24.報告を聞いていました。
更新遅くなってすみません……。話が(私にとっては)難しくて上手く書けませんでした……。
※追記です。前話の過去話のアレクシアの年齢を11歳から12歳に変更しました。
相変わらず女性のように可憐な顔をした少年が、イクスベリー家の書斎でゆっくりと優雅に出されたお茶を飲んでいる。
第一王子である彼は宣言通り、直接お義父様から報告を聞きに我が家までやってきていた。それはまだ彼に信頼できる部下が少ないか、最悪いないことを指している。
ここから上を目指すという彼は、相当大変な思いをすることになるだろう。
しかしエリファレット様に手紙を出してからまだ4日しか経っていない。
こちらからの手紙が届くのに2日、向こうからの急使がくるのに1日そして移動に1日だ。どう考えても早すぎる。王族のフットワークの軽さじゃない。
……前回といい今回といい、どうやら彼の熱意は本物である。そこまで玉座が欲しいのなら、友人として応援しないこともない。
部屋にはエリファレット様とお義父様、そして私の3人しかいない。側近候補の3人どころかお義父様の側近まで席を外しているのに、果たして私はここにいてもいいのだろうか。
エリファレット様に「アリアはここにいてね」と言われたので座って話を聞いているが、今お義父様が説明しているのは我が領が隠すべき機密情報だ。
知る人間は少ない方がいいと思うが、第一王子の言葉に黙って従った。私は置物にでもなったつもりでいよう。
「魔石の横流し、か。国が管理してるのによく中央に見つからなかったよね」
ひとしきり説明を聞いたエリファレット様が呆れたようにつぶやく。魔物対策の部署の二人は採集できた魔石の数を誤魔化して売り払っていたらしい。
「一応は国が管理してますけど……ウチの国ですからね。監視体制なんてあってないようなものです」
「実質骨抜きにされてて管理はザルなんだ?」
「金になりますからね……魔石……。本当に必要なところにだけ最低限宰相様が振り分けてたみたいです。で、自分の分を取って後は放置みたいですね。ちなみに宰相様に関しては私の推察で、証拠は何もありません。周りが勝手にやったことです」
宰相……ブライアン・リッケンバッカー。古参貴族派筆頭のリッケンバッカー家当主であり、王妃の父。
そしてお義父様からもらった情報によると、現在実質国を動かしているのは彼らしい。
「へぇ、やっぱり有能なんだ。我が祖父は」
「ええ、そうですね。大変有能でいらっしゃいますよ。今の体制が崩れないように必要最低限の処置を施して、あとは貴族たちの好きにさせるというのは、彼の基本スタンスのようです」
お義父様が硬い表情をしながら話す。貴族からすると最高のスタンスだが、当然お義父様には思うところがあるのだろう。
「なるほどね……それで今回の件、表向きの報告は終わったの?」
エリファレット様がそれていた話題を元に戻すと、お義父様もすぐに普通の顔に戻った。
「ええ。役場の責任者と彼らは手を組んで魔物対策の経費を横領していたことになりました。……魔石が絡むと他の貴族がうるさいですから」
エリファレット様が少し目を見開いた。お義父様が選んだのはおそらくエリファレット様の望んだシナリオだろう。
「確かにそれが一番綺麗だけど、それは私が動く前提だよね。貴方なら他にもやり方はあるだろうに……優しいね」
魔石は一応国が管理している。いくら管理がザルでもその不正を隠すという事はリスクになる可能性があるが、エリファレット様が他の貴族の分もまとめて穏便に処理するために、魔石のことはなかった事にしたのだ。
情報を使って脅すのではなく、便宜を図る方向で調整をとってもらうための情報操作だ。
お義父様の意向を聞き、少し力が抜けたように笑ったエリファレット様を見て、そういえば彼はまだ9歳の子供だったなと思い出す。
「……殿下なら……いえ、何でもありません」
「うん。たぶん私にしか無理だ。王族として私はこの国の民に尽くすと誓うよ。……協力してくれるかな?」
真っ直ぐお義父様を見るエリファレット様をじっと見返した後、お義父様はハァとため息を吐いた。
「ご成長されるまで、待つことが出来ないのが悔しいですね」
「うん……生まれは変えられないから」
不本意そうに言ったお義父様に、苦笑しながらエリファレット様が答える。
しかし思い直したのか、お義父様は姿勢を正し、真剣な顔でエリファレット様を見た。
「……このアイヴァン・イクスベリー、微力ながらエリファレット殿下にお力添えさせていただきます」
「……ありがとう、イクスベリー卿」
子供を守りたいお義父様からすると苦渋の決断だったようだが、これからもエリファレット様に協力することにしたようだ。
エリファレット様の言うように生まれは変えられないし、彼はもう決めてしまっていた。
ちらりとエリファレット様がこちらを見たので、私は少し笑って答える。
「私もイクスベリー家の者として、もちろん当主の決定に従いますよ」
それを聞いて嬉しそうに笑ったエリファレット様が年相応の顔をしていて、思わず少し目線を逸らしてしまった。
エリファレット様はそんな私を気にした風でもなく、話を続けた。
「うちの祖父の大雑把な管理で貴族たちが売り払ってる魔石だけどさ、市場の価格が下がってないどころか上がってるんだよね。魔物の討伐数は去年の倍のペースなのに。今回の横領もそれが原因でしょ」
高価なものが沢山手元にあったから魔が差したってことか。なんとも人間らしい。ま、普通デメリットを考慮してやらないが。
「普通ならありえませんよね。厳密に国が管理してれば別ですが、勝手にされ放題で売られてるから価格は下がるはずなのに。しかし人工魔石の質や生産量だって上がってきてるのに、魔石の需要がこれほど増えるなんて……。国内ではそんな事業が立ち上がるなど聞いたことがないし、魔石の輸出は規制が掛かっていて急に増えたりしませんから……」
「……どっかの国が戦争でも始める気なのかな?」
「戦争……!?」
不穏な言葉に思わず反応してしまう。二人が少し驚いたようにこちらを見ている。
しまった。過剰反応してしまった……。
「普通の理由なら堂々と交渉して買えばいい。表に情報が出ない手段で集めてるということは公表出来ない理由なんだろうし、戦争とか、クーデターとか、違法な大規模魔法の研究実験とか……宰相がいるから、うちの国では無いだろうけど」
「……こちらでも調べておきますので、無理に探ったりは……」
危険しか感じない言葉の羅列に眉をひそめたお義父様が言った。エリファレット様が無茶をしないかやはり心配らしい。
「ありがとう。でもそちらこそ無理せず、イクスベリー卿はイクスベリー伯爵家を一番に考えてね」
「……」
お義父様が言葉を飲み込んだ。エリファレット様は正しい。
お義父様は領民の為に、イクスベリー家を一番に考えなくてはいけないし、お義父様もそれは分かっている。
「私のことで命を掛けるのは私だけでいい」
エリファレット様の目は本気だった。
本気で王になり、そして民に尽くす気だ。
……命を懸けて民に尽くそうとしてくれるのなら、私は……いや、相手は9歳だ。期待しすぎず、見守ろう。
3人での話を終えた後は少し遅めの夕食になった。
食べ終えた後、部屋で休もうと移動していると近寄ってくる気配がしたので、足を止めて振り返る。
少し離れたところに王妃が嫌がらせの為に付けた、エリファレット様の側近候補のユリシーズ・アップソンがいた。
私が振り返ったことで驚いたのか彼が立ち止まったので、こちらから近づくことにした。
「私に御用でしょうか、アップソン様」
「あ、あぁ。少し話がしたくて」
「では部屋を用意させるのでこちらへ」
近くの使用人に声をかけ、使える部屋へ案内する。
なるほどこのためにエリファレット様は私をあの場に同席させたのか。随分と信頼されているようだ。
小さめの応接室に案内された彼は使用人を下がらせて欲しいと言ってきた。
子供同士でない未婚の男女が二人きりとは……と思いながら使用人を下げる。少し常識外れの行動をした方が、彼の気も抜けるだろう。
ソファに腰かけると、アップソンはすぐに本題を切り出した。
「先ほど、殿下とイクスベリー卿は何を話していたんだ?」
さて、どこまで情報を引き出せるかな。
お義父様もなんでアリアが同席してるんだろ?って思いながら話してました。殿下が決めたことなので特に何も言わなかったですが、普通の7歳児なら止めてます。アリアは普段から普通に守秘義務守って仕事してるので。
魔石は高いので魔道具はめっちゃ高くて庶民はローンで買います。2個も使ってるからマジ高いですが、下取り価格も高いです。中古もあって、一般人はそっちを買う人が多いです。




