30.事故を防ぎました。
更新再開すると言ってすぐに停滞してすみません……。
魔法に関して色々説明してますが、読みづらいようなら読み飛ばしてもらっても大丈夫です。重要なことはまた後でも出てきますので。
また捕まってしまったんだろうか?
スロットとジョシュが消えただけで、まだ窃盗目的の侵入者の存在を確かめた訳でもないのに、クズに捕まっていたときのジョシュを思い出すとどうしても嫌な想像が頭に浮かんでしまう。
――被害に遭うのはいつだって一番弱い存在だ。
「お義父様!ジョシュが部屋にいません!」
「え?!いない!?ジョシュアが?!」
「侵入者に捕まったのでしょうか」
「わからないが……クソっ!早く見付けないと……!」
我が家が雇っている護衛は7人だが、先日エリファレット様が来た時に不休で詰めてもらったので、現在交代で長めに休んでもらっている。
今いる護衛は5人。
執事もスロットは使えるが、貴族ではない彼らの魔法は実戦では使えないし、それはそもそも執事の職務ではない。
護衛の1人はお義兄様についてもらっているし、もう1人この場にいない護衛は、おそらく避難した使用人たちに付けているのだろう。
残りの護衛に私とお義父様を入れて5人で探すとしても、広い伯爵家を探している間に、もしジョシュやメイドたちに何かあったら……。
最悪の想像に背筋が寒くなる。
……大丈夫。問題ない。迷うな。何もせず後悔なんかしたくないだろ。
「お義父様、旧式スロットは有りますか?」
「え、あるけど……何する気?」
前世で使ったり考えたりしていた魔法を忘れないうちにと、覚えていた旧式スロット用の術式を書き付けていたソフトを取り出す。
新しいスロット用に書き直そうと思っていたが、こちらもまだ手が回っていない。術式が複雑すぎて、調整に時間が掛かりそうなので後回しにしていた。
「貸してください。探索魔法を使います」
「……は?いや、あれは受信した魔法を分析してイメージ化する魔道具がないと」
「解析の術式もあります。イメージ化は必要ありません」
他の人間には意味不明な魔法文字の羅列でも、位置情報さえ解析魔法で言語化出来れば問題ない。
イメージ化の構造も、技術者に協力してもらいながら考えたのは私なのだから。
「早く!」
困惑した様子のお義父様から渡してもらった旧式スロットに、探索魔法術式が入ったソフトを差し込んで、ボタンを使って適切な術式を指定する。
……懐かしいなこの感じ。ソフトの規格が変わってなくて良かった。
この魔法は指定範囲の魔石を探索する。
スロットにももちろん付いているが、生き物は全て大なり小なり体内に魔石を持っていて、それも見つける事が出来る。
人間も例外ではない。
……だからこの魔法は軍事利用されたのだ。効率よく、殺すために……。
……大丈夫。本で読んだ限り、この魔法はエイスグレイス公爵家お抱えの魔法師だったウィリアムが広めていて、帝国が独占しているわけではない。
ここで私が使っても、問題は起きない。
入力が終わったので探索魔法を発動させる為ボタンを押した。
効果範囲は広くないが上級魔法なのと、割と魔力を使う魔法なので発動までに10秒程かかる。
短い間のはずなのに、焦っている為にやたら長く感じた。
「探索魔法……?本当に?」
困惑したようなお義父様の声を聴きながら、正確に調整しつつスロットに魔力を流し続ける。
問題なく発動し……よし、魔法が返って来た!
解析して……もうすでにほとんどの者が使用人用の食堂に集まっている。
「……ほとんどの魔石反応は食堂にありますが……この位置……演習場に魔石が三つ。大きな反応二つをスロットとするなら、人間は1人だけです。行きましょう……お義父様?」
「……!ああ、そうだ!行こう!」
固まっているお義父様に声を掛けると、ハッとしたように動き出し、護衛を連れて部屋を出た。
護衛だけに行こうと声をかけたことはわかっていたが、ドサクサ紛れで私も後を追う。
魔法や剣は男性貴族のたしなみなので、貴族の家には大抵それらの鍛錬をする為の演習場があり、我が家も例外ではない。
大国の伯爵家の演習場はかなり立派な造りになっていて、端から端の距離はかなりのものである。
入り口から演習場の中に入った私達は、その奥に一人で立っているジョシュの姿を見付けた。
私達の間にホッとした空気が流れる。
良かった。拐かされた訳ではなかったか。しかしなぜこんなところに?
……!魔法の気配……ジョシュから!?
「な、スロット!?」
「え!?スロット!?」
「うあああ……!!」
遠すぎて見えなかったが、視力を強化するとジョシュはその手にスロットを持っていた。
あの様子だと、暴走している!
「暴走……遠い!」
現状を把握したお義父様が走り出すが、それでは間に合わない。
少し遠いが……いける!
「《インパクト!》ジョシュ!」
初級攻撃魔法でスロットを手から弾いて魔力の流れを強制的に切り、全速力で走る。
間に合え!
魔法の衝撃で勢いが付いたジョシュが地面に倒れこむ前に、体を支えることができた。
頭を打って内部を負傷すると危ないので焦った。
心拍音と呼吸も確かめられた。良かった……。
「ジョシュア!無事か?」
「心拍音と呼吸は正常なので魔法の逆流は起こしていなかったと思いますが、すぐにお医者様に見せた方がいいです」
他人の体内で魔法を発動させることは普通は出来ないが、自分の魔力なら可能だ。
なので、魔法変換後魔力の逆流事故というのは稀に起きる。自分の体内で魔法を発動させてしまうのだ。
小さい子の起こす暴走事故はほとんどそれで、大半の子が命を落としている。
「そうか、良かった……。魔法で弾いただろう?怪我は……」
「怪我……あ」
言われてからジョシュの体を見ると、スロットを持っていた方の手が赤くなっている。
「すみません。手に打ち身が……」
「打ち身?……あの距離から魔法で弾いて打ち身で済んだの……?」
「?はい、加減はしましたので。もう少し上手くやるつもりでしたが……」
きちんと傷つかない程度に狙ったつもりだったが、かなり赤くなっている。少し時間を置くと色が変わるかもしれない。
新しいスロットに標準で備わっている”魔法を発動しやすくする自動補正”のせいで少し誤差が出たらしい。
やはり今の汎用性のスロットだと使い勝手が悪いな……自分でスロット組むか?いや、中の術式の問題だし意味ないか。
「そんなことない。最上の結果だよ。アリア、ありがとう……凄い魔力コントロールだね」
「……ありがたい事に魔法の才能だけはあるようなのです。習っておいて良かった……」
「そうか……とりあえずジョシュアを部屋へ運ぼう。かして」
お義父様がジョシュを持ち上げ、部屋へと運ぶ後ろから付いていく。
「ジョシュアはどうしてこんな事をしたんだろう……?」
責める様な口調ではなく、お義父様が静かにつぶやいた。
「……わかりません。でも」
わからないで終わらせてはいけない。
私達はきっとアプローチを間違えた。あの状態のジョシュを一人にしておいてはいけなかったのだ。
「話してもらえるまで聞きましょう。どれだけ時間がかかっても」
ちゃんと、本当の家族になるために。
前に出てきた治療師と医者は別です。どっちも免許がいりますが、医者の方が取得は難しいし、出来ることも多いです。
解析魔法はスロット上で発動していて、アリアは術式を書きつける魔道具を使って魔法文字を読んでいます。本編中に入れると長いし難しくなるのでカットしました。




