自分の姉として接しなければいけない人からのありえない、ありえてはいけない言葉に、僕は呆然と彼女を見つめた。


「この辺に座ってもいいかしら」


 先ほど自分が言ったことなど全く気にしていないような平然とした様子で、彼女は僕の寝ているベッドの近くに椅子を置いた。


「お茶を用意してきたの。話しながら飲みましょう」


 衝撃的な言葉に気を取られ過ぎて気が付かなかったが、彼女はどうやらこの部屋にお茶を持ち込んでいたようだ。

 メイドの仕事をするなどらしくないなと思ったが、そういえば彼女はもともと貴族ではなかったのだと気が付いた。立ち居振る舞いが完全に貴族なので忘れてしまっていた。


「………………」


「………………」


 何も、話さないのだろうか?

 先程の話の続きはいいのか?

 知らない、ふりをしても……?

 ただ座っている彼女を横目に見ながら、居心地の悪さを感じ、自分の分のお茶に口をつける。

 …………美味しくないな……。


「どうして魔法を使おうとしたの?」


「……!」


 急に話しかけられたことで大袈裟に反応してしまった。


「私に対抗したの?」


「……」


 動揺して目が泳いでしまった。これではそうですと言っているようなものだ。


「そう。無謀なことをしたわね。お義父様が魔法はまだ早いからスロットに触ってはいけないと、きちんと話していたはずでしょう。お義兄様だってまだ使っていないのに」


「……」


 そんなことわかってる!それでも……!

 ぎゅっと寝具を握りしめながら、思わず睨んでしまう。


「貴方にはまだ無理よ。貴方と私は違うもの」


 僕とは違う。そんなの……!


「……わかってるよそんなの!」


 さっきは我慢できたのに、今度は口に出してしまった。


「わかってる?本当に?」


「わかってるよ!あんたは頭もよくて魔法も使えるすごい人で、お父様に認められてる!もうこの家に受け入れられてる!僕が向けられたことの無いような顔を向けられてる!後から来たくせに!」


 一度口に出したら止まらなかった。責めずにはいられなかった。

 ……だから、話したくなかったんだ。


「僕とは……違う……」


 絞り出した自分の声が胸をえぐった。

 認めたくなかった。知りたくなかったのに……。


「まさか……貴方、お義父様に、この家に受け入れられていないと思っているの?」


「…………」


 本当に驚いたというような様子で紡がれた言葉を聞く。

 違う……というのだろうか?


「そんな馬鹿な。みんな貴方を心配していたでしょう?お義父様もお義兄様も、貴方を愛しているからよ」


「でも……僕は……お父様の子じゃない……」


 心配してくれるのは、彼らが優しいから。

 本当の父親は、彼らも大嫌いな、あの最低な……


「……貴方のお父様はアイヴァン・イクスベリーよ。彼は貴方を愛している」


「そんなわけないだろ!僕はあの……!あいつの……!」


 どう見たって僕とそっくりなあいつが僕の父親だ!みんな知ってる……!

 そんな嘘で僕を丸め込むつもりか!?


「ジョシュア。たとえそうでも、貴方の父親はお義父様よ」


「何言って……!」


「だってあいつは何も努力してないじゃない」


「……は?」


 思いがけないことを言われて、マヌケな声が出てしまった。


「愛し続けること、愛され続けること。どんなことにだって継続には努力が必要なの。あいつが何かした?あの様子じゃしてないでしょう。そんなのと、ジョシュ、貴方とお義父様のこれまでの努力を同列に語るの?」


 努力……。そんな風に考えたことはなかった。

 ただ、いい弟でいれば、いつか僕も、本当の家族になれるんじゃないかって――


「貴方は頑張ってきたはずだわ。もちろんお義父様も。だって私の目には、貴方たちは本当の家族にしか見えないのだから」


 そう、なんだろうか?

 まっすぐこちらを見つめる彼女の眼は、嘘を言っているようには見えなかった。


「……でも、血が……」


 思わず否定してしまった。

 ずっと思ってきたことだから、どうしても考えてしまう。


「家族を繋ぐうえで、確かに血縁というものは最もわかりやすいわよね。他人から見ても一目瞭然だし。でも、それが全てじゃないわ。互いに思いやりを持って接して、愛を育んでいく。血がつながってても、つながっていなくてもね。家族を正しくつなぐのは愛だけだわ。愛こそ全てよ。ジョシュ」


 ……そんなこと、初めて言われた。

 顔が似ていないから、血がつながっていないから、違うと否定されてばかりのように感じていたけれど、お父様が僕の父親だと、思ってもいいんだろうか?


……本当の家族だと思ってもいいんだろうか?


「うーん、そうね。もし不安だというのなら私に聞いて。いつでも何度でも教えてあげる。お義父様もお義兄様も、みんなジョシュのことを愛しているって」


「……嘘、かもしれないよね」


「家族のことについて絶対に貴方に嘘はつかないと誓うわ。わざわざ嘘を吐くメリットなんて私には何もないし、信じられるでしょう?」


「メリット……お父様の、愛情を独り占め出来る、とか」


「興味がないわ。私には養女としての私に対する愛情で十分よ……私が甘えて、子供としての愛情を掛けて欲しかった人たちは、もうこの世にいないもの」


 彼女の少し悲しそうな笑顔を見てハッとする。そうだ、彼女の親は――


「両親が死んでから、”子供”の私は消えたのよ。この家には、貴族として、領民の為に尽くすために入ったの。……お父さんやお母さんの代わりに、子供としてお義父様に愛してもらうためじゃないわ」


 それは、あまりにも自分が考えていたようなことは違っていて、驚きを隠せなかった。

 平然と、当たり前のように語られる彼女がこの家に来た理由は、僕には普通には思えなかった。


「悲しく、ないの……?」


「ええ。お義父様だってそもそもそのつもりで私を引き取ったのよ?家族として本当に良くしてもらっているし。だから比べる必要なんてないの。貴方と私は違うわ。お義父様は貴方の父親よ、ジョシュ。甘えて良いの。頼って良いの。彼の子供でいて良いのよ」


 なんてことないことのように話しているけれど、これは……もしかして僕は勘違いしていたのだろうか?

 お父様が僕や兄様に向けるのとは違う顔をしていたのは、僕が思っていたのとは逆で……自分の子供には見せない顔だったのか?それを彼女もお父様も当然だと思ってるのか?

 僕は……


「不安になったら私に聞いて。必ず正しく答えるから。そうして信頼を積み重ねていって……私とも、ゆっくり家族になっていきましょう」


 言いたいことは言ったとばかりに彼女はお茶に口を付けた。


「美味しくないわね、これ」


「え……」


 てっきり自分の心の問題で味がわからなくなっているのかと思ったら、本当に美味しくなかったのか?

 もう一度僕も飲んでみる。

 ……少し冷めた分余計に美味しくない。正直不味い。


「このお茶、私が入れたの。紅茶を美味しく入れるには、知識と技術が必要なのよ。魔法と同じ……私だって習ってなければ紅茶もまともに入れられないわ。ふふっ。私なんて大したことないでしょう?」


 おかしそうに笑う彼女はいつもより少し幼く見えて、存在自体が高く遠い壁のように感じていたのに、何だか少し身近に感じた。


「そうね……私に聞く前に、まずお義父様とお義兄様に直接聞いてみてもいいかもしれないわね。二人共とても心配しているから……今日だって仕事に行かずに扉の外で隠れて聞いているし」


「え……!?」


 廊下からガタタッと音がして、気まずそうな顔をしたお父様と兄様が部屋に入ってきた。


「気づいてたんだ……」


「ええ。まぁ」


 き、聞かれた……!?もしかして今までの話全部!?

 早く言ってくれればと一人落ち着き払っている人物を睨み付けると、自信満々に笑いながら顎を動かして「ほら早く聞け」と促してきた。

 何でそんなに自信があるんだよ。……なんかちょっと、大丈夫かもって思っちゃうだろ。


「あの、お父様、兄様……僕、二人が、大好き、です。二人は、僕のこと……」


 話している内に自信がなくなってきて、だんだん声が小さくなり、言葉が途切れてしまう。


「ジョシュア」


 お父様が名前を呼んでぎゅっと抱きしめてくれる。


「君は私の大切な息子だ。愛しているよ」


 あたたかな言葉と体温に泣きそうになっていると肩に手を置かれる。

 視線をやると兄様が穏やかに笑っていた。


「ジョシュは可愛い弟だ。僕ももちろん愛している」


「お父様……兄様……」


 ぎゅっと胸が掴まれたような感じがして、涙が流れた。

 嬉しくても胸が痛くなるなんて知らなかった。


「心配した……」


「うん……」


「元気になって良かった……」


「うん……」


「スロットを持ち出すなんて危ないじゃないか!もう絶対しては駄目だからね!」


「うん……」


「ジョシュアに何かあったら皆とてもとても悲しい……わかるね?」


「うん……ごめんなさい……ありがとう」


 お父様に目が覚めた時と同じようなことを言われた。

 あの時は責められて、使えない、いらないと言われているように感じていたけれど、今はたぶん違うと感じる。

 心配してくれていたんだ、ずっと。

 愛してくれているから。


「……僕も、愛してる」


 ずっと言えなかったけれど、ずっと言いたかった。

 お父様に頭を、兄様に背中を撫でられながら、止まらない涙を流し続けた。






 どうやら僕はあのまま少し眠ってしまったらしく、目が覚めたら昼食の少し前の時間になっていた。

 今日は食堂で食べるとメイドに伝え、廊下で待ってみる。

 ――来た。


「あらジョシュ。起きたのね。昼食は一緒に?」


「……うん、そのつもりだよ」


「そう」


 ふわりとやわらかく笑う顔を見る。そういえばこの人はいつでも絶対にまっすぐ僕の目を見るんだな。

 ……僕に、嫌われてると思ってるのに。


「あの、姉様、あの……」


「?何かしら?」


 上手く言葉が出てこない。何か……あ、そうだ!


「お茶!紅茶!えーっと、もし練習するなら、その、付き合うけど……ひ、一人で飲むのも大変だろうし、僕も入れてみたいし……」


 ぽかんとした顔で見つめられて頬が熱くなる。こ、こんなつもりじゃ……!


「そうね。では、お願いしようかしら?ちょうど練習したいと思っていたの」


 そう言ってとても嬉しそうに笑ってくれたのでホッとした。良かった……。


「今度は上手くやれるかな?」


「ふふっ。それは努力次第かしら?お互い頑張りましょう。ゆっくり、ね」


 うん、ゆっくり、ゆっくり。

 最高に美味しい紅茶が入れられる頃には、家族になっていれればいいと思う。






アリアは一般市民の料理は割と作れます。味も普通に美味しい。なのでなんとなくで入れた紅茶も飲めなくはない感じです。ただ美味しいかって言われれば美味しくはないみたいな。


お義父様とお義兄様の羞恥心が死んでるのは、ゲームは違えど共に乙女ゲーの攻略対象者だからです。

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